医師国試に関する基礎知識を見直そう
はじめに
国試も受験! 受験生活の大勝負どころである夏が近づいてきましたね。
6年生はオスキーや実習、マッチングと色々とやる事が沢山ある事でしょう。
今回は国家試験に関する基本的な知識に関して述べていこうと思います。
皆様、ともにこの長いマラソンを乗り越えていきましょう。
医師国家試験出題基準
出題基準とは、今回の国家試験ではここからこの範囲を出しますよ、という記載がされている文章の事です。大学でもありましたよね。要するに国家試験のシラバスです。
これに関しては余裕があるうちに一度は目を通しておいた方が良く、何故かというと国家試験は出題基準から外れた出題をすることはできない為、
何に関してどれくらいの勉強をしておかなければならないのかがある程度分かるようになっているからです。
我々の親世代の医師国家試験は本当に難しく、聞いたことがないような疾患概念が出題されることは決して稀ではありませんでした。
しかし、今は違います。聞いたことがないような何とか症候群の類まで知っておかないと国試はクリアできない、という時代はもう終わっており、
この国家試験出題基準の範囲内をしっかりと勉強しさえすれば基本的に問題ないのです。
なのに、時々この出題基準を何も確認しないまま、盲目的に勉強をしている人がいます。
焦る気持ちはわかりますが、まず出題基準には目を通しておきましょう。何がどれくらい出題されるのか、どこからどこまでが必修の範疇なのか、
去年と比較して新しく出題基準に入ってきている項目がないか。
一例を挙げると、今年は医師国師の出題基準に働き方改革の話が入ってきています。労働基準法がらみの知識ですね。
なので、公衆衛生の対策をする時は、労働基準法に関する一般教養の範疇の知識は勉強しておく必要性があります。
こんな感じで、出題基準を見ると、求められる自分の勉強の深さが分かります。
なので、是非出題基準には一度目を通しておいてください。また各予備校の出題基準解析の授業を利用しても良いかもしれません。
必修って何? どうやって対策するの?
必修とは医師として働くにあたって絶対的に必要な知識に関するブロックです。
項目としては、身体診察と症候に関する基礎知識、いわゆるcommon diseaseに関する知識、救急に関する知識と対応、
よく行う検査に関する知識、そして医師としての倫理観と絶対に抑えておく必要性のある公衆衛生(法医学含む)の知識などがこれに当たります。
現在の国家試験で失敗する時は、この必修で失敗をする事が大半だと言われています。
では、必修はどのように対策をするかというと、これこそが学生実習でどれくらい救急を含めた現場を見て、現場の感覚を学び、患者さんを診察しているか、そして本番までにちゃんと公衆衛生に関する勉強はある程度しているかになります。
なので、国試は既卒になると不利になる論拠の一つが、この現場感覚が浪人を重ねるほど希薄になっていくからです。なので、既卒の人たちはもしできるのであれば、教育的な救急病院に当直も含めて見学に行き、定期的に現場感覚を取り戻すのが良いと思われます。
現役の人たちは6年生の実習を決して無益なものと切り捨てず、積極的に現場の先生に勉強した内容を質問するように心掛けると、それだけでもかなり価値のある経験になります。許されれば外来で予診を取らせてもらっても良いかもしれませんね。
実習に際しては、事前にその診療科でcommonな病気をよく調べておき、どのように対応をしているか見ると良いでしょう。特に外来で新患を見る機会があれば、どのような問診の進め方をしているか、どのような診察をしているかも確認すると良いでしょう。
禁忌って奴が凄く怖いです
怖がらなくて大丈夫です。何故かというと禁忌はある程度医学に関して満遍なく勉強をしておけば常識的に禁忌である事が分かるようになっているからです。
時折禁忌事項を一生懸命暗記しようとしている人を見かけますが、ハッキリ申し上げて無意味です。
そんな暇があるのであれば一つでも多くのcommon diseaseに関する知識を身に着け、病態をしっかりと理解し、最新の治療内容まで含めて深く十分に勉強をした方がはるかに価値がありますし、
同じ暗記をするのであれば公衆衛生に関する知識を一つでも身に着けた方が必修も一般も点数が伸びるというものです。
なので、禁忌に関して特別に対策をする必要性はありません。
現在、禁忌のみで国試落ちする人はほとんどおりません。通常、禁忌だけでなく一般・臨床ないし必修も足りていない人が大半です。
なので、粛々と満遍なく、全部の診療科に関して知識を幅広く身に着けて本番に挑みましょう。そうすれば禁忌はおそるるに足らずです。
臨床問題はどうやったら解けるようになりますか?
最近の国試は二日間に短縮になった影響で、採点方法も変わりました。臨床問題がより多く解けた方が合格しやすいようになっています。
では、どうすれば臨床問題は解けるようになるのでしょうか。
結局、これは症候学と鑑別学をどれだけ知っているかになります。つまり、ある症状で来院した患者さんをどのような手順で問診・診察し、どのように検査をして、どのように結論を出すか。この能力が求められているのです。
この能力の高め方は、研修医向けの救急に関する本を読むか、救急や症候学の講義を受けるか、もしくは救急当直・総合診療外来などを見学するなどが対策になります。
病棟ならば、ある患者さんに関して病態生理図を書いて状況把握してみるのも一つ手かもしれません。
その他にも、実際に問題を解きながら、診療の風景を想像するのも良いかもしれません。そのお医者さんが何を考えてその情報を聞いたのかを考える。これだけでも現場感覚は培われます。
ついつい勉強をしていると病態生理ばかりに偏りがちになりますが、そう言った勉強も国試では大事です。是非症候学・鑑別学も勉強されると良いでしょう。
結局は皆と同じことをやり続ける事
そもそも、国家試験は成績を競い合う試験ではなく、淡々と「合格」を目指していく試験です。そうなると戦略は平均合格率に該当する90%の人がやっている事を当たり前の事としてやり続ける事が重要になります。
もしその「当たり前」が分からないのであれば、周りに沢山いる他の受験生の普通を色々と聞いていく事が重要だと思います。CBTと異なり、国家試験は全国で合格基準が統一されています。なので、国家試験に関しては他校の生徒の話も参考にできます。
なお、これまでも述べてきたように、皆様のご両親の世代とはもう国家試験の制度そのものが色々と変わってしまっています。ですから、できれば歳が近い方々の話を参照にすると、より自分の国試と近い感覚の話を聞くことができるでしょう。
今回の試験では、医学部受験と異なり、あなたの周りにいる人たちは蹴落としあう敵ではありません。共に合格という大きな山を登っていく、登山のパートナーなのです。
ですから、どうか皆で受かっていけるよう、互いに情報を出し惜しみすることなく、自他ともに高みを目指していき、勉強していくといいでしょう。
最後に
皆様はあの医学部の受験を乗り越えてきた方々です。という事は、そもそも勉強に関してはできるはずです。
医学部受験を思い出し、一心不乱に腕を動かす事。これをやり続ければ、卒試も国試も何も怖いことはないと思います。
それでは、皆様が無事に国試を乗り切れますよう、心の底から祈っております!
著者プロフィール
ペンネーム:なつ
プロフィール:市中病院勤務の脳神経内科医。趣味は釣りと小説と東洋医学。臨床をこなしながら、
CES医師国家試験予備校で講師として「アウトプットする授業」をモットーとして学生の指導に
当たっている。僕のコラムが何らかの形で皆様の力になれば幸いです。一緒に頑張りましょう!