みなさんこんにちは。今回のテーマは糖尿病の合併症についてです。
まず急性合併症として糖尿病ケトアシドーシスや高浸透圧高血糖症候群があり、
また慢性合併症として細小血管障害による網膜症、腎症、神経障害の三大合併症や、
動脈硬化による大血管障害があります。今回はその中でも三大合併症の一つである糖尿病網膜症を取り上げてみたいと思います。
糖尿病網膜症は、単純網膜症→増殖前網膜症→増殖網膜症という順番で進行していく不可逆性の病変です。順にみていきましょう。
I.単純網膜症
眼底所見:毛細血管瘤、網膜出血、網膜浮腫、硬性白斑
過去問の写真で確認しておきましょう。
医師国家試験96F9
網膜出血や硬性白斑が確認できますね。
治療としては血糖コントロールが重要になります。ただし、
急激な血糖値の改善は網膜症を悪化させることがあるので注意が必要です。
II.増殖前網膜症
眼底所見:単純網膜症の所見に加え、軟性白斑
蛍光眼底造影:無血管野
こちらも過去問で確認しましょう。
医師国家試験108C24
視神経乳頭の近くに軟性白斑がみられます。
次は蛍光眼底造影写真です。
周囲より黒く見える無血管野があります。
無血管野は虚血が刺激となって、VEGFが血管新生を促します。
医師国家試験108C24
治療としては、レーザー光凝固により酸素需要を低下させ、
血管新生を抑えます。レーザー光凝固療法は、増殖前網膜症の時期に行うのが最も効果的であるため、
蛍光眼底造影検査で無血管野がないかをしっかり調べます。
III.増殖網膜症
眼底所見:新生血管 増殖膜 硝子体出血
血管新生は後部硝子体に広がり、増殖膜を形成します。
増殖膜は経過とともに収縮して、牽引性網膜剥離を引き起こします
新生血管は容易に破綻して硝子体出血をきたします。
過去問で確認しましょう。
医師国家試験101A10
硝子体出血や増殖膜(白い部分)がみられますね。新生血管のようなものもみられますね。
治療としては血糖コントロール、光凝固に加え、硝子体手術により硝子体出結や増殖膜を除去する必要があります。
本記事執筆の参考資料につきましては、
日本糖尿病学会誌第58巻第4号 (jst.go.jp)
をご覧ください。
著者プロフィール
ペンネーム:まる
プロフィール:近畿一円をまたにかけ、
ある時はクリニックで総合内科診療を、ある時は上場企業で産業医を、また様々な会社の健康診断の診察医も務めている。
日々の診療を行いながら、CES医師国家試験予備校で、「気づきのあるインプットと自力のアウトプットがある授業」
をモットーとして学生の指導に当たっている。僕のコラムが何らかの形で皆様の力になれば幸いです。一緒に頑張りましょう!