国試対策

2021-03-15

Q & A part 1

新学期が始まり、国家試験をむかえる6年生や、臨床実習を始める5年生にとって現時点でどういった事を疑問に思っているかの内容を、Q&A方式でまとめてみました。ここに挙げた質問内容は、現在医学部5、6年生を対象に受けた質問内容の中からいくつかを採り上げたものです。

Q1.医学部6年生になり、まもなくベッドサイドの実習を終えようとしていますが、未だに卒後何科に行くかという進路が決まりません。残り1年で決められるのでしょうか?

A1.

もともと自分が何科の医師になるということを前提に、医学部に入学してくる人もいますが、そうであっても入学して勉強していくうちに考えが変わってくる人もいます。 私(筆者)の経験からは、入学時にすでに卒後の進路を決めている人はほとんどいませんでしたし、私自身もそうでした。大半の人はクラブ活動のように臨床実習中に回った科の雰囲気で決めていたり、卒後臨床研修をしてから自分に合った科を専攻する人が多かったりしたような気がします。 私自身は後者でしたね。
実際に色々な科を経験してみて、学生時代にはこの科を専攻しようなんて思ってもいないような科を今専攻しています。

Q2.医学部5年生になりました。今まで勉強してきた内容が正直言って面白くありません。臨床医になることを希望していますが、このような勉強は将来役に立つのでしょうか?

A2.

学生時代に習う学習内容は、ごく基本的な内容ばかりのものです。将来何かを専攻し研究をしたいという希望があるのであれば、正直のところその知識だけではほとんど役にたたないでしょう。ただ、専攻する科にかかわらず、それらの知識がない状態で臨床医になるのはやめた方がいいと思います。各科の内容は症状から所見まで密接に関係している事が多いため、基礎的な知識を広く持たないと、鑑別診断ができなくなり、緊急性のあるような疾患を見落としたり、誤診を招いたりするおそれがあります。

Q3.医学部6年生になりました。国家試験のことはやはり少しは気になります。いつぐらいから勉強をすれば間に合うのでしょうか?

A3.

個人差がありますが、ある程度の基本的なことをおさえた学習を行ってきた人であれば、3、4ヶ月で十分間に合うと思います。6年生になった人であれば、4、5年生での試験をパスした人なので、たいていの人は基礎知識をある程度持っていると考えてよいはずではないでしょうか。正直、私の同級生で、この人は危ないのではと思った人でも、直前の数ヶ月間一生懸命勉強して受かった人は結構いました。ですから、現時点であまり焦る必要はないでしょう。

Q4.医学部5年生になり、ベッドサイド実習がこれから始まります。どのような感じで実習に臨めばいいでしょうか?

A4.

日本では、学生に対して医療行為を行うのは一切禁止されています。ただし、採血や外科系の手術に入る際には、医師の指導のもとで行えるような医療行為が存在します。そういった事は積極的に参加してもらいたいものです。医療行為を行うに当たっては、まさに習うより慣れろです。試験のような机上の行為と違って、実践の場では採血するのに手間取ってしまっていたら、患者さんとの信頼関係を崩すことになりかねません。手術に手洗いをして入るときでも、清潔不潔の区別は日頃から実践的に身につけておかないといつまでたってもダメだという人も見受けられます。手術の介助も、分からなくても積極的に手を動かしてください。最初から上手い人などまずいませんので、下手でも何でもとにかく積極的に参加してください。

Q5.私立大学医学部に通う6年生です。いままで非常に高額な学費がかかりました。奨学金や学生ローンなどの借金があり心配です。医師になって仕事をすれば、ある程度の給与は保証されるのでしょうか?

A5.

国家試験をパスして、いざ病院で仕事をするとなったとき、ほぼ全員に言えることは知識だけあって全く何も出来ない人だということです。研修を積んでいくに従って、医療行為を覚えていくといった感じです。ですので、最初の1、2年は給与などないと思っていた方がいいでしょう。とにかく最初の数年は今後の将来を左右する重要なときだと思ってください。これによりその後の給与も決まってくるでしょう。
実際のところ、大学病院等で研究を主体に臨床医を続ける人、国立総合病院等での勤務医は、給与はかなり安く自分の時間も作れないくらい働かされるところがほとんどです。それだけの給与では生活も苦しいでしょう。 そういった人はほとんどアルバイトで生計を立てています。現在のアルバイトの時給は科によって違いはありますが、概ね1万円くらいでしょう。
ただ、アルバイトをする時間も大学や病院によって制限していたり禁止したりしているところもあります。お金だけを目的に医師になることはあまり得策とはいいがたいですが、アルバイトのみをするフリーター医や、独立して開業、自由診療の美容外科、特殊外来をもつクリニックにいけばそれなりの収入は確保できると思います。その際にお金だけに惑わされて自分の目的を見失わないようにすることが大切だと思います。

Q6.医学部6年生になりました。卒後の進路は基礎医学を専攻したいと思っています。臨床にあまり興味がありませんが、医師国家試験は受けた方がいいでしょうか?

A6.

基礎医学を専攻するにしても是非医師の資格は取得してください。冒頭でも少しふれましたが、仕事をしていくうちに、考えが変わることが多々あります。その時臨床医に転向しようとしても資格がないと出来ませんし、基礎医学を専攻している間でも患者さん相手でなければ出来ないことも生じてくるでしょう。
また、給与も正直言って安いと思いますので、アルバイトしなければ生計が成り立たないこともでてくる可能性があります。

Q7.医学部6年生です。卒後アメリカに留学を考えていますが、どうすればアメリカの臨床研修は受けられるでしょうか?

A7.

基礎医学への留学であれば資格は必要ありませんが、臨床留学は資格を要します。USMLEという米国医師国家資格試験に合格する必要があります。
試験としてSTEP1、STEP2、TOEFL、CSAをまず取得することです。
STEP1は基礎医学の試験で、5年生でも受験することが可能です。
STEP2は臨床医学の試験で、6年生以上の人が受験できます。
TOEFLは語学試験でいつでも受験可能です。以上の3つは日本でも受験可能です。TOEFLはCBT(コンピュータによる試験)方式で213点以上の点数が必要です。
CSAは臨床実技試験で、アメリカでないと受験できません。受けられる条件として、STEP1かSTEP2のいずれかと、TOEFL213点以上をクリアーした人でないと受けられません。とにかくまず英語ができないといけません。
STEP1、STEP2はコンピュータでの試験であり、問題数がかなり多く、課される時間も丸1日かかりますので終わるころにはヘトヘトになるでしょう。私自身受験しましたが、問題数にしても内容にしても日本の国家試験よりはるかに難しいと思われます。CSAは、模擬患者を診察して診療録を作成し、疑われる疾患と鑑別診断を挙げてゆくものです。きちんと英語で意思疎通、説明、記載ができないとまず無理です。また、文化の違いもありますので、日本で行っているような診察をしてしまうと不合格になるでしょう。

Q8.医学部6年生です。国家試験の勉強方法はどうすれば能率的でしょうか?

A8.

やはり大切なのは過去問でしょうね。過去に出た問題を解いて問題形式に慣れることは大切です。しかし、ただ答えだけを丸暗記して疾患の内容やポイントをおさえた学習をしていかないといつまでたっても効果は期待できないでしょう。問題を解いてみてその問題が何を意図しているのか、基礎知識として何を知っていて欲しいのかに気が付かずに闇雲に解くことは時間の無駄になるばかりでなく本番でも応用が利かずに焦ることになるでしょう。

Q9.医学部6年生です。卒後大手の病院にて臨床研修をしたいと思っています。どのように応募すればいいのでしょうか?

A9.

競争率の高い病院は入るのも難しく、基本的には就職するための試験を課しているところが多いです。募集時期や試験も秋ぐらいに始まり、年末にはほとんど募集は終了してしまいます。ですので、行きたい研修先を早めに決め、早めに連絡を取っておいたほうが無難でしょう。卒業試験が終わってからなどと悠長な考え方はやめましょう。
病院の中には夏休み期間中に見学できるところもあり、希望する病院がそれを行っていた場合は絶対に参加したほうがいいと思います。参加することによって名前を覚えてもらい、入りやすくなることも多々ありますので、前にも述べましたが、とにかく研修期間は将来を左右する重要な時期ですので、採算は度外視してください。

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