インタビュー

2021-03-15

名古屋大学医学部附属病院 植村和正 平川仁尚 | 指導医インタビュー

名古屋大学医学部附属病院 植村 和正先生/平川 仁尚先生の指導医インタビュー。全国病院からメッセージ・求める研修医、プログラム・募集要項、ジュニア・シニア・指導医・院長のインタビューを掲載。進路選択の判断材料としてお役立てください!

名古屋大学医学部附属病院

名古屋市昭和区鶴舞町65番地

医師近影

名前  植村 和正

職歴経歴 1958年に愛知県豊橋市出身。1983年に山口大学を卒業後、聖隷病院で内科研修医となる。内科研修後、糖尿病専門診療、糖代謝の研究に従事し、その過程で総合内科の専門医を取得する。
1990年4月に名古屋大学医学部第三内科医員となり、6月に中津川市民病院内科副部長に就任する。
10月にボストン・ベス・イスラエル病院リサーチフェロー、1991年にノースウエスタン大学医学部リサーチフェローを経て、1993年に名古屋大学に帰任し、1994年に長寿科学振興財団リサーチレジデント、1995年に名古屋家庭裁判所裁判所技

医師近影

名前 平川 仁尚

職歴経歴 1971年に神奈川県横浜市出身。1998年に名古屋大学を卒業後、土岐市立病院で内科研修を行う。2001年に名古屋大学の老年内科に入局し、大学院に入学する。
2005年に大学院を修了する。
2008年にセンターに専属となる。

先生方のご専門や今のお仕事について、お聞かせください。

植村 糖代謝の研究から始まり、臨床と研究をするようになってからは高齢者医療や終末期医療などの臨床を研究してきました。高齢者医療などを通じて、平川副センター長とは12、3年の付き合いになりますね。
平川 もともとは研究者志向でした。しかし老年内科を始めてからは人と関わる全人医療に違和感がなくなりましたね。植村センター長には入学当時からご指導をいただいています。老年内科も研究対象のつもりでしたが、キャリア形成支援にキャリアチェンジしました。新しい分野として、キャリア形成支援を切り開きながら地域医療に貢献したいです。今は臨床からは少し離れていまして、比率で言えば、臨床が1から2、キャリア形成支援の業務が8から9といったところでしょうか。

大学病院と市中病院の初期研修の違いはどんなところにあるのでしょうか。

植村 大学病院は指導者層が豊富ですね。それから私どもの名大とほかの大学病院との違いとしては、大学病院は高度医療ばかり強調される面がありますが、名大はプライマリケアや救急から高度医療まで医療環境が幅広いことが挙げられます。「市中病院はコモンディジーズの患者さんが大半だが、大学病院はレアな症例ばかりで、一般的な症例が少ない」という意見もよく聞きますが、それは誤解です。レアな症例の比率は市中病院と比較すると相対的には高いのですが、難病や複雑な病気を持っている患者さんは肺炎、脳卒中、心筋梗塞などを起こしやすいんですね。名大の救急は一次から三次まで対応し、その大半はコモンディジーズの患者さんです。名大はプライマリケアを市中病院に預けていないので、救急外来には年平均で1万人以上の患者さん、2000台以上の救急車が来ています。入院患者さんの1割は救急外来経由なんですよ。従って、中堅の市中病院と比較しても、コモンディジーズの症例数は遜色ないですし、大学病院がコモンディジーズに対応できなければ、高度医療などできません。
平川 立場上、市中病院の話もしないといけませんね(笑)。市中病院では自立性が強く求められますね。上の先生方とのコミュニケーションがうまく、一人でがんがんやっていきたい学生は市中病院に向いていると思いますよ。目標を明確に定めていれば、市中病院でいい研修ができるのではないでしょうか。

名大のスーパーローテートである名大ネットワークには長い歴史がありますね。

植村 名大ネットは新医師臨床研修制度のモデルになりましたからね。スーパーローテートで大切なことは研修医の一元管理です。スーパーローテートでは長くても3カ月で各診療科を移るので、指導する側とされる側が濃厚な人間関係を成立させる前にしなければならないことが多く、研修医一人一人の状態を1カ所で把握しないと管理できません。研修医一人一人の個性、人となり、特徴を一元的に見守っています。
一方、昔は特定の医局に属していましたが、スーパーローテートでは帰属意識が持ちにくいと言われています。そのため一元管理の当センターが事務職も含めて頼れる存在になり、研修医としてのアイデンティティを持てる仕組みを作っています。研修医が困ったとき、所属が当センターであると思ってほしいですね。
初期研修は同期同士が信頼し合える密接な関係が作れる期間です。あるときは競争相手、あるときはお互いが支え合える存在なんですね。愛知県は救急車の搬入拒否が少ないのですが、その理由は救急を受け入れる病院の考え方が若い医師にも浸透しているからだと思います。診療科ではなく、病院へのロイヤリティが高いんですね。スーパーローテートはネガティブな面ばかりが強調されていますが、若い医師のニーズに合っている仕組みですし、うまく生かしていく方法を今後も考えていきます。

医師近影

名大ネットは関連施設が多いという特徴もありますね。

植村 関連施設が多いので、名大病院が何十人単位で研修医を引き受ける必要がありません。研修医が20人弱ですし、名大方式と呼ばれるスーパーローテートの歴史も長いです。指導医もスーパーローテートの経験がありますし、歴史があるだけに様々なノウハウもほかの大学よりも蓄積されています。
平川 名大病院でベーシックなことを身につけてから、関連病院で研修するのもいいですね。また、関連病院でいろいろな体験をしたあとで、名大病院に戻り、その体験を整理するのもいいのではないでしょうか。

出身大学は関係ありますか。

植村 全く関係ありません。少ない研修医をスーパーローテートさせ、名大ならではの濃厚な指導を行っています。現在の1年目の研修医で名大卒は14人中2人、2年目の研修医は14人中1人ですので、名大卒対他大学卒という構図にならないんですね。私もそうですが、教授、指導医の半数は他大学卒なんですよ(笑)。名古屋は排他的という印象を払拭させたいです。愛知県の医療を支えている医師の三分の二は他大学出身者です。名大病院に親和性を感じる学生は全国から来てほしいですね。大学ならではの教育環境が充実し、電子媒体も含めたジャーナルや教科書なども豊富に揃っています。

東海地区における名大病院の役割について、お聞かせください。

植村 名大ネットワークとしては東海地域への人材供給がミッションです。名大病院はほかの地域に比べて相対的にその役割が重く課せられています。関連施設が54病院と非常に多く、イーブンパートナーとしてのネットワークを築いています。地域全体の人材交流の活性化、地域全体の医療の平準化、活性化させたいというコンセプトを持っています。「名大がコアで、関連施設が衛星」ではなく、名大はハブの機能でありたいですね。一方、ほかの地域の都市型大学病院同様に、高度医療、新規医療を担っています。
平川 名古屋地域での広告塔的な役割を担っていますね。学生と病院のマッチングに関しては、私が学生を連れて、関連病院に出向くこともあります。学生は知識は十分にありますが、体験に飢えています。一方、病院は学生に見学に来てほしいと思っているので、レクチャーや懇親会などで意見を交換しています。この機会は研修医のコミュニケーション能力を高める教育にもなっており、去年は岐阜県高山市で成果が上がっています。

東海Career-Proはどういった機能を持っているのでしょうか。

平川 東海の7大学の専門医育成ノウハウと知名度を生かしながら、双方向で利用できるものです。入局していない人への情報提供、相談の受付など、悩んでいる人を助ける機能があります。研修医の皆さんには、東海地域から出ていくのではなく、むしろ東海地域に来ていただいて、そして安心して一生涯研鑽を積んで欲しいと思っています。長期的な視点では医局に代わる一生涯の教育を提供する仕組みはないと考えています。

名大ブランドとはどのようなものでしょうか。

平川 日本一の診療科があるのに、控えめなんですね(笑)。脳神経外科、世界トップレベルの血液内科、日本でトップクラスの総合診療科、ほかでは見かけない老年内科など、高い医療レベル、教育レベルを誇っています。大切なものを残そうとする気質があります。しかし、全国的に見ると、地域ブランドとしての名古屋や名古屋大学はまだ弱いと感じています。愛知県全体で研修医が増えていますが、県内の地域間で取り合いになってしまっているんですね。「名古屋」のイメージができあがっていないことが課題です。

医師近影

名大病院の初期研修プログラムの特徴をお話しいただけますか。

植村 名大ネットでは非入局スーパーローテートが特徴です。逆説的になりますが、ジェネラル、横断的な能力をコアにしています。必須として、総合診療科、老年内科、麻酔科、救急があり、研修医のニーズも高いですね。児童精神科があるので、精神科希望者も多いです。精神科の教授が最初の2年間は内科中心のジェネラルを勉強するようにも指導しています。スター教授が多いので、是非、見学に来ていただきたいです。
平川 現在の臨床研修制度の理念である「医師としての人格を涵養」ということを専任で指導しているスタッフもいます。医師の給与がなぜ高いのか、医師がなぜ尊敬されるのかといったプロフェッショナル意識の教育にも力を入れています。また、後期研修へのシームレス化も特徴です。キャリアパスを意識し、東海Career-Proを通じて、全面的なバックアップを行っています。指導者が多いので、家庭教師のような指導を受けることができます。手取り、足取りのステップバイステップで、研修医の進路に合わせ、無理なく、効率よい研修ができるように皆で考えています。研修医が落ち込んでいるときも周囲の目が行き届いていますよ。見学だけの研修ではなく、実際に自分で考えて行動する研修です。チームの中で「主治医感」を持ち、プレゼンして、方針を立てます。カンファレンスでは皆がカルテを見て、チェックをします。論理的に正しく、経験的におかしくなければ、研修医の意見もしっかり通しています。「主治医をやったぞ」という体験が成長させるのだと信じています。

選考基準について、お聞かせください。

植村 チームワークを尊重し、誠実で思いやりのある人、明るい人がいいですね。採用選考は毎回、緊張しますよ(笑)。切磋琢磨できる環境で、同僚への思いやり、共感を持ちあえば、疲れ方も違いますし、それがそのまま患者さんへの対応になるんですね。幸い、今までは全国から良い研修医が来てくれています。

指導される立場として心がけておられることを教えてください

植村 まずは安全な研修ということですね。患者さんを守ることが研修医を守ることになります。研修医に一定の役割を与えていますが、セーフティファーストです。インシデントレポートを指導医が毎週チェックしています。次にセンターで一元管理していますが、心身の健康です。4週に1回、指導医が評価を記入し、ネガティブな内容があれば、私に報告があります。そこで面談し、メンタルケアを行っています。研修医が普通に成長し、自分で道を切り開いていける環境づくりを行っています。
平川 学生や研修医が持つ時代背景を含めて、何を考えているのか、どういう立場なのかを収集して、思いやりを持って、自分から飛び込んでいくようにしています。それから、すぐに答えを言うのではなく、自分で考えるようにヒントを与えることを心がけています。

研修医に「これだけは言いたい」ことはどんなことですか。

植村 長い医師人生を送るうえで、患者さんの安全管理とそのノウハウを身に付けることが大事ですね。そして心身の健康管理です。早めに相談してください。研修医には潜在的能力があるので、うまく遠巻きに見守っています。直接の指導は各診療科の医師に任せています。
平川 一生を見据えて考えてほしいですね。将来、過去を振り返ったときに、「なぜ、そのときに、その道を選んだのか」ということを後悔しないように、自分で決めてほしいと願っています。自分で考え、自分でやろうと思ったら、本当に自信を持って行動できるものです。また、先入観を持たずに、面白い体験を一杯して、そして考えてください。色々な先生に会って、話を聞いたり、医療過疎地域に行ったり、様々な病院に見学に行っていただきたいです。最後に、いつでも、どんなことでも相談に来てほしいですね。名古屋での生活のこと、飲み会や婚活のことでも何でも結構ですよ(笑)。

初期研修の臨床病院を選ぶ医学生へのメッセージをお願いします。

植村 広く全国から募集しています。是非ご自分の目で名古屋と名大病院を見て、その良さを肌で感じてください。
平川 迷ったら、行動しましょう。