インタビュー

2021-05-01

沼津市立病院 姉﨑 利治 医師 | 指導医インタビュー(初期)

沼津市立病院 姉﨑 利治 先生の指導医インタビュー。全国病院からメッセージ・求める研修医、プログラム・募集要項、ジュニア・シニア・指導医・院長のインタビューを掲載。進路選択の判断材料としてお役立てください!

沼津市立病院

静岡県沼津市東椎路字春ノ木550

医師近影

名前 姉﨑 利治
沼津市立病院診療部長 神経内科部長 臨床研修センター長 指導医

職歴経歴 1961年に静岡県三島市で生まれる。1986年に新潟大学を卒業後、新潟大学神経内科に入局し、新潟大学医学部附属病院(現 新潟大学医歯学総合病院)で内科研修医となる。1987年に秋田赤十字病院で内科研修医となる。1988年に新潟大学医学部附属病院神経内科医員となる。1990年に新潟大学大学院医学研究科に入学する。1994年に新潟大学大学院医学研究科を修了する。1994年に佐渡厚生連佐渡総合病院神経内科に勤務する。1996年に新潟大学医学部附属病院神経内科医員を経て、1998年に新潟大学医学部神経内科助手に就任する。1999年に聖隷沼津第2クリニック在宅事業部診療科に勤務する。2003年に沼津市立病院に神経内科医長として着任する。2007年に沼津市立病院神経内科部長に就任する。2019年に臨床研修センター長を兼任する。2020年に診療部長を兼任する。 日本内科学会認定内科医、日本神経学会認定神経内科専門医・指導医、臨床研修指導医など。

沼津市立病院の特徴をお聞かせください。

病院の特徴の前に、静岡県の医療事情からお話しさせていただきます。静岡県は人口約360万人を有していますが、医学部のある大学が浜松医科大学1校しかありません。人口規模からすると同程度の400万人が住む四国には4つの医学部、400万人弱の北陸3県にも4つの医学部があります。したがって、静岡県全部を浜松医科大学1校がカバーするのはどう計算しても困難です。特に静岡県の富士市から東側の地域は浜松医科大学だけに頼ることができず、様々な大学から専門医が集まり、その専門医が研修医を指導するといった多国籍軍のような状況になっています。そして、静岡県東部には約130万人の人口がいますが、救命救急センターを持っているのは順天堂大学医学部附属静岡病院と当院だけなのです。そうしますと、患者さんを診て、一次救急や二次救急、三次救急だと決めるのは患者さんでも医師でもなく、救急車で現場に駆けつけた救急救命士の方たちです。交通事故による高エネルギー外傷など、救急隊の方たちが「この患者さんは重症だから、三次だ」と判断すれば、救命救急センターにホットラインで電話をかけてきます。そうなれば、救命救急センターの医師は決して断ってはいけません。その結果、当院に搬送されるのは二次、三次の患者さんが多くなりますので、初期研修医にとってはそういう二次、三次の患者さんを診ることができるのは一つのメリットです。逆に言うと、「私は開業希望なので、一次の風邪を診たい」という方には向かない病院かもしれません。そうした静岡県東部の救急医療を担う二つの病院のうちの一つであることが当院の特徴として、まず挙げられます。

ほかにはどのような特徴がありますか。

院の病床数は378床で、中規模な病院なのですが、色々な大学から専門医が集まっていることも特徴と言えるでしょう。血液内科や腎臓内科以外の診療科はほぼ全て揃っています。またCTやMRIなどの診断機器もほかの病院と遜色ないものを完備しています。

姉﨑先生がいらっしゃる神経内科についてはいかがですか。

ほかの診療科同様、神経内科も医師が足りず、私は21年間ずっと一人医長を務めています。静岡県東部は神経内科の専門医が少なく、私の外来には約190人の特定疾患、神経難病の患者さんがいらしているという状況です。特定疾患や神経難病の患者さんが多いというのが特徴ですね。

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沼津市立病院の初期研修の特徴もお願いします。

三次救急を研修できること、プログラム上では10カ月の選択期間があることが特徴です。選択期間はスーパーローテートにこだわらず、自分の希望する診療科を選べます。また、当院は中規模な病院で、指導医も潤沢とは言えないため、感染症科、血液・幹細胞内科、血液・幹細胞移植科であれば静岡県立静岡がんセンターで研修できますし、希望すれば北里大学病院や聖マリアンナ医科大学病院、横浜市立大学附属市民総合医療センターなどの大学病院でも研修できます。自前の診療科の少なさを補うために、いくつもの協力型病院があります。これらは全て初期研修医の希望を汲んでいった結果、増えていったのです。

初期研修医の人数はどのくらいですか。

2021年度の1年目の初期研修医は4人です。ただし、当院の特徴として、たすきがけの大学が複数あり、浜松医科大学から1人、千葉大学から1人、山梨大学から2人の初期研修医が1年目を当院で研修しますので、1年目は計8人となります。2年目は基幹型のみの7人です。中規模の病院ですので、キャパシティは10人未満ですし、このアットホームな雰囲気を大切にしたいと考えています。

指導される立場として心がけていらっしゃることを教えてください。

当院は市立病院という公的な病院ですので、市民の皆さんからは公務員だという目線でも当然見られているのだということを初期研修医には伝えています。まずは一般の社会人として、それから公務員として、しっかり仕事をしてほしいです。朝は遅刻せず、8時30分に来るのだということですね(笑)。特に4月は学生気分でいる人が大半ですので、そのあたりから指導しています。それから挨拶ができることです。医師である前に、社会人としてのしっかりした行動ができることを基本にしています。

最近の研修医をご覧になって、どう思われますか。

今の臨床研修制度や専門医制度に関連することですが、新専門医制度が始まり、3年目からの後期研修が大きく変わりました。そのため、初期研修の2年目の半ばには進路を決めなくてはいけません。色々なことがこれまでより半年ほど早まったことにより、初期研修2年目の後半が専攻医研修の準備期間みたいな形になりました。当初の理念は2年間を丸ごと使ってコモンディジーズを学ぶことにあったはずなので、このように早まってしまうのは少しかわいそうです。これは制度的な問題ですね。次に研修医に言えることですが、今の研修医は肌身離さず携帯電話を持っているので、ガイドラインをその場で調べられます。しかし、できれば生身の人間である患者さんをしっかり診て、患者さんのお話をしっかり聞いて診察してほしいです。ときどき後ろを振り返ると、スマホをいじっている研修医がいるのが気になります(笑)。

「こんな研修医がいた」というエピソードがあれば、お聞かせください。

病気や精神的な問題などで初期研修を続けられなくなった人のことは気にかかっています。逆に、途中で一旦お休みした人に「休むなら、しっかり休んだ方がいい」と勧め、4年をかけて初期研修を終えた人も印象に残っていますね。当院では妊娠や出産、病気になったなど、休むときは休んだうえで初期研修を終了していただくことを目指しています。他院での初期研修を途中で止めた人の受け入れも行っています。当院で継続できた人もいれば、途中で継続が困難になった人もいますが、保険医資格がなければ、その先に進めませんので、何とか初期研修を全うしてほしいという思いです。その点、当院は面倒見の良い病院で、初期研修医の家まで具合を見にいった指導医もいます。

研修医に「これだけは言いたい」ということがあれば、お聞かせください。

社会人としての立ち居振る舞いをしっかりすることに加え、チーム医療でリーダーシップを取れる医師になっていただくように指導しています。また、将来の診療科が決まっている人の中には選択期間がその方面の科ばかりになってしまう人もいますが、初期研修のときこそ、初期研修でしか診られない科を診るなど、できるだけ幅広く色々な科を診てほしいと思っています。

先生の研修医時代はどのようにお過ごしでしたか。

私は神経内科医なので内科系の研修ということになりますが、私の母校の新潟大学ではスーパーローテートではないものの、最初の2年間は神経内科だけでなく、循環器などの内科全般をローテートして、3年目に専門の科に行くシステムになっていました。1年目は大学病院にある4つの内科のうちの2つを半年ずつ回り、2年目に外部の研修病院に行き、内科全般をローテートします。2年目の病院をどこにするかは内科全体の研修医で決めるのですが、私は秋田赤十字病院になりました。秋田赤十字病院には内科の研修医が2人だけでしたので、とても忙しかった記憶があります。それに、秋田は新潟よりも一段と寒かったです。新潟には消雪パイプといって、道路の真ん中から水を出し、雪を溶かすようになっているのですが、秋田には全く消雪パイプがありません。不思議に思って、周囲の人に尋ねたところ、「秋田は寒いから、その水が凍ってしまう」と聞き、新潟よりさらに寒いのだということに気づきました(笑)。

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先生はなぜ神経内科を選ばれたのですか。

新潟大学には新潟大学脳研究所という研究所があり、神経内科医と脳神経外科医は附属病院ではなく、脳研究所に所属していました。そのため、大学時代から脳や神経病理学、神経薬理学といった脳に関する講義も比較的多く、私も脳や脳神経に興味を持っていたんです。そこで脳研で研究してみたいという思いから、神経内科を選びました。

神経内科医としての遣り甲斐はどういったところにありますか。

社会の高齢化が進み、認知症の患者さんも増えています。そして、脳血管障害、脳梗塞、脳出血、認知症、パーキンソン病などの疾患も増えていますので、ニーズが大きいです。しかし、とにかく専門医が少ないので、きめ細かく診てさしあげたいのに、なかなか難しい状況にあります。今後、ますます必要な診療科ですが、人気がないのか、人が増えないのが悩みです(笑)。

現在の臨床研修制度についてのご意見をお願いします。

新専門医制度が始まったことで、一段階変わった印象があります。初期研修2年目の6月から8月にかけて、進路に関する大学の説明会などがあり、これまでよりも進度が早まってきました。もう一つは外来研修です。1カ月の総合内科の外来研修が新型コロナウイルスの影響を受けた形になってしまいました。発熱の患者さんは病院の中にすぐに入れず、外のプレハブの発熱外来でPCR検査を受けてから病院内に入ります。そのため、発熱、咽頭痛、咳といったコモンディジーズの患者さんがいわゆるコロナ対応となり、外来研修が十分にできなかったことを本当に申し訳なく思っています。

新専門医制度についてはいかがですか。

新専門医制度のもとでは専攻医研修でも内科系の診療科を満遍なく回らないといけないことになりました。症例の登録制度もあるので、同じ症例を2人の専攻医で分け合うこともできず、指導医と相談しながら進めていかないといけません。当院は専攻医が少ないので、症例の奪い合いや重なり合いが今のところはないのですが、大勢の専攻医を抱えている病院はそういうことを考える必要がありそうです。

これから初期臨床研修病院を選ぶ医学生に向けて、メッセージをお願いします。

学生のときには分かりにくいものとして関連病院などの問題があります。当院も多国籍軍で、診療科によって千葉大学、浜松医科大学、山梨大学など、色々な大学の先生方にお世話になっています。しかし、病院のホームページにはそのような情報は一切、書いてありません(笑)。やはり病院のホームページの情報は限られていますので、実際に病院見学をしてみましょう。新型コロナウイルスで見学がままならない状況ではありますが、ホームページを見るだけでは分からない診療科ごとの事情などを見学の際に聞いてみてください。当院は2020年の秋はPCR検査で陰性の方に絞ったり、この春休みは地元の人に限定し、見学の1週間前には帰省し、体温などの症状を記載して無症状の方の見学を受け付けたりという規制がありましたが、今後の見学に関しては状況次第ですので、お気軽にお問い合わせください。