岸和田徳洲会病院
大阪府岸和田市加守町4-27-1
名前
井上 太郎
岸和田徳洲会病院副院長、内視鏡センター長、指導医
職歴経歴 1974年に福岡県福岡市に生まれる。2004年に川崎医科大学を卒業後、福岡徳洲会病院で初期研修を行い、そのうちの1年間を名瀬徳洲会病院で研修する。2006年に福岡徳洲会病院救急総合診療部で後期研修を行う。2009年に岸和田徳洲会病院消化器内科に勤務する。2020年3月に岸和田徳洲会病院副院長に就任する。
日本消化器内視鏡学会専門医、日本消化管学会専門医・指導医、日本救急医学会専門医、日本ヘリコバクター学会H.pylory(ピロリ菌)感染症認定医、臨床研修指導医、日本病院総合診療医学会認定医、ICD制度協議会インフェクションコントロールドクターなど。
岸和田徳洲会病院の特徴をお聞かせください。
地域の救急医療を支える病院として、外科や心臓血管外科の手術、循環器科での心臓カテーテル、消化器内科での内視鏡など、何でも診ています。「地域の救急病院」というのが昔からのイメージですね。実際、救急車の搬入台数は非常に多く、もう何年もの間、大阪府の病院の中で最多となっています。
井上先生がいらっしゃる消化器内科についてはいかがですか。
先々代の院長でいらした廣岡大司先生、今の院長でいらっしゃる尾野亘先生が消化器内科を専門にされていたことから、有名な診療科となっており、症例数も多いです。しかし、私が入職したのは時代の流れとともに、医師不足になった頃でした(笑)。そこから立て直しを図り、10年を過ぎたところです。過去の症例数が多かった時代よりも今の方がはるかに多く、医師数も検査数も増えています。近隣の病院や開業医さんからの信頼も厚く、連携も取れるようになってきました。良い形での診療を行えています。
岸和田徳洲会病院の専門研修プログラムで学べる特徴について、ご紹介くださいますか。
徳洲会グループの横の繋がりを最大限に活かし、各病院が連携して教育していることが特徴です。近くの和泉市立総合医療センターのほか、大阪府内にも徳洲会グループの病院は多くありますし、全国には70病院以上ありますので、それぞれが得意とする分野や疾患を学ぶことができます。例えば、岸和田徳洲会病院では消化器や内視鏡が得意ですが、和泉市立総合医療センターでは呼吸器内科が有名ですし、血液内科にも強みがありますので、そちらで研修することも可能です。それから離島研修ですね。離島では総合診療的なこともしっかり経験できます。離島で診療のみならず、離島ならではの文化や都会とは違う医療を学べるのも良いことだと考えています。
岸和田徳洲会病院での専門研修プログラム終了後はどのようなキャリアアップが望めますか。
一般内科のプログラムに則って、3年間の研修をしますので、消化器内科を専攻したいとなれば、専攻医研修ではできなかったような専門的な内視鏡治療などに進めます。消化器内科といっても、消化管もあれば、肝臓、胆嚢、膵臓といった臓器もあり、分野が非常に広いですので、そうした細かい専門分野に進んでいくことも可能です。大学に技術を学びに行くことも、もちろん離島医療に携わることもできます。私もまだ離島で診療しています。皆で協力し合って、離島医療に携わっており、私は毎月、奄美大島と沖縄に出かけているほか、徳之島や宮古島にも行っています。
カンファレンスについて、お聞かせください。
新型コロナウイルスの感染が拡大してからはZoomを使って開催しています。徳洲会グループ内のほかの病院との合同カンファレンスも行っています。
専攻医も発言の機会は多いですか。
専攻医からの質問が多く、とても良い雰囲気です。これまでは誰かが離島などに行っており、なかなか皆が揃って参加することができなかったのですが、Zoomだとどこにいても参加できますので、その意味ではいい時代になりましたね。
女性医師の働きやすさに関してはいかがでしょうか。
消化器内科には女性医師が5人います。育児短時間勤務制度を利用している女性医師もいますし、働きやすい環境になっていますよ。消化器内科では女性医師の役割が大きいです。というのも、大腸カメラ検査はお尻からカメラを入れたりしますので、女性の患者さんによっては男性医師に抵抗がある方もいらっしゃるからです。そこで患者さんが検査を止めようとなると良くないですので、女性医師がいるということをホームページにも記載し、患者さんに安心して検査を受けられるような体制を作っています。
先生が初期研修で福岡徳洲会病院を選んだのはどうしてですか。
私はこの臨床研修制度が始まったときの1期生なんです。当時は今のように病院見学に行くということもなかったですし、どんな制度になるのかよく分からないままスタートした感じで、私も真面目に考えていませんでした(笑)。福岡徳洲会病院は私の実家の近くにある病院で、ふらっと覗きに行ってみたところ、奄美大島での研修プログラムがあると聞きました。2年間の初期研修のうち、1年間を離島で過ごせるというところになぜか飛びついたんですね。私は大学時代、サーフィンをしていたので、医師の研修ができて、サーフィンもできるなんて、こんなに楽しい研修があるのかと思いましたね。実際に研修が始まってみると、とても楽しかったのですが、それ以上に離島医療の現実を知ったことで、その後の人生が180度変わりました。今もそうした離島医療を皆で助け合いながら行えるよう、仲間を増やしているところです。
研修医時代の思い出をお聞かせください。
医師免許を取ったばかりで右も左も分からず、オリエンテーションもままならないうちに離島に行ったんです。都会の病院にいれば、一つ上の初期研修医や後期研修医、指導医の先生方もいますが、離島にはそうした先輩医師はおられません。内科部長の先生はいらっしゃるのですが、手取り足取り教えていただく時間はありませんでした。私はまず患者さんがどのように入院して治療を受けるのか、どんなふうに食事をしたり、入浴したり、排泄するのかを知るために、普通は医師が立ち入らないような基本的なことや、看護師さんや看護助手さんが行うような仕事を学びました。特殊な研修でしたし、「そこからか」と思いましたが、患者さんに寄り添った立場から医療を考えることができ、いい思い出になっています。
後期研修も福岡徳洲会病院でなさったのですね。
後期研修は救急科にいて、次々に来る救急車の対応をしていました。救急医療に没頭していた時代ですね。そして救急をしながら、色々な診療科をローテートし、内視鏡やカテーテルといった手技を勉強していました。
消化器を専門にしようと決めたのはいつですか。
後期研修の終わり頃です。私はもともと整形外科を志望していて、後期研修で救急科にいたのも外傷を診て、整形外科的な処置をできるようになりたかったからなんです。しかし、離島医療を含めて色々と経験するうちに、内視鏡の技術を身につけ、それを離島に運びたいと思うようになりました。
岸和田徳洲会病院にいらしたきっかけもお聞かせください。
後期研修のときに、岸和田徳洲会病院の尾野院長と離島でお会いしたことがきっかけです。離島で内視鏡を教えていただいたのですが、「もっと内視鏡技術を高めたいか」と聞かれたので、「教えてください」とお願いして、岸和田徳洲会病院に勤務することになりました。
専攻医に指導する際、心がけていらっしゃることはどんなことでしょうか。
内視鏡技術をはじめ、色々なことを指導していますが、患者さん第一に考えるということは非常に大切なことです。手技的なことをしていると、どうしてもモニターなどの画面だけに集中してしまいがちで、もちろんそれも必要なことですが、もう少し患者さんや周囲を見て、かつ内視鏡にも集中してほしいです。周りを見渡せるような余裕が大切ですね。難しいことですが、そうしたことを意識するようにと伝えています。
専攻医に対し、「これだけは言いたい」ということはどんなことでしょうか。
私もそうなのですが、忘れられない患者さんがいます。治療がうまくいったことも、そうでないこともありますが、それは何が良かったのか、悪かったのか、心に残る患者さんは自分のためにも、今後の患者さんのためにもなりますので、一つ一つの症例に集中し、それを大事にするようにと言いたいです。都会にいると、「次は◯先生にお願いします」や「次は◯科にお願いします」と雑な感じになりがちですが、離島ではそういうわけにはいきません。病気を診るよりも人を診る医師になってほしいと願っています。
現在の専門医制度について、感想をお聞かせください。
以前の制度ですと、卒後3年目で消化器内科など、専攻する分野が急に狭められていました。私たち世代は医師のキャリアをとても狭いところからスタートせざるをえなかったんです。しかし、今の制度にはある程度の診療科を回ったり、ほかの施設に行ったりという色々な決まりがありますので、医師が視野を広く持て、多様なキャリアを積める利点があります。私自身が救急科から消化器内科に移ったということもありますが、どんな医師になりたいのかというしっかりした考えを持ったうえで、このプログラムに臨めば、とても良いキャリアを積めるのではないでしょうか。
これから専攻医研修の病院を選ぶ初期研修医にメッセージをお願いします。
私が若かった頃は倒れるまで働けという時代でした。「寝ている暇があったら仕事しろ」とよく言われましたが、今はそういう時代でないことは認識しています。それでも、研修終了後にその時代と同じ能力を身につけておかないといけないわけですから、賢く研修する必要があります。以前はスマートフォンすらなかったのですが、今は簡単に調べられ、症例を共有することも容易ですし、離れていてもZoomなどのツールもあります。色々なデバイスが進化していますし、これからも進化は留まらないでしょうから、そういう進化に乗り遅れないよう、効率よく研修してほしいと思っています。