初期研修インタビュー

2021-07-01

くまもと県北病院(熊本県) 初期研修医 麻生信太郎先生・江藤大史先生 (2021年)

くまもと県北病院(熊本県)の初期研修医、麻生信太郎先生・江藤大史先生に、病院の特徴や研修プログラムについてなど、様々なエピソードをお伺いしました。この内容は2021年に収録したものです。

くまもと県北病院

熊本県玉名市玉名550番地

医師近影

名前 麻生 信太郎(しんたろう) 医師
出身地・出身大学 / 医師免許取得年度 福岡県福岡市・ 香川大学 / 2020年

医師近影

名前 江藤 大史(たいし) 医師
出身地・出身大学 / 医師免許取得年度 熊本県熊本市・ 産業医科大学 / 2021年

医師を目指したきっかけをお聞かせください。

麻生
 工学部を卒業し、通信系の企業に勤務していたのですが、この先、管理職への道が見えてくるにつれ、マネージャーとして仕事をしていくよりもプレーイングマネージャーとしての仕事をする方が私に向いていると思い、父が医師ということもあって、医学部を再受験しました。

江藤
 高校生の頃にテレビドラマの「チーム・バチスタシリーズ」を見て、精神科医に憧れたことがきっかけです。医師になりたいというより、精神科医になりたいと思いました。

学生生活ではどんなことが思い出に残っていますか。

麻生
 陸上部にも入っていましたが、やはり国家試験の合格を目指して勉強した最後の1年が印象的ですね。国家試験後に友だちと居酒屋に行き、自己採点をしたことが思い出に残っています。

江藤 私はハンドボール部に入っていました。高校時代もハンドボールをしていて、インターハイにも出場したんです。その後、国体にも出場できることになったのですが、私は受験のために、国体の前に引退しました。それが心残りになっていたので、大学でもハンドボールに打ち込みました。

医師近影

大学卒業後、研修先をくまもと県北病院に決めた理由をお聞かせください。

麻生
 出身が福岡県なので、福岡県や熊本県の病院をいくつか見学しました。くまもと県北病院に決めたのは自由度の高い研修をしているからです。

江藤
 私は都会があまり好きではないので、都会から少し離れた当院の雰囲気に惹かれました(笑)。2021年3月に新築移転したばかりなので、とても綺麗な病院です。

くまもと県北病院に最初に見学に来られたときの印象はいかがでしたか。

麻生
 初期研修医が責任を持って退院調整をしているところを見て、こちらで研修したいと思いました。

江藤
 コメディカルのスタッフの方々が大学生の私にも感じよく挨拶をしてくださるので、とてもいい印象を受けました。

医師近影

くまもと県北病院での初期研修はイメージ通りですか。

麻生
 3年目以降に一人で当直をこなせるようになることと、入院患者の検査や治療方針を考え、オーダーまでできるようになることが目標でした。そういう意味ではおおよそイメージ通りです。

江藤 イメージしていた研修よりも丁寧に教えていただけています。コメディカルの方々にも質問しやすく、働きやすい環境です。

プログラムの特徴はどんな点でしょうか。

麻生
 自由度が高い点です。1年目は決まった診療科を回ることがほとんどですが、2年目は52週のうちの40週間が選択研修となっています。

江藤
 基本的に一人で回ることが多いため、診療科内でも多くの先生の指導を受けることができます。

プログラムの自由度が高いのですね。

麻生
 高いですね。自分が回りたい科を回ることができます。

江藤 ほかの病院と比べると、自由度は高いと思います。院内の回りたい診療科だけでなく、院外の病院にも行くことができ、3年目以降の後期研修に向けて準備することができます。

医師近影

院外での研修はありますか。

麻生
 熊本赤十字病院では救急や産婦人科、熊本医療センターでは脳神経外科を研修できます。精神科は荒尾こころの郷病院などで学べます。

江藤
 臨床研修教育施設には離島の病院もあります。上天草総合病院のほか、御所浦診療所や奄美大島の瀬戸内徳洲会病院などが選べます。

どのような姿勢で初期研修に取り組んでいらっしゃいますか。

麻生
 高齢者が多く、すでにADLが落ちている方も多いので、急性期の病院としてどこまで侵襲的な治療を行うべきか、退院後は自宅や施設どこが受け入れるのがベストかなどを見極めることを意識して取り組んでいます。志望科を泌尿器科に絞る前まではそれぞれの科で自分が将来的にずっと働くことができるかという視点も持ちつつ回っていました。

江藤
 4月に入職したこともあり、分からないことは多いのですが、しっかりと勉強したうえで、「やらせていただけることは何でもやります」という姿勢で取り組んでいます。また、教えていただいたことを丸暗記するのではなく、もう一度、本などで理屈を確認し、それでも分からない場合は指導いただいている先生に質問するようにしています。

指導医の先生のご指導はいかがでしょうか。

麻生
 毎年、初期研修医が来る病院ですので、指導にとても慣れていらっしゃいます。熱心にご指導いただいています。

江藤 とても丁寧に教えていただけています。私の考察したことを一緒に再考していただくこともあり、時間があるときには各疾患の機序なども説明していただけます。手技もまず見せていただいて、次に説明しながら練習を指導していただき、実際に患者さんに行うというような手順で教えていただくので、行ううえでの不安も徐々に解消していくことができます。また同じ診療科の先生にも指導していただけることが多いのは研修医が少ないからこその利点ではないかと思います。

医師近影

くまもと県北病院での初期研修で勉強になっていることはどんなことでしょう。

麻生
 やはり救急での当直です。搬送でもウォークインでも自分でファーストタッチから検査、輸液、入院オーダーなど、一連を行います。もちろん指導医の先生に最終判断を確認しますが、帰宅させるか、入院させるかの判断や他科へのコンサルト、三次病院への搬送依頼もするので、どのような情報を得る必要があって、それを簡潔に伝えるかまで考える力がついているように思います。

江藤
 大学病院に比べ、コモンディジーズが多く、それらの疾患の初期対応はとても勉強になります。また当院は地域の中核病院であり、病気が治ったあとの退院先をどうするかという問題は今後の医療の問題であると思いますので、現時点でそのような現場を見ることができて良かったです。

何か失敗談はありますか。

麻生
 脳出血患者さんの他院への搬送で救急車に同乗したのですが、それまで落ち着いていた血圧が急上昇したため、降圧剤を投与しようとしたところ、輸液ポンプの設定の仕方が分からず、焦ったことがあります。普段は看護師さんにやってもらっていたため、いざ自分でやろうとすると分からないことがあることを実感しました。以来、看護師さんに頼むことも時間が許せば極力自分でやるようにしています。

江藤
 看護師さんにお願いしたいことがあり、呼び止めたのですが、ちょうど準夜勤帯から夜勤帯に切り替わるところだったので、タイミングが悪いと言われたことがあります(笑)。

当直の体制について、お聞かせください。

麻生
 救急を回っているときであれば週に1日、それ以外の期間は自由に入れます。私は回っている科の指導医の先生が当直されるときに一緒に入るようにしているので、月に3回ぐらいです。17時から23時までの準夜勤帯は内科、外科の指導医の先生が1人、23時から朝9時までの夜勤帯は指導医の先生が内科、外科に1人ずついらっしゃいます。

医師近影

江藤先生は当直ではどんなことが勉強になっていますか。

江藤 初期対応を任せていただけることも多く、ABCDEの確認や身体診察など、しっかりした基本を身につけることができます。また入院で診るべきか、帰宅できそうかの判断は必ず指導医の先生に相談できるので、3年目以降に一人で全科当直したときに生きてくると思っています。

カンファレンスの雰囲気はいかがですか。

麻生
 総合診療科では科全体のカンファレンスとチームごとのカンファレンスがあり、いずれにしても自分が診ている患者さんについての相談ができ、アドバイスがもらえます。自分が行ったことの根拠も求められたりするので、常に考えながら病棟業務を行うようになります。どの先生でも相談はしやすいですが、雰囲気は先生によりまちまちです。

江藤
 2021年に腫瘍内科という診療科ができたのですが、腫瘍内科では主に肺がんを扱っているので、呼吸器内科と腫瘍内科が合同でカンファレンスをすると、肺がんの患者さんへの投薬やこの段階ではどういった治療をするといったことがより専門的になって、分かりやすくなりました。

コメディカルの方たちとのコミュニケーションはいかがですか。

麻生
 総合診療科の看護師などは基本的に研修医が主治医になることに慣れているので、色々と時間がかかったとしても、まずは指導医ではなく、研修医に聞いてくれます。相談も気軽にできますし、コミュニケーションは良好だと思います。

江藤 入職したばかりですので、手技などがうまくいかないことも多いのですが、そんなときに「少し教えてください」と言うと、快く教えてくださいますし、看護師さんでもできる手技だと「やってみませんか」と声をかけていただいています。有り難いなと思っています。

医師近影

研修医同士のコミュニケーションは活発ですか。

麻生
 医局とは別に研修医だけの部屋があり、リラックスできます。基本的には同じ科を同時期に複数人が回ることがないので、以前に回った科の情報を教えてもらったり、少人数ということもあって、いい関係を築けています。

江藤
 同期の人数が多くないので、皆の顔も分かりますし、研修医室では色々な話ができています。仲はとてもいいです。

寮もありますか。

麻生
 ありません。家賃補助が月に6万円まで出ますので、玉名市内であれば、ほぼ自己負担なく、好きな物件に住めます。

江藤
 私は5000円ほど自己負担していますが、3LDKの物件に一人で住んでいます(笑)。

医師近影

今後のご予定をお聞かせください。

麻生
 泌尿器科に進む予定です。学生時代の臨床実習の頃から手術のバリエーションが多くて、面白そうだと思っていました。専攻医研修では福岡に戻り、できれば大学病院に行けたらと考えています。

江藤 私は産業医科大学出身なので、既に入局先が決まっていて、リハビリテーション科に所属しています。専攻医研修は産業医科大学病院で行う予定です。産業医ということもあり、どちらかと言うと治療よりも社会復帰支援や労働支援をしたいということもあり、産業医大の強みを活かそうと、リハビリテーション科を選びました。

ご趣味など、プライベートの過ごし方について教えてください。

麻生
 コロナ禍で旅行などには行けないので、自宅で読書や筋トレなどをすることが多いです。たまに阿蘇山などに行き、トレイルランをしています。

江藤
 研修医になってゴルフとテニスを始め、熱中しています(笑)。玉名にはいいゴルフ場が多く、車で10分ぐらいで行けますし、テニスコートも30分ほどのところにあります。また、以前から週に1本は映画を観ようと思っていたので、今も継続しています。映画館には行きにくい情勢ですので、アマゾンプライムで楽しんでいます。

医師近影

現在の臨床研修制度に関して、ご意見をお願いします。

麻生
 私たちの学年から必修科目が増え、興味のある科を選ぶ余地が少なくなったという点ではどうなのかなという気持ちがあります。ただ、先輩方を見ていると、精神科にしろ、産婦人科にしろ、この先に関わることがない科ではないので、強制的にでも回ることに意味があるというのは頭では分かっているのですが、正直なところは自由度が狭くなったのは何だかなと思っています。

江藤 1カ月という期間なので、この科に慣れてきたかなというところで次の科に変わらないといけません。割り切っていますし、仕方がないところもありつつ、もう少し長い期間をかけて回りたいという思いもあります。

最後に、これから初期臨床研修病院を選ぶ医学生に向けて、メッセージをお願いします。

麻生
 臨床研修病院を選ぶ基準は人それぞれですが、基準を持たずに何となく見学に行くと、どの病院も良く見えてしまい、決めきれないことがあります(笑)。初期研修で何を重要視するのかを早めに決めたうえで見学するようにしましょう。

江藤
 病院見学も大事ですが、医学生の目標はまずは国家試験なので、「勉強を頑張ってください」と言いたいです。見学では緊張しますが、「ここだけは見る」というポイントを2つぐらいに絞って、そこだけは見ましょう。そして1つ上の研修医に質問をして、「こういうことかな」と分かったら、10年、20年上の先生方にも質問してみると、また違う景色が見えてくると思います。

医師近影

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