武蔵野赤十字病院
東京都武蔵野市境南町1-26-1
名前 杉山 徹
武蔵野赤十字病院内分泌代謝科部長 臨床研修部長 内科専攻医研修プログラム統括責任者 指導医
職歴経歴 1998年に東京医科歯科大学を卒業後、東京医科歯科大学医学部附属病院第二内科で研修医となる。1999年に武蔵野赤十字病院内科で研修医となる。2000年に東京都立府中病院(現 東京都立多摩総合医療センター)内科(内分泌・代謝内科)医員となり、2001年に東京医科歯科大学大学院分子内分泌内科学社会人大学院生となる。2002年に東京医科歯科大学大学院分子内分泌内科学大学院生となる。2005年に東京医科歯科大学大学院博士課程を修了する。2005年に東京医科歯科大学医学部附属病院内分泌・代謝内科医員となる。2006年にハーバード大学ブリガムアンドウィメンズ病院心臓血管部門に博士研究員として留学する。2009年に東京医科歯科大学医学部附属病院内分泌・代謝内科に医員として勤務する。2010年に東京医科歯科大学医学部附属病院臨床教育研修センター特任講師に就任する。2013年に武蔵野赤十字病院内分泌代謝科に部長として着任する。2014年に東京医科歯科大学医学部臨床教授を併任する。
日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本内分泌学会内分泌代謝科専門医・指導医・評議員、日本糖尿病学会専門医・研修指導医・学術評議員、日本高血圧学会専門医・指導医・評議員、日本心血管内分泌代謝学会評議員、がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了、日本赤十字社看護師特定行為研修指導者講習会修了、東京医科歯科大学医学部臨床教授・非常勤講師、日本内科学会関東地方会常任幹事など。
武蔵野赤十字病院の特徴をお聞かせください。
高度急性期病院であり、かつ各診療科がアクティブに専門診療を行っている地域の中核病院です。
杉山先生がいらっしゃる内分泌代謝科についてはいかがですか。
医師は4人と少数なのですが、下垂体・副腎・甲状腺をはじめとした内分泌疾患、糖尿病をはじめとした代謝疾患の症例は豊富で、それぞれの専門医または専門研修中の医師が診療しています。この地域では二次性高血圧をきたす原発性アルドステロン症という副腎の疾患もよく集まってきます。また、通常の糖尿病はもちろんですが、高血糖の緊急症など救急的な疾患も多いですね。特徴としてはチーム医療が充実していることが挙げられます。糖尿病療養指導士の資格を持ったコメディカルスタッフが30人ほどおり、看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師など、それぞれの専門を活かしたチーム医療を行っています。
武蔵野赤十字病院の内科専門研修プログラムで学べる特徴について、ご紹介くださいますか。
当院の内科はほぼ全ての領域が揃っていますので、それぞれの先端医療が学べます。現在は唯一、感染症科の常勤医師が不在で、感染症の入院は主に総合診療科が診ていますが、非常勤の感染症専門医と連携して診療しています。そのほかの診療科にはそれぞれの領域の指導医がおり、症例も豊富にあります。当院の研修だけで内科専門医を取得するための疾患と症例数は十分に経験できます。
武蔵野赤十字病院での内科専門研修プログラム終了後はどのようなキャリアアップが望めますか。
当院の内科は東京医科歯科大学の関連病院ですので、内科専門研修プログラム終了後は東京医科歯科大学のいずれかの内科に入局する(または既にしている)人が多いかもしれません。しかし、それが義務というわけではありません。医局に属さずに、当院に残る人もいますし、ほかの病院に勤務する人もいます。これでないといけないと決められているわけではありませんので、医師一人一人の希望を尊重しています。
カンファレンスについて、お聞かせください。
内科全体のカンファレンスが週に1回あり、全ての内科医が集まります。また、各診療科もそれぞれのカンファレンスを行っています。内分泌代謝科ではメインとなる医師のみのカンファレンスが週に1回、糖尿病のチームカンファレンスが週に1回あります。カンファレンスがない日の朝は「朝カンファ」というカルテ回診のようなカンファレンスを行っています。
そうしたカンファレンスでは専攻医も発言の機会は多いですか。
カンファレンスでは毎回、初期研修医や専攻医が症例のプレゼンテーションをしますので、発言の機会は多いです。プレゼンテーション後は皆で病態や治療方針を話し合いながら、初期研修医や専攻医を指導しています。
女性医師の働きやすさに関してはいかがでしょうか。
内分泌代謝科は常勤医師4人のうち2人が女性ですし、病院全体としても女性医師はとても多いです。仕事のやり方として、男性だから、女性だからといった区別はしていませんが、女性のライフイベントは尊重されていますし、皆が産前産後休暇や育児休暇を普通に取得しています。育児休暇明けもスムーズに復帰できています。当院には女性の働き方をサポートする姿勢があり、働き方改革も進んでいますので、誰かが休んでも、誰かがカバーできるようになっています。
先生が内分泌代謝科を選んだのはどうしてですか。
内分泌学という学問自体が面白く、奥が深いんです。内分泌代謝科を選んだのは20年前ですが、まだ分からないことがこれから解明されていく将来性のある分野だし、自分で新しいことを見つけることもできるのではと思いました。それから、一部分の臓器ではなく、全身を診る診療科であることも良かったです。人間全体を診ますし、糖尿病などでは患者さんとの対話や患者さんへの教育の機会も豊富で、人間としての関わりが必要なところにも惹かれました。私はもともと手先が器用なので学生時代は外科系が気になっていましたし、研修医になった頃には循環器科を考えていました。生命に直結する心臓を自分の手で治療できる診療科なので、自分で命を助けたという感覚が強そうなところに憧れたんですね。しかし、内分泌代謝科の方により興味が湧き、50代、60代になっても飽きずに、一生続けられる仕事だと考えて選びました。今のところ、その選択は間違っていなかったと実感しています。
研修医時代の思い出をお聞かせください。
1年目は東京医科歯科大学の大学病院で、2年目は武蔵野赤十字病院で研修しました。大学から当院に来たときには大学とは雰囲気が全く違う病院だなと思いました。医師とコメディカルスタッフの距離も近く、明るい雰囲気が良かったですね。また、武蔵野赤十字病院では研修医同士の繋がりがとても強いんです。同期だけでなく、1学年下の研修医ともよく飲みに行っていました。今でも当時の同期や1学年下の人たちと時々会ったりもしていますよ。当院には研修医としては1年しかいなかったのに、とても濃い時間だったという印象です。
アメリカに留学もされたのですね。
内分泌代謝科に入局し、大学院に入って、アルドステロンによる血管障害の研究で学位を取りましたが、留学先では血管障害のよりミクロな世界を研究してきました。動脈硬化の初期のメカニズムを調べるために、心臓血管部門のラボに入り、血管内皮機能や酸化ストレスなどを研究しました。この研究は糖尿病の血管障害にも繋がりますし、アルドステロンなどのホルモンによる血管障害のメカニズムにも繋がるような世界でした。今の臨床の仕事にもその経験が生きています。
帰国後は2013年に武蔵野赤十字病院にいらっしゃるまで、大学にいらしたのですね。
内分泌代謝科の仕事をしながら、ご縁があって臨床教育研修センターに配属されたので教育に関わる仕事もしていました。今の田中雄二郎学長のもとで、医学教育について学びながら医学生や研修医の教育に携わっていました。大学では臨床と研究と教育のそれぞれに従事していましたが、私としては臨床により力を注ぎたいという思いが強くなり、武蔵野赤十字病院に来ました。当院でも大学での経験をもとに教育に関わっています。2021年3月まで臨床教育の副委員長を務めていましたが、4月に臨床研修部長に就任しました。
専攻医に指導する際、心がけていらっしゃることはどんなことでしょうか。
上から命令せず、同じ目線でいることです。一緒に考えて、私も一緒に勉強しようという感覚で接しています。
今の専攻医を見て、いかがですか。
それぞれの個性やキャラクターがありますね。当院の専攻医は皆、積極的でやる気があります。逆に言えば、受け身のような専攻医は当院に合わないのではないかと思います。
現在の専門医制度について、感想をお聞かせください。
個人的な意見ですが、内科学会が示す理想と現実とのギャップに皆が苦しんでいるように見えます。内科の専門医を取得するには各内科を満遍なく勉強することが求められますが、それぞれが専攻したい診療科もあるので、そのすり合わせが難しいと思います。自分が専攻しない診療科を初期研修の延長のように回ってしまうと、結局は「お客さん」で終わります。そこをきちんとしないといけないですね。それには専攻医はもちろん、指導医も意識を持って取り組まないといけません。一方で、今の制度はシーリングにより採用できる人数が限られていますので、当院は非常に困らされています(笑)。
これから専攻医研修の病院を選ぶ初期研修医にメッセージをお願いします。
初期研修医から専攻医になると、内科の専門家を目指すにあたり、症例がきちんと集まっているのか、指導環境はどうかといった点に左右されます。本人のやる気も大切ですが、やはり病院選びも重要です。色々な病院に見学に行き、自分と肌が合うのか、そこにいる専攻医が生き生きとしているのかを見て選んだ方がいいですね。有名病院かどうかに拘らず、そこで実際に働いている専攻医の目がきらきらしている病院であれば、いい研修病院なのだと思います。