専門研修インタビュー

2021-08-01

水戸済生会総合病院(茨城県) 指導医(専門研修) 千葉義郎先生 (2021年)

水戸済生会総合病院(茨城県)の指導医、千葉義郎先生に、病院の特徴や研修プログラムについてなど、様々なエピソードをお伺いしました。この内容は2021年に収録したものです。

水戸済生会総合病院

茨城県水戸市双葉台3-3-10

医師近影

名前  千葉 義郎
水戸済生会総合病院血管内治療グループ長 循環器内科部長 臨床研修センター長 指導医

職歴経歴 1970年に宮城県仙台市に生まれる。1996年に山形大学を卒業後、湘南鎌倉総合病院で研修を行う。1999年に千葉西総合病院内科チーフレジデントとなる。2000年に湘南鎌倉総合病院内科チーフレジデントとなる。2005年に水戸済生会総合病院循環器内科に部長として着任する。2008年に水戸済生会総合病院血管内治療グループ長を兼任する。2016年に水戸済生会総合病院臨床研修センター長を兼任する。
日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医、日本インターベンションラジオロジー学会専門医、ステントグラフト指導医(胸部・腹部)、日本脈管学会脈管専門医、日本不整脈学会ICD認定医、CRT認定医、死体解剖資格など。

水戸済生会総合病院の特徴をお聞かせください。

 水戸市内の基幹病院の一つで、ドクターカー、ドクターヘリを有する三次救命救急センターを持っています。茨城県立こども病院と同じ敷地にあり、連絡通路で結ばれています。当院の総合周産期母子医療センターは産科領域は当院の産婦人科、小児科領域は茨城県立こども病院の新生児科が担当し、協力し合っていますので、周産期医療に関してもかなり色々なことができる病院です。研修については初期研修医が1学年10人ずつ、内科専門研修プログラムの基幹型の定員が4人のほか、筑波大学や新潟大学の協力施設になっている診療科もあります。

ドクターヘリの稼働についてはいかがですか。

 茨城県のドクターヘリ事業の一翼を担っています。お隣の水戸医療センターと週を半分に分けて担当していますが、実際の運用はかなりアクティブで、当院が当番の日だけで1日あたり1、2件のフライトがあります。天候などの理由で飛べない日も当然ありますが、要請が多い日には1日に5回も6回も空の上にいるようなこともあるようです。フライトドクターは救急科の医師が務めていますが、初期研修医も出動する機会があります。

千葉先生がいらっしゃる循環器内科についてはいかがですか。

 当院には心臓血管外科もありますので、地域完結をキーワードに、幅広く循環器診療を行っています。ほぼ一通りのことが経験できる診療科ですね。虚血性心疾患に対するPCIは以前から活発でしたが、不整脈に対するアブレーション治療、植え込み型除細動器や心臓再同期療法といったデバイス治療も行っています。最近では心臓血管外科との連携が密で、大動脈弁狭窄症に対するTAVI、ウォッチマンデバイスを用いた左心耳閉鎖術治療にも取り組んでいます。今は僧帽弁閉鎖不全症に対するマイトラクリップの導入の準備をしているところです。

水戸済生会総合病院の内科専門研修プログラムで学べる特徴について、ご紹介くださいますか。

 当院の内科には大学病院のように全部の診療科があるわけではありませんが、循環器内科、消化器内科、腎臓内科に関してはスタッフが手厚く、ほかの病院に異動することなく、内科専門研修プログラムからシームレスに専門医やサブスペシャリティの関連資格、学会指導医まで取れることが特徴です。とは言っても、内科専門研修プログラムではある程度ジェネラルに各科を回ることが求められていますので、当院では循環器、消化器、腎臓以外の診療科に関しては近隣の施設を回っていただいています。例えば血液内科は水戸医療センターに行くなどですね。通常は卒後4年目、専門研修開始から2年目に外の病院に行くことが多いようですが、当院の場合は卒後3年目の秋、つまり専門研修が始まってから半年後には外の病院に行きます。そのあたりの研修を早めに済ませ、自分の行きたい診療科を並行研修できるような形を取っています。

医師近影

水戸済生会総合病院での内科専門研修プログラム終了後はどのようなキャリアアップが望めますか。

 当院のプログラムだけでサブスペシャリティの専門資格まで取れますので、医局と関係なく自由にやりたい人、手技や経験を早く積みたい人にとってはいい病院だと思います。現在、循環器内科には専攻医2人と専攻医を終えたばかりの人、今年専門医試験を受ける人がいますが、なるべく早く資格が取れるよう、サポートしています。

カンファレンスについて、お聞かせください。

 循環器内科では毎朝、入退院に関しての申し送りを兼ねた内容のカンファレンスを行っています。それから心臓血管外科との合同カンファレンスですね。最近はハートチームでのカンファレンスを求められる機会が多く、心臓血管外科の医師だけでなく、診療放射線技師、臨床検査技師といった多職種とのカンファレンスを週に1回、開催しています。そこでは心臓血管外科と一緒に行うTAVIなどの症例の検討会もしています。

そうしたカンファレンスでは専攻医も発言の機会は多いですか。

 専攻医も担当患者さんを多く持っていますので、毎回ではありませんが、発言の機会は結構あります。

女性医師の働きやすさに関してはいかがでしょうか。

 循環器内科は働き方改革に対応できている科だとは言えませんが、月に何日間かの週末や完全な休日を取るように手配しています。今、産休中の医師もいます。産休に入る前は病棟業務や日中のエコー、緊急入院のICなど、色々な仕事に素早く取り組んで頑張ってくれていたので、当直が免除であっても、ほかの医師とwin-winでしたし、お互いがカバーし合っていました。専攻医にも女性が1人います。循環器内科はまだ女性医師が少ないですね。診療科ごとに特徴がありますが、循環器内科の雰囲気についていけない人でないと辛いからでしょうか。これまでは心臓カテーテルをしないと循環器内科医ではないというイメージがありましたが、そんなことは全くありません。エコーをはじめ、すべき仕事は色々とありますので、そういうところで活躍してほしいです。

先生が循環器内科を選んだのはどうしてですか。

 私は基本的にせっかちなので、科のリズムが合ったからかと思います(笑)。本当に心臓が止まりそうな患者さんが我々の治療で劇的に良くなって、歩いて退院できるところを見るのはこちらの頑張りが報われる瞬間です。そういうところに格好良さを感じましたし、憧れましたね。循環器内科に決めたのは研修医のときです。

先生は湘南鎌倉総合病院で研修されたのですね。

 当時は医局に所属し、大学病院で研修する時代でしたが、私はスーパーローテートの研修をしたくて、湘南鎌倉総合病院を選びました。私はどこの医局にも所属したことのないアウトローな人間なのですが、時代が私に追いついたのだと思っています(笑)。良くも悪くも首都圏は大学が多く、人の異動が盛んで、新しいことに取り組む姿勢が違うのかなということを学生時代から感じていました。今もその気持ちは変わっていません。地方のレベルが低いわけではないのですが、地方は教授の意向が強く、教授が「これは危ないから、やらん」と言ったら、誰も手出しできない雰囲気があるようです。しかし、首都圏には「誰もやらないのなら、俺がやる」みたいなところがあり、それが新しいことを始める原動力になっているようです。その雰囲気に惹かれ、首都圏の市中病院で研修したいと考えていました。

湘南鎌倉総合病院での研修はいかがでしたか。

 詳しいことは言わない方がいいかもしれません(笑)。湘南鎌倉総合病院はとにかく場数を踏ませる病院でしたので、循環器に限らず、何でも経験させていただきました。それが今の私の土台になっていますね。私は循環器内科医ではありますが、初期研修医の指導のために、総合内科医の仕事もしていますので、スーパーローテートする重要性も分かっています。そうした姿勢を培ってくれた貴重な環境でした。湘南鎌倉総合病院は卒後5年目までで内科を全科回り、最終試験がチーフレジデントという形です。その後、専門を決めますので、そのときに循環器内科を選びました。

専攻医に指導する際、心がけていらっしゃることはどんなことでしょうか。

 自分の専門ばかりに目を向けず、例えばどこかの小さい病院に一人当直に行ったときにきちんと対応できるように、視座を高く、広く持ってもらうことが大事だと思っています。消化器内科の専攻医が内視鏡をしたくてたまらないという気持ちはとてもよく分かりますが、内視鏡だけできればいいというわけではありません。それ以外のことでも患者さんの不安を解消してさしあげられるような話をすることも内科専門医には求められます。そういう意味でも内科専門医試験を受ける卒後5年目までは専門領域に過度に偏りすぎず、バランスよく診るようにと伝えているつもりです。

今の専攻医を見て、いかがですか。

 そうは言っても、当院の専攻医は皆よく診てくれていますので、あまり心配していません。当院の場合はある程度、自分の専門を決めてきてくれる人がほとんどなので、それを勉強するモチベーションを保たせる必要もあります。例えば消化器内科希望の専攻医でしたら、院内のほかの診療科をローテートしている期間であっても、内視鏡の時間を融通したりなど、内視鏡の感覚を忘れないように配慮しています。そして自分のモチベーションを保つのと同様に、様々なことに関心を持ってほしいと欲張りなことを考えています。

現在の臨床研修制度について、感想をお聞かせください。

 私自身がスーパーローテートを経験したからかもしれませんが、ほとんどの医師が市中病院に勤務するか、開業するかであって、大学に残る人はごく一部です。そうなると、患者さん相手に臨床するためのスキルをきちんと身につける必要があります。その意味で、患者さんの話を聞き、自分で解決できなくても、「こうするといいですよ」とアドバイスしたり、不安を取り除いてさしあげられるようなことができないといけません。患者さんの中には私たちが想像もつかないような生活をしている人もいます。自分の知識だけでなく、患者さんの話を聞き、理解して、受け入れられるような医師になるための制度であってほしいです。

現在の専門医制度について、感想をお聞かせください。

 私は良い制度だと思っています。大学の先生方からの批判はあるようですが、患者さんを相手に臨床に携わるのであれば、プライマリケアなど、自分の専門以外のことを知っておくことは大切です。私は湘南鎌倉総合病院でスーパーローテートをしたうえで、3年目以降に一通りの内科も経験したことが今でもとても役に立っています。新しい制度ではレポートや論文が大変になりましたが、何かしら形に残さないといけないので、そこは「頑張ってね」と言うしかありません(笑)。

これから専攻医研修の病院を選ぶ初期研修医にメッセージをお願いします。

 自分の診療科を決めるときには憧れや好きだという気持ちを大事にした方がいいです。診療科のリズムや労働条件、「これからはこの領域で患者さんが増えるから食いっぱぐれないだろう」のような算盤勘定や打算ではなく、「好きだし、少しぐらいきつくても、これだったら続けられる」という気持ちがないとどんな仕事でもつまらなくなってしまいます。どの診療科に行っても、楽なことばかりではなく、むしろ辛いことの方が多いです。そのときにへこたれないようにしたいですね。当院では循環器内科、消化器内科、腎臓内科は大学の意向などに関係なく、当院のプログラムだけで専門医が取れ、自分の力で次のステップに踏み出せる場を提供できます。その3つの診療科を考えている方は是非、選択肢に入れていただけると嬉しいです。見学も随時、受け付けていますし、できる限りの対応をしています。

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