専門研修インタビュー

2021-09-01

中東遠総合医療センター(静岡県) 専攻医 内田直樹先生(内科) (2021年)

中東遠総合医療センター(静岡県)の専攻医、内田直樹先生(内科)に、病院の特徴や研修プログラムについてなど、様々なエピソードをお伺いしました。この内容は2021年に収録したものです。

中東遠総合医療センター

静岡県掛川市菖蒲ヶ池1-1

医師近影

名前 内田 直樹
出身地・出身大学/医師免許取得年度 愛知県名古屋市・藤田医科大学 / 2019年

医師を目指したきっかけをお聞かせください。

 小さい頃は小学校の先生になりたかったのですが、父が医師で、父の姿を見ていたことと生命を救うことは特別な仕事なのだと憧れていたことがきっかけです。医療職の中でも自分で直接、手を下して患者さんを助けることができるのは医師だなと思いました。しかし、中学2年生のときに学校のテストでドベ3だったんです。ドベ3とは下から3番目という意味です(笑)。それから勉強を頑張ると、やればやるほど伸びるんだということが分かりました。そして学力がある程度、追いついてきた高校の頃にきちんと医学部を目指そうと考えました。

学生生活はいかがでしたか。

 硬式テニス部に入っていました。長野県の阿智村にヘブンスそのはらという施設があるのですが、毎年夏はそこで合宿して、テニスの練習だけでなく、バーベキューなどでも楽しんだことが思い出に残っています。

医師近影

初期研修の病院を中東遠総合医療センターに決めたのはなぜですか。

 私は国公立大学しか目指せなかったのですが、浪人してもセンター試験があまり良くなくて、国公立大学が難しくなり、医学部を諦めかけたんです。そのときに父が浪人時代の私が頑張っていた姿を見ていて、何とか力になってやりたいと奨学金制度のある病院を探してくれました。それが中東遠総合医療センターです。今も綺麗な病院ですが、当時はまだ新しい病院で、ここで働くのは楽しそうだなと思いました。初期研修は中東遠総合医療センターで行う必要はないのですが、専攻医研修以降は当院で働くことになります。卒後2年目と3年目では責任が違いますし、するべき仕事も違うので、別の病院を探すよりも同じシステムのもとで初期研修もさせていただきたいと考え、当院にお世話になることにしました。

では初期研修までに中東遠総合医療センターにいらしていたのですね。

 そうです。院長先生とは何度か面談させていただきました。静岡だからか、面談のたびに出されるお茶がいつも美味しいんです(笑)。私は生まれも育ちも名古屋で、静岡県に来たのは初めてでしたが、来てすぐに馴染みました。臨床研修センターのスタッフもいい方ばかりです。名古屋でもいい人たちに恵まれましたが、こちらもいい人たちばかりで暮らしやすいです。義務年限は6年間ですが、しばらくこちらにいたいと思っています。

初期研修を振り返って、いかがですか。

 2年目の初期研修医は3月になると専攻医研修先に移るので、当直にあまり入らないんです。その代わり、1年目の初期研修医が頻繁に入るのですが、朝3時、4時ぐらいになると疲れてきます。そんなときに同期と「この疾患、どう思う」と話していたことが印象に残っています。次の日に研修医室で話すよりも、その場で雰囲気や忙しさを共有している同期と話す方が勉強になるし、楽しかったです。もう帰ってこない日々ですね。

内科を専攻しようと決めたのはいつですか。

 父が血液内科医だったので、以前からよく知っている科ですし、学生時代に血液内科を勉強するたびに面白く、ポリクリの前の3年生、4年生の頃には既に血液内科を目指していました。医療には治すのか、QOLを伸ばすのか、がんと戦うのか、がんと戦わないのかの4つの側面がありますが、私はがんと戦いたいと思いました。がんと戦う診療科であり、抗がん剤だけで人を治すことができるのは血液内科の魅力ですね。

中東遠総合医療センターでの専攻医研修はいかがですか。

 初期研修と同じシステムのまま研修できるのは有り難いですし、福利厚生なども良いです。私にはもったいないぐらいコメディカルの方々も優しいです。私は当院しか知らないのですが、名古屋などの病院から来られた先生方が「こんなにいい病院があるのか」とおっしゃっていますし、当院で育った先生方がほかの病院に行かれると「ここに帰ってきたい」とおっしゃるので、いい病院なのだと感じます。

専攻医研修はどのような内容ですか。

 専攻医研修1年目の今年は内科のローテートで、今は呼吸器内科にいます。始業は8時15分ですが、受け持っている患者さんの数によって変わります。私は今10人ほど持っていますので、7時30分には出勤しています。出勤したら、始業までに採血などをしたり、その日のスケジュールを確認します。始業後は10時までにカルテを書いたりします。それから内科当番、気管支鏡の検査、カンファレンスなどがあります。入院が発生すると、9時、10時に帰ることもありますが、何もないと6時から7時の間に終業となります。

医師近影

専攻医研修で特に勉強になっていることを教えてください。

 初期研修2年目と専攻医研修1年目の違いは一人で主治医になるかどうかです。主治医は自分が自由にできる裁量が大きくなる分、自分で考えていかなくてはいけません。抗菌薬を出すにしても、どの抗菌薬を使うのか、一つ一つを考えることで力になっていると感じます。自分で調べて、考えると忘れにくいし、分からないなりにも自分で考え、自分で道を出すことが勉強になります。そして、患者さんから勉強させていただいているのだと思っています。

当直の体制について、お聞かせください。

 初期研修の頃は当直が好きだったので、月に6回から8回ほど入っていましたが、今は月に3回から4回です。体制は内科、外科、救急、ICU、小児科、産婦人科の6人体制に初期研修医で、私は「内科直」として一人で入ります。500床の病院で、6人で当直するのは手厚いですし、本当に困ったときは小児科や産婦人科など、他科の先生方にコンサルトできるので、そこが当院の強みだと思います。初期研修医は1年目は負担が大きいので、最初は4人で入ることが多いです。2年目に1年目がつく形ですね。そのうち3人になります。基本的には初期研修医がファーストタッチして、困ったときや入院が必要なときにご相談を受けるというのが「内科直」の仕事です。

指導医の先生方のご指導はいかがですか。

 呼吸器内科では丁寧にご指導いただいています。質問すれば、もちろん教えてくださるし、自分で考えてやったことでも、カルテに「これをしておこう」と残してくださるなど、一つずつ見てレスポンスをいただけるので有り難いです。

病院に改善を望みたいことはありますか。

 新しい病院なので、アメニティは整っていますし、プログラムも問題ありません。強いて言えば内科専攻医が少ないことですね。私の学年は2人しかいません。内科をいかにして強くするのかが課題ではないでしょうか。この病院に限らず、内科の専門研修プログラムが変わってから、内科志望者が減っていることは問題だと思います。

初期研修医の指導にあたって、気を付けていることはありますか。

 最初から答えを出さないことです。私も初期研修医だったわけですが、最初から答えをもらうと自分で考えなくなってしまうので、自分で答えを出してから質問するようにしていました。今は救急外来で一緒になることが多いので、オーダーを出した理由や出さなかった理由など、何を考えてそうしたのかをタイミングが合えば聞くようにしています。

カンファレンスはいかがですか。

 週に1回、水曜日の3時から5時まで、カンファレンス室で入院患者さん全員をプレゼンするカンファレンスがあります。主治医として持っている患者さんを全員プレゼンします。それから金曜日の9時30分からは実際に病棟を回ってのプレゼンがありますが、このときは「こういう方で、こうしています」という10秒ほどのショートプレゼンです。これに2時間ぐらいかかります。今、呼吸器内科で夜の待機当番にも入らせていただいているので、こういうカンファレンスがあると「この患者さんはこういう状態だったな」と思い出しやすいです。

コメディカルのスタッフとのコミュニケーションはいかがですか。

 私の思い過ごしかもしれませんが、とても良くしていただいています(笑)。初期研修のときからお世話になっていますし、こういう人だと理解してくださったうえで、仲良くしていただいているので嬉しいです。

何か失敗談はありますか。

 先月まで血液内科で研修していたのですが、抗がん剤を使うときに、自分で考えたつもりでしたが、抗がん剤治療の経験豊富な先生からチクリとご指導を受けました。抗がん剤に対する考え方が甘かったのだと反省しました。

医師近影

専攻医研修と初期研修の違いはどんなところにありますか。

 一番感じていることはPHSが鳴る回数です(笑)。尋常でないほど、よく鳴ります。ほとんどは看護師さんからですが、木曜日だけ外来をしているので、外来からもかかってくることがあります。総合内科の外来には内科専攻医の枠があります。内科全般を学べるので、勉強になっています。

研修医同士のコミュニケーションは活発ですか。

 内科専攻医の同期は私を含めて2人ですが、もう一人は外部の病院にいます。内科には1つ上の先生方が多いので、よく話しています。初期研修の同期は15人でしたが、そのうち4人が当院に残りました。内科2人のほかは救急と整形外科にいます。救急の同期にはよくコンサルトしますが、「雑なコンサルト」と言われています(笑)。

今後のご予定をお聞かせください。

 私は血液内科を専攻したいと考えているので、専攻医研修3年目は名古屋医療センターに研修に行く予定です。専攻医研修終了後は内科専門医を取得し、血液内科を勉強しながら腫瘍内科医を目指します。腫瘍内科の領域は難しそうなので、迷いもあります。父もがん薬物療法の指導医を取得しているのですが、あの年であれだけ勉強が必要なのかと感心しています(笑)。

現在の臨床研修制度について、ご意見をお願いします。

 私はこの制度があって良かったです。楽しい2年間でした。最初から志望が決まっている人は志望外の勉強をしないといけないですし、特に内科志望ならその科以外の疾患も知らないといけません。眼科志望なら糖尿病や膠原病の知識も必要です。化学療法中に心不全になった患者さんがいたら、心不全の治療ができないと本当に致命的です。その意味では志望科以外のことを学べる機会は大事です。志望科が決まっていない人はスーパーローテートしながら、それぞれの科への興味を持つようにするといいと思います。

専門医制度についてもご意見をお願いします。

 症例報告が多すぎです(笑)。志望科以外の知識を得るためにはある程度の年月は必要ですが、3年は長いかなと感じています。2年でいいのではないでしょうか。

これから専攻医研修の病院を選ぶ初期研修医にメッセージをお願いします。

 当院の良さはコメディカルの方々の雰囲気の良さであり、医師として働きやすい病院です。専攻医研修は大変ですが、大学病院で「自分でやってください」と言われそうなことでも、当院では看護師さんがしてくださるので、疲れていても心が折れることがありません(笑)。初期研修医と専攻医の違いは主治医になるかならないかです。初期研修では自分で調べる習慣をつけること、分からないことでも分からないなりに進めること、分からなかったら素直に上の先生に聞くことが大事です。「この先生はこういう意見だったから、こうすればいいんだ」という解決の緒を見つけていけばいいです。色々な先生の意見を聞き、経験を積み重ねながら、患者さんに学ばせていただいているという態度を忘れてはいけないと卒後3年目になって改めて思います。

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