専門研修インタビュー

2021-12-01

和歌山県立医科大学附属病院(和歌山県) 指導医(専門研修) 山本脩人先生 (2021年)

和歌山県立医科大学附属病院(和歌山県)の指導医、山本脩人先生に、病院の特徴や研修プログラムについてなど、様々なエピソードをお伺いしました。この内容は2021年に収録したものです。

和歌山県立医科大学附属病院(卒後臨床研修センター)

〒641-8510

和歌山県和歌山市紀三井寺811-1

TEL:073-441-0575

FAX:073-441-0576

病院URL:https://www.wakayama-med.ac.jp/hospital/

卒後臨床研修センターURL:http://www.wakayama-med.ac.jp/med/sotugo/index.html

医師近影

名前  山本 脩人(しゅうと)
和歌山県立医科大学附属病院腎臓内科学助教 指導医

職歴経歴 1984年に和歌山県新宮市に生まれる。2008年に和歌山県立医科大学を卒業後、和歌山県立医科大学附属病院で初期研修を行う。2010年に和歌山県立医科大学腎臓内科・血液浄化センター学内助教となる。2011年に新宮市立医療センター内科(腎・透析)医員として勤務する。2014年に新宮市立医療センター内科(腎・透析)部長に就任する。2015年に公立那賀病院に腎臓内科部長として着任する。2016年に和歌山県立医科大学腎臓内科学助教に就任する。2019年から卒後臨床研修センター副センター長を兼任。
日本内科学会認定内科医、日本腎臓学会認定専門医・指導医、日本透析医学会認定専門医・指導医など。

和歌山県立医科大学附属病院の特徴をお聞かせください。

和歌山県には県立病院がないので、当院は大学病院でありながら、県立病院としての機能も兼ね備えています。和歌山県内の三次救急の病院は日本赤十字社和歌山医療センター、南和歌山医療センターと当院しかありませんし、そういう面でも県民の皆様にフィードバックしていかなくてはいけません。したがって、一般的な大学病院よりもかなり幅広い患者さんを受け入れて診療しています。特徴的な施設としては膵がんセンターが挙げられます。消化器内科、消化器外科の教授がともに膵臓を専門にしていることもあり、2019年に膵がんセンターを立ち上げ、2021年2月には膵がんドックも開設するなど、膵臓疾患には力を入れているところです。それから遠隔診療も整備されています。和歌山県には山地や僻地も多くあり、交通アクセスが悪い地域もあるので、和歌山県立医科大学地域医療センターと県内の遠隔地の医療機関を結ぶネットワークを築き、県内の地域医療を支援しています。

山本先生がいらっしゃる腎臓内科についてはいかがですか。

「腎臓領域の疾患を何でも診る科」という言葉が合う診療科です。尿検査異常に始まり、腎炎、ネフローゼ、慢性腎臓病などのThe腎臓内科的な疾患ももちろん診ますが、透析患者さんの診療も担当しますし、シャントの手術や血管内治療などの外科的な手技も当科で行います。急性期の血液浄化療法についても積極的に関わっており、腎臓内科の業務を幅広く行っています。

和歌山県立医科大学附属病院の内科専門医研修プログラムで学べる特徴について、ご紹介くださいますか。

初期研修でも同様なのですが、当院での研修に加え、県内都市部の中核病院から僻地に近いところでの病院など、県内に関連病院が多くあるので、様々な背景を持った多様な患者さんを診られることが特徴です。当院の内科専門医研修プログラムには内科基本コース、各科重点コース、地域医療重点コースの3つのコースがあります。サブスペシャリティが未決定、または高度な内科系ジェネラリストを目指す場合は内科基本コースを選択します。将来の サブスペシャリティが決定している専攻医は各科重点コースを選択し、サブスペシャリティ領域の各内科部門に所属します。内科基本コースと各科重点コースは条件が整えば、移行が可能です。和歌山県立医科大学医学部地域医療枠および自治医科大学を卒業した医師、地域における内科医を目指す場合は地域医療重点コースを選択します。このコースでは後期研修開始後の 3 年間は連携施設や特別連携施設で研修を行い、4年目を基幹病院でローテートします。地域医療重点コースに在籍中であっても興味あるサブスペシャリティを決め、 その研修を一定期間行うことも可能です。いずれのコースを選択しても内科専門医受験資格を得られるように工夫されており、内科基本コース、各科重点コースでは卒後 5、6 年で内科専門医、その後にサブスペシャリティ領域の専門医取得ができます。地域医療重点コースでは卒後 6、7 年で内科専門医、その後にサブスペシャリティ領域の専門医取得となります。地域医療重点コースを選択した人でも何らかのサブスペシャリティ専門医資格を遅滞なく取得できるように支援しています。

外部の病院の選択肢も豊富ですね。

初期研修でもこれを特徴に挙げています。和歌山県内の病院はほぼカバーできていますし、大阪府南部の病院などの県外の病院も選択できます。

和歌山県立医科大学附属病院での内科専門研修プログラム終了後はどのようなキャリアアップが望めますか。

大学院に入学して、学位を取得するという道ももちろんありますし、国内留学、海外留学という選択肢もあります。各科それぞれにコネクションがありますので、国内留学、海外留学の行き先も豊富です。

医師近影

カンファレンスについて、お聞かせください。

腎臓内科では入院患者さん全員についてのカンファレンスを行っています。特に新入院の患者さんについては重点的に話し合います。初期研修医がプレゼンし、それに指導医が質問するという形が一般的ですが、大学病院ならではの学生さんによる発表もあります。また、2021年7月に外来の維持透析が始まったので、そこの患者さんについてのカンファレンスもあります。研究員の方々とのリサーチカンファレンスや医局の方針などを話し合うスタッフミーティングも行っています。腎臓内科は関連病院が多くなく、関連病院全体でのウェブ勉強会やカンファレンスの構想もあり、今後取り組んでいく予定です。

女性医師の働きやすさに関してはいかがでしょうか。

腎臓内科は幅広い働き方ができるので、女性医師も働きやすい診療科だと思います。産休、育休明けでも仕事の範囲を調節しながら復帰しやすいです。当科でも3人のママさん医師がそれぞれできる範囲での働き方をしており、大事な戦力になっています。当直は診療科や職位によりますが、可能な人は月に1、2回はしていますし、どうしても難しい人はもちろん免除です。その分、日中は担当業務を増やして頑張っていただいていますし、メリハリのある働き方が可能です。保育所は病院に併設していますし、病児保育所は院内にあります。

先生が腎臓内科を選んだのはどうしてですか。

第一の理由はやはり幅広く診ることができることです。私はもともと総合診療科に興味がありました。今は総合診療科それ自体が一つの柱ということは理解していますが、初期研修の段階ではそれが分かっていませんでした。決めた時期は初期研修2年目になってからで、最後まで迷いはありましたが、専門性という柱を持って、色々な診療科に関わっていきたいと考え、腎臓内科を選びました。一方で、腎臓内科は透析の患者さんや急性腎障害の患者さんなどを他科の医師と診ていく機会が非常に多いです。他科と診る患者さんの数は自分たちだけで診る患者さんの倍ぐらいいます。そのため、様々な疾患や他科の新しい治療に触れることができ、刺激に満ちた診療科だということも選んだ理由の一つです。さらに、私は手技が好きなので、内科でありながら手術や血管内治療ができることも大きかったですね。

医師近影

先生は初期研修も和歌山県立医科大学附属病院でされたのですね。

この制度は2004年に始まり、私は2008年の卒業なので、病院もスーパーローテートに慣れており、私もこの制度は悪くないと思っていました。当院を選んだのは救急の研修システムが良かったからです。これは2004年当初からの当院の特徴でしたが、私もそれが決め手になりました。

先生の研修医時代の思い出をお聞かせください。

脳神経外科で、私が担当していた患者さんの容態が急変し、緊急手術になるという流れを一連で経験したことがありました。最初の研修先だったこともあり、今も記憶に残っています。先ほどまで元気に話していた人がいきなり意識状態が悪くなったことにもちろんショックを受けましたが、すぐに開頭手術になり、そして回復した患者さんを見て、改めて医師という職業は凄いんだなと感じました。

先生は新宮市立医療センターにもいらしたのですね。

後期研修2年目のときから4年間いました。関連病院では大学病院ほど複雑な病態の患者さんは少ないのですが、軽症から中等症までの患者さんが多く、そういった患者さんを診る大切さを学びました。また、大学病院では専攻医が外来をするのはなかなか難しいので、関連病院で入院だけではなく、外来でも患者さんとしっかり関わることの重要性を勉強できたのは良かったです。

専攻医に指導する際、心がけていらっしゃることはどんなことでしょうか。

専攻医は専門に進んでから日が浅いので、まずは教科書的なことを身につけ、なるべく抜けをなくすよう指導しています。大学病院は症例の豊富さという意味では市中病院よりも優位性があるので、色々なパターンを経験して、一つずつの症例をきちんと診てほしいです。

医師近影

今の専攻医を見て、いかがですか。

皆さん、ものすごく勉強していますね。専攻医に求められる知識量は年々増えていますが、それを差し引いても今の専攻医はよく勉強して、熱心に診療しています。2年目、3年目の専攻医は県内の関連病院に行き研鑽を積みますが、各病院の部長クラスの先生方から「戦力として日々成長している」と伺うと嬉しいです。

現在の臨床研修制度について、感想をお聞かせください。

個人的には良い制度だと感じています。ただ、精神科、産婦人科、小児科の研修を義務にすることには疑問があります。私はそれらの科が義務だった世代ですが、身についたのかと言われると難しいです。例えば精神科では、1カ月の研修で専門的な疾患全てを診ることはできませんが、私は内科に進むことは決めていたので、せん妄や認知症、うつ病など、内科でも出会う疾患にターゲットを絞って勉強させていただきました。精神科、産婦人科、小児科の研修では目的意識を持たず、義務だけで研修するのは指導医も初期研修医もお互い大変でしょう。

現在の専門医制度について、感想をお聞かせください。

今の専攻医は本当に大変だというのが率直な感想です。内科専門医を取るためのJ-OSLERもありますし、専攻科の専門医を取るためのJ-OSLERもあります。しかも、その2つのJ-OSLERで同じ症例を使えないというのは本当に大変です。当院でも症例の取り合いがないわけではありません。当科ではレポートの書き方の指導は教授がしてくださっていますが、関連病院では経験が積めなかった領域があったり、良い症例がなかったりということも起こり得るので、人事異動などの際に配慮をしています。

これから専攻医研修の病院を選ぶ初期研修医にメッセージをお願いします。

最近の初期研修医を見ていても、どういった価値観を大事にするかは千差万別で、多様な時代になってきたと思います。どのような専攻医研修先を選ぶかは自由ですが、自分の中に柱となるものをきちんと立てられるような選択をしてほしいです。「これだけしっかりやったんだ」と言えるものを何か一つでも専攻医研修で身につけられれば、その後の自信にも繋がるはずです。

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