初期研修インタビュー

2022-05-01

新別府病院(大分県) 指導医(初期研修) 香川浩一先生 (2022年)

新別府病院(大分県)の指導医、香川浩一先生に、病院の特徴や研修プログラムについてなど、様々なエピソードをお伺いしました。この内容は2022年に収録したものです。

国家公務員共済組合連合会 新別府病院

〒874-8538
大分県別府市大字鶴見3898
TEL:0977-22-0391
FAX:0977-26-4170
病院URL:http://www.shinbeppu-hosp.jp/

香川先生の近影

名前 香川 浩一
新別府病院 診療部長 肝臓内科部長 内科部長 臨床研修部長 指導医

職歴経歴 地元大分の出身で、1988年に大分医科大学(現 大分大学)を卒業後、大分医科大学第三内科学講座に入局し、大分医科大学医学部附属病院、済生会熊本病院循環器内科、水俣市立湯の児病院(現 国保水俣市立総合医療センター)で研修を行う。1990年には新別府病院に勤務し、1992年からは大分医科大学大学院に入学する。1996年に同大学院を修了し、大分医科大学第三内科助手に就任する。2005年からは新別府病院に消化器内科部長として着任し、2021年に新別府病院臨床研修部長を兼任する。
日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医・九州支部評議員、日本肝臓学会暫定指導医、日本プライマリ・ケア連合学会認定指導医、インフェクションコントロールドクター、大分県肝炎対策協議会委員、大分大学医学部臨床教授など。

新別府病院の特徴をお聞かせください。

別府市のほぼ中央にある急性期病院で、一番の特徴は新型救命救急センターを併設していることです。当院は以前から救急医療に力を入れてきたのですが、2009年に大分県で4番目となる救命センターの認可を受けました。それ以来、救命救急センターとして、三次救急を担っています。入院患者さんも予約入院よりもERなどからの緊急や準緊急入院の患者さんの方が多いです。

香川先生がいらっしゃる消化器内科についてはいかがですか。

消化器内科の特徴として、救急対応のほか、内視鏡の検査や治療件数が多いことが挙げられます。年間で8000例から9000例の実績があります。また、緊急内視鏡など、急性期医療にも力を入れており、30分程度で内視鏡ができる体制を整えています。私の専門は肝臓ですが、肝臓に関しても内視鏡治療が必要な患者さんが多いですね。

新別府病院の初期研修プログラムで学べる特徴について、ご紹介くださいますか。

病院の特徴と同じく、救急の研修が充実していることです。救急に関しては決められた期間以上の経験を積めます。というのも、当院の初期研修医の所属先は救急科なんです。もちろん各科をローテートしますが、所属は2年間ずっと救急科ですので、救急患者さんが来院されたときに手が空いていればERに参加できます。ほかの診療科をローテートしている期間でも、重傷の方や興味深い症例があるときには、院内アナウンスで呼び出しをかけるようになっています。それから、当院にない産婦人科や小児科は、同じ共済組合連合会系列の病院に行ったり、近隣の病院を希望する場合には別府市や大分市の医療機関で研修を行っています。同じ系列の病院であっても、近隣の病院であっても、初期研修医の希望にできるだけ沿うように、院長自ら交渉してくれることもあります(笑)。

自由度の高さについてはいかがですか。

義務の期間が満たされれば、様々な変更が可能です。回りたい診療科が途中で変わった場合も、院内の科であれば2カ月前でも変更できますし、自由度は高いですね。

初期研修医の人数はどのくらいですか。

1年目が7人、2年目が2人です。昨年度は1年目に大分大学医学部附属病院からのたすきがけの研修医が1人いましたし、毎年3人から8人ぐらいが入職しています。指導するのは診療科主体となりますが、私としては、協力型も含めれば毎年10人ぐらい入ってきてもいいのかなと思っています。

初期研修医の写真

指導される立場として心がけていらっしゃることを教えてください。

初期研修医にはより多くの経験をさせたいと考えています。学生時代は指導医の横で見学することが経験になりますが、初期研修では指導医に横についてもらって自分で医療行為を行うことが経験と考えています。救急でもコールをかける体制をとっていますし、幅広く、少しでも多くの経験をすることが初期研修の意義だと思います。

最近の研修医をご覧になって、どう思われますか。

初期研修がきちんとシステム化されており、この研修を終了しないと次のステップに行けないということからか、初期研修医は真面目ですし、気が引き締まっているように見えます。以前と比べると、大学での教育も厳しくなっていますし、レベルも高いです。ただ、昔の研修医の方が個性は強かったように思います(笑)。

香川先生の写真

「こんな研修医がいた」というエピソードがあれば、お聞かせください。

破天荒だったり、引きこもってしまったりというような研修医には出会ったことがなく(幸いにも?)、指導するにあたってそこまで苦労したことはまだありません。逆に研修を終えたあとの医師の方が色々と問題が出てきますね(笑)。

研修医に「これだけは言いたい」ということがあれば、お聞かせください。

初期研修医は守られていますし、特別な存在です。だからこそ、この期間を大切に思って、より多くの経験をしてほしいです。見学だけでなく、指導医に横で見てもらいながら、自分でやってみましょう。そして、タスクに縛られず、将来に役立つこともたくさん見つけていってほしいと願っています。

先生はなぜ消化器内科を専門にされたのですか。

深い意味はなく、1つ上に魅力的な先輩がいて、その方から導かれ、勧められたのがきっかけです(笑)。でも後悔はしていないですね。消化器の中でも肝臓を専門にしたのは大学の助手になったときにC型肝炎、B型肝炎などの肝臓の患者さんが多かったからです。まだ肝炎の治療薬が出る前でしたので、長く患われる患者さんが大勢いらっしゃいました。当時はむしろ消化管の方が患者さんは少なかったです。治療薬が出てから、肝臓の治療は大きく変わり、患者さんも激減したので、やはり抗ウイルス薬のすごさを感じました。まだ外来に通ってこられる患者さんもいますが、元気になられた患者さんもたくさんいらっしゃいます。肝臓がんの患者さんも少なくなり、最近は脂肪肝などの生活習慣に関する疾患が多くなっています。

機械の写真

先生の研修医時代はいかがでしたか。

今と比べると自由(?)でした。私は2年間で呼吸器、消化器、循環器、神経、リハビリテーションの内科だけを回り、外科系は全く回りませんでした。研修では大学病院だけでなく、県外の市中病院にも行ったので、そういった病院での救急当直で縫合や怪我の処置などを自分で習得していきました。今のような幅広い研修指導はなかったですが、総合的に経験できたことはその後の役に立ちました。研修を終えて、当院に勤務したのですが、当院でも救急の経験を積めましたので、振り返ってみると、若いときは救急を頑張っていたように思います。

現在の臨床研修制度についてのご意見をお願いします。

EPOCを中心にローテーションの義務が定められているのは非常にいいですね。質が担保されますので、これをクリアしておけば、初期研修医に一定のものを与えられますし、安心して指導ができます。ただ、EPOCは最低限のタスクに過ぎないと思いますので、これだけに留まるのは良くないと感じます。各診療科が、これ以上のものをどう提供していくのかを考えているところです。

新専門医制度についてのご意見もお願いします。

内科は大きく変わったと言われていますが、私の実感としてはそこまで変わっていないように受け止めています。レポートにしても、以前も内科認定医を取るために20例ほどのレポートを書いていましたし、新制度でも大きく変わってはいないと思います。若い医師がするべきことはあまり変わっていないのではないでしょうか。ただ、学会から研修システムを作るように言われていますし、そうしたシステムや指導の基本体制は、はっきりと変化したと思います。

これから初期臨床研修病院を選ぶ医学生に向けて、メッセージをお願いします。

指導医に横についてもらいながら、自分でやってみる経験をより多く積み、次のステップを見据えた研修をしてほしいです。良い研修医になることを最終目的とするのではなく、良い専攻医を目指したり、良い医師になることを目標としてほしいのです。現在の初期研修ではEPOCの入力や評価といった複雑なこともありますが、そこはできるだけ合理的にこなして、それ以外のことにも目を向けてください。当院はそうしたプラスアルファの研修を提供したいと考えています。

夕焼けの写真

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