インタビュー

2022-07-01

近江八幡市立総合医療センター 津田 知樹 医師 | 指導医インタビュー(初期)

近江八幡市立総合医療センター 津田 知樹 先生の指導医インタビュー。全国病院からメッセージ・求める研修医、プログラム・募集要項、ジュニア・シニア・指導医・院長のインタビューを掲載。進路選択の判断材料としてお役立てください!

近江八幡市立総合医療センター

〒523-0082
滋賀県近江八幡市土田町1379
TEL:0748-33-3151
FAX:0748-33-4877
病院URL:https://www.kenkou1.com/

津田先生の近影

名前 津田 知樹
近江八幡市立総合医療センター 小児外科部長 指導医

職歴経歴 1971年に京都府京都市に生まれる。1997年に京都府立医科大学を卒業後、京都府立医科大学附属病院で研修を行う。1999年に朝日大学歯学部附属村上記念病院(現 朝日大学病院)外科に勤務する。2001年に京都回生病院外科に勤務する。2002年に京都府立医科大学大学院に入学する。2006年に京都府立医科大学大学院を修了し、京都府立医科大学附属病院小児外科医員となる。2007年に加古川市民病院(現 加古川中央市民病院)に小児外科医長として着任する。2008年に京都府立医科大学附属病院小児外科病院助教に就任する。2010年に京都府立医科大学小児外科助教に就任する。2010年に近江八幡市立総合医療センター小児外科に副部長として着任する。2012年に近江八幡市立総合医療センター小児外科部長に就任する。
日本外科学会認定医・専門医・指導医、日本小児外科学会専門医・指導医・評議員・近畿地方会評議員、日本周産期・新生児医学会認定外科医、麻酔科標榜医、ICD(Infection Control Doctor)、京都府立医科大学客員講師・臨床教授など。

近江八幡市立総合医療センターの特徴をお聞かせください。

地方病院なので、手術数や救急症例数、カテーテル検査数といった数字で表れるものは自慢しにくいのですが、どの科もアクティビティ高く頑張っています。当院は東近江地域における中核病院として高度な医療を提供し、救急救命、災害、周産期母子医療、地域医療などの拠点病院として、様々な機能を有しています。私は小児外科なので地域周産期母子医療センターの一員として働いていますが、本当に優秀なスタッフが揃っており、当院の周産期医療はこれからさらに伸びると思っています(笑)。一番アピールしたいことは、病院全体の雰囲気がとても良く、楽しく研修できるということですね。医師同士はもちろん、メディカルスタッフとの関係も良好で、お互いが尊重し合って、コミュニケーションを十分に取りながら仕事をすることができます。これは本当に自慢できますし、当院に見学に来ていただければ雰囲気の良さは分かります。

津田先生がいらっしゃる小児外科についてはいかがですか。

まず”小児外科とはどのような診療科?”ということについて話させて下さい。大人の場合、まず内科を受診し、手術をしないといけないとわかったとき、外科に紹介となります。ある程度の規模を有する病院では、一つの病院内に内科も外科もあるのは当然です。しかし小児に関しては、内科を診る小児科があっても、手術を担当する小児外科があるのは当然のことではありません。滋賀県内の病院で小児外科を標榜しているのは、当院を含めて3病院しかありません。そのような状況の中、小児外科は産まれたての赤ちゃんから中学生ぐらいまでの手術を担当します。したがって、とても小さく産まれた赤ちゃんですと500gぐらいの体重ですし、メタボの中学生なら100kgぐらいありますので、「200倍もの体重差がある患者さんを診て、手術で治療する。」という意味では他科にない特徴を持った診療科だと思います。対象年齢も小児外科特有の術後患者様では40歳以上の方も診ているので、身体の大きさだけでなく、担当させて頂く年齢も幅広いです。さらに大人の外科では、消化器外科であっても上部消化管、下部消化管、肝胆膵のように細分化しておりますが、小児外科では細分化されておらず、胸部、腹部を含め、頸部や体表も手術しています。つまり対象臓器や疾患も幅広いです。

近江八幡市立総合医療センターの初期研修プログラムで学べる特徴について、ご紹介くださいますか。

当院は市中病院であり、大学病院のように規模が大きくありませんので、各科での先生方の指導が中心となります。だからこそ当院で学べるメリットは、手技や手術などに積極的に関わっていく“参加型”研修であり、具体的で実践的な内容を学べることにあります。規模が大きく研修医の多い病院では、研修医一人あたりの手術や処置が少ない傾向がありますが、当院では初期研修医の先生方に参加してもらわないと、指導医側も大変ですので、常に一緒にやっていこうというスタンスです。しかし手技や手術に関しては決して危険のないように、必ず上級医がバックアップします。なんと言っても当院では「皆で面倒みなあかん、皆で育てなあかん!」という素地があります。また地域性の問題かもしれませんが、都市部の病院でも診たことがないような疾患に出会えることもあり、良い経験をしているのではないかと思います。

自由度の高さについてはいかがですか。

各診療科を回りながら、予定していなかった科を回りたいという希望があれば、プログラムの変更もできます。当院にない診療科を回りたいという場合でも、その科がある病院と交渉し、研修医のリクエストに少しでも応えるべく努力しています。したがって、他の病院よりは自由度は高いと思います。選択期間に関しても最初の1年目は必修科が中心ですが、2年目は選択期間が長く自由です。1年目の3月ごろになると、皆が色々なことを言ってくるので、嬉しい悲鳴を上げています(笑)。

初期研修医の人数はどのくらいですか。

1年目、2年目8人ずつの16人です。これに京都府立医科大学と滋賀医科大学の附属病院からの”たすきがけ”が加わりますので、時期によっては20人以上いるときもあります。

先生の研修医時代はいかがでしたか。

私はストレート研修の時代でしたので、最初から小児外科の医局に入りました。今の先生方のように色々な科を回った経験はなく、若い先生方から「最初から専門にしたい科を診られるのは羨ましいです。」と言われたりするのですが、逆に私からすれば色々な科を回って視野を広げられるのは羨ましいです。私が3年目のとき、長時間労働で身体を悪くしたことがあります。そのとき週にどのぐらい働いているのかを報告するよう言われたのですが、ほかの病院に当直に行ったりもしたので、週に120時間も働いていたことが分かりました(笑)。とても不健康でしたね。このようなことがないように、現在の臨床研修制度はうまく作ってくれていると思います。しかし私の頃は医局に縛られていたとは言え、好きな仕事(診療科)にひたすら打ち込んで、公私混同になってはいましたが、毎日が楽しかったです。

なぜ小児外科を選ばれたのですか。

深い理由はありません。前提として手術がしたかったです。ドラマなどを見て、手術をするシーンに憧れていました。そして子どもが好きだったので、手術と子どもをシンプルに足し算して小児外科に決めました。しかし小児外科に入局してみるとイメージと違ったり、色々なことがあったりして、10年ぐらいはどうしようかな、辞めようかな、消化器外科に移ろうかなと悩んでいました。

どのようなことがあって、悩まれていたのですか。

私が子ども好きというのは元気な子どもが好きだったわけです。しかし小児外科で診るのは「手術したら治った。元気になったね。」というお子さんだけではありません。思い通りにいかないこともありますし、生命を救えたとしても十分に楽しい生活を送れないほどQOLが悪かったり、ご飯すら食べられずに点滴で栄養を摂るお子さんもいます。救命すればするほど、そういうお子さんが増えていくのです。そういうお子さんにハッピーになってもらおうと始めた仕事なのにと思うと辛かったです。

津田先生の写真

その気持ちをどのように立て直されたのですか。

私は大学院で研究もさせていただいたのですが、やはり臨床が大好きです。臨床の現場で、そのようなお子さんと話したり、そういう状況でも頑張っているお子さんの姿を見るにつれて、「かわいそう」ではなく、一緒に寄り添って成長できたらなと考えられるようになりました。今は本当に充実していますし、医師になって20年以上が経ちますが、その頃よりも今の方が「もっと勉強しないといけないな」という気持ちが強くなっています。

「こんな研修医がいた」というエピソードがあれば、お聞かせください。

特定の研修医はいません。当院の特徴として、多くの研修医が初期臨床研修終了後も、当院に残ってくれることです。この研修制度が始まった年から計算しても3分の1、最近では2分の1の人が残ってくれています。そして自慢したいことは、今年行われた初期研修医対象の基本的臨床能力評価試験で、当院の総合得点が全国4位になりました。もちろんペーパーテストだけでは医師の実力や臨床力は測れませんが、皆が頑張ってくれた結果なので、とても嬉しかったですね。本当に嬉しくて、病院の管理者会議やスタッフ会議などに出席するたびに「全国で4番取りました」と言ってまわっています(笑)。

指導される立場として心がけていらっしゃることを教えてください。

私の仕事(臨床研修センター)は、診断や治療を教えることではなく、研修医が楽しく充実した研修ができるように環境を整備し、様々なトラブル対応が仕事だと思っています。臨床研修制度ガイドラインが改訂されれば、それに沿って病院の人的資源や設備をどうマッチさせるかを考えたり、各診療科で研修医が自主性を持って、望む研修を受けられるように環境を整備することだと思っています。研修医から無理難題を言われても「ちょっと待ってくれ」と言って、最終的には断ることがあっても、色々な部署と掛け合ったりします。また他病院との連携を調整して、「〇〇病院から研修OKもらったよ。」という交渉などにも奔走しています(笑)。またメンタルヘルスなども含め、研修医個別の対応もフォローしています。

最近の研修医をご覧になって、どう思われますか。

私も年をとったので、「最近の若者は、、、」というのがあったりなかったりしますが、このような不景気、コロナ禍、戦争といった閉塞感の強い時代にあって、限られた中でできることを見つけて、たくましく勉強している今の研修医たちは、本当にすごいと思います。こういう状況を受け入れて、不平不満を言うこともなく、できることを頑張ろうと笑顔で過ごしている研修医たちを見ていると、こちらが学ばなくてはいけないと思います。

研修医に「これだけは言いたい」ということがあれば、お聞かせください。

医師として私が一番影響受けた先生が、「外科医である前に医師であれ、医師である前に人間であれ」と、いつも強く言っておられました。小さいこと(診療科)にとらわれず、医師として人間として、患者に接しなさいという意味だと解釈しています。そして僕が一番伝えたいことは、上司や周囲にばかり気を遣うのではなく、どんな場合でも患者さんを一番に考える医師になってほしいです。一方、初期臨床研修には社会人としての第一歩という面があります。社会人として、報告・連絡・相談の「ほうれんそう」を常に心がけ、ほかの人とコミュニケーションを取りながら、仕事を進めてほしいです。最後に人としてですが、人としてのコミュニケーションの根底は挨拶にあります。人との付き合いは挨拶から始まりますし、挨拶ができると、ほかのことも自然と形成されると思っています。今の研修医にも一言目には「とにかく挨拶しろ」と言っています。色々なことを言っても最初は分からないですし、「ほうれんそう」の前にまず挨拶ですね。その甲斐あってか、研修医と廊下などで出会っても必ず挨拶してくれますし、私も倍の声で返すようにしています(笑)。

現在の臨床研修制度についてのご意見をお願いします。

ガイドラインの改訂があるたびに、プログラムや病院の体制を変えなくてはいけないので苦労しています。最近こういう仕事を担当するようになって、「医師臨床研修指導ガイドライン」を読むことが増えました。ガイドラインを読むと、後輩育成を大事に考え作っていることが分かりますし、作成された先生方を尊敬しています。最新のガイドラインでは、「医師としてのプロフェッショナリズム」が重要事項の一つになっていますが、それがきちんと身につくように指導していきたいです。始めてみないと分からないこともありますし、バージョンアップでの試行錯誤もあるでしょうが、こちらとしては「5年ごとの対応でも頑張りますので、さらに良い制度を作ってください」というのが要望ですね(笑)。

新専門医制度についてのご意見もお願いします。

専門医機構と学会の対立により、現在の専門医プログラムに入っている人たちがとても苦労しています。もう少し早く意見をまとめてほしいですね。

これから初期臨床研修病院を選ぶ医学生に向けて、メッセージをお願いします。

見学に来た医学生が、やはり手術数や救急搬送数を気にしていて、そういう数字で病院を選ぶ方が多い印象を受けます。それと「この病院はこれが得だ、損だ」という損得で決めようとする方がいらっしゃいますね。でも損得を勘定するとキリがありません。新専門医制度も始まり、全国どこでもある程度は標準化された研修ができるようになりました。だからまずは、どこか病院を見学して雰囲気の良さを感じたら、サッサとそこに決めても良いのではないでしょうか?6年生という大切な時期を、病院探しばかりに時間を費やすのはもったいないです。病院探しに時間をかけるよりは、医師になってから役立つよう国家試験の勉強をした方がいいですよ。国試をつまらない試験だと言う人もいますが、各科のエキスパートの先生方が作られた良問です。働きだしたら損得という面が見えてきますが、本人の心持ちでどうにでも変わるものです。「ここだ」と決めたらそこに入り、全力で一生懸命に自分にできることをしていきましょう。

津田先生の写真