松江生協病院
〒690-8522
島根県松江市西津田8丁目8-8
TEL:0852-23-1111
病院URL:https://www.matsue-seikyo.jp/
名前 鈴木 健太郎
指導医
職歴経歴 2004年 鳥取大学を卒業する。2004年 松江生協病院に入職。
日本内科学会(認定医)、日本循環器学会(専門医)、日本不整脈学会(専門医)
松江生協病院の特徴をお聞かせください。
当院は救急・急性期から回復期・療養までを守備範囲とする生活支援病院です。
DPCの診療を中心とした急性期の病院では、一定期間を過ぎると慢性期病院へ転院されるのですが、ケアミックス型というのは、同院の中に回復期や地域包括ケア病棟など色々なステージの方を受け入れる病棟があり、急性期から慢性期、退院の先まで支援する入院診療ができるので、特に高齢の患者さんには好評です。
研修医にとっては、ある疾患を治療して慢性期の病院に転院させて終わりではなく、在宅に復帰されるために何が必要なのか支援をするところまで一緒に考えていけるので、急性期から慢性期までが経験できます。そういうところが松江生協病院の研修の良いところですね。
松江生協病院の研修の方針や、先生の教育理念についてお聞かせください。
厚労省の医師臨床研修指導ガイドラインに則り、「医師としての人格の涵養」と「一般的な診療や技術の研鑽」の2つの柱を研修の方針としています。
そこに自分の研修プログラム責任者としての方針を付け加えるとすると、「患者さんの生活や社会背景を含めた診療をする」ということを教育理念にしています。
島根県は、入院患者さんの高齢化率が著しいです。若い患者さんなら入院から退院までスムーズですが、高齢患者さんの場合、ご病気によって失われた機能を必ずしも回復できないことがあります。障害を持って自宅に帰る場合、どんな支援が必要かを考える時に、その方の生活スタイルや経済状況、家族構成、社会的な背景を踏まえて処方箋を出さないといけないということです。高齢化社会を迎えている現在では、大事な視点ではないかと思っています。
先生がいらっしゃる循環器科の特徴をお聞かせください。
心不全や心筋梗塞、WPW症候群など一般的によくある循環器疾患の治療を中心としています。小児のカテーテルアブレーション、心疾患、心臓の移植などスペシャリストとしての診療を必要とする場合は、大学やセンター病院にお願いしています。
中小規模の市中病院ですので、循環器内科のコモンディジーズに加えて、内科領域一般のコモンディジーズを診るスタンスにしています。これはジェネラル&サブスペシャリティ、今は、「ジェネシャリ」と言われています。地域医療をやっていく上では、「循環器専門だから心臓しか診ないです。あなたの肺炎は診ません。動けなくなっている理由について診ません。」などのようなことを言っていたら成り立ちません。内科一般を中心に、高齢者の感染症や食べられない、動けないといった健康問題などに対応しつつ、自分たちの専門である循環器内科も対応します。
二足の草鞋になっているのは、地域医療としては効率が良いためです。その代わり、かなりスペシャルな領域に関しては、専門病院にお願いしています。棲み分けをしている分、私たちは地域にとって最良な形で循環器内科をやっていこうという、そんな診療科です。
先生が研修医から学ぶ事はありますか。
たくさんありますね。
私は若々しいと言われますが、研修医と接しているからかもしれません。すごく刺激をもらっています。
例えば診療の知識で言えば、私は不整脈専門医なので、循環器や不整脈の領域の知識はどんどんアップデートしているのですが、内科の糖尿病治療については10年以上前の知識で止まっていたりします。研修医が、内科の研修をした後に「鈴木先生、糖尿病では今こんなふうに言われていますよ」などと話してくれます。
彼らが、色々な診療科の最新の知識や考え方を身につけて、回ってきてくれるのです。各診療科の最新の知識や考え方を研修医から聞いて、私自身の知識のアップデートをしています。教科書を読むのも大切ですが、やはりその道の専門の先生に聞いてから調べると圧倒的に効率がいいなと思っています。
また、最近の研修医はスマートフォンやアプリ、ネット上の診療支援についてよく知っていて、便利な血液ガスの分析のソフトなどを教えてもらいました。学会のスライドを作ったり、資料をまとめたり、一気に処理するネットのサービスもよく知っています。自分が地味に作業していたものも、さらっとやってのけてしまう、そんなデジタルツールの活用が上手な世代なのであやかっています。診療中に研修医がスマホを触っていても、「ゲームをしていてけしからん」という発想ではなく、業務上何をやっているのか声をかけたりして、研修医からも学ぶ姿勢を大事にしています。
研修医にどのような医師になって欲しいですか。
医学的な知識や技術に触れると、医学的関心に邁進してしまい、時として患者さんの思いを置いてきぼりにしてしまうことがあります。例として、医学的所見でカテーテルアブレーションをやった方が良いと思うけれども、躊躇されている患者さんがいたとします。仕事の都合や医療費のことを心配されているのか、もしかしたら治療を躊躇う背景があるかもしれません。研修医には医学的な枠組みだけでなく、患者さんの視点で考えられるようになって欲しいと思っています。
2年間は医学的な枠組みを習得していくことにシフトしがちな時期なので、そこを色々な患者さんに触れて、患者さんの気持ちになって、考えて欲しいですね。
「印象に残っている研修医がいた」というエピソードがあれば、お聞かせください。
一印象に残っているのは、患者さんのもとに何度も行ったり、色々な診療科の先生のところに行ったりしていた研修医です。「こんな患者さんを受け持っていて、本ではこのように書かれていますが、先生としてはどのように考えますか?」など、患者さんの治療に関して、相談をしていました。すごくいいなと思ったことを今でも覚えています。フットワークが軽く、コミュニケーション能力がすごく長けている、そういった特徴のある研修医だったと思います。
「記者は足で稼ぐ」という言葉があるように、研修医は知識も経験もないから、まずは足を運び知識、情報を集めることが大事です。
例えば、消化器内科の先生に相談したいとなった時に私たち指導医でしたら、忙しいだろうから直接お会いする訳にはいかない…ということで、院内の紹介状のようなものを送ったりします。直にお会いしてお伺いすると、その専門医の先生の本音を聞ける機会になります。その研修医は、毎回紹介状を書いた上で、自分で専門医のところに赴いて何倍もの情報を吸収してきていました。
研修医に「これだけは言いたい」ということがあれば、お聞かせください。
最近、口酸っぱく言っているのは、「三方良し」という言葉です。
目の前の研修を通じて、「患者さん」を良くして、「自分」も成長して、「病院や組織」の発展にもつながるということ。チームや組織を強くするということ。自分の成長だけでなく、集団の成長も頭に入れてほしいと言っています。
例えば、研修医のリクルートの場面でも、周りの研修医を誘ってくる人もいれば、自分は忙しいから人を誘っている余裕はない、という人もいます。病院の機能や診療を良くしていくという委員会業務についても、そこに参加してくれる研修医の姿勢を求めています。
先生の研修医時代はどのようにお過ごしでしたか。
私は初期研修も後期研修も松江生協病院でした。
ちょうど、2004年で初期研修の必修化が始まった一期生です。なので、上の世代の先生方からは初期研修医に対して「色々な科目を回って何が身につくのか?」というような否定的な発言が世間では飛び交っていました。そういう空気の一方で、松江生協病院はその4年前からスーパーローテート的な研修をやっていたので、あまり軋轢を感じませんでした。
各診療科のローテートの経験があることで、救急外来での立ちふるまい、コンサルトの際の姿勢に上の世代の先生方と比較して違いがありました。何科にせよ最初にやるべきことが想起できるというところが研修必修化後の世代の違いかと思います。
初期臨床研修制度はそもそも「小児や妊婦さん、精神疾患の患者さん、どんな患者さんを診ても、初期対応ができる」医師を目指しています。そのために、色々好き嫌いをせずに研修する必要があります。自分の初期研修ではそんなところが良かったと思っているので、今の研修医にも伝えていきたいですね。
松江生協病院のPRをお願いします。
小さな組織なので、医師同士の距離やスタッフとの距離も近いです。「スタッフの皆さんが非常に優しい」と病院実習に来た学生さんによく言われます。実習で学生さんだけが、ぽつんとしてしまうことが無い医学生にも優しい病院です。
最近、医学生の皆さんに、ハイパー過ぎても大変だし、わからないし、ハイポ過ぎてももの足りないと言われます。松江生協病院であれば、たくさん経験したいと思えばできるし、少ない数をじっくり診たいと思えば、そうできます。研修医数は少人数制で自分のペースに合わせて研修ができるというところがアピールポイントだと思います。
これから初期臨床研修病院を選ぶ医学生に向けて、メッセージをお願いします。
一昔前までは都会に行かなければ!大病院に行かなければ!という志向が多かったように思いますが、今は島根の中小規模病院でも学べる!という風に視点が変わってきています。研修病院を選ぶ時には、超有名な大病院も見に行くもの良いですが、地方の中小規模の病院にも一度は見学しに行ったら、研修先選びの価値観が変わると思います。ぜひ一度見に来ていただけたら嬉しいです。