専門研修インタビュー

2022-10-01

船橋二和病院(千葉県) 専攻医 鈴木瞭介先生(総合診療) (2022年)

船橋二和病院(千葉県)の専攻医、鈴木瞭介先生(総合診療)に、病院の特徴や研修プログラムについてなど、様々なエピソードをお伺いしました。この内容は2022年に収録したものです。

船橋二和病院

〒274-8506
千葉県船橋市二和東5-1-1
TEL:047-448-7111
FAX:047-447-9745
病院URL:https://www.futawa-hp.jp/index.html

中薗先生の近影

名前 鈴木 瞭介 (りょうすけ) 専攻医
出身地・出身大学 / 医師免許取得年度 千葉県市川市・慶應義塾大学 / 2016年
初期研修施設 けいゆう病院
専攻医研修 総合診療科

医師を目指したきっかけをお聞かせください。

私には持病があり、普段の生活には全く支障がないのですが、特定の薬剤を接種すると症状が出てしまうという事情があります。そういう事情に詳しくなりたいという、自分勝手な理由が1つ目です(笑)。2つ目は父や母方の祖父など親族に、医師が何人もいて、母も薬剤師という環境で育ったことです。私は中学、高校とアメリカで過ごしました。中高時代は数学や物理が得意で、理数系に進みたいと考え、大学の教科書を読んだこともあるのですが、数十年後にどのような仕事をしているのかが想像できなかったうえに、大学の教科書も難しすぎて、これは駄目だと思いました(笑)。それから日本に帰り、医学部を受験しました。

学生生活はいかがでしたか。

空手部に入っていましたが、当時はそこまで厳しい部活動ではなく、緩めに活動していました。それから大学1年生のときに始めた家庭教師のアルバイトを6年間続けたことが思い出に残っています。医学部の学費が6年間で2000万円以上かかったので、奨学金をいただきつつ、勉強も頑張っていました。

初期研修の病院をけいゆう病院に決めたのはなぜですか。

周囲からの評判が良かったからです。けいゆう病院は慶應義塾大学の関連病院なので、無難なチョイスでもありました(笑)。自由選択期間が長いのが特徴で、色々な診療科を診たいとも思っていたのですが、結局は内科しか選択しませんでした。

内科をいつから志望されていたのですか。

外科で手術をするのは絶対に無理だと思っていましたし、いわゆるマイナー科にもあまり興味が持てなかったので、学生時代から内科を志望していました。

初期研修が始まってからはイメージ通りでしたか。

基本的には病棟と、当直のときに救急外来を担当する形でした。病棟ではそれなりに受け持つ患者さんの数が多かったですが、医師として成長できたのはやはり救急外来での経験があったからだと自分では評価しています。そこまで救急外来の回数を積んだわけではありませんが、一通りの手技が経験できました。初期研修を終えたあとに専攻医になった時点で独り立ちをしたのですが、自分で全てのことを行っていました。

初期研修を振り返って、いかがですか。

将来的には在宅医療をしたいと考え、今は総合診療科の専攻医をしていますが、初期研修ではそういった医療を診ていたわけではありません。けいゆう病院は二次救急の病院ですが、かなり重症な方が多いんです。いわゆる急性期医療が終わったあとの退院調整を一般病床で行っていたような病院でした。内科の部長の先生が「早く退院させろ」とおっしゃることに、どうすればいいのかと戸惑っていたんです。今は専攻医が地域包括ケア病棟で退院調整をしていますが、この仕事を知っていたら、最初から在宅医療に行くという選択肢もあったかもしれません。しかし、初期研修医は重症患者さんへの手技なども含めた対応ができた方がいいので、けいゆう病院のプログラムには感謝しています。

専攻医研修先として、まずはけいゆう病院の内科を選ばれたのですよね。

初期研修の終盤に自分のキャリアに疑問を持ち、それを知るためにも一度は医療現場から離れ、違う業界に身を置いた方がいいなと感じていたので、あえて別の病院で専攻医研修をしようとは思わず、消去法的にけいゆう病院に残りました。そして半年後の2018年10月に製薬企業に就職しました。

違う業界として、製薬業界を選ばれたのはどうしてですか。

薬や製薬業界に興味があったからです。母校の「慶應義塾医学部新聞」に製薬企業で働いている先輩医師の記事が載っており、それを見て「こういうこともやれるんだな」と、もともとあった興味が一気に加速しました。

就職活動はスムーズでしたか。

かなり大変でした(笑)。完全主治医制で24時間、電話がかかってきてもおかしくない病院でしたし、有給休暇が取りにくかったので、仲の良い先生に「ちょっとPHSを預かっていただけますか」とお願いしながらの就職活動でした。

中外製薬でどのような仕事をなさったのですか。

メディカルアフェアーズという部署で、薬の価値を最大化する仕事に携わっていました。この部署は営業やマーケティングから完全に切り離されており、薬の開発の第IV相にあたるところで、薬の良いところや悪いところを医学的な側面から考えていきます。専門家の医師と対話したり、学会での共催セミナーや学会などでの発表、論文の作成の仕事もありましたし、臨床研究もしていました。

武田薬品工業に転職されたのはどうしてですか。

日本の製薬企業はメディカルアフェアーズの歴史が浅いんです。武田も日本の企業ではありますが、グローバル化しており、上司も外国人でしたし、海外の知見を取り入れたうえでの専門的なメディカルアフェアーズをしていたので、転職しました。中外製薬に勤務を始めて1年後にはほかの企業も見ておく価値はあるなと考えるようになりました。私は帰国子女で、幸いなことに言葉の壁がないことも良かったです。

医療の現場に戻ろうと思われたのは何かのきっかけがあったのですか。

武田では週に1回、医師としての業務を行える外勤の日があり、何をしようかとインターネットで調べていく中で、訪問診療の需要が高いことを知りました。そこで、とりあえず訪問診療をやってみようと、2020年2月から川崎市の訪問診療専門のクリニックで働かせていただくことになったんです。訪問診療を始めてみると、週に1回の勤務ではありましたが、「こんな仕事をするんだ」と思い、意外に自分に合っていると気づきました。忙しいクリニックでしたが、とても楽しかったんです。武田での私の業績はそれなりに評価されていて、順当に行けば数年後にはラインマネージャークラスになれそうだったこともあり、大企業によくある人材開発プログラムやコーチングを受け、組織のマネジメントなどを学んでいたのですが、それを学んだうえで訪問診療のクリニックに行くと、いずれは訪問診療を仕事にしたい、勤務医に戻ったあとは自分でもクリニックの開業にチャレンジしたいと考えるようになりました。

そこで、専攻医研修のプログラムを総合診療科にされたのはどうしてですか。

将来、訪問診療のクリニックを開業するにあたり、必要なのは専門医資格だと思いました。その頃に新しくできた総合診療プログラムを選び、総合診療科の専攻医になることを決めました。開業するというゴールを設定し、そこから逆算していった形ですね。結局、製薬業界には3年半ほどいて、2022年4月に船橋二和病院に入職しました。

総合診療科の専攻医研修先として、船橋二和病院を選んだのはどうしてですか。

私は千葉県出身なので、千葉県の病院であることも大きかったですし、何よりも3年でプログラムを終えられることに惹かれました。3年のプログラムを持っている病院は首都圏では少なく総合診療科の専門研修プログラムには半年以上の僻地診療が求められていますが、船橋二和病院はそれをさんむ医療センターなどの千葉県内の医療施設で完結できます。私は結婚していますし、子どもももうすぐ生まれますので、引っ越しが難しい状況にあり、引っ越しをせずに済むプログラムは有り難かったです。総合診療の専門医は2段階になっており、総合診療専門医の取得後は病院総合診療専門医や家庭医療専門医という資格取得に進めることになっていますが、私はそこまで必要ありません(笑)。総合診療プログラムを最短の3年で終わらせたあとは在宅専門の診療所に就職し、ノウハウを学んだ方が私の目指す医師像に合致するのではないかと思いました。当院のプログラムには家庭医療や訪問診療も含まれているので、最低限のことはできるようになりそうで、このプログラムに乗らない理由はありませんでした。見学したのも当院だけで、すぐに決めました。

現在はどのような専攻医研修をなさっているのですか。

月曜日の午前は内科外来、木曜日の午前は救急外来で、そのほかは基本的には地域包括ケア病棟で研修をしています。今後、慣れてきたら、訪問診療をしてみたらどうかと指導医の先生からは言われています。地域包括ケア病棟では退院調整がメインの仕事です。急性期医療が終わったとされる患者さんに対して自宅退院や、自宅退院が困難な方には転院退院の調整を行っています。

専攻医研修で特に勉強になっていることを教えてください。

必ずフィードバックがありますので、全てが勉強になっています。宮原先生が内科外来、救急外来、病棟業務のフィードバックを週に1回はしてくださるので、全ての場面で学ぶべきことがあります。

専攻医研修で遣り甲斐を感じるのはどのようなときですか。

病気は治ったのですが、退院が難しいという患者さんの退院調整をやり切れたときです。退院調整には患者さんとの人間関係、信頼関係が必要ですが、患者さんやキーパーソンとなるご家族とよく話し、できるだけ万全の体制で退院をしていただくことを心がけています。

専攻医研修で辛いことはどのようなことですか。

今は木曜日の救急外来が辛いです。コロナ禍の第7波で、発熱外来も兼任せざるをえない状況で、今日も午前中だけで20人の発熱外来の患者さんを診ました。これに加え、救急車も診ましたし、内科外来にいらしたけれど、たまたま熱があった患者さんも発熱外来に回されてくるので、その方々の診察もしました。職員さんも感染したり、どなたかの濃厚接触者だったりする状況ですので、本当にきついです。

指導医の先生方のご指導はいかがですか。

宮原先生には定期的にフィードバックのうえでご指導いただいていますので、感謝しています。当院は外科や小児科の先生方も救急外来に当直などで入ります。小児科の先生も大人の患者さんを診ることができます。医師数は少なめですが、医局の医師全員が一丸となって診療にあたっています。私は宮原先生以外の先生方からはフィードバックをいただく機会がないのですが、初期研修医は上級医に必ずフィードバックを受けるようになっていますので、病院全体で研修医を育てようとする体制が整っているのが当院の良いところです。

カンファレンスはいかがですか。

病棟でのカンファレンスのほか、火曜日の夕方に症例検討などのケースカンファレンスがあります。ケースカンファレンスはどの病院でもしていることですが、病棟でのカンファレンスは特徴的です。地域包括ケア病棟に限って言うと、入院後1週間以内の患者さんについては必ず1回はしようということで、医師、看護師、リハビリのスタッフ、ソーシャルワーカー、退院支援看護師が揃い、対象の患者さんの治療が必要であれば、治療を並行することなど、退院させるために必要な課題を洗い出して、対応策を検討しています。

初期研修医の指導はどのようにしていらっしゃいますか。

救急外来や当直でしか、初期研修医とご一緒する機会がまだないのですが、当院の初期研修の方針はしっかりしていると感じています。「はい、やってください」という感じではないですね(笑)。当院にはそこまで重症の患者さんは来ないので、患者さんが来院されたときの初期評価をきちんとしなくてはいけないということや、鑑別疾患を2つ、3つは挙げようということを伝えています。検査をするにしても、治療をするにしても、まずは原因を特定しないといけないので、一緒に診察しながら、そこを丁寧に教えています。ただ2年目になりますと、ほぼ独り立ちになりますので、「とりあえず、やってみて」と任せることもありますが、「困ったら、いつでも電話して」と常に相談を受けられるようにしています。

コメディカルのスタッフとのコミュニケーションはいかがですか。

取りやすいです。病棟でのカンファレンスを週に1回は行っていますし、内科外来と救急外来の2コマ以外は病棟に缶詰状態ですので、病棟の看護師さんと理学療法士さんの名前は全員、覚えました(笑)。病棟の特性もあるのかもしれませんが、退院支援がメインの病棟ですので、殺伐とした雰囲気がありません。

今後のご予定をお聞かせください。

当院にも将来は開業したいと伝えたうえで勤務していますので、専攻医研修終了後の1、2年は訪問診療専門の診療所に勤務し、ノウハウを学びたいです。千葉県か、東京都の東側などの出身地に近いところに勤務して、開業できればと考えています。

専門医制度についてのご意見をお願いします。

私が内科の専攻医研修を始めたのは2018年で、新専門医制度の1期生でした。当時は大混乱状態でしたね(笑)。そして2022年に総合診療の専攻医研修を始めましたが、このプログラムについて言うと、全専攻医に僻地診療研修が必要なのかという個人的な疑問があります。僻地や離島では独り立ちに近い状況で何でも診るわけですが、そういった経験が当院や当院ぐらいの規模の病院でできないのかというと、それも違います。これは日本専門医機構が僻地の医師を戦力として確保するために総合診療医を送り出しているような印象で、専門医取得のための本来の主旨とは少しずれているように思います。

これから初期研修の病院を選ぶ医学生にメッセージをお願いします。

内科や外科を志向しているのであれば、重症の患者さんを診られる病院がいいです。初期研修後にどの科に行くにしても重症の患者さんを必ず診ないといけないので、初期研修の段階で重症の患者さんを診たり、慣れたりしておいた方がいいんですね。内科や外科に行くのであれば、なおさら初期研修では二次だけではなく、できれば三次も診られる病院をお勧めします。ただし野戦病院のような病院がいいのかと聞かれると、微妙です(笑)。私はそこが疎かで、三次救急の研修は1、2カ月しかなかったのが反省点です。そのため、専攻医研修の間に三次救急の病院に研修に行くつもりです。それから、初期研修では色々な診療科が揃っている病院がいいです。医学部を卒業した段階と初期研修2年目を終えた段階では志望する科が変わっている人が多いからです。その意味では多くの診療科を見ておくことは大事だし、それこそが初期研修医の特権だと思います。

専攻医研修の病院を選ぶ初期研修医にメッセージをお願いします。

船橋二和病院はどの診療科であっても、一般的な対応ができる先生方が揃っている病院です。規模が299床なので、そこまで重症な患者さんが救急外来に来られることはないのですが、安全が担保されたうえで、一般的な対応が身につきます。民医連の病院ということもあり、医師の労働時間削減にも対応を進めており、良い環境で疲弊することなく研修できます。民医連の病院には一部に誤解もあるようですが、私もそれを懸念していて、見学のときに質問すると「言われているようなことはないよ」とのことでした。実際に入職後も政治活動の強要などはありません。そこは考慮せずに、見学に来ていただければ嬉しいです。