専門研修インタビュー

2022-10-31

千葉県がんセンター(千葉県) 指導医(専門研修) 高野英行先生 (2022年)

千葉県がんセンター(千葉県)の指導医、高野英行先生に、病院の特徴や研修プログラムについてなど、様々なエピソードをお伺いしました。この内容は2022年に収録したものです。

千葉県がんセンター

〒260-8717
千葉県千葉市中央区仁戸名町666-2
TEL:043-264-5431
FAX:043-262-8680
病院URL:https://www.pref.chiba.lg.jp/gan/index.html

高野先生の近影

名前 高野 英行
千葉県がんセンター 診療部長 指導医

職歴経歴 1960年に埼玉県久喜市で生まれる。1986年に千葉大学を卒業後、千葉大学医学部放射線科教室に入局し、千葉大学医学部附属病院で研修を行う。1986年に琉球大学医学部附属病院に出向し、沖縄県立中部病院でも研修を行う。1989年に埼玉県立小児医療センターに勤務を経て、1993年に千葉大学医学部附属病院に助手として帰任する。1996年にアイオワ大学放射線科に臨床医として勤務する。1998年に帰国し、千葉大学医学部附属病院放射線科助手、千葉大学医学部放射線医学教室助手を経て、千葉大学医学部附属病院の講師に就任する。1999年に千葉大学医学部放射線医学教室の講師に就任を経て、2001年に千葉県がんセンターに画像診断部長として着任する。2014年に千葉県がんセンター診療部長に就任する。
日本医学放射線学会診断専門医、日本放射線科専門医会・医会副理事長など。

千葉県がんセンターの特徴をお聞かせください。

千葉県がんセンターは、都道府県がん診療連携拠点病院、がんゲノム医療拠点病院であり、ほとんどのがん種が集まってきます。したがって、ほかの病院と比べると、有所見で病気を持っている患者さんが非常に多く、画像診断や放射線治療に関してはそれだけ症例が豊富だということですね。外傷の画像診断もありますが、画像診断のメインはがんです。千葉県のがん診療の中心的な医療施設として、がんをどうやって診断して、どうやって治療していくかということに取り組んでいます。専門研修の連携施設としてはちば県民保健予防財団や君津中央病院があります。専攻医はちば県民保健予防財団でスクリーニング的な検診の研修を3カ月間、君津中央病院で救急疾患を診る研修を3カ月間行うことになっています。

高野先生がいらっしゃる放射線科の特徴もお聞かせください。

画像診断部、放射線治療部、核医学診療部といった部門に分けており、それぞれの専門の医師が診療を行っています。画像診断部にはCTが3台、MRIが4台、異なるエネルギー情報を得られるCTなど、大学病院並みの設備があります。放射線治療部には放射線治療の機械が3台あり、強度変調放射線治療が可能です。核医学診療部にはPET-CTが2台、SPECT-CTも完備していますので、大学病院以上に揃えていると自負しています(笑)。

千葉県がんセンターの放射線科専門研修プログラムの特徴をお聞かせください。

放射線科の場合は放射線治療をするにせよ、核医学をするにせよ、画像診断が基本となりますので、放射線治療や核医学の前に画像診断の研修を行い、そのあとに放射線治療や核医学を研修することになっています。部門ごとに分かれてはいますが、それぞれの部門で連携をきちんと取っていますので、専攻医の進捗状況を把握し、一つのことができるようになったときに次の部門に回ってもらうようにしています。

院外の研修先もありますね。

まず、ちば県民保健予防財団が挙げられます。そこは名前の通り、検診をメインにしているところです。当院は有所見の患者さんが多いのですが、予防財団で学べるのは所見が全くないところから探していく技術ですので、当院とは違う研修ができます。次に君津中央病院はドクターヘリなどを持ち、緊急対応に優れている病院ですので、救急疾患を学べる体制になっています。院外の研修期間も、千葉県に雇用された状態で研修を受けられますので、県職員としての身分保障があります。

千葉県がんセンターの放射線科で研修された先生方はどのようなキャリアアップをされていますか。

千葉県は放射線科の診断医、治療医ともに極端に少ない県で、県立の病院の中で常勤の医師がいる病院は当院だけなのです。そのため、当院で研修して、そのまま残りたいという希望があれば、常勤医師として雇用しています。当院で初期研修、後期研修を行ったうえで、現在も当院に残っている医師が3人います。

専攻医研修後も常勤医師として残れるのはいいですね。

家庭の都合などで出ざるをえない人もいますが、当院で研修をした人がきちんと残れるように、2人の枠しか作っていないんです。当院に研修しに来てくれた人を育てて、そのままキャリアアップできる形で進めています。専攻医研修で4人や5人を採用したとしても、症例は豊富なので、研修そのものはできます。しかし、研修後にほかの病院に出ていかないといけないという事態はなるべく避けたいです。医師のキャリアは大事ですので、キャリアをどのように作っていくのか、残りたい人が全員残れるようにするにはどうすればいいのかなど、この臨床研修制度が始まった頃から千葉県病院局との間で県のシステムとして構築してきましたが、10年以上が経って、ようやく形になってきましたね。

カンファレンスについて、お聞かせください。

放射線科の診断が関連する肝胆膵や食道、胃、大腸といったところを中心に、頭頸科、婦人科、泌尿器科、整形外科などと週に1回ずつのカンファレンスを行っています。放射線科医が中心になって画像を供覧しながら皆でディスカッションして、治療方針を決めています。放射線科の医局の中にカンファレンス室があり、80インチの大きなディスプレイを置いていますので、放射線科医が症例を映しながら読影し、内科、外科、病理科、放射線治療部の医師を含めて、ディスカッションしています。

高野先生の写真

専攻医も発言の機会が多いですか。

初めはなかなか入ってこられないのですが、専攻医研修の終盤ではきちんと役割を果たせるようになります。例えば、何が重要なのかが分かるような画像の出し方をしたり、画像を見て「肺に転移がありません」というようなことを述べることができるということですね。放射線科医の仕事はレポートだけではありません。ディスカッションこそが大事なので、カンファレンスではディスカッションすることを学んでもらっていますし、「レポートを書くよりもカンファレンスに出て発言しなさい」と言っています。発言すると、信用度が上がるんです。信用されると、何かあったときに「先生、これはどうですか。画像を読んでください」という声がかかりますので、カンファレンスを他科の医師と信頼関係を作る場だと思ってほしいですね。

女性医師の働きやすさに関してはいかがでしょうか。

新専門医制度になってから、放射線科にはまだ女性医師が入ってきていないんです。私は初期研修の責任者も務めているのですが、初期研修医の中には出産して、1年間の育児休暇を取得し、育児休暇明けに初期研修を再開した人がいました。また消化器内科にも育児休暇明けの医師がいますし、県のシステムとして働きやすさを整備しています。院内保育所もあります。数が少ないので、医師なら優先して預けることができるようです(笑)。

先生が放射線科を選んだのはどうしてですか。

私たちの頃は画像診断も放射線治療もそれほどメジャーではなく、マイナーな科だからこそ、自分のやりたいことができるのではないかと考えたことが一つです。当時は東日本よりも西日本の方が放射線診断は進んでいました。それで大学生のときに、琉球大学の放射線科の教授が千葉大学から行っていたこともあり、まだ卒業生もいないということで、半分は観光気分で琉球大学に見学に行ったんです。そのときに沖縄県立中部病院にも見学に行ったら、ハワイ大学から3カ月ほどのサバティカルで来ていた先生が教えておられ、その先生につかせていただき、色々と質問しているうちに放射線科は面白いなと感じたことも理由です。アメリカの放射線科医は単純写真から複雑なものまで何でも読んでいて、多少ははったりの部分もあるのでしょうが、そういうことも含めて面白かったですね(笑)。放射線科医がdoctor’s doctorとして仕事をしているところを見て、いい仕事だと思いました。

先生の研修医時代の思い出をお聞かせください。

大学卒業後すぐに千葉大学の放射線科に入局し、大学病院で研修をしていました。半年経った頃に琉球大学から「卒業生がいないので、人が欲しい」というお声がかかり、琉球大学医学部附属病院で研修することになったんです。講師の先生は千葉大学出身で、助教授の先生がお2人とも東京慈恵会医科大学出身の方々でしたが、皆さんから熱心に教えていただきました。沖縄だからか宴会が多く、しかも遅い時間に始まるんです。終わったと思ったら「読影に行くぞ」と言われ、夜中の12時ぐらいから午前様の読影をしたこともありました(笑)。研修の途中で上の先生方がいなくなり、あまり研修できなくなったので、沖縄県立中部病院に移り、半年ほど研修しました。中部病院では外傷の放射線診断を学べたのが良かったです。

専攻医に指導する際、心がけていらっしゃることはどんなことでしょうか。

私が先に「こういうことをやってごらん」と言って、実際にやってもらって、それを修正していくのですが、最終的には専攻医本人が自主的にやらなくてはいけません。当院には日本語のみならず、英語の図書も多く揃えているのですが、「このへんにこういうことが書いてあるよ」と示し、専攻医に読んでもらうこともあります。放射線科医はほかの診療科の医師と話す機会が多く、そのときに「上の先生が言っています」ではなく、「ここに書いてありますよ」と根拠を示すことが大事ですし、それが信用に繋がるのです。自分で文献を探して、自分で学ばないと、上級医に言われたことをするだけになってしまうので、自分で学んだことを他科の医師に伝えることができるようになってほしいと願いながら指導しています。

今の専攻医を見て、いかがですか。

以前と比べると働き方改革が進んでいますし、県の病院ということもあり、時間が来れば、きっちり帰っているという印象です(笑)。しかし、よく頑張っていますね。先日も英語の論文の指導をしたのですが、言われたことをきちんと修正できるので、すぐにアクセプトされました。

現在の臨床研修制度について、感想をお聞かせください。

始まった当初は色々と問題がありましたが、それなりに軌道に乗っていると感じています。この制度では色々な診療科を回るわけですが、内科に行った人は外科で習った手技は恐らく記憶に残らないでしょう。しかし、外科の指導医と話ができたという経験は大きなものになります。学生時代は教わるだけですが、臨床研修で指導医と話をする機会を持てると、相談が必要なときに相談しやすくなります。他科の指導医との関係が作れるのがこの制度の良いところです。皮膚科に行ったとしても、内科や外科の医師がしていたことが分かっていれば、相談したり、患者さんを送ったりしやすくなります。私は放射線科医ですが、放射線科を専攻したい人が2年目の選択期間に数カ月、放射線科を回るのはあまり意味がないと思っています。そのぐらいの経験は専攻医研修ですぐに追いつけますし、初期研修では放射線科とあまり関係のない科を回っておいた方が医療の見方が変わります。様々な診療科を回り、こういう考え方があるんだなとか、同じような治療をしても結果が違うことがあるんだなといったことを経験してほしいです。学生時代の学びはバーチャルですが、初期研修医は実体験として見ることができるので、将来に繋がる考え方のベースが構築されるはずです。

現在の専門医制度について、感想をお聞かせください。

まだサブスペシャリティのところがはっきりしていません。放射線科に関しては2段階に落ち着き、サブスペシャリティが放射線診断、放射線治療、放射線カテーテル治療となっていますので、以前のプログラムと大差なく、大きな混乱はありません。しかし内科や外科の方々にとっては大変です。特に内科は消化器内科と消化器内視鏡を2つ取ろうとすると、肝臓内科が取れないなど、学べる範囲が狭くなってしまいました。ただ国の制度として見た場合、後期高齢者の増加に伴い、リハビリテーション病院などのバックアップのための病院が増えていますが、そうした病院ではいわゆる侵襲的な治療は難しいですし、少人数の医師で多くの患者さんを診ていますので、総合診療科の医師のような考え方が求められます。例えば「私は消化器内科医だから循環器は診ない」というのは通用しないでしょう。したがって、サブスペシャリティを持つ医師が活躍できる、当院のような病院を集約しないといけません。これからの放射線科医は集約された病院で専門的な領域を担っていくことになるのだと思います。

これから専攻医研修の病院を選ぶ初期研修医にメッセージをお願いします。

がんセンターと聞くと、症例に偏りがあるのではと誤解されがちです。しかし日本人の半分ががんになるのです。それゆえ当院はさすがに外傷の患者さんは少ないですが、心筋梗塞や脳梗塞、合併症の患者さんは多くおられますので、一般的な内科疾患を診る機会は豊富にあり、がんがある程度コントロールできている患者さんには普通の総合病院と変わらない診療をしていますので、偏りはありません。一方で、有所見の患者さんが非常に多く、同じ膵臓がんでも画像ではっきり分かるがんから分かりにくいがんまで、毎回異なる画像を見ることができます。がんの診断に関しては専攻医の中でも誇れるぐらいの実力がつきますよ。これができると、ほかの病院に行っても「がんを見逃すことはありません」と言えるようになります。当院では画像診断の基本をきちんと研修したあとで、放射線治療やPET診断も学べます。検診ですと「見ても見ても何もない」というストレスがありますが、がんセンターは患者さんの集積率が高く、ほとんどが有所見ですので、そうしたストレスがありません。診断や治療のほか、レポートを書いたり、各診療科の医師とディスカッションする機会も多く、場慣れしやすい病院だと思います。