初期研修インタビュー

2022-12-01

千葉県がんセンター(千葉県) 指導医(初期研修) 武内正博先生 (2022年)

千葉県がんセンター(千葉県)の指導医、武内正博先生に、病院の特徴や研修プログラムについてなど、様々なエピソードをお伺いしました。この内容は2022年に収録したものです。

千葉県がんセンター

〒260-8717
千葉県千葉市中央区仁戸名町666-2
TEL:043-264-5431
FAX:043-262-8680
病院URL:https://www.pref.chiba.lg.jp/gan/index.html

先生の近影

名前 武内 正博
千葉県がんセンター 腫瘍血液内科部長、指導医

職歴経歴  1973年に岡山県岡山市に生まれ、千葉県千葉市で育つ。1998年に千葉大学を卒業後、千葉大学第2内科に入局し、千葉大学医学部附属病院第2内科血液グループ、救急部・集中治療部、代謝内分泌グループで研修する。1999年に千葉県立東金病院に勤務する。2002年にNTT東日本関東病院に勤務する。2003年に千葉大学大学院に入学し、2007年に修了するが、このうちの2年3カ月間は千葉大学大学院の岩間厚志教授のもとに学内留学し、細胞分子医学を学ぶ。2007年に千葉大学医学部附属病院に勤務する。2009年に千葉大学医学部附属病院血液内科助教、2018年に千葉大学医学部附属病院血液内科診療講師、2019年4月に千葉大学医学部附属病院血液内科講師に就任を経て、2019年10月に千葉県がんセンターに腫瘍血液内科部長として着任する。
日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本血液学会血液専門医・指導医、日本造血細胞移植学会評議員・造血細胞移植認定医、日本骨髄腫学会代議員、日本がん治療認定医機構 がん治療専門医など。米国血液学会にも所属する。

千葉県がんセンターの特徴をお聞かせください。

千葉県がんセンターは今年創立50周年を迎えました。全国で3番目に古いがんセンターであり、がんに対する診断や治療のみならず、緩和医療まで含めた総合的な形で、がんの患者さんのためにより良い医療をしていこうと取り組んできた病院です。

武内先生がいらっしゃる腫瘍血液内科についてはいかがですか。

腫瘍血液内科では血液内科領域と腫瘍内科領域のがんを診ています。特に悪性リンパ腫は全国でも有数の症例数ではないかと思っています。2年前に新しい病院になったのですが、無菌室を20床作り、骨髄移植も含めて、造血幹細胞移植や脳死移植ができる体制になっています。腫瘍内科の領域でも悪性腫瘍や原発不明がん、泌尿器科系の腫瘍など、化学療法が適応になる患者さんに対しては当科で引き受けて治療していますので、様々ながんを総合的に診られます。

千葉県がんセンターの初期研修プログラムで学べる特徴について、ご紹介くださいますか。

千葉県立病院群でのプログラムとなっており、基幹病院が千葉県がんセンターです。千葉県がんセンターで不足するところは千葉県循環器病センター、千葉県救急医療センター、千葉県精神科医療センター、千葉県こども病院、千葉県立佐原病院などで研修できますし、このほかにも連携している病院があります。当院はがんに対しては非常に強い病院なのですが、がん以外のいわゆるプライマリケアに関しては循環器病センターや佐原病院で、より高度な三次救急は救急医療センターで、小児科は小児科専門医が豊富に在籍するこども病院で学べるなど、それぞれの初期研修医のニーズに合わせて研修できるところが特徴です。

自由度の高さについてはいかがですか。

基幹病院である当院での研修期間が1年以上という規定がありますが、その中での自由度はもちろんありますし、それ以外の期間に関しては初期研修医の希望に沿った形で病院群の5病院をはじめとした協力型病院等から選択することができます。2年次にローテートする病院については1年次の秋頃にアンケートを取って決めます。それまでに指導医や先輩研修医に相談したり、情報を聞きながら自分に合った病院を探していけるので、自由度は高いですね。

初期研修医の人数はどのくらいですか。

各年次12人ずつの24人います。2023年度もフルマッチしましたので、13人が来る予定です。私としてはちょうどいい人数だと思っています。

先生の研修医時代はいかがでしたか。

1年目は千葉大学医学部附属病院にいたのですが、1年目の後半から集中治療部で研修したんです。集中治療部では3人で当直を回していたので、1カ月に10回の当直がありました。朝も早いし、夜も遅いし、3日連続で当直をするとなると、ほぼ寝られない日が3日続くことになります。給料を時給に換算すると300円や400円ほどでしょう(笑)。でも、そのときにできた人間関係は強く、指導医の先生とは今でも患者さんのやり取りで連携していますし、重症患者さんの管理を学んだことはいまだに医師としての基本となっていますし、役に立っています。ハードでしたが、その分、身についているんですね。

なぜ集中治療部で研修しようと思われたのですか。

学生時代に集中治療部か第2内科か最後の最後まで迷った経緯があり、当時はイレギュラーだったのですが、それぞれの教授にお願いにいったんです。集中治療部の教授からは「3カ月では短いから、半年いるならいいよ」と言われたので、第2内科の教授に「集中治療部を半年回らせていただくことになりました」とお伝えしました。わがままを言わせていただきましたが、非常に良かったです。

千葉県立東金病院にもいらしたのですね。

東金病院は今はなくなってしまった病院ですが、卒後2年目から4年目までいました。二次救急の病院ですが、一次はもちろん、東金地域には三次救急の病院がなかったので、心肺停止の患者さんなどの三次に近い救急も普通に診ており、多彩な症例を経験できました。大変ではありましたが、医師としての最初の数年はとても大事ですし、私もその後は専門である血液内科医として勤務しているので、内科医として過ごせたのは東金病院までなんです。一言で言うと、自分の基礎を作ってくれた病院でした。

なぜ血液内科を選ばれたのですか。

学生の頃から内分泌・代謝内科の先生と仲良くしていたので、第2内科では内分泌・代謝のグループに入るつもりでいました。研修1年目に何を学ぶかを決めるときに、内分泌・代謝の先生から「内分泌・代謝は頭は使うことは多いけれど、身体を動かすことがないので、手技を学ぶために血液を回ったら」と勧められ、第2内科の血液グループを回ることになったんです。それで血液内科を回ってみたら、楽しかったんですね。集中治療部も興味があったぐらいですから、治療が難しい患者さんを診る意味では私に向いていると思いましたし、回って1、2カ月が経ったときには既に血液内科を専門にすると決めていました。今も学生さんに「学生の頃に考えていた科と違う科を専門にするのはよくあることだよ」と自分自身の経験も踏まえて話しています。私の同期の血液内科医も学生の頃は別の科を志望していて、血液内科は検討すらしていなかったのですが、今はある病院でばりばり働いています(笑)。学生のときの勉強と実際の経験から得られたものは違うわけですね。この臨床研修制度が始まってからも、腫瘍血液内科を回ってくれた初期研修医の中で「やっぱり楽しい」と血液内科を志望するようになる人が何人もいました。

先生の写真

血液内科の面白さはどこにありますか。

誰がやっても同じ結果になるのではなく、うまくやれば治せるかもしれないことです。外科でも下手な手術では死んでしまう患者さんが外科医の腕が良ければ助かることがあります。内科でも専門的な知識が十分にあり、診断と治療を先手を打って行うことによって、助かる領域があるのだとするなら、それが血液なのだと思います。それから私は患者さんとお話しするのが好きなんです。血液内科は1回の治療が半年から1年かかることもありますし、私も何十年とお付き合いしている患者さんもいます。そういうコミュニケーションを取りながら治療を進めていけるのが血液内科の魅力です。

「こんな研修医がいた」というエピソードがあれば、お聞かせください。

千葉県出身で他県の大学に行き、千葉に戻ってきて、千葉大学医学部附属病院で初期研修をした人がいました。見ず知らずの大学病院ですから、最初は自信なさげでおどおどとしていたのですが、とてもいい人だったので、皆で手取り足取り指導したんです。そうしたら血液内科を面白いと思ってくれたようで、今は血液内科医として堂々と活躍しています(笑)。そういうところを見ると、成長したなと嬉しくなりますね。その先生のように、研修をしている中で血液内科の面白さを分かってくれて、一緒に働く仲間になってくれることがときどきあるので、楽しいです。

指導される立場として心がけていらっしゃることを教えてください。

考えてもらうことです。考えてもらうための材料や足りない知識は提供しますが、「ああして、こうして」と指示するのではなく、「次はどうしようか」と一緒に考えるスタンスで指導したいと思っています。

最近の研修医をご覧になって、どう思われますか。

当院に来て3年ですが、熱心でよくやってくれている人たちばかりです。お客様にならず、きちんとチームの一員として仕事ができる人が多いです。不満に思うことはないですね。

研修医に「これだけは言いたい」ということがあれば、お聞かせください。

学生のときに見ていたことと医師として見える世界は違うので、余計な先入観を持たずに、それぞれの診療科に行き、現場で精一杯頑張って、自分の将来を決めていただきたいと強く思っています。

現在の臨床研修制度についてのご意見をお願いします。

私たちの頃は学生のときに専門にしたい科を決めて入局し、入局後は内科や外科といった教室でキャリアを積んだわけですが、それがなくなったとなると、下手をすれば学生の延長になってしまいます。1、2カ月しか回らないので、手を抜こうとすれば抜けますし、それでは学生の臨床実習と変わりません。教える側の私たちとしても、私たちが1、2年目の頃に与えられていた権限に比べると、今の初期研修医に経験させられる部分が少ないことが気になります。ただ、色々な診療科を短い期間で回ることの弊害はあっても、医師として現場で診ることで得られる経験は大きいものですので、その意味では良い制度だと感じています。

新専門医制度についてのご意見もお願いします。

これまで統一されていなかったところがきちんと整備されたことは良かったです。以前は学会の会員になって、何度か学会に出席すれば取得できる専門医があるなど、専門医が乱立した時期がありましたが、そのように簡単に取得できる専門医資格は資格マニアには良いのかもしれません(笑)。しかし患者さんには良くないことです。患者さんの立場からすれば、専門家としての信用に値する専門医制度を作る必要がありますし、医師にとってもプロフェッショナルとして仕事をしていくうえで、自分の本当の専門を示すことができる資格でないといけません。厳しくなって大変な面もありますが、当院としても専攻医がそれぞれの専門医資格をきちんと取得できるような仕組みを構築していきたいと考えています。

これから初期臨床研修病院を選ぶ医学生に向けて、メッセージをお願いします。

千葉県立病院群のプログラムでは専門に特化した病院や地域の病院など、多彩な特徴のある病院を回れるようになっていますので、医師として必要になる場面を多く経験できます。医学生の皆さんは将来、何科に行けばいいのか、自分は何科の医師に向いているのか、今はまだ分からず、悩んでいるかと思いますが、当プログラムで経験を積む中で決めていけばいいのです。私たちもより良いプログラムにしていきたいと考えていますので、研修が始まってからも困ったことや問題があれば、いつでもお知らせください。様々な病院で様々な経験を重ねたいという意欲のある方をお待ちしています。

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