専門研修インタビュー

2023-03-01

札幌医科大学附属病院(北海道) 指導医(専門研修) 松浦基樹先生 (2023年)

札幌医科大学附属病院(北海道)の指導医、松浦基樹先生に、病院の特徴や研修プログラムについてなど、様々なエピソードをお伺いしました。この内容は2023年に収録したものです。

札幌医科大学附属病院

〒060-8543
北海道札幌市中央区南1条西16丁目291
TEL:011-611-2111
FAX:011-621-8059
病院URL:https://web.sapmed.ac.jp/byoin/center/index.html

松浦先生の近影

名前 松浦 基樹(もとき)
札幌医科大学医学部 産婦人科学講座講師 臨床研修・医師キャリア支援センター副センター長 指導医

職歴経歴 1978年に北海道札幌市に生まれる。2004年に札幌医科大学を卒業し、札幌厚生病院、札幌医科大学附属病院で初期研修を行う。2006年に札幌医科大学附属病院で後期研修を行う。後期研修終了後に札幌医科大学大学院に入学する。2012年に札幌医科大学大学院を修了し、日鋼記念病院産婦人科に科長として着任する。2015年にがん研有明病院に勤務する。2017年に札幌医科大学医学部産婦人科学講座に助教として着任する。2018年に札幌医科大学医学部産婦人科講師に就任する。2020年に札幌医科大学附属病院臨床研修・医師キャリア支援センター副センター長を兼任する。
日本産科婦人科学会専門医・指導医、日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医、日本臨床細胞学会専門医・指導医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本癌治療学会がん治療認定医、日本ロボット外科学会専門医、daVinci(Xi)Certificate、daVinci(Si/X/Xi)Procterなど。

札幌医科大学附属病院の特徴をお聞かせください。

 札幌医科大学附属病院は大学病院でありながら、各科の連携がかなり密に取れている病院です。どこかの診療科同士は仲が悪いとか、どこかの診療科には頼みにくいということはありません(笑)。卒業生が多いということもあるのか、全体的に良い雰囲気で仕事ができる病院だと思っています。ただ最近は卒業生の割合が減ってきまして、2022年度の専攻医99人のうち、2割が他大学出身者となっています。

松浦先生がいらっしゃる産婦人科の特徴もお聞かせください。

 産科、婦人科、不妊症の3つの柱で診療しています。産科は最後の砦のように、ハイリスクの妊婦さんを積極的に受け入れ、診察しています。婦人科は婦人科がんの手術件数が多いです。これまで北海道では北海道がんセンターと当科が1位、2位を争ってきたのですが、最近は当科の症例数がかなり増えており、全国でもトップクラスの症例数を誇っています。手前味噌ですが、ロボット手術や腹腔鏡下手術などの低侵襲手術では全国的に見ても有名な医局だと思います。不妊症に関しては札幌市内に不妊症専門のクリニックが多くありますので、通常の不妊治療で妊娠できる方はもちろんクリニックにいらっしゃっているのですが、クリニックでは対応が難しい症例などの場合は当科で治療を行っています。

札幌医科大学附属病院の産婦人科専門研修プログラムの特徴をお聞かせください。

 今は産婦人科専門研修プログラムのみなのですが、今後は小児科と産科を合わせた周産期専門研修プログラムも作成する予定にしています。作成する理由としては、学生や初期研修医のうちに産科か小児科を決めきれなかった方、産科と小児科のどちらも学びたい方、周産期に特化した専門研修をしたい方が一定数おり、そういった方々のニーズに応えるためです。内容としては、もちろん名前の通り、NICUをはじめ、産科と小児科の研修を重点的に行うのですが、一般的なプログラムでは研修できない行政での研修や新しく協力施設となる本州のハイボリュームセンターなどでの研修を考えています。

現在のプログラムでも院外の研修先が豊富ですね。

 北海道内の様々な医療施設から選べます。例えば、通常の分娩を多く経験したいということであれば、大学病院だと通常の分娩はそこまで多くはありませんので、関連施設に1カ月ほど研修に行き、通常の分娩をしっかり経験するといった研修も可能です。

札幌医科大学附属病院の産婦人科で専門研修をされた先生方はどのようなキャリアアップをされていますか。

 産婦人科での専門研修を終えたあとは産科か婦人科に専門が分かれ、どちらかのスペシャリティを高めていくわけですが、最近は半々ぐらいに分かれており、不妊症を専門にする人も一部います。皆がバランス良く、自分の専門を決めていっていますね。勤務先としては大学病院に残る人、外の病院に出る人もいますし、大学院に入学する人もいます。

カンファレンスについて、お聞かせください。

 産婦人科の手術日は週に2日ですが、手術室を多く使えるので、1日に8件、週に16件ほどの手術を行っています。その術前カンファレンスがあり、手術する患者さんの画像を見たり、術式を皆で検討しています。また、いわゆる抄読会のような勉強会を兼ねたカンファレンスもあります。産科であれば産婦人科医と小児科医が集まるカンファレンスがありますし、婦人科であれば治療方針を決めるチームカンファレンスを毎日行ったうえで診療しています。

専攻医も発言の機会が多いですか。

 多いですね。基本的には専攻医がプレゼンテーションをして、指導医役のスタッフがコメントします。そこで専攻医が何か分からないことがあれば教えるなどの指導をしています。

女性医師の働きやすさに関してはいかがでしょうか。

 当科は男性医師よりも女性医師の方が多く、子育て中の女性医師も大勢おり、妊娠したことを言いにくいとか、休みにくいといったことは一切ありません。女性にとっては非常に働きやすい医局だと思います。院内保育所もあり、使っている医師もいますが、病院の周りにも保育所が多くありますので、そういった保育所を使っている医師もいます。札幌市内はこだわりのある保育所ならともかく、一般的な保育所であれば争奪戦になることもありません。

松浦先生の写真

先生の研修医時代はいかがでしたか。

 私は初期研修で母校の札幌医科大学附属病院を選びました。理由は母校であれば周囲に知っている人がいますし、困ったときに助けていただけるのではないかと思ったからです。既に産婦人科医になると決めていたので、大学病院で初期研修をした方がスムーズに後期研修に進めるのではないかとも考えました。初期研修では外科系の手術を多く経験したかったので、たすきがけのプログラムを選び、1年目は外科系の手術が盛んに行われている札幌厚生病院に行き、様々な手術を経験させていただきました。

先生はいつから産婦人科を目指していたのですか。

 大学を卒業するときには決めていました。産婦人科は分娩もあれば、手術もあるなど、診療の幅が非常に広く、一生仕事をしていくのに飽きないかなと思ったんです(笑)。専門性を身につけていくにあたっても、幅広い選択肢があることが良かったですね。

後期研修も札幌医科大学附属病院でなさったのですね。

 当時の指導医の先生が非常に熱心で、「とにかく学会発表をしなさい、論文を書きなさい」とよく言われていました。その頃はそれがいいと思わなかったこともありました(笑)、しかし振り返ってみるとそういう指導を受けられたのはとても有り難いことでした。発表したくないなら発表しなくていい、論文を書きたくないなら書かなくてもいいという指導医もいるかもしれませんが、私はそういう指導を受けなかったので、自分がステップアップするにあたって、いい経験ができました。今は良い思い出となっています。

がん研有明病院に行かれたのはどうしてですか。

 がん研有明病院は婦人科のがん手術に関して、日本で一番の症例数を持っているからです。手術は数多く経験すべきものですし、ハイレベルな手術を経験することで技術も上がりますから、日本のナンバーワンの病院で2年間、研鑽を積みたいと考え、国内留学という形で行ってきました。

専攻医に指導する際、心がけていらっしゃることはどんなことでしょうか。

 一つはできるだけ多くの手技をさせることです。とにかく手を動かすことが大事です。私たちの時代の手術教育は「見て覚えろ」というものでしたが、今はそういう時代ではありません。私は婦人科を専門にしていることもあり、手術を教える機会が多いのですが、「見て覚えろ」ではなく、自分がしている手術をきちんと言葉で表現しながら指導することを心がけています。専攻医が実際に手術するときも怒らず、良くない場合は良くない理由を言葉で表現して理解してもらうようにしています。

今の専攻医を見て、いかがですか。

 私たちの時代と比べると、非常に恵まれていると感じます。婦人科の話で恐縮ですが、以前の手術はお腹を切る開腹手術が主流だったので、若い医師がお腹の中を見ようとしても全く見えなかったんです。でも今は腹腔鏡やロボット手術が主流ですから、お腹の中が画面に映り、執刀医がしている手術をそのまま見ることができます。しかも全ての手術を録画しますので、色々な手術を見て学ぶことができますし、繰り返し見ることも可能です。そこで分からないことがあれば、指導医にその動画を一緒に見てもらいながら説明を受けることもできます。したがって、今の専攻医は私たちの頃に比べて、より早く多くのことを覚えられるようになっているので、知識が深いですね。

現在の臨床研修制度について、感想をお聞かせください。

 今の制度は必ずしも完璧でないかもしれませんが、個人的には「ここを変えるべきだ」というのはありません。強いて言えばEPOC2での評価が曖昧な部分があり、検討する必要があるかなと思いますが、そこまで大きな問題ではないと感じています。

現在の専門医制度について、感想をお聞かせください。

 新しく変わりましたが、産婦人科に関しては産婦人科専門医を目指すにあたり、そこまで変わったところはなく、大きな影響はありません。

これから専攻医研修の病院を選ぶ初期研修医にメッセージをお願いします。

 私たち札幌医科大学附属病院産婦人科は伝統のある診療科で、産科にも婦人科にも力を入れています。患者数も非常に多く、医師の男女比もバランスが取れており、ママさん医師も大勢いますので、働きやすい診療科です。産科を究めたい、手術をしたいなどのニーズに応えられる指導ができますし、国内留学、海外留学、大学院と学びの場も豊富に用意されています。色々な病院とのパイプもありますので、興味のある方は是非、見学にいらしてください。

Related

関連コンテンツ