専門研修インタビュー

2023-03-01

札幌医科大学附属病院(北海道) 専攻医 惠良田健人先生(循環器・腎臓・代謝内分泌内科) (2023年)

札幌医科大学附属病院(北海道)の専攻医、惠良田健人先生(循環器・腎臓・代謝内分泌内科)に、病院の特徴や研修プログラムについてなど、様々なエピソードをお伺いしました。この内容は2023年に収録したものです。

札幌医科大学附属病院

〒060-8543
北海道札幌市中央区南1条西16丁目291
TEL:011-611-2111
FAX:011-621-8059
病院URL:https://web.sapmed.ac.jp/byoin/center/index.html

惠良田先生の近影

名前 惠良田(えらた) 健人(けんと) 専攻医
出身地・出身大学 / 医師免許取得年度 北海道札幌市・札幌医科大学 / 2019年
初期研修施設 札幌医科大学附属病院卒後臨床研修プログラム(1年目:市立室蘭総合病院、2年目:札幌医科大学附属病院)
専門研修 循環器・腎臓・代謝内分泌内科

医師を目指したきっかけをお聞かせください。

 高校3年生の春にスキーで怪我をして、救急車で病院に運ばれたことがきっかけです。大した怪我ではなかったのですが、そこで対応していただいた先生に憧れました。それまで理系のクラスにはいたのですが、医師を目指していたわけではなく、航空業界に惹かれ、大学では航空工学を学びたいと思っていたんです。でも物理が苦手だという問題もありました(笑)。そんなときに救急対応を受けたこともあり、好きなことと自分に向いているものは違うものだと気づき、医師を目指して気持ちを入れ替えました。

学生生活はいかがでしたか。

 自転車競技部のほか、室内楽のサークルにも入り、小さい頃から細々と続けてきたヴァイオリンを弾いていました。自転車競技部は完全に自主練習の部活動で、時間が合う人たちで集まり、平日は週に2、3回、週末はどちらか1日を練習にあて、週末は100キロ走っていました。自転車競技は東医体の種目にはないので、一般市民の方々が参加するようなアマチュアの大会に出場します。練習はきついですが、楽しかったですね(笑)。室内楽はきちんとしたホールを借りてのコンサートが年に1回のほか、病院のロビーでのクリスマスコンサートもあり、その2回を本番として練習していました。

初期研修のプログラムを札幌医科大学附属病院卒後臨床研修プログラムに決めたのはなぜですか。

 私は大学に独自枠で入学しているので、専門研修は札幌医科大学附属病院で行うことが決まっていました。私としては札幌での生活も長くなっていましたし、初期研修では道外の病院もいいなと思っていましたが、うまくいかなかったです。大学生の頃は神経内科を目指していたのですが、神経内科のある病院は北海道内には少ないですし、それならば診療科が揃っていて、医局の雰囲気をよく知っている母校にしよう、それぞれの講座が何に力を入れているのかを見たうえで専門を決めようと考え、札幌医科大学附属病院のたすきがけのプログラムを選びました。

1年目の市立室蘭総合病院での研修はいかがでしたか。

 初期研修医の人数が少なく、一人の研修医に対する指導医の先生の数が必然的に多くなりますので、目をかけていただいていました。総合病院ですので、症例は豊富にありますが、それに研修医が群がることもなく、経験したいことを好きなように好きなだけ研修できたのが良かったです。1年目の頃も神経内科を目指していたので、他科を回っていても、救急に神経疾患の患者さんがいらっしゃれば、時間の許す範囲で見せていただくこともありました。同期も救急を回っていないときでも救急に外傷の患者さんが来られたら見せてもらっていたようですし、診療科の垣根を超える研修ができていました。

神経内科を目指していたのはどうしてですか。

 神経診察で所見を取り、「こうだからこうなる」というのが面白かったからです。これは循環器科を選んだ理由に似ています。

2年目の札幌医科大学附属病院での研修はイメージ通りでしたか。

 学生実習もした病院ですし、違和感もなく、イメージ通りでした。色々な診療科を回りましたが、市中病院との大きな違いは細かいアセスメントでしょうか。これは大学病院ならではだなと感じました。

循環器科・腎臓・代謝内分泌内科をいつから志望されていたのですか。

 きっかけとなったのは初期研修1年目の9月です。市立室蘭総合病院には循環器科がなかったので、製鉄記念室蘭病院で研修したのですが、そこで面白さを感じました。でも、そこで完全に循環器科に決めたわけではなく、選択肢の一つに上がった程度でした。それで2年目に大学病院に戻ってきて、循環器科を回ったときに神経内科のような「これがこうなる」という考え方が論理的で、私に合っていると思いました。神経内科よりも急性期寄りであり、救命のスピード感に憧れて、循環器科に決めました。

初期研修を振り返って、いかがですか。

 温かったですね(笑)。もう少し勉強しておくべきだったと反省しています。専門研修が始まると、所属している科のことしかしない状況ですが、やはり他科の知識がないとどうにもならない部分があります。それを専攻医になってから勉強するのは難しいので、初期研修医のときに勉強しておけば良かったです。

専攻医1年目の現在はどのような専門研修をなさっているのですか。

 チーム制になっていて、専攻医1年目は4つのチームに振り分けられ、2カ月ずつローテートします。1つ目は心臓チーム、2つ目は不整脈チーム、3つ目は腎臓・代謝内分泌チーム、4つ目は救急チームです。チームによって、過ごし方が全く違いますね。私は今、不整脈チームにいます。月曜日は入院の方も少なく、スタッフの先生方も外勤に行かれていることが多いので、私は入院患者さんを診たり、入院患者さんの予習をしています。火曜日は全チーム共通で、午前中に総回診があり、科全体の新規患者さんについてのカンファレンスの場となっています。火曜日の夕方は不整脈のカンファレンスがあります。水曜日、木曜日、金曜日はデバイスの植込みやカテーテルアブレーションの手技があります。

専門研修で特に勉強になっていることを教えてください。

 全部ですね(笑)。手技は始めたてですので、もちろん勉強になっていますが、手技の数自体は市中病院ほど多くないかもしれません。ガイドラインや論文の読み方などを直接教わる機会も少ないのですが、スタッフの先生方から「最近こういう論文が出たね」という話がすっと出てきたりするので、そういう勉強をしないといけないのだと思いますし、間接的に勉強になっています。

惠良田先生の写真

専門研修でやりがいを感じるのはどのようなときですか。

 手技に関して、専攻医はまだカテーテル治療の術者となる機会は少ないです。私たちができることは患者さんの話を聞いたり、日々の細かい管理をしたりすることです。それでも患者さんから感謝していただけるのは有り難いですね。また、それまでできなかったことができるようになっているかもしれないと実感することがたまにありますが、そんなときもやりがいを感じます。

専門研修で辛いことはどのようなことですか。

 どれだけ勉強をしても、分からないことが次々に増えていくことです。本を読めば読むだけ分からなくなりますし、本を読んでも、実際の臨床で使えるようになるにはギャップがありますので、そこが大変です。

当直の体制をお聞かせください。

 大学病院と外部の病院を合わせて、月に10回ぐらいです。外部の病院はいくつかあるのですが、私たちのような若手が行くのは札幌市内の療養型の病院や循環器専門の病院です。循環器専門の病院は時間外受診や救急車も多く、病棟からも電話がかかってくることもあり、多少ハードですね。大学病院で当直するときは1人で担当しますが、卒後6、7年目の先生がバックアップで待機してくださっており、自分の手に負えないときには来ていただいています。最初はとても緊張しましたし、今もまだ慣れないです。

当直で勉強になっているのはどのようなことですか。

 本で読んで知っている症例が実際に来ると、本と実際では全く違うなと思います。

指導医の先生方のご指導はいかがですか。

 熱心にご指導くださる先生方が多いです。カンファレンスでも私の気づかないところまで指摘していただいたり、私としてはできているつもりでも、視点が全く足りなかったりするので、そういうところを指摘していただけるのは自分の裾野が広がっていくような感じで有り難いです。

カンファレンスはいかがですか。

 色々なカンファレンスがあるのですが、大きいものは火曜日午前中の総回診での新規患者さんのカンファレンスです。私は心不全チームにいるときには心不全ばかりなど、そのときに所属しているチームからの目線だけで話してしまうのですが、不整脈がご専門の先生から心電図のおかしなところを指摘されたり、腎臓や内分泌がご専門の先生から採血検査の結果を見ての指摘を受けたりするので、全チームの先生方が揃う火曜日のカンファレンスは勉強になっています。本当に油断ならないですね(笑)。

初期研修医の指導はどのようにしていらっしゃいますか。

 大学病院は難しく、込み入った症例がどうしても多くなりますが、初期研修医はどの診療科に行くのか分からないので、どの科にいっても使える、普遍的なことをお話ししたいとは思っています。でも大した指導ができるわけではないので、当時の私だったら分からなかっただろうなということをお話ししています。

病院に改善を望みたいことはありますか。

 建物が古く、かなり年季が入っていることです(笑)。もう少ししたら、リニューアルした建物に病棟が移転するらしいので、多少は良くなるかなと期待しています。最近は綺麗な病院が多いだけに、患者さんが元気になれそうな病室になればと思っています。

コメディカルのスタッフとのコミュニケーションはいかがですか。

 私が働いている病棟の看護師さんは優秀な方が多く、私の処方ミスにもすぐに気づいてくださったり、具合の悪そうな患者さんがいたら心電図を撮ってくださったりと、本当に有り難いです。電話をもらって、病棟に行ってみたら、既に心電図があったりします(笑)。慣れていらっしゃるので、対応が早く、頼りになります。それから理学療法士さんの中に心臓のリハビリテーションを専門にされている方が5人いらっしゃいます。私の知識はまるで及ばない、運動の機能検査結果の解釈なども細かく教えてくださり、頼もしいです。

専攻医同士のコミュニケーションはいかがですか。

 同期は私を含めて5人おり、皆が病棟主治医として働いています。それから卒後7年目までの先生が9人ほどおられ、質問にも気さくに答えていただいています。同期にも分からないことをすぐに聞けますし、雰囲気良く働けています。

今後のご予定をお聞かせください。

 循環器の道も腎臓の道も面白く、どちらに進むのか、どこで働くのかはまだはっきりと決めていません。循環器に行くにせよ、腎臓に行くにせよ、一般的な循環器内科医、腎臓・内分泌内科医としてのベースは早くできるにこしたことはないので、そこから何か強みになるものを持った状態で働いていきたいです。私は医師になる気がなかったのに高校3年生になって医学部を目指し始めたし、循環器に行く気もなかったのにこの医局にいますし、学生時代に腎臓は得意ではなかったのに、循環器とはまた違った楽しさがあるのだと分かったので、「これはないわ」と早々に見切りをつけるのは良くないことだと思っています。

専門研修の病院を選ぶ初期研修医にメッセージをお願いします。

 専門研修プログラムを選ぶということは診療科を選ぶということですし、それは一つの理由で決まるものではありません。ただ、個人的に興味があり、面白いと思えるものでないとどこかで辛くなったり、物足りなくなって、長続きしなさそうです。面白いと思ったところに行くことをお勧めします。自分の中で大事にしていることと興味のあることをすり合わせて決めていく人もいますが、私は興味と憧れだけで決めましたし、「住めば都」なのでそういう決め方でもいいのではないでしょうか。私も大学の近くに物件を借りていますが、街なかにも近いというロケーションながら家賃も高いわけではなく、そこも魅力だと思います。
私が所属している循環器・腎臓・代謝内分泌内科学講座では循環器と腎臓の両方を学べることが強みです。心臓と腎臓は密接に繋がっている臓器で、最近は「心腎連関」と言われるように、どちらかだけが良くて、どちらかだけは悪いという方は少ないんです。したがって、心臓、腎臓の両方のプロフェッショナルがそれぞれの目線から教えてくださる環境は他大学にはなかなかないですし、大きなメリットです。是非、見学にいらしてください。

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