初期研修インタビュー

2023-09-01

社会福祉法人三井記念病院(東京都) 初期研修医 田邉舞衣先生 / 安田創先生 (2023年)

社会福祉法人三井記念病院(東京都)の初期研修医、田邉舞衣先生 / 安田創先生に、病院の特徴や研修プログラムについてなど、様々なエピソードをお伺いしました。この内容は2023年に収録したものです。

社会福祉法人三井記念病院

〒101-8643
東京都千代田区神田和泉町1
TEL:03-3862-9111
FAX:03-3862-9140
病院URL:https://www.mitsuihosp.or.jp/

田邉先生の近影

名前田邉(たなべ) 舞衣(まい) 研修医
出身地・出身大学 / 医師免許取得年度 千葉県鎌ケ谷市・東京大学 / 2022年

安田先生の近影

名前安田(やすだ) 創(そう) 研修医
出身地・出身大学 / 医師免許取得年度 東京都町田市・岐阜大学 / 2022年

医師を目指したきっかけをお聞かせください。

 安田:高校3年生になってすぐに、どこの大学に進学しようかと考えたとき、小さい頃から医師という職業はかっこいいなという憧れがあり、それを進路にするなら、ここでしか選択できないという思いがふつふつと湧いてきました。ほかの職業も検討したものの、その中ではやはり医師が遣り甲斐がありそうだと感じ、医師になろうと決断しました。
 田邉:私は小学校低学年のときには既に目指していました。幼稚園のときから高校2年生までお世話になっていた珠算の先生がおそらく心臓弁膜症を罹っておられ、「食べられないんだよね」と話していらっしゃったのを聞き、小学生ながら「私が医師になって、先生を治してあげたい」と思ったことが理由です。

学生生活ではどんなことが思い出に残っていますか。

 安田:私はバスケットボール部とスキー部に入っていて、飛騨牛の焼肉店でアルバイトをしていました。その3つそれぞれに楽しかったです。私は中学生のときからバスケをしていたのですが、あまりうまくならなかったのが悔しくて、大学でも続けようとバスケ部に入りました。バスケ部は破天荒な人が多く、隙あらば飲み会しようみたいな雰囲気でしたが(笑)、うまい先輩ばかりで、練習は辛かったです。スキーは大学からでしたが、スキーの方が上達しましたね。西医体では最初は70位、80位ぐらいでしたが、最後の大会では10位まで上がって、とても嬉しかったです。
 田邉:私は軟式のテニスサークルと硬式のテニス部に入っていて、塾講師のアルバイトをしていました。大学生活での一番の思い出は6年生の5月から7月にかけて、国立台湾大学医学院附属病院で実習をしたことです。コロナ禍でヨーロッパやアメリカの大学は受け入れ不可となり、台湾だけが流行っていなかったこともあって受け入れてくださいました。ただ私が入国した途端にアウトブレイクが起き、最初の2カ月はホテル生活を送りました。7月にようやく受け入れてくださったので、心臓外科や腎臓外科で実習をしました。私がついた先生が膵臓がんの権威でいらしたこともあり、がんの個別化医療をしたいという、将来に影響を与えてくれた経験になりました。

大学卒業後、研修先を三井記念病院に決めた理由をお聞かせください。

 安田:大学の先輩が当院で働いておられたので、軽い気持ちで見学に行ったのがきっかけです。コロナ禍で見学も難しく、6年生の7月にようやく見学できました。外科を見学したところ、対応してくださった初期研修医の先生が丁寧に対応しようとされてはいるものの、ずっと忙しそうにしているところを見て、なかなか鍛えられそうな病院だなと好印象を受けました。私は外科志望なので、初期研修医がヘルニアや虫垂炎の手術の執刀をしていると聞き、実力をつけたいと思い、当院に決めました。
 田邉:父が心臓弁膜症の手術を受け、完治しているのですが、その影響もあり、学生時代は循環器内科を目指していました。当院は循環器内科が強く、大学の同期がよく見学に行っていたので、私も5年生の秋に見学に来たところ、ついた初期研修医の先生が主体的に動いている姿を見て、いいなと思い、当院を選びました。

三井記念病院での初期研修はイメージ通りですか。

 安田:イメージよりも緊張せずに済んでいます(笑)。厳しい先生もいらっしゃいますが、話しやすい先生が多く、同期も明るい人が多いからだと思います。
 田邉:私は予想と相違なかったです。

プログラムの特徴はどんな点でしょうか。

 安田:外科コースに関して言えば、初期研修医が執刀する件数が他院よりも多く、裁量が大きいと感じています。検査の日程や輸液、薬の処方など、難しいところは上の先生に確認しますが、術後の薬のオーダーなど、ほかの病院の初期研修医ではできないようなことも主体的にさせていただいています。
 田邉:私は内科コースに所属していますが、初期研修医の裁量が大きいことは同感です。一方で、上の先生方の目が行き届いていて指導もしてくださるし、初期研修医が自分で自由にできて、かつ学べる病院だと思います。

院外での研修はありますか。

 安田:小児科は埼玉県立小児医療センター、地域医療は当院の近くの野中医院で行いました。
 田邉:私はこれからなのですが、小児科は同愛記念病院、地域医療は野中医院に行く予定です。

三井記念病院での初期研修で勉強になっていることはどんなことでしょう。

 安田:私は大学に入学したときから、小さい頃からかっこいいなと思っていた外科に憧れていました。それで当院の初期研修も外科コースを選びました。初期研修では手術、術式、術後管理に関しては、執刀したものはもちろんですが、上の先生方が執刀されるときにカメラ持ちに入ったり、術後に術中の所見を上の先生方から求められるので、予習しておかないといけません。そういったところが勉強になっています。
 田邉:私は内科コースにいるので、内科全般が勉強になっています。当院には小児科がないのですが、それ以外に関してはほぼ全ての診療科があるので、色々な診療科を幅広く回りながら勉強しています。

失敗談はありますか。

 安田:細々とした失敗はかなりあります(笑)。薬の処方忘れのほか、看護師さんに指示がきちんと伝わっておらず、時間が押してしまったり、何をするにしても遅かったりということがよくありますね。
 田邉:私はすぐに思いつかないですね。

初期研修にあたって、どのような姿勢を心がけていますか。

 安田:積極的に勉強することです。勉強していないことを厳しく注意してくださる先生もいらっしゃいますが、優しく見守ってくださる先生もいらっしゃるので、そういうときにこそ、いかに勉強するかで差が出るのかなと思っています。
 田邉:1日に最低2回は患者さんのところに行くようにしています。オーバービューパスではバイタルを見ることができますが、患者さんと実際に会ったことで、異常が分かった経験があります。患者さんを実際に診て、少しでも違った様子があれば、何かが起きているんです。血圧などに反映されなくても、実際に診ると元気がなさそうだったり、何かが起きているかもしれないことが分かると思うので、時間があるときはできるだけ患者さんのところに行っています。

当直の体制をお聞かせください。

 安田:月に2、3回ですが、診療科によっては当直しないところもあるので、年間平均にすれば、さらに少なくなります。体制は指導医と初期研修医の2人です。内科当直、外科当直、救急外来と役割分担されており、自分でできることは自分で行い、困ったら上の先生に聞くという形です。

当直で勉強になっていることはどのようなことですか。

 安田:患者さんが吐いている、熱がなかなか下がらない、高熱が出ている、とても痛がっているといったコールが多いのですが、そういうときにどのような検査をするのか、これは重症なのか、どういった手法が必要になるのかといった判断力が鍛えられます。
 田邉:ほとんどが担当していない患者さんについてのコールなので、カルテをぱっと見て、この患者さんはどのような病気で、どのような治療をしていて、起こりうる問題としてはどういうことが挙げられて、現状では何が起きるのか、また緊急性として、この夜間帯で対応しなければいけないのかどうかといったことを考えないといけません。当直では病歴をショートに掴む能力や緊急にこれをするべきかどうかを判断する力がつきました。

指導医の先生のご指導はいかがでしょうか。

 安田:優しさは人によって異なります(笑)。
 田邉:私は怖い先生がいらっしゃると思ったことはないです(笑)。外来に足を運べば、部長レベルの先生でも対応してくださいますし、上の先生方に相談しやすい病院だと思っています。

カンファレンスの雰囲気はいかがですか。

 安田:外科は術前カンファレンスが必須で、ほとんどが初期研修医のプレゼンです。初期研修医は消化器外科を回ることになっているので、CTなどの画像から、どういった病気で、どの手術適応になるのかを発表するので、勉強になります。
 田邉:消化器内科では入院患者さんについてのカンファレンスとは別に、自分が担当した患者さんの症例について調べたことをまとめるといったカンファレンスもあります。3人ほどが指名され、その週の担当となるのですが、ほかの症例の共有だけでなく、病態について、論文などでさらに調べて、皆で発表し合うので、考察が深まります。

コメディカルスタッフの方々とのコミュニケーションはいかがですか。

 田邉:退院支援の担当の方や理学療法士の方など、私は積極的にコミュニケーションを取るようにしています。例えば脳梗塞後の患者さんがどこまで回復しているのか、ご自宅に帰れるのかといったことが気になれば、理学療法士さんに電話して「何時頃に介入ですか」と伺い、そのリハビリの様子を理学療法士さんと一緒に見て、患者さんの回復している状態を話し合ったりしています。言語聴覚士さんにも嚥下能力を尋ねたり、薬剤師さんにも一緒に患者さんのところに行っていただいて、「こういう状態ですが、薬について相談したいです」と自分から積極的に伺っています。
 安田:当院のコメディカルスタッフの方々は本当に優秀です。私がよくしてしまう薬のミスに関しても、すぐに指摘してくださいます。患者さんの腎機能によって、薬の量が変わるのですが、薬剤師さんの方から「薬の量が多いのでは」と伝えていただいています。薬で困ったことがあれば、薬剤師さんに相談すると具体的な薬剤名も挙げてくださるので、薬剤師さんには感謝しかありません。看護師さんに関しても、当院では何かあればすぐに初期研修医に電話するシステムになっていて、「患者さんが痛がっています」「気持ち悪いと言っています」と教えてくださるので、綿密なコミュニケーションが取れる関係性を築けます。

カンファレンス

病院に改善を望みたいことはありますか。

 安田:特にありません。
 田邉:私も思いつかないですね。

同期は何人ですか。

 田邉:内科コースは私を含め5人、外科コースは4人、泌尿器科コース1人、産婦人科コース1人の計11人です。研修医だけの部屋はなく、1年目から7、8年目ぐらいの医師がいる合同医局があり、入って左が外科、右が内科になっています。7、8年目ぐらいの先生方もいらっしゃるので、その部屋で相談することができるのがいいですね。

お住まいは寮ですか。

 田邉:当院から徒歩5分の場所にあり、初期研修医だけが住んでいます。立地は文句ないですし、寮費も安いので、恵まれていると思います。9畳あるので、ダイニングテーブル、ベッド、デスク、こたつを置いてもスペースが余っていますし、4人で座ることもできます。都内の寮では広い方なので、物の多い私でも大丈夫です(笑)。

今後のご予定をお聞かせください。

 田邉:私は消化器内科を専攻し、専門研修は外部の病院を1年挟みつつ、当院で行い、専門研修後は母校の大学病院に戻り、大学院に進学する予定で、既に入局申請もしたところです。もともと循環器内科志望でしたが、大学時代に国立台湾大学で実習したところ、台湾では膵臓がんに対して化学療法という選択肢がなく、分子標的薬での遺伝子治療を進めていこうとしており、それが面白かったこともあり、がんを学びたいと思うようになりました。それから当院での初期研修で消化器外科を回り、何人かのがん患者さんを担当させていただいたことも後押しになりました。サブスペシャリティを膵臓と決めたわけではありませんが、消化器内科には多臓器があり、選択肢が豊富なところが良かったです。専門研修を当院に決めた理由は新しい環境で過ごすことが得意ではないこともありますが、当院の上司やコメディカルスタッフといった人的環境の素晴らしさ、消化器内科の症例数や病床数の多さに惹かれたからです。
 安田::私も専門研修は当院に残り、外科プログラムで研修します。その後は未定です。消化器外科を専攻するのかなと思ってはいますが、サブスペシャリティや医局に関しては専門研修終了後に決定することになっています。

ご趣味など、プライベートの過ごし方について教えてください。

 田邉:私は中学、高校と水泳部だったこともあり、水泳が趣味です。近くの公営プールに週に2回は通っています。運動をしないと体力が落ちるので、体力をつけないといけないなと思って、通うようになりました。当直明けにプールに行くこともあります(笑)。
 安田:私はスポーツジムで筋トレをしたり、時間があるときはネットフリックスで映画、ドラマ、アニメを見たりしています。

最後に、これから初期臨床研修病院を選ぶ医学生に向けて、メッセージをお願いします。

 田邉:漫然と選ぶのではなく、何を軸に選ぶかを決めた方がいいです。都会がいいのか、地方がいいのか、自分が行きたい科が強い病院で症例数を稼ぐのかといった、自分が求めることの軸を決めたうえで、それに全て当てはまる病院を行きたい病院にしましょう。当院は循環器内科と消化器内科に強みがありますが、初期研修医が自由にさせていただけること、指導医の先生方のサポートがしっかりしていること、忙しいながらも学べることが豊富にあること、コメディカルスタッフも含めて優しい環境であることなど、得られるものが多い病院なので、是非いらしていただけたらと思います。
 安田:雰囲気に関しては病院見学に行かないと分からないので、気になる病院があれば、是非見学に行ってください。自分の興味のある科が強い病院がいいですね。研修中に興味のある科が変われば、そちらに進んでもいいし、初期研修は大切なものではありますが、そこまで負担に感じず、気負わずに頑張ればいいと思います。

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