専門研修インタビュー

2024-05-01

北九州市立八幡病院(福岡県) 専攻医 竹井文哉先生(小児科) (2024年)

北九州市立八幡病院(福岡県)の専攻医、竹井文哉先生(小児科)に、病院の特徴や研修プログラムについてなど、様々なエピソードをお伺いしました。この内容は2024年に収録したものです。

北九州市立八幡病院

〒805-8534
福岡県北九州市八幡東区尾倉2-6-2
TEL:093-662-6565
FAX:093-662-1796
病院URL:https://www.kitakyu-cho.jp/yahata/

竹井先生の近影

名前 竹井 文哉(ふみや) 専攻医
出身地・出身大学 / 医師免許取得年度 福岡県朝倉市・岐阜大学 / 2020年
初期研修施設 福岡青洲会病院
専攻医研修科目 小児科
PALSプロバイダー、NCPRプロバイダーなど。日本小児科学会に所属する。

医師を目指したきっかけをお聞かせください。

 高校時代の英語のテキストに山本敏晴先生についての話が載っていたんです。山本先生は内科医なのですが、医療がない地域や途上国でボランティアでの医療活動をされているという文章を読み、医師の仕事に興味を持ったことがきっかけです。
山本先生は今は現役を引退され、ご自身で創設された「NPO法人・宇宙船地球号」を通して、様々な活動をされています。

学生生活はいかがでしたか。

 部活動が主な思い出です。私はラグビー部に所属し、西医体などの試合にも出してもらい、いい時間を過ごしました。
私は高校では文化部でしたし、身体も小さかったのですが、誘われて入部してみると意外と楽しくて、練習は大変だったものの、自分なりに力を入れていました。フォワードだったので、食事や筋トレも頑張って17キロぐらい体重も増やしました。勉強はあまり得意ではなく、何とか留年せずに卒業しました(笑)。

初期研修先を福岡青洲会病院に決めたのはなぜですか。

 私が医師を目指すきっかけとなったのが山本敏晴先生ですが、山本先生に限らず、途上国で国際協力などをされている先生方はジェネラリストで、何でも診られる方が多く、そういった先生方に影響を受け、私も学生の頃から総合診療に興味を持ち、自分で何でも診る医師になりたいと思っていたんです。
福岡青洲会病院は小規模な病院ですが、救急や総合診療に力を入れており、マイペースに研修を積める病院で、私の性格にも合っているのかなと感じ、福岡青洲会病院に決めました。

小児科を専攻しようと思われたのはいつですか。

 初期研修2年目の5月です。4月までは総合診療科を志望していました。
その4月に地域医療研修があり、長崎県平戸市の青洲会病院に行きました。地域の病院なので、何でも診ないといけないのですが、当直中に小さい子どもが腹痛で来院したことがあり、その子どもを診たことがきっかけになりました。
今の総合診療科の専門研修プログラムでは小児科を回る期間は3カ月しかありません。しかし小児科疾患には夏のRSウイルス感染症、冬のインフルエンザなどの季節性があるので、最低1年間は回らないといけないのではないかと考えていたところ、次の5月に小児科研修で福岡市立こども病院に行き、小児総合診療科の古野憲司先生にご指導を受けたんです。
そこで総合診療科か、小児科かで迷っているというお話をしたら、古野先生から「小児科も総合診療だよ」と言われました。確かに小児科は何でも診ますし、その意味では総合診療科の一つです。総合診療科の医師はそこまで子どもを診ることに慣れていないですし、子どもをしっかり診られるようになるには小児科医になるのが一番いいと思い、小児科を専攻することに決めました。

竹井先生の近影

専攻医研修先を北九州市立八幡病院の小児科に決められたのはどうしてですか。

 小児科の総合診療に力を入れている病院だからです。
大学病院や子どもの専門病院で研修する選択肢もあり、悩んだのですが、大学病院や子どもの専門病院は専門性が高い疾患が多い印象があり、それも大事な分野ですが、私としては総合診療をしたかったので、学会などで話を聞いていた北九州市立八幡病院が気になっていました。
それで初期研修2年目の9月に見学に行くと、外傷や外科系の疾患も何でも診ていますし、骨折や虫垂炎の手術の前後でも小児科医が診るなど、小児科がカバーしている範囲が広く、救急も一次から三次までしっかり診ていると分かり、当院を選びました。先生方も色々な経歴の方がいて、話しやすかったですし、人数も多いところに惹かれました。
小児科の医師の中には子どもが大好きだから小児科を選んだという方もいれば、私のように子どもは好きだけれど、それだけで小児科を選んだわけではないという人もいるので、これだけ先生方が揃っていれば、私と似たような方もいて、私でも溶け込めて馴染めるかなとも思いました(笑)。

専攻医研修3年目の現在はどのような研修を行っていらっしゃいますか。

 2年目の冬から小児の血液腫瘍内科を回り、3年目の4月からは小児のアレルギーや呼吸器科を担当しています。特に血液腫瘍内科での研修では、急性リンパ性白血病、急性前骨髄性白血病、急性骨髄性白血病などの症例を経験しました。
白血病の診断から初期対応、治療開始から寛解までの管理を学びました。その過程で、看護師だけでなく、栄養士、リハビリスタッフ、社会福祉士、心理士、薬剤師など多くのコメディカルスタッフの協力が重要であることを実感しました。また、年齢に応じた患者本人への説明など、配慮すべき点が多くあることも学びました。
小児アレルギー・呼吸器科では、主に食物アナフィラキシー、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などの症例について学びました。具体的には、食物アナフィラキシー症例の初期対応や、気管支喘息の診断から治療、予防に至るまでの内容を学びました。 食物アレルギーや喘息は長期的に付き合っていく必要があるため、親と子ども両方の理解が大切であると感じました。急性期の対応だけでなく、どのように予防していくかを考えながら治療を進める視点が重要だと実感しました。

外部での研修はどういったところに行かれましたか。

 当院にはNICUがないので、専攻医研修2年目の夏に北九州市立医療センターで新生児の研修をしました。そこでは、動脈管開存症、心室中隔欠損症、墜落分娩、早産児などの症例を経験しました。
印象的だったのは、まず一人のスタッフとしてわたしを迎え入れていただいたこと、臨床だけでなくアカデミックな部分の指導もしてもらえたことです。また、八幡病院では心疾患症例が少ないため、心エコーや心不全に対する薬物治療や水分管理、栄養管理などを学ぶことができました。特に、新生児搬送などにも同行させてもらえたのは、非常に勉強になりました。
このあと3年目の夏には、北九州市立総合療育センターで発達障害や重症心身障害などの研修をする予定です。

専攻医研修で特に勉強になっていることを教えてください。

 勉強になっていることばかりです。医学的なことだけでなく、患者さんへの対応も勉強になります。
お子さんには薬を飲みたくない、検査をしたくないといった特性があります。小さい子どもには無理やりできることでも、大きくなるとそういうわけにはいきません。親御さんだけでなく、本人にもしっかり話すことが大事です。
幼稚園児であっても、きちんと話すだけで違いますので、患者さんの特性に合わせて寄り添って診ていくことが大切だと最近、特に感じています。

専攻医研修で遣り甲斐を感じるのはどのようなときですか。

 ありきたりですが、患者さんからお礼を言っていただけたり、お子さんが手紙をくれたり、イラストを描いてくれると嬉しいですね。

竹井先生の近影

専攻医研修で辛いことはどのようなことですか。

 親御さんとのコミュニケーション不足によって生じたトラブルです。
小児科の場合、お子さんが話せないとどうしても親御さんとのコミュニケーションになるわけですが、親御さんの考えと私たちの考えがうまく噛み合わず、きちんと話し合うことができなくて、そのお子さんのためにならない結果になったことがあり、辛かったです。
その点、指導医の先生は話の持っていき方が上手です。長年なさっているし、親御さんの心配事に気づけるんですよね。私は指導医の先生方のように自分の子どももいないので、患者さんへの声かけができていないのかなと悲しかったのですが、指導医の先生から「患者さんを我が子のように思って診るといいよ」と言われました。
自分のまだまだなところは指導医の先生の力を借りていきたいですし、よく相談しています。

指導医の先生方のご指導はいかがですか。

 ICや親御さんへの説明の際、「もっとこういう風に話したほうがいい」と指摘いただくなど、注意すべきところは注意してくださいますし、重症患者の対応の際には、集中治療の先生が侵襲的な手技や治療方針決定のサポートを丁寧にいただけるなど、ちょっとした内容でも相談に乗っていただける先生方が多く、穏やかで優しい先生方ばかりで働きやすい環境です。

カンファレンスはいかがですか。

 小児科では基本的には毎朝、その日の入院患者さんや症例などについてのカンファレンスがあります。14、5人の医師が集まりますので、診断や治療の相談や確認をしています。

初期研修医の指導はどのようにしていらっしゃいますか。

 専攻医が初期研修医を指導する形で、病棟の患者さんを一緒に診ています。
ただ初期研修医も主治医として診ていますので、そのサポートを専攻医がして、そのうえに指導医の先生がいてアドバイスをするという流れが多いですね。

コメディカルのスタッフとのコミュニケーションはいかがですか。

 お互いがリスペクトし合いながら働いているので、コミュニケーションは取りやすく、働きやすい病院です。看護師さんは忙しい中でも的確に相談や連絡をくださるので、助かっています。看護師さん以外のコメディカルスタッフの方々にも本当にお世話になっています。

今後のご予定をお聞かせください。

 まだ迷っているところです。専攻医研修を2年間やってみて、こういう治療をすると良くなる、こういうふうに治っていくということをしっかり学ぶことができました。
しかし治せる子どもさんもいるけど、治せない子どもさんもいるということも分かりました。血液腫瘍内科を回ったときに、白血病の患者さんを診ていく中で良くならない子どもをどう診ていくのかについては考えさせられました。
そのため、看取りや緩和ケアを学びたいと思うようになり、サブスペシャリティとして、血液、神経、新生児といった分野に興味を持っています。

専門医制度についてのご意見をお願いします。

 以前の制度との比較ができないので難しいのですが、小児科と内科の比較であれば、小児科はそこまできつさはないです。小児科の場合は症例要約が30例、論文執筆、学会発表ぐらいなので、内科の専攻医の話を聞くと、小児科は内科ほど厳しくないという印象があります。

【動画】竹井先生

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