専門研修インタビュー

2024-07-01

手稲渓仁会病院(北海道) 指導医 菊池航紀先生 (2024年)

手稲渓仁会病院(北海道)の指導医、菊池航紀先生に、病院の特徴や研修プログラムについてなど、様々なエピソードをお伺いしました。この内容は2024年に収録したものです。

医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院

〒006-8555
北海道札幌市手稲区前田1条12丁目1-40
TEL:011-681-8111
FAX:011-685-2196
病院URL:https://www.keijinkai.com/teine/

菊池先生の近影
名前
菊池 航紀(こうき)
役職
内科専攻医統括部プログラムディレクター、感染症科部長
経歴
  • 1986年、北海道に生まれる。
  • 2012年 北海道大学医学部を卒業
  • 2012年4月から 札幌東徳洲会病院 研修医
  • 2014年4月から 堺市立総合医療センター 内科統括部 勤務
  • 2016年4月から 北野病院 総合内科 勤務
  • 2017年6月から 堺市立総合医療センター 総合内科 勤務
  • 2018年4月から 亀田総合病院 感染症科 勤務
  • 2021年4月から 医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院 感染症科 勤務
専門分野
  • 感染症
  • 総合内科
専門医資格
  • 日本感染症学会感染症専門医
  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本内科学会認定内科医
  • 日本内科学会指導医
  • ICD制度協議会インフェクションコントロールドクター
  • がん治療に携わる医師を対象とした緩和ケアに関する研修修了

手稲渓仁会病院の特徴をお聞かせください。

手稲渓仁会病院は、北海道札幌市の手稲区にあり、670床の総合病院です。札幌市の西部では最大規模の病院になっています。内科、外科、小児、産婦人科など、各専門科がしっかり揃っています。また、救命救急センターがあり、ドクターヘリが動いているので、札幌だけではなく北海道内の各地から患者さんが来る病院です。手術室は15室あり、24時間対応で症例数も多いです。ICUの病床は16床あり、重症患者さんもたくさんいる病院になっています。隣にある同法人の手稲家庭医療クリニックでは、外来診療の研修もできるという特徴があります。

菊池先生生がいらっしゃる感染症科の特徴もお聞かせください。

感染症科は、私が赴任してから立ち上げたもので、感染症科のスタッフは私1人です。各診療科からの感染症を疑う症例や難治性の感染症の症例のコンサルテーションを受けている他、血液培養陽性症例を全例併診しています。現在は、毎月2〜3名のローテーターと一緒に診察しています。少人数なので、しっかりと教育ができる環境になっています。

忙しいなと感じますが、1人診療科ということで、病院側も配慮してくれているため、何とか自分の裁量で楽しくやっています。

菊池先生の近影

手稲渓仁会病院 内科専門研修プログラムの特徴をお聞かせください。

私が、2024年度から内科専門研修プログラムディレクターという立場を担っていて、感染症だけではなく、内科全体のプログラムを今年改めて作りました。今までは、各診療科に専攻医が所属するという形だったのを、今年から内科統括部という部署を作り、そこに内科の専攻医が所属して自分が学びたいことを各診療科にローテーションして学びに行くというようなスタイルができるようにしました。なので、自分の所属している診療科の枠にとらわれないで幅広く自分の学びたい進路選択ができるというのが今の最大の特徴になっていますね。

また、当院の初期研修では海外留学をしたい研修医が集まっているので、そういう研修医を内科専攻医プログラムでもサポートしていることはポイントになっています。内科プログラム期間中に短期留学することも可能で、その際の短期留学先としては、連携しているテキサス大学、ケースウェスタン大学、ハワイ大学などがあります。

菊池先生は、どのようなキャリアアップをされましたか?

私は、学生の時は小児科医になろうと思っていたんですが、研修医になって実際に小児科を回っていると、結局大人というかその子供のお父さんお母さんとのやり取りがすごく大事だったり、他の診療科を周っていてもやっぱり成人が多いので、成人を診るということがいかに大事かというのを実感しました。そして気がついたら内科をやりたいなって漠然と思っていました。研修時に地域医療で奄美大島に行きましたが、この奄美大島で総合診療をやっている、その時の地域の指導医がとてもかっこいいなと思いました。私と5つくらいしか年齢が離れていない先生が、その地域のメインドクターとして場を回していたのを見て、こうやって全人的に人を診れる医師になりたいと思い、その先生の出身である堺市立病院に興味を持ちました。

内科をやる上で、当時は自分が何内科になるのかを普通は選ばなければいけなかったんですけど、堺では何内科かを選択する前に、まず内科を育てるということをコンセプトとした、内科統括部という部署がありました。そこでは、内科専攻医の立場で、専門科を決めずに各診療科を再度ローテーションできるシステムを採用していました。そのようなシステムの病院は当時あまりありませんでした。堺市立は当時からそういうことをやっている病院だったので、このようなプログラムだから離島での奄美大島のように、あの先生達はあんなふうにできていたんだなと思い、堺に行く事を決めました。そこでのローテーションでは、興味のある総合内科や循環器内科だけではなく、自分の研修医時代には経験できないかった呼吸器内科、血液内科、神経内科、ICUなどをローテーションして学ばさせてらったというのが内科専攻医時代でした。

カンファレンスについて、お聞かせください。

各診療科のカンファレンスがあり、感染症科のカンファレンスももちろん毎日やっています。感染症科はもう1対1なので、常に会話がカンファレンスみたいな感じです(笑)。

それとは別に内科統括部としてのカンファレンスも月に数回やっていて、具体的には内科のJ-OSLERに関する勉強会や、症例検討会、抄読会、論文作成や学会発表などのノウハウを伝えたり、実際困っていることを相談する会をやるようにしています。また、初期研修医が毎朝モーニングレポートっていうのをやっていて、英語のカンファレンスなどもやっているため、任意ですが参加することも可能になっています。

専攻医も発言の機会が多いですか。

むしろ現場だともう専攻医が主役なので、専攻医が発言するということの方が多いんじゃないかなと思います。

菊池先生の近影

J-OSLERについて。

この内科統括部を作った背景としては、J-OSLERがクリアできてない専攻医が何人か当院にいました。でもそれは、専攻医のことをきちんと理解して管理して、一緒に歩んでく場所がなかったからだと思っています。今までは、各診療科に任せていたので、各診療科の上級医の先生がそれを理解していないとやっぱり専攻医が困るんですよね。結局それに追い詰められている専攻医だけが自分で勉強してやるけど、上級医がそのことをわかってないからうまくいかないみたいな状況になっていたので、J-OSLERを専攻医だけじゃなく上も理解して一緒にクリアするにはどうしたらいいんだろうと考える場所が必要だなって思い作ったのが統括部になります。なので、今はうまくいっているんじゃないかなと思っています。

女性医師の働きやすさに関してはいかがでしょうか。

今年の内科専攻医には女性はいませんが、他の診療科の専攻医には女性が複数います。また、初期研修医においては半分以上が女性なので、全体として、女性は増えてきているなという感じはしています。実際、働き方改革もあり、オンオフをしっかりする動きが出てきているので、十分に働きやすい環境が整っていると思います。

先生の研修医時代はいかがでしたか。

僕は大学時代は軟式テニス部で、ずっと部活をしていました。なので、夏に試験がある病院はちょっとしんどいなと思っていました。やる気や、部活の実績だったり、キャプテンをずっとやっていたのでそういったリーダーシップの部分だったりを評価してくれる病院がいいなと思っていましたが、札幌東徳洲会は実際に先輩が何人かいて病院自体が体育会系の病院なので、みんなを引っ張っていくような人を求めているような感じだったのでいいなと思い札幌東徳洲会病院にしました。救急のタスクが多く、当直が多かったので大変でしたが、どんな道に進むにしても、目の前で何か緊急のことがあった時に手を動かすことができる医師になろうと思って研修していたので、良い初期研修を送れたな、と思っています。

専攻医に指導する際、心がけていらっしゃることはどんなことでしょうか。

専攻医は初期研修で培ってきた土台がみんな違うので、その専攻医が実際どんなものを勉強してきて何をポリシーとして大事にして、何が足りなくて何が学びたいのかっていう専攻医の思いを、こちらが指導する前に先に吸収する必要があると考え、重視しています。

ちらが伝えたいことを伝えるのは、その先だと思っています。将来どんな医者になりたいのかというのはみんな違うので、その専攻医の、こうなりたい、というイメージに合わせてプログラムを作っていくことが内科プログラムの役目だと考えています。

菊池先生の近影

申込される研修医は、どこのエリアが多いですか?

内科専攻医に関しては、今研修している当院初期上がりの専攻医が2人いるのですが、それ以外にも宮古島からや東京、北海道内の病院から来ているので全国からです。

現在の臨床研修制度について、感想をお聞かせください。

臨床研修制度が始まる前は、自分の専門領域以外のことはわからない、勉強したくても勉強する機会がない時代でした。それが、臨床研修制度という仕組みができて、現在では、自分の将来の診療科に関わらず、医師として必要なことを学ぶことができる、貴重な制度であると感じています。いろいろな道に進む研修医達が自分が進むわけではない診療科にも行くことになるので、いかにそこでどんな医者になる上でも大切なエッセンスを伝えてあげることができるかが重要だと思います。

現在の専門医制度について、感想をお聞かせください。

内科専門医制度では、以前は専門分野に進むことが求められていましたが、現在は各サブスペシャリティに進む前に、内科医としての素地を身につけることが重要である、という流れにシフトしてきていると感じています。アメリカがベストかどうかはわかりませんが、少なくともアメリカの内科専門医制度はそのようになっており、日本でもその流れは今後も強くなると思っています。実際、私は感染症科医ですので、各診療科に進む前に、どの診療科でも必要な感染症の考え方に関して、伝える時間を設けたいと思っているし、現在の専門医制度をうまく活用して、それができればと思っています。

これから専攻医研修の病院を選ぶ初期研修医にメッセージをお願いします。

以前は専門研修というと大学病院に行って、初期研修の早い段階で自分の専門を決めてその専門を勉強するというのが専門研修だったと思うのですが、当院では市中病院だからできる自由度の高いプログラムを提供していて、各診療科に行くその前に、まずは内科医としての素地を身につけるためのプログラムを作っているので、どんな内科医になりたくても、まずは内科医として勉強するべきところを学びたいなという人は、ぜひ当院を見学していただければなと思います。ぜひ来て下さい!!

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