飯塚病院
〒820-8505
福岡県飯塚市芳雄町3-83
TEL:0948-22-3800(代表)
:0948-29-8904(直通)
病院URL:https://aih-net.com/resident/
- 名前
- 工藤 仁隆(くどう まさたか)先生
- 経歴
- 1986年 熊本県熊本市に生まれる。
2012年 福岡大学を卒業後、
福岡大学病院で初期研修を行う。
2014年 飯塚病院総合診療科で後期研修を行う。
2017年 飯塚病院総合診療科に勤務する。
2022年から高知飯塚臨床研究フェローシップに参加し、
高知大学大学院臨床疫学教室にも在籍。
- 専門分野
- 総合診療科
- 専門医資格
- 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医、
日本緩和医療学会認定医・指導医、
日本病院総合診療医学会認定医、
臨床研修指導医など。
飯塚病院の特徴をお聞かせください
飯塚病院のある筑豊地域は大学病院のない唯一の地域です。筑豊地域の人口は約40万人で、1040床を持つ当院は地域唯一の大病院であり、市中病院としての役割を持ちながら、大学病院に近い役割も果たしています。また、初期研修、専門研修の歴史も長く、病院全体として教育に対する意識が高いという特徴もあります。
工藤先生がいらっしゃる総合診療科の特徴もお聞かせください
当院の緊急入院の7割近くをカバーしている診療科で、常時120人から150人の入院患者さんがいらっしゃいます。外来にも1日70人ほどの患者さんが来られ、指導医19人、専攻医21人で対応しています。総合診療科には大きく分けると一般病棟チームと重症チームの2つのチームがあり、その中で分かれているチームもあるので、トータル7チームで診療しています。診療する疾患にしても、内科専門医取得には十分な疾患を網羅しており、集中治療まではいかないような重症な疾患から医学的には重症ではないけれども入院が必要な疾患まで、幅広く対応しています。
飯塚病院の総合診療科専門研修プログラムの特徴をお聞かせください
当科には指導医が19人いますので、専攻医2人に対して1人のリーダーがついており、専攻医は主治医として、リーダーと常に相談しながら診療する形をとっています。リーダーが外来や休日で不在のときも常にバックアップのスタッフがつきカバーする体制ですので、専攻医が一人で危険な目に遭うことはほとんどありません。ローテーションに関しては一般病棟チーム、重症チーム、外来という3つのセクションに分かれて回りますので、専攻医は一般病棟を診ながら外来もするということもありません。各セクションを集中的にローテートすることで、それぞれの診療の型を習得しやすくするシステムになっています。
一般病棟チームでは鑑別診断や病棟マネジメント、患者さんへの面談を研修できますし、重症チームではバイシステムという重症患者さんの管理や中心静脈カテーテルなどの手技の習得ができます。それぞれのセクションでの指導医が充実していますので、きめ細やかな指導が受けられる体制です。最終的には専攻医3年目で一般病棟チーム、重症チームのそれぞれチームでリーダーを務めることできるようになることが目標です。
飯塚病院の総合診療科で専門研修をされた先生方はどのようなキャリアアップをされていますか
そのまま総合診療医として、出身地や出身大学に戻っていく人もいますし、もちろん当科に就職する人もいます。あるいは総合診療科を3年間学んだあとで、専門科の医師になっていく人もいて、人それぞれのキャリアアップをしています。
カンファレンスについて、お聞かせください
総合診療科では一般病棟チームは火曜日から木曜日に臨床推論のカンファレンス、金曜日に清田雅智先生のレクチャーを行っています。清田先生は退院患者さんを全例、病名だけをチェックして、その中からライブでレクチャーをしてくださいます。火曜日の夕方も清田先生のレクチャーがありますが、こちらは自由参加です。
水曜日は若手のスタッフが企画する勉強会、木曜日は月に1回ですが、私の企画によるジャーナルクラブがあります。ジャーナルクラブは海外の論文の読み方やエビデンスの使い方などを勉強する抄読会のような内容です。当科のカンファレンスのほとんどは専攻医が自分たちでやってみたいことや、やってほしいことをきっかけとして始まったものです。
専攻医も発言の機会が多いですか
そうですね。当科の文化は専攻医が変えてきたという印象があります。今のナイトシフトという働き方にしても、入院業務をすることで起きる時間外労働を減らすシステムにしても、私たちが後期研修医時代に作ってきた文化で、今も専攻医が働きやすいシステムに変えていっています。
また、専攻医だけのレジデントデーもありますし、専攻医のリーダーであるチーフレジデントが週に1回のスタッフミーティングに参加し、専攻医の意見を吸い上げて上に上げてもらうシステムもあります。
1年を4つのタームに分けており、タームごとに担当のスタッフが専攻医と面談をして、達成度評価や目標確認を行っています。
女性医師の働きやすさに関してはいかがでしょうか
女性だから、男性だからという区別は特にありません。専攻医やその上ぐらいの医師はライフイベントが多い世代ですが、そういうときにバッファーとしての医師が大勢いることが当科の強みでもあります。医師数が充実していますので、そういう医師の残業時間を短くしたり、当直回数を少なくすることもできます。
育児休暇取得も積極的に勧めていますので、何人もの男性医師が育児休暇を取りましたし、現在も育児休暇中のスタッフや育児短時間勤務制度を利用して働いているスタッフがいます。
先生はなぜ総合診療科を選ばれたのですか
私は医学部に進む以前から、医師と言えば近くの診療所で働いている開業医の先生みたいな人だというイメージを持っていました。風邪などの当たり前の疾患を当たり前に診られる医師が理想の医師像であり、専門科に進むということが自分の医師像とは違うと思ったので、総合診療科を選びました。
後期研修で飯塚病院を選ばれたのはどうしてですか
初期研修は母校の大学病院で行っていたのですが、2年目のときに総合診療科にしようと決めたんです。私は九州出身なので、九州で総合診療科を専攻するにはどうしたらいいのかなとネット検索をしたら、一番上に飯塚病院が出てきました(笑)。
それで見学に行ってみると、現在ほどではないものの、当時でも多くの指導医がおられる充実した診療科であり、丁寧に指導されている印象を受けました。私は大学病院で初期研修を行ったため救急対応の経験が少なく、自信がありませんでした。後期研修ではそういう指導も受けながら、実際に対応できることも魅力でした。
飯塚病院での後期研修はいかがでしたか
実践と勉強のバランスの取れた研修でした。最初は自信がなかったし、経験もなかったので、本当にポンコツの後期研修医だったなと思います(笑)。今の初期研修医や専攻医を見ていても、当時の私より劣等生は一人もいません。
私も初期研修ではそれなりに勉強してきたつもりでしたが、あまりにも経験が足りなかったので、初療では頭が真っ青になり、プレゼンでもがちがちに緊張して、きちんと話せませんでした。でも当時の指導医の先生方が見守りながら丁寧に教えてくださいましたし、同期にも恵まれて、今があるんだなと感謝しています。
同期の先生方は何人でしたか
10人です。初期研修でも当院にいた人は1人で、ほかの9人は他院から来ましたが、大学病院から来たのは私だけでした。同期は優秀な人ばかりで、何とか追いつけ追い越せと思い、多めに当直に入ったりしていました。今の専攻医は学年によりますが、1人から3人ほどが初期研修も当院だったという人たちで、他院からの専攻医のほうが多いですね。
専攻医に指導する際、心がけていらっしゃることはどんなことでしょうか
自分が分からないことは分からないと正直に言うことです。若い年次の頃には指導医として完璧な存在でいようという意識がありましたが、それだとどうしても適当なことを言ってしまったり、言わざるを得ない状況にもなります。それは真摯な対応とは言えませんので、今は分からないことがあれば分からないと素直に言ったうえで、一緒に調べよう、考えようと言っています。
それから、専攻医には将来自立した指導医になってほしいので、自分が知っている情報を教えようというよりも、分からないことがあったら自分で調べよう、考えようという声をかけるようにしています。
今の専攻医を見て、いかがですか
私よりも優秀な人たちばかりです(笑)。頼りにしていますし、一緒に勉強させてもらっているという感じです。
忘れられない専攻医はいらっしゃいますか
特定の専攻医というよりも、一番初めに私についてくれた初期研修医のことは印象に残っています。学年が近かったですし、向こうのほうが知識もあったので、とても苦労しました(笑)。
私は当院に来て11年目なのですが、私についてくれたことのあるメンバーが20人ほど集まって、5年前に食事会をしたんです。既に立派な専門医になっていた人もいて、感慨深かったですね。
現在の臨床研修制度について、感想をお聞かせください
良い制度だと思います。当院の初期研修は1年目は回る診療科がほぼ決まっており、2人セットで回ります(※2025年度より1年目の自由選択枠が拡大)。総合診療科に関しては初期研修医だけのチームを作り、初期研修医に対し、専攻医もしくは若手医師がベタづきとなり、患者さんの数も5人ほどに絞って、一人一人の患者さんを丁寧に診ていくことを指導しています。
6、7年前までは1人の初期研修医が10数人の患者さんを診る状態だったのですが、それだと書類業務に追われがちで、事故も起きやすくなります。それを反省し、初期研修医をできるだけプロテクトして、できるだけ勉強してもらおうということで、初期研修医へのレクチャーも充実させています。
現在の専門医制度について、感想をお聞かせください
私たちは以前の後期研修制度でしたので、飯塚病院内で3年間を過ごしました。それはある意味、飯塚病院内では最強になれるプログラムでしたが、総合診療は地域や病院ごとに求められるものが違います。
地域や病院ごとに様々な総合診療の形がありますので、それを経験できる点で、今のプログラムは私たちの頃よりも深くて、広い臨床経験を積むことができる内容になっていると思います。