高知赤十字病院
〒780-8562
高知県高知市秦南町1-4-63-11
TEL:088-822-1201
FAX:088-822-1056
病院URL:https://www.kochi-med.jrc.or.jp/
- 名前
- 内多 訓久(うちた くにひさ)先生
- 役職
- 第三内科部長 / 指導医
- 経歴
- 1972年 高知県高知市に生まれる。
2001年 高知医科大学(現 高知大学)を卒業後、徳島大学第二内科(現 消化器内科)に入局し、徳島大学病院で研修を行う。
2002年 高知赤十字病院に勤務する。
2020年 高知赤十字病院 第三内科部長に就任する。
- 専門分野
- 日本内科学会認定内科医、日本消化器病学科専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医など。
高知赤十字病院の特徴をお聞かせください。
救急病院として、一次から三次までの救急を担っており、地域の救急の患者さんを全て受けるという姿勢を持っています。また、当院は地域医療支援病院ですので、開業医の先生方からの紹介患者さんを受けていくことも役割の一つです。
内多先生がいらっしゃる消化器内科の特徴もお聞かせください。
私が入職したときは一般的な消化器内科チームでしたが、たまたま私が2007年に拡大内視鏡を学ぶ機会があったことで、当院でも拡大内視鏡を導入し、そこからの治療実績などが全国的に評価されてきました。そのため、全国の施設と友好関係ができ、色々な先生方とコミュニケーションを取ったり、色々な施設で学ぶ機会が増えてきました。
そこで、内視鏡診断だけでなく、最先端治療や新しい技術を取り入れたり、若い医師が見学や研修に行ったりするようになりました。そうした繋がりもあり、希望すればこれらの施設で研修できることも当科の特徴です。
また、最近は香川大学、神戸大学、NTTドコモ、オリンパスとともに遠隔診療の機器の開発も行っていますし、婦人科の子宮頸がんの診断を行うための内視鏡も開発しました。この内視鏡があれば、検診の際に足を広げたり、クスコで広げる必要もなく、スリット付きの下着のままで、しかも痛くなく受診ができるだけでなく、非常に綺麗に見えるというメリットがあります。
このようにほかのフィールドのことでも他施設や企業とのタイアップのもとで進めるなど、先進的なことに積極的に取り組んでいます。
高知赤十字病院の内科専門研修プログラムの特徴をお聞かせください。
当院は内科同士が非常に仲が良く、横同士の繋がりが非常にタイトなので、ベースの診療科に加えて、他科の診療科の指導医からも指導を受けられることが特徴です。専攻医は初期研修で一般的なローテートをしていますので、これをまた3年目以降も繰り返すとなると疲弊してしまいます。
やはり基礎を学んだあとは専門科に入りたいのではないかということで、例えば消化器内科に入った場合には消化器内科をベースにしつつ、珍しい疾患や専門医取得に必要な疾患は他科の医師に教えていただくという形になっています。内科の基礎のみならず、専門性も担保できるという意味で良い研修プログラムになっているのではないでしょうか。
高知赤十字病院の内科で専門研修をされた先生方はどのようなキャリアアップをされていますか。
様々なキャリアアップが可能です。消化器内科の場合ですと、診断、治療、手技を学ぶ必要がありますが、消化管でも肝胆膵でも、それぞれの道に進めます。私は消化管を専門にしているので、消化管は私が指導しています。胆膵は第四内科部長の岡﨑三千代医師が担当しており、加えて胆膵領域で高名な医師である手稲渓仁会病院の真口宏介先生に年6回、最先端の手技を教わる機会があります。肝臓は当院の前内科部長だった岩村伸一医師から指導してもらっています。最近では香川大学の消化器内科とも活発に交流しています。
カンファレンスについて、お聞かせください。
院内では火曜日に科内のカンファレンスをしているほか、水曜日は外科・放射線科・病理診断科との合同カンファレンスをしています。外科とも非常に仲が良く、距離が近いので、患者さんにとって何が一番いいのか、科をまたいでディスカッションをしています。また、月に1回、京都府立医科大学附属病院の病理カンファレンスに参加もしています。
それから、これは希望者のみですが、週に2回、30分程度、京都府立医科大学附属病院の消化器内科の先生方と英語でカンファレンスをしています。京都府立医科大学附属病院には留学生が多く、英語でカンファレンスをしていると聞き、当院には留学生が来ませんし、英語に触れる機会がないので、是非そういう環境で学んでほしいということで始めました。デューティーではありませんが、最近は若手医師がかなり参加するようになりました。
専攻医も発言の機会が多いですか。
科内のカンファレンスではプレゼンテーションの機会がありますが、院外となるとハードルが高くなりますね。ただ、専攻医を終わったぐらいの医師たちは内視鏡診断や治療についての意見などを積極的に話すようになっています。
女性医師の働きやすさに関してはいかがでしょうか。
当科は女性医師が多く、産休や育休を取りながら、皆よく頑張っています。私は家庭や自身の体調はとても大切なものだと考えています。そのため、スタッフがきつそうであれば、体調を尋ねますし、意見を聞いて、休ませるかどうかを判断しています。逆に気を遣いすぎても良くないことがあるので、そういうところはコミュニケーションを取りながらなるべく負担がかからないようにしています。
産後の復帰に関しても以前は1年の育児休暇を取る人が多かったのですが、最近は半年で復帰したいという医師もいました。もちろん、私が早く出てこいと言うことはないのですが、「仕事をしたいから早く復帰していいですか」と聞かれますね。ただ、小さい子どもはよく体調を崩しますし、そういうときはすぐに帰して、お子さんの面倒を見られるようにしています。当科では男性医師でも育児休暇を取った人がいますし、仕事と家庭を両立できるような環境づくりを心がけています。
先生はなぜ消化器内科を選ばれたのですか。
私の父は高知県で初めて「胃腸科」を始めた消化器内科医で、高知県立中央病院(現 高知医療センター)で副院長を務めていました。私は医師になるつもりは全くなかったのですが、その父が私が高校1年生のときに亡くなったんです。そのときはものすごく辛かったですし、これからどう生きるべきかと考えたときに父と同じ道を歩むのが多分、父の望みだっただろうし、私自身も歩んでみたいと思いました。そこで、ようやく勉強を始めたので、医学部に入るために4浪しました(笑)。
大学生のときは消化器内科は学問としては面白くないなと感じていましたが、初志貫徹ということで消化器内科を選びました。そして消化器内科の研修を始めてみると、その面白さが分かりましたし、とても楽しかったです。
徳島大学に入局されたのはどうしてですか。
母校の消化器内科の先生方も優秀な方たちばかりでしたが、たまたま仲良しの友人から「一緒に徳島に入局しようよ」と誘われたのがきっかけです(笑)。そこで見学に行ってみると、徳島大学も良い先生方ばかりで、いい雰囲気でした。
また、高知大学に入局すると地域の病院に勤務する必要があるのですが、徳島大学に入局すれば高知市内の病院に勤務できると言われたことも理由の一つです。当時、母が既に高齢で一人暮らしをしていましたので、私としては高知市内の病院に勤務したいと思い、徳島大学を選びました。
徳島大学でどのような研修をされたのですか。
当時の第二内科に入局し、最初の半年間は消化器内科と循環器内科を研修しました。次の半年間はICUの研修をして、2年目の夏に高知赤十字病院に来ました。
消化器内科の面白さはどのようなところにありますか。
私は最初、消化器内科にはおかしなところがあれば内視鏡でそれを摘んで、病理に出して生検して答えをもらうというイメージがあったのですが、拡大内視鏡で色々なことをしていくうちに病理を凌ぐような診断ができたり、本当にこの診断が正しいのかということを病理医とディスカッションできるレベルになってきました。拡大内視鏡を徹底的にトレーニングすれば、病理医の域にまで達しますし、病理医が困ったら、私たちが診断をアシストすることも可能です。
それから内視鏡一本あれば低侵襲の手術ができます。これまではお腹を開けないといけないようなことでも、外科の医師とコラボレーションすることで、お腹を開けずに切ったり、胃の破れたところを内視鏡で縫ったりなど、以前は考えられないようなこともできるようになり、患者さんにもとても喜んでいただけるので、人の役に立っている実感もありますし、遣り甲斐があります。
拡大内視鏡に出会ったきっかけはどのようなものだったのですか。
2006年頃に雑誌で見て、これは何だろうと思いました。そして福岡大学筑紫病院の八尾健史教授のもとに見学に行ったんです。八尾教授は私にとってはアイドルみたいな存在で、見学に行けると決まったときはものすごくテンションが上がり、折角お会いできるならと、自分の症例をまとめて持っていったんです。
それを八尾教授にお見せしたら、「これを一人でやったのか。すごいね。」と言っていただき、オリンパスに八尾教授が開発された拡大内視鏡のレンタルをお願いしてくれて、当院で拡大内視鏡を購入するまで、それをお借りしていました。
そして、私も拡大内視鏡のトレーニングをしたり、診断能力を磨くなど、日々の研鑽を積みながら、全国の研究会や学会で発表や報告をしていきました。
私の性格上、できることは究めていきたいということで、限界までやってみようと思って頑張ってきました。私のみならず、日本の内視鏡医は世界一の技術を持っています。今後はこれを世界に発信していきたいと考えています。
専攻医に指導する際、心がけていらっしゃることはどんなことでしょうか。
基本的には無理強いをしないことを心がけています。内視鏡の基本的なことはもちろん全員に教えますが、消化器内科も色々な領域があるので、私とは違うことをしてもいいんだよということですね。自分で自分の将来を決めてもらって構わないですし、それが私のしていることであれば、一生懸命教えます。
消化器内科医たるもの、内視鏡は絶対にするものだからです。もちろん、内視鏡に興味がない人はほかの道に進んでも構いません。興味があるのなら一緒にやろうというスタンスですね。
あとは「先生、お願いします」「時間いいですか」と言われたら、帰る間際であってもノーと言わず、時間を作って、質問に答えることも心がけています。
今の専攻医を見て、いかがですか。
率直に言うと、女性のほうが男性よりもパワフルですね(笑)。女性は「先生に学ぶために、ここに来ました」と堂々と言ってきますし、楽しみながら仕事をしている印象です。ただ、最近は男性も若手が増えて負けずに頑張っているので、見守っていこうと思っています。
現在の臨床研修制度について、感想をお聞かせください。
私は古い人間なので、大学卒業までに自分の道を決めておくべきではないかと考えています。私は卒後すぐから「主治医の内多です」と患者さんに挨拶に行かされていましたが、そのときのドキドキ感が責任感になっていきました。お腹を痛がっている患者さんを何とかしようという気持ちはそこで生まれたんです。
一方で、現在の初期研修はバックに指導医がおり、それが初期研修医の甘えに繋がっているのではないかと少し感じています。
現在の専門医制度について、感想をお聞かせください。
やりようによっては良い制度だと思いますが、率直に言うとJ-OSLERは必要なのかなという疑問はあります。自分も経験した29症例の病歴要約については、症例を綺麗にまとめる経験を積むことで将来のプレゼンテーションの際にも役に立ちます。
ただ、症例登録については、160件から120件に緩和されましたが、必要があるのか、本当に役に立っているのかと思う部分はあります。J-OSLERの導入によって垣根を上げておいて、内科医を増やそうというのは違和感がありますし、初期研修医の中にもJ-OSLERがあるから内科を専攻したくないという人も多くいて、このままだと専攻医も指導医も得をしません。
それよりも臨床の現場で患者さんを一人で診て、きちんと親身になってできることをしていくということに時間を費やしたほうがいいと考えています。