高知赤十字病院での勤務内容をお聞かせください。
柴田子どもが小さいので、育児短時間勤務制度を利用し、週3日の勤務をしています。その3日に関してはフルタイムで、朝8時から夕方5時までの勤務です。
今の業務内容としては麻酔がメインです。朝から夕方までずっと手術室にいて、麻酔に携わっています。緊急手術が多いので大変です。残業もたまにありますが、子どもの迎えがあるので、同僚や上司が配慮や調整をしてくれて、勤務が長引きそうな場合は交代していただいています。
2021年4月からは救急外来や集中治療の業務を加え、6月には完全復帰する予定です。
藤本私も育児短時間勤務制度を利用しています。業務は柴田先生とほぼ同じで、週に3日の勤務です。柴田先生とは曜日を少しずらして働いています。
今、2人目を妊娠中で、これから産休に入ります。産後は育児休暇を10カ月ほど取りますが、2022年の5月か6月に復職し、そのときも育児短時間勤務制度を利用する予定になっています。
これまでの勤務で印象に残っていることはどんなことですか。
藤本当院に来てすぐの頃に、上司の先生から怒られたことです。救急の現場はとても慌ただしいのですが、その中で急いで正しい判断をして進めていかないといけないというのが一番難しいんです。未熟だった私はてきぱき動けず、それでも患者さんの状態が深刻になっていったときに、上司の先生に「どんな患者さんでも自分のおばあちゃんだと思って診ないと駄目だよ」と言われました。患者さんを自分の家族だと思ったら、本気にもなるし、底力が出るということなのでしょう。
救急にしろ、麻酔にしろ、ICUにしろ、他科と比べると主治医と患者さんという関係が密ではありません。その場限りの関係で終わりということもよくありますが、そのときに担当している患者さんが自分の家族ならどうするのかと置き換えて考え、患者さんに寄り添っていきたいと思っています。やはり思い出となると、周囲が見えておらず、何もできなかったときのことの方がよく覚えているものですね。
柴田本当に重症な患者さんと対峙しているときは目の前のことで一杯ですし、特定の患者さんとの触れ合いから学んだ経験を挙げるのは難しいです。患者さんが亡くなってしまうかもしれないという経験を何度もしていますので、そういう怖かったことは印象に残っていますね。
救急で勉強していて良かったなと思ったことは心肺停止の患者さんを救命できたことです。あるとき、一般的な麻酔をかけていたところ、手術中に急に頻脈になり、心肺停止になった患者さんがいました。その患者さんはすぐに心肺蘇生をして、助かって、循環器科の先生に診てもらったのですが、もともと心停止が起きるような不整脈をお持ちだったことが分かりました。特に後遺症もなく退院され、循環器科でフォローすることになりました。もし私が救急を経験していない医師であれば、心肺停止の患者さんに接する体験もあまりなかったはずです。遅れることなく処置ができ、後遺症もなく救命できたのは救急での経験があったからこそです。
私が救急を選んだ理由は目の前の人を救えるようにということだったので、その目標を達成できる知識や技術が多少は身についたのかなという症例でした。