手術中の矢子先生と川口先生
医師を目指したきっかけをお聞かせください。
川口女性はライフステージによって、働き方や働く場所が流動的になる可能性があります。そこで免許や手に職を持っていることが大事だという前提があり、その中で興味を持った職業が医師でした。
矢子実家が動物病院を経営しており、父が獣医師として犬や猫の生命を救う仕事をしている姿を見て、私も生命を救う職業に憧れを持ち、医師を志望しました。
病院の特徴はどのようなものでしょうか。
川口高槻市は京都にも大阪にも20分足らずでアクセスできるなど、交通の利便性の良い街であり、当院は良好な住環境を誇る人気の北摂エリアの最北に位置しています。当院の周囲には豊かな自然が広がっており、空気が綺麗なところです。当院は北摂エリアの公的病院として、地域のご要望に応えるべく、高度で質の高い医療を提供しています。急性期医療のみならず、関西では珍しい独立型の緩和ケア病棟も設置していますので、救急医療から専門性の高い終末期医療まで幅広い分野をカバーしています。
初期研修で高槻赤十字病院を選ばれたのはどうしてですか。
矢子大学の部活動で私の1つ上、2つ上の先輩方が当院で初期研修をされていたので、当院を知りました。先輩方から指導医の先生方もとても優しく、色々と教えてくださる環境だということもお聞きし、実際に見学に来てみました。そこで手技を豊富に経験できることが分かりました。私は手技をしてみたいとずっと思っていたので、当院を受けることにしました。
ご専門を選ばれたきっかけについてお話しください。
川口まずは手術が楽しいと思っていたので、外科系と決めたんです。その中で乳腺外科は外科系では珍しく、検診から良性疾患・悪性疾患の手術、薬物療法、ターミナル期に至るまで、あらゆることに対して、患者さんにずっと関わることができることが魅力的でした。そして、女性であることが有利に働くことが多い科なのではないかと考えたことも乳腺外科を選んだ理由です。
初期研修、後期研修は日本赤十字社和歌山医療センターでなさったのですね。
川口地元という理由もありますが、病院の規模の大きさにも惹かれました。日本赤十字社和歌山医療センターは京都大学系列の病院ではありますが、全国から研修医が集まっていたんです。そして後期研修が始まる頃にタイミング良く、消化器外科と乳腺外科が分離し、乳腺外科として独立した診療科になったんですね。そこで乳腺外科を勉強させていただきたいと思い、後期研修も日本赤十字社和歌山医療センターで行いました。
後期研修終了後に大阪医科大学附属病院(現 大阪医科薬科大学病院)に勤務されたのはどうしてですか。
川口外科系の医師はどこかに入局して、技術を修練することが大事になります。私は初期研修が終わる頃に結婚したのですが、夫の母校である大阪医科大学(現 大阪医科薬科大学)の乳腺外科教室に入局することにしました。
高槻赤十字病院に来られた経緯をお聞かせください。
川口医局人事です。夫がイェール大学に研究留学したので、私も2人の子どもとともに同行し、3年弱をアメリカで過ごしました。帰国後の2021年に高槻赤十字病院に来ました。高槻に住むのは3年ぶりでしたが、以前に大阪医科大学附属病院に勤務していたときも住んでいたので、高槻に戻ってきたという感じでした。
初期研修のプログラムについてはいかがですか。
矢子1年目は内科、外科をメインに、麻酔科や精神科という必修科目を回ります。2年目になると自由度が上がり、地域医療、産婦人科、小児科、救急以外は自由選択になります。私は乳腺外科志望なので、自由選択では外科系を中心に回っています。同期2人は内科志望なので、内科系を中心に回っていますし、自分の進路に合わせた診療科をローテートしやすい環境です。
先生はいつ乳腺外科を志望しようと思われたのですか。
矢子考え始めたのは学生時代で、実際に決めたのは初期研修1年目の7月です。学生時代の病院実習では乳腺外科を回る機会がなく、手術にも1回しか入ったことがなかったんです。手術に興味があったので、産婦人科や形成外科を考えた時期もありましたが、乳腺外科はほかの外科より内科的なところがあり、全身を診つつ、手術もするというのがいいなと思いました。初期研修で外科系を回ると「これから外科専門医を取るのは大変だよ」と言われたりもしましたが、頻繁に入ることも苦にならないぐらい手術が好きですし、川口先生や乳腺外科部長の小林稔弘先生と一緒に手術に入るのも楽しかったので、乳腺外科に決めました。
プログラムの自由度は高いですか。
矢子2年目は高いです。
矢子先生
院外の研修先もありますよね。
矢子1年目の精神科は新阿武山病院で研修します。神経内科の研修では北野病院に行くこともできますし、色々な科の研修先に大阪医科薬科大学附属病院も選べます。地域医療は高槻市周辺の開業医の先生方の診療所や徳之島の宮上病院が選べます。私は救急科と産婦人科は大阪医科薬科大学附属病院、地域医療は2軒の診療所で2週間ずつ研修しました。
初期研修にあたってどのような姿勢を心がけていますか。
矢子言い方が適切ではないかもしれませんが、初期研修は何をしても許される2年間だと思いますので、特に内科では「何でこうしているんですか」「どういう治療方針なんですか」と分からないことはすぐに聞くようにしていました。また救急の当直では看護師さんが採血やルートをとったりなどをしてくださるのですが、病棟では手技の機会が少ないですし、私は自分でできるようになりたいので、採血やルートをとる練習ができるよう、手技に積極的に参加するようにしています。
初期研修で勉強になっていることはどんなことですか。
矢子本を読むこともありますが、先生方が実際にどうされているのかを見ることが勉強になります。先生方はこれまでの経験を踏まえながら、ガイドラインとの混合技で診療されているので、私もそういう技を身につけたいです。そのため、ガイドラインに載っていること以外のところにも留意しながら、先生方に質問するようにしています。
指導医の先生のご指導はいかがですか。
矢子皆さん、優しいです。手技でも「こういう方法がやりやすいよ」とご自身の経験からお話しくださいますし、手術でも「こういうことしてから、次の段階へ」みたいに教えてくださるので、とても有り難いです。
コメディカルの方々とのコミュニケーションはいかがですか。
矢子皆さん、厳しいことはなく、優しく接していただいています。救急の当直中は看護師さんと関わる機会が多いのですが、患者さんが一度にいらしたりしたときに「お願いしてもいいですか」と聞くと、快く引き受けてくださいますし、手術室のコメディカルの皆さんも優しくて、「こうしたらいいんじゃない」「これをしてください」と普通に言ってくださるので、私がどういう動きをしたらいいのかを学べる機会になっています。
高槻赤十字病院の救急はいかがですか。
川口日本赤十字社の病院としての役割や方針のもとで、基本的には断らない救急です。特にかかりつけの患者さんは余程のことがない限りは必ずお受けして、診察にあたっています。
当直の回数はどのぐらいですか。
川口私は未就学児が2人いますので、当直は免除していただいていますが、土曜日、日曜日の救急日直に月に1回、入っています。その間は子どもは院内保育所に預けています。
矢子初期研修医は月に3回です。体制は内科系の医師1人、外科系の医師1人、初期研修医1人です。初期研修医は内科系の疾患を中心に救急対応を行います。
当直ではどんなことが勉強になりますか。
矢子患者さんの症状が同じでも、それぞれの先生で検査やするべきことが違うので、バラエティが豊かで勉強になっています。
同期は何人ですか。
矢子私を含めて3人で、男性1人、女性2人です。研修医室もありますが、1年目と2年目で違う部屋なんです。2年目になると外の病院に行くことも多いので、部屋に3人が揃うことは少なくなるのですが、ほかの人がいれば話したりしています。