渡邉先生・和田先生・山下先生・伊藤院長・長谷川先生・柏嵜先生・鄭先生
病院の特徴はどのようなものでしょうか。
伊藤当院は埼玉県北部で唯一の公的な総合医療機関です。病院の機能として、三次救急、地域がん診療連携拠点病院、地域災害医療センター、地域医療連携拠点病院、地域周産期母子医療センターを持っています。そのような政策医療を担っている病院は県の北部にはほかにないので、当院が中心的な役割を果たしていることになります。個人的には雰囲気の良い病院なのではないかと感じています(笑)。私が院長に就任したときに「やさしさのあふれる病院」という平易な言葉で、理念とは別のスローガンを作りました。その結果、優しさと明るさのある病院になったと思っています。
初期研修の人気の秘密はどのようなものでしょうか。
伊藤私が着任した19年前、当院に初期研修医はいませんでした。それが数年前からは各学年8人ずつがフルマッチし、16人で初期研修を行っています。ゼロからここまでになったのは私の自慢の一つですね。当院は東京の都心部から70km離れており、どの大学からも1時間以上かかります。東京都内や近郊の病院に比べれば初期研修医を集めるのは何倍も大変なのですが、その努力をしてきたつもりですし、口コミで病院の良さが広まっていったようです。人気の秘密としては症例や手技の機会の豊富さでしょうか。
深谷赤十字病院を選ばれたのはどうしてでしょうか。
長谷川奨学生だったことも理由ではありますが、祖父母が深谷市の出身で、私は当院で生まれたんです。そういうご縁があって見学に来たら、とても素敵な病院だったので、当院を選びました。
柏嵜当院は二次から三次までの幅広い症例が多く来て、さらに初期研修医がファーストタッチをさせてもらえることが魅力的でした。そして見学に来て、すごく雰囲気の良い病院だと感じたことが決め手になりました。
鄭私も埼玉県の奨学金を借りている関係で、3年目以降に当院で働く可能性もあると思って見学に来てみたのですが、雰囲気が良く、コメディカルスタッフの方々とも距離が近くて、挨拶を必ず交わしているところを見て、とてもいいなと思い、当院を選びました。
和田私も奨学金の関係から、当院に見学に来てみると、先生方だけではなく、看護師さんたちも皆が優しくて、雰囲気の良さに惹かれて、当院に決めました。
渡邉私は千葉大学医学部附属病院のたすきがけプログラムで、1年目だけ当院で研修することになっています。たすきがけの病院の中で当院を選んだのは内科と救急をしっかり勉強できそうだったからです。
山下埼玉県北部の三次救急の病院ということで、重症の外傷の患者さんも二次の疾患も来て、幅広い症例が学べることで興味を持ちました。見学に来てみると、初期研修医の方々が優しく接してくださったり、看護師さんをはじめ、コメディカルスタッフの方々がすれ違っただけで挨拶をしてくれたり、活気のある雰囲気も良くて、当院を選びました。
2年目同期の鄭先生・長谷川先生・柏嵜先生
プログラムの自由度は高いですか。
長谷川2年目に9カ月ほどの自由選択期間があるのはとてもいいなと思っています。
伊藤2年間のうち、1年目で厚生労働省の定める到達目標の8割から9割を到達させておけば、2年目に自由選択の枠が大きくなるので、そのあたりが余裕のあるプログラムになっているんですね。自由選択はもちろん、ほかの診療科の途中変更も可能です。仲間うちで「あの科は良かったよ」と聞いた科を回りたくなったということもありますが、これだけの人数なので、そういうフレキシビリティがあります。また、1年目は少しタイトなのですが、いわゆるマイナー科、必修ではない診療科を回れることも特徴です。例えば眼科、泌尿器科、整形外科、形成外科、脳神経外科といったところを回ることで、将来の選択肢も増えますし、何よりも回ったことでどういう科なのかが分かります。実際に泌尿器科を回ったことで、泌尿器科を選ぶ人も出てきましたし、これまで選ぶ人がいなかった科へも志望者が出ています。それからローテートの特徴として、救急科を回る前に麻酔科を必ず回り、気管挿管や静脈ライン確保などの救急に必要な手技を学んだあとで救急に進むということも挙げられます。
山下ほかの病院だと一度に同じ診療科を回っている初期研修医が4、5人いたりしますが、当院は初期研修医の人数が1学年8人と少ないので、2年目の先輩が回っていたとしても、最大で3人しか同じ科を回れないようになっています。その意味で、指導体制がいいですね。手技に関わったとしても奪い合いにならないですし、必ず別々の指導医の先生がついてくださるのが特徴だと思います。
柏嵜一番の志望科を回るにあたって、まだ慣れていない4月や5月に回るのはもったいないので、少し慣れた時期であり、かつ早い時期でもある6月か7月に回ることができます。早めに回ることで、「こんな感じなんだ」と分かるのは良いところですね。私も実際に早い時期に志望科を回ってみて、「やっぱりいい科だな」と思いました。
カリキュラムの自由度はいかがですか。
鄭回りたい診療科を変えることもできますし、高いと思います。
深谷赤十字病院での初期研修で勉強になっていることはどのようなことでしょうか。
長谷川一番、力がつくと感じるのは当直です。ウォークインで来られた、そこまでの重症ではない患者さんも、救急車で搬送されてきた患者さんも、どちらも初期研修医が関わります。上の先生方もしっかり見守ってくださいますが、ウォークインの患者さんに関しては初期研修医が主体的に進めていくことも多いので、考えたり、色々な経験を積むことができています。
柏嵜私もやはり当直帯が一番力がつくなと感じています。最初にどの検査をオーダーするのかを考えることができますし、指導医の先生の野放しではなく、後ろでしっかり見守ってくださり、あとから「この検査、いらなかったんじゃない」というフィードバックもいただけるので、安心して当直に入ることができ、かつ力もつきます。
鄭当直ももちろんそうなのですが、日々の病棟業務も勉強になります。例えば、手技が必要な患者さんに経験したことのない手技をするときは指導医の先生が後ろについてくださっているので、教えていただきながら手技ができるのも安心に繋がっていて、とてもいいです。勉強になるところがありすぎますね(笑)。
和田初期研修医の当直は9月までは2年目1人、1年目1人で入る形なので、2年目の先輩が動いている姿を直接見られます。その場で優しく教えていただいているので、とても勉強になっています。
渡邉当直は継続的にやっていますので、学びが多いですね。当直以外に挙げるとすると、1年目に1カ月、内科外来というローテーションがあることです。一般内科の日中の外来の1枠を初期研修医にいただいているので、そこで指導医の先生のご指導のもとで、初診の患者さんを診療させていただいています。当直でももちろん外来はありますが、内科外来では流れが全く分からない状況から、しっかり教えていただきながら流れや方法を理解して勉強できるので、学びが多かったです。
山下当直については皆さんがおっしゃっていた通りで、勉強になります。それ以外で挙げるとすると、それぞれの診療科のかなり専門的なところまで勉強できることです。循環器科はカテーテル室に入ってカテーテルを実際にやったり、消化器内科は内視鏡に触ることができます。その科をよく知ることができ、いい勉強になっています。
座談会の様子
どのような姿勢で初期研修に取り組んでいらっしゃいますか。
長谷川最近、気づいたことなのですが、自分の進む科が決まったあとでほかの科を回るとうになると、この科に触れるのは今月が最後なのかなと思うようになりました。今月、覚えた知識を今後何十年も適宜アップデートしながら使っていくんだろうなという気持ちで、志望科以外の科を回っています。とても貴重な経験を日々させていただいていると感じています。
柏嵜私は来年度から専攻医研修が始まることをとても意識しています。今は初期研修なので、上の先生がついてくださっているし、自分のしたことに対する責任を自分だけが負うことはないのですが、来年からはそうもいきません。特に当直帯では来年度からは自分の判断で回さないといけないことがあるので、今のうちに色々な症例を経験して、同じような症例が来たら、来年度以降も同じ対応ができるように、知識をなるべく多く詰め込んでおきたいと思っています。
鄭2人と被るところもありますが、色々な科を回ること、なおかつ周囲にすぐに質問して、指導していただける機会は今だけだなと思うので、回っている科で学べることは全部吸収していきたいです。言い方は良くないですが、小さな失敗なら許されるのも今だけなので、失敗も含めて、色々なことを経験させていただけるようにアグレッシブに臨んでいます。
和田まだできないことばかりなので、先生方から1回目に指摘されたことを理解し、2回目にするときに同じことを繰り返さないよう、少しずつ着実に覚えることを意識しています。
山下来年は1年目の研修医が入ってくるので、私も少し上の立場になります。先輩方にしていただいたように、1年目の人たちを引っ張っていかないといけない状況になるので、なぜこの検査をするのか、この対応をするのかといったことを、確実に説明できるようになりたいです。
渡邉回っている科でも当直でも分からないことや疑問に思うことが多くて大変なのですが、それをそのときに質問したり、調べたり、なるべく理解できるようにすることを心がけています。
指導医の先生のご指導はいかがでしょうか。
山下優しくて、質問しやすいです。
長谷川積極的に指導してくださる先生方がどの科にも大勢いらっしゃいます。
柏嵜違う科をローテートしていても、質問や相談に乗ってくださったり、当直帯で自分の指導医ではない先生方にも質問すれば、とても丁寧に教えてくださるのが有り難いです。
1年目同期の山下先生・和田先生・渡邉先生
カンファレンスの雰囲気はいかがですか。
山下私は先月、救急科を回っていたのですが、救急科では初期研修医が患者さんの治療方針やプロブレムをプレゼンし、ディスカッションを行います。治療方針についてアドバイスをいただくこともあります。厳しくも温かいお言葉を頂き成長できる場になっています。
渡邉外科を回っているのですが、外科では毎週、自分が入る手術の症例についてプレゼンします。自分が入る手術の予習になりますし、こういうふうに治療をしていくのかというイメージができるカンファレンスです。
鄭内科系を回っていると、毎朝カンファレンスがあります。朝の8時30分に集まって、新規患者さんやICUに入院されている患者さんのプレゼンをします。初期研修医が受け持ちになっている患者さんについては初期研修医が発表するので、プレゼンの勉強にもなっています。
コメディカルスタッフの方々とのコミュニケーションはいかがでしょうか。
長谷川ほかの病院はあまり知らないのですが、当院のコメディカルスタッフの皆さんとは話しやすいです。大学病院は職種同士で確立されている感があり、気軽に相談がしにくいのですが、当院では病棟勤務をしていると、薬について分からないことがあれば薬剤師さんに教えていただくこともありますし、ほかの職種の方々とも仲良くさせていただいています。
山下イレギュラーな答えなんですけど、日赤の病院は部活動が盛んです。私は卓球部に入っていますが、卓球部は主に薬剤師さんと看護師さんが中心になって活動しています。それで知っている薬剤師さんがいる病棟や診療科を回っていると、薬の相談がしやすいです(笑)。「こういうことで悩んでいるんですけど、どうしたらいいんですかね」と聞けるし、逆に薬剤師さんからもすぐに質問が来ます。そういう関係性をスポーツを通じて作れる病院です。
伊藤嘘か真か分からないのですが、日赤全体で言われていることとして、「スポーツが盛んな病院はアクティビティも高い病院だ」ということで、どこもそれなりに力を入れているようです(笑)。当院は女子バレーボール部は東部ブロック大会で3連覇中ですし、かつては卓球部も優勝経験があります。全国赤十字病院スポーツ大会はコロナ禍の間はなくなっていましたが、今年は日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院、名古屋第二病院の主催で岐阜県で行われ、当院からは女子バレーボール部と軟式テニス部が出場しました。部活動はたしかに職場とは違う雰囲気で、先輩、後輩、仲間の関係を作れますので、日常の診療において気軽に話せたりすることにも一役買っていますね。
研修医室はありますでしょうか。
柏嵜あります。1、2年目が同じ部屋で、居心地よく、和気あいあいと過ごしています(笑)。