河本当院は栃木県の県北医療圏の唯一の総合医療機関です。病院の機能として、救命救急センターを持っており、これは県北で唯一の三次救急医療施設となっています。ほかに災害拠点病院、地域周産期母子医療センター、地域がん診療連携拠点病院、へき地医療拠点病院、地域医療支援病院、栃木県脳卒中地域拠点医療機関、エイズ拠点病院などの指定医療機関になっており、県北の病院の中で中心的な役割を果たしながら、そういった政策医療も担っています。
初期研修での人気の秘密
河本私は2023年に当院に着任したばかりですので、初期研修医に聞いてみたところ、自分で積極的に診療にコミットできるところが良いところなのかと思います。例えば大学病院などですと、救急外来で新しく来られた患者さんの所見を取ったり、診療するのは中堅の医師で、初期研修医はそれを見学するだけといったところもあるようですが、当院は初期研修医がファーストタッチをして所見を取り、自分で考え、判断して、それから指導を受けることができるので、それが人気のようです。
乗馬を楽しむ会田先生
会田私は東京都出身なのですが、祖母が那須塩原市に住んでいるので、祖母と一緒に暮らしたいなという思いがまずあり、近くの病院を探しました。もともと三次救急の病院で研修したかったですし、性格的にも研修医数が大人数よりは少人数の方がしっかり学べるかなと考え、三次救急病院であり、1学年5人という規模の当院を選びました。さらに、初期研修医になってから結婚したのですが、できれば初期研修中に出産したかったので、24時間の院内保育所があることも分かり、キャリアやライフプランの面からも100点の病院だなと感じました(笑)。
吉田私は小児科志望で、3年目以降は母校の小児科医局に入りたいと考えていました。母校の小児科の雰囲気がとても好きなのですが、ずっと大学にいるよりも初期研修の2年間は市中病院で働いてみたかったし、私も少人数の方が手技ができるのかなと思い、色々な病院に見学に行きました。私は埼玉県出身なので、埼玉や東京の病院にも見学に行きましたが、当院が一番、雰囲気が素敵な病院だったんです。コメディカルスタッフの方々もとても優しく挨拶をしてくださり、そういう雰囲気の良さに惹かれて、当院に決めました。
初期研修プログラムの特徴
会田一番のポイントは自由度が高く、選択期間が長いことです。自分の好きなタイミングで好きな科を回れるのは有り難いです。私は妊娠していて、つわりの時期に志望科の脳神経外科を回る予定だったのですが、先生に相談したところ、「身体を大事にしよう」と言われ、回る科を変更していただきました。それも少人数だからこそできたのかなと思います。
ディズニーランドで楽しむ吉田先生
吉田当院を選んだ理由でもあるのですが、当院は獨協医科大学病院と提携しており、たすきがけのプログラムもあります。当院では市中病院ならではのコモンディジーズ、大学病院では大学病院ならではの疾患を診られることに加え、大学病院にいつ行きたい、どの科を回りたいという希望が直前でも叶います。研修中に「この科に興味が出てきたから、回りたい」という希望に対しても融通が利くので、フレキシブルな初期研修が可能です。
河本そういう選択の自由度が高く、初期研修医の自主性を重んじていることが特徴ですね。トップダウン式にカリキュラムをきちんと決めて行う研修とは正反対で、初期研修医の希望に応じて、初期研修医のやりたいことをできる環境を作っていくことを目指しています。また、当院は都会の病院に比べると、コメディカルスタッフの皆さんが優しいです(笑)。もちろん1年目の初期研修医よりコメディカルスタッフの方が知識も経験もあり、教えてもらう機会も多いはずですが、それぞれの立場をリスペクトし合って接している環境があります。それから患者さんも同様です。都会には病院が数多くあるので、患者さんもいわゆるドクターショッピングをしたり、扱いが難しかったりもするのですが、当院の場合は医師患者関係がとても良好です。医師患者関係とは患者さんからの信頼も大事ですが、医師からの信頼も大事なんですね。「この患者さんは自分が言っていることを聞いてくれる」「自分がやろうとしていることを分かって治療を受けている」という信頼があると診療がうまくいきます。初期研修で嫌な思いをすると、医師の全キャリアにわたって嫌な思いを引きずってしまうかもしれません。しかし初期研修で良い医師患者関係を築ければ、医師としてのキャリアにとってもプラスになりますし、それはとても重要なことではないかと思っています。
初期研修で勉強になっていること
会田当直はとても勉強になります。当直では指導医の先生1人に初期研修医1人がついて、ウォークインも救急車も診るのですが、研修医がファーストタッチをします。もちろん分からないことはすぐに質問できますし、研修医が1人ですので、やりたい手技など、やってみたいことはさせていただける環境なのは素晴らしいと思っています。
吉田当直の場合、救急外来である程度の検査をして、こういう疾患かなと分かったときにICする機会があります。ほかの研修病院のことは分からないのですが、当院ではICの機会があり、医療知識が全くない患者さんに話すとなると簡単な言葉での説明が求められます。いざ自分で話すとなったときに、自分に知識が足りないとうまく伝えられないし、そういう場で一番大事なことは患者さんの不安を除いたり、患者さんが気になっていることを説明することだと思うのですが、「こういうことを勉強しておけば良かった」と反省することもあります。遣り甲斐があるということで言えば、当院は初期研修医がチャレンジできる機会が多くあることです。今は外科を回っていますが、私が外科志望でないことを指導医の先生方も分かっているのに、「勉強してきたら、執刀してもいいよ」と言われ、専攻医の先生から本を借りたり、動画を見たりして勉強すると、「勉強、頑張ったね。じゃあ、やってみよう」と一緒に執刀させていただけるんです。市中病院ならではの研修なのかなと、とても遣り甲斐があります。
初期研修で心がけていること
会田1年目は慣れないことも多く、知らないことを学んで、知識を増やしていくことや先生たちが日々行っている診療を見て勉強することに精一杯でしたが、2年目は少し慣れてきたので、患者さんにお話ししたり、できることを積極的に増やしていきたいと思っています。
吉田初期研修医は常に指導医の先生方に守ってもらっている立場であり、今しかできないことは多くあるはずなので、失敗することもよくありますが、とにかく何回もチャレンジする精神でいきたいです。2年目になり、後輩も入ってきたので、後輩に何を聞かれても「さすが」と思ってもらえるように勉強しないといけないなと考えています。
河本副院長から初期研修医にメッセージ
河本医師の仕事は大変ですが、まずは知識と技術を身につけることが基本です。そして、ずっと勉強していかなければいけません。そこが礎となり、そのうえにアンテナを張って、患者さんの心配事や訴えに耳を澄ますこと、そういう感覚やスタンスを忘れないように、保ち続けてほしいです。知識や技術だけに胡座をかいて対応する医師にはなってほしくないので、知識や技術を土台にしたうえで患者さんの本当に困っていることの核心に対して、しっかり応えられるような診療行為や相談のできる医師を常に目指し続けましょう。そういう医師が患者さんに一番信頼され、人気のある医師になるのではないかと思いますので、是非それを目指して頑張ってください。