岐阜赤十字病院での勤務内容をお聞かせください。
勤務中の岡村先生
岡村岐阜赤十字病院に所属しているのですが、外の病院やクリニックでの勤務もしています。月曜日の午前中はクリニックで外来、午後は隔週で手術か、手術を控えている患者さんへの外来での説明です。火曜日の午前中は手術、午後は外来です。水曜日は郡上市の八幡病院で外来をしています。木曜日は午前中は手術で、午後が外来ですが、ここでは隔週で斜視や弱視の専門外来を担当しています。金曜日は午前中が外来で、午後が手術です。
槇私は月曜日と水曜日が外来で、それ以外の日が手術です。手術件数にも波がありますね。当直をしているときに患者さんが続くと、私だけずっと手術しているみたいな日もあれば、意外にそういった事態がなく、ほかの先生の助手に入ることが多い時期もあって、件数は読めません。
サブスペシャリティについて、お聞かせください。
岡村専門外来として行っているのは斜視や弱視です。以前は中京病院から斜視の専門の先生がいらしていたので、その先生のもとで勉強させていただいていたのですが、その先生がいらっしゃらなくなったので、その先生が診られていた患者さんを私が引き続き診療させていただいているという形です。
槇私は手の外科をサブスペシャリティにする予定です。これまで色々な手術をしてきた中で、大きな手術よりは顕微鏡を使うような細かな手術のほうがやっていて楽しいと気づきました。女性は手をよく使いますし、手の疾患で来られる患者さんには女性が比較的多いという印象もあり、私も女性ですし、生活のうえで困ることなどが実感を持って分かるのかな、そういったことでお役に立てればと考え、手の外科を選びました。幸せなことに、当院の整形外科の野々村秀彦部長は手の外科を専門にしておられますし、手の外科を志望しているほかのスタッフもいますので、私も手の外科の専門医取得に向けて勉強できればと思っています。
診療方針をお聞かせください。
岡村患者さんが入ってこられたときは必ず挨拶から始め、「お変わりないですか」というお声がけをするようにしています。眼科は検査ありきの診療科なので、例えば視力が1.0でも「すごく見えるよ」という方もいれば、もともと1.5だった方が1.0になると「見にくくなった」と言われますので、患者さんが感じていらっしゃる変化をお聞きするようにしています。そうすることで、診療でどういうお話をしたらいいのか、どういう治療を提案するべきかなどを考えることができますので、患者さんがどういうふうに感じていらっしゃるのかを伺うことを大切にしています。
槇整形外科を目指したときと今もあまり変わらないのですが、ADLが障害され、痛い、動けないというだけで、患者さんの負担が大きくなるので、それを手術や治療をすることで、少しでも楽にしてさしあげ、患者さんが毎日を楽しく過ごせるようにしたいです。ただ、怪我をする、骨折をする、病気になる、そこから治療を受けて良くなっていく過程では患者さんご自身に頑張っていただかなくてはいけないのですが、それは辛いことです。怪我をしたり、病気をするだけで辛いのに、そこから治療して良くなるためにまた頑張るというのはかなり辛いことなので、その過程のそばにいてお手伝いをし、一緒に歩んでいきたいです。私たちにできることはそのぐらいしかできないと思っているので、患者さんが病気や怪我に立ち向かって良くなっていく過程を純粋に手助けする存在でいたいと考えています。
岐阜赤十字病院で実現したキャリアはどのようなものですか。
岡村眼科専門医の取得ですね。そのために論文も書きましたし、学会発表もポスターと口頭を1回ずつさせていただきました。それをクリアしたうえで、専門医を取得できました。
槇当院に来て1年が経ったばかりなので、発展途上です。整形外科の専門医は既に取っているのですが、サブスペシャリティとしての手の外科の専門医をこれから取れるようにしていきたいと思っています。
これまでの勤務で印象に残っていることはどんなことですか。
岡村眼科の手術で一番多いのが白内障です。白内障は年齢の変化によって、誰もがなるものなので、私たち眼科医からすればありふれた疾患です。あるとき、80歳ぐらいの女性の患者さんが手術前にとても不安になっておられたことがありましたが、手術後にまた見えるようになりました。手術の翌々日は開業医の先生のところで診ていただくのですが、3カ月後は節目ということで、当院に来ていただくんですね。そこで、その患者さんが私に会った瞬間に涙を流されて、「先生に会えてほっとした」とすごく喜んでくださったんです。眼科の中では白内障の手術は簡単なものという認識でしたが、QOV、見えるということがいかに大切なのかを改めて気づかされました。その改善のお手伝いができ、眼科医として働いていて良かったなと感じた瞬間でした。
槇考えてみたのですが、ぱっと出てくるものがあまりないので、これからそういう出会いがあればいいなと思っています。
初期研修医の指導にあたって、心がけていることはありますか。
岡村眼科医を目指して当院で初期研修をするという人は少ないので、あまり関わることはありません。眼科は特殊なので、眼科を回る研修医には検査の見方や外来での話の仕方などを見てもらうなど、眼科についてよりも臨床の場での患者さんへの対応の仕方などを学んでいただく場にしています。
勤務中の槇先生
槇私たちよりも学年がかなり離れた初期研修医を教えるときはどこまでやってもらうべきかを計りかねるところがありますね。私が研修医だったときにやる気があっても自分から積極的に「やらせてください」と言えなかったんです。それで「お前はやる気がないな」と言われたこともありました(笑)。そのため、そういう研修医もいるのだということを念頭に置いて、その研修医がどういうことを勉強したいのかということをなるべくこまめに尋ねるようにしています。
これまでのキャリアを振り返られて、いかがですか。
岡村産休で2回、間が抜けているのですが、それでもこれだけの手術をしたり、患者さんと関わらせていただき、上司やほかの先生方のサポートを受けながらキャリアアップできているかなと思います。自分だけでやると不安が大きいことであっても、上の先生方にご指導いただきながら手術やチャレンジをさせていただける環境はとても有り難いです。
槇いまだに自分が医師に向いているのかどうかを考えてしまうことがあります(笑)。でも、いつも人の役に立ちたいという気持ちがあるので、そういった意味ではこの仕事を続けてきて良かったです。これからも自分ができることで助けられる人がいるなら、お役に立てるよう頑張りたいです。