指導医インタビュー

熊本赤十字病院

熊本県熊本市東区長嶺南2丁目1番1号

名前
加島 雅之 先生
総合内科
職歴経歴
熊本市出身。2002年に宮崎医科大学(現 宮崎大学)を卒業後、熊本大学総合診療部に入局する。熊本大学医学部附属病院、国立熊本病院(現 熊本医療センター)、熊本赤十字病院、沖縄県立中部病院で研修を行う。2004年に熊本赤十字病院に救急医として入職し、その後、総合内科に移る。日本プライマリケア連合会暫定指導医、日本内科学会認定内科医など。

熊本赤十字病院の特徴をお聞かせください。

一次から三次まで年間約6万人の救急患者さんが来院される、全国屈指の救急病院です。その一方で、総合病院としての体制があり、高度ながん診療なども行っていることが特徴です。

熊本赤十字病院の総合内科の特徴もお聞かせください。

当院には内科系の診療科は循環器、呼吸器、消化器、神経とありますが、総合内科ではそれら以外の全ての内科領域を担当しています。総合内科のスタッフは腎臓、血液腫瘍、感染症、内分泌を専門にしていますが、専門医だけが集まっているのではありません。ほかの病院の総合内科は一般内科のみを担当し、どこにも振り分けられない患者さんや高齢の患者さんを診るか、もしくは各専門医が集合した形で総合内科を形成するかといったところが多いのですが、当院の総合内科医は総合内科を学んだあとでサブスペシャリティを取って、もう一度、総合内科に戻ってきた医師ばかりです。

総合内科での後期研修の特徴として、どういったことが挙げられますか。

内科の広い分野に渡って、非常に多くの患者さんを診ることが可能です。後期研修3年間で約1600人の患者さんを受け持ち、最初の1年でその約半分を診ます。学年が上がってきますと、本人の希望に応じて、専門性の高い分野を増やしていくことができます。

当直はどのような体制ですか。

2段階制です。病院全体では内科当直として救急外来でウォークインの患者さんを担当します。月に1回か2回ありますね。初期研修医の指導もしますし、深夜帯は小児科も担当します。もう一つは総合内科医としての病棟直です。当院は救急部が充実しており、救急車で来院した患者さんの初期対応を救急部で行ったあと、入院の場合に総合内科がコンサルトを受けます。このオンコール対応が月に7回から8回あります。

カンファレンスの雰囲気はいかがですか。

総合内科ではカンファレンスの機会をあえて多く設定していません。忙しいというのもありますが、カンファレンスは机上の空論や高みの見物になりがちなところがあるので、それを避け、本当に主治医が困っていることをどう共有し、どう解決に持っていくかを学ぶ場にしたいと考えているからです。立場が変わったときにはじめて分かることもあるので、そういう意味でのカンファレンスにしています。

総合内科での後期研修で、どのようなキャリアアップが望めますか。

後期研修終了後に、専攻したい内科領域に応じたキャリアプランを立てていきます。私たちが知っている病院や指導医を紹介して、キャリアを積んでいくお手伝いをしています。このスタイルを6年前から始めましたが、がん研有明病院で化学療法を学んだり、亀田総合病院で感染症、膠原病やリウマチを学んで、当院に帰ってきた医師もいますし、集中治療の専門医やアメリカ留学を目指すために、東京ベイ・浦安市川医療センターで集中治療を学んでいる医師もいます。
私自身は総合内科医で終わらず、サブスペシャリティを取って、もう一度、総合内科に戻ってくるのがいいと思っています。今、ほかの病院に行っている人も戻ってくることを願っています。

女性医師の働きやすさに関してはいかがでしょうか。

病院全体に女性医師が増えていますので、女性医師専用の当直仮眠室や入浴施設など、様々な配慮を行っています。総合内科の場合は病棟直制ですので、時間外呼出が減りましたし、私生活を守れているのではないでしょうか。

加島先生はどのような研修医時代を過ごされたのでしょうか。

私たちの時代は塗炭にまみれるような研修医時代でした(笑)。特に大学病院では肉体的にも精神的にもきつかったですね。しかし、研修の最後に沖縄県立中部病院に行ったのですが、そこは非常に良かったんです。そういった、私が受けてきた研修で良かったことを取り入れた研修を当院で作り上げようとしているところです。

研修医に指導する際、心がけていらっしゃることはどんなことでしょうか。

初期研修と後期研修では若干スタイルが違いますし、後期研修も最初の段階と終わりの段階では違いますが、まずは多くの症例を診るということですね。その中で、患者さんとの接し方、病院という組織内での立ち居振る舞いを覚えてもらうことが大切です。
もう一つは教え過ぎないことです。ポイントは教えますが、細かく教え過ぎない方がその後の伸び幅が大きいんですね。研修医に考えさせ、調べていく癖をつけさせることを目指しています。

研修医に対し、「これだけは言いたい」ということはどんなことでしょうか。

細かい専門や手技などにこだわるなということですね。やっているうちに、向き不向きは分かってきます。細かい専門や手技よりはどういうふうに患者さんに接し、患者さんの状況をどうプランニングできるようになるかを集中して身につけてほしいです。

現在の臨床研修制度について、感想をお聞かせください。

制度そのものは馴染んできたのではないでしょうか。ただ、私は新しい制度よりも2004年に臨床研修制度が始まったときの内容の方が優れていると思います。今は2年目で専門の科を学びますが、それは2004年当時のフィロソフィーや基本理念からは外れています。スーパーローテート7科目をきちんと勉強し、経験を積み重ねたうえで、自分のスペシャリティを持つべきですね。私自身は、後期研修で内科に行きたいという初期研修医には2年目の選択科目では内科以外の科をローテートするよう、アドバイスしています。後に内科医になったときのことを考えると、2年目で内科以外の科を学んでおいた方が良いからです。

これから後期研修の病院を選ぶ初期研修医にメッセージをお願いします。

初期研修はある意味、基本であって、医療の挨拶程度の意味しかありません。きちんとした臨床医になれるかどうかは後期研修が重要なんですね。できるだけ幅広い研修を経験したうえで、さらに自分のサブスペシャリティを持つという後期研修をしてほしいです。
それから研修医はできるだけ失敗した方がいいです。研修医が失敗しても、患者さんに大きな迷惑がかからないようにするのが指導医の務めです。研修医は失敗できる環境のうちにできるだけ失敗して、その失敗をどうやれば患者さんに迷惑をかけないで済むようになるのかという方法や失敗からの挽回の方法を指導医から学んでください。
また、手技や特殊な専門についてはあまり考えなくてもいいと思います。内視鏡などの手技や薬は5年も経つと、全く違う状況になります。早い段階で得たことが一生、役立つわけではありません。一生、役立つ能力とは患者さんの症状をどう考え、どうアプローチし、どうマネージするかということです。幅広い臨床を経験し、そのような能力を身につけることができれば、専門的な知識や技術は数年で習熟できますので、そういう方向性で研修をしてほしいですね。