指導医インタビュー

社会福祉法人 恩賜財団 済生会支部

大阪府済生会千里病院

大阪府吹田市津雲台1-1-6

名前
夏川 知輝(なつかわ ともあき)先生
千里救命救急センター医局長 指導医
職歴経歴
1975年に大阪府豊中市で生まれる。2003年に大阪市立大学を卒業後、箕面市立病院、大阪府立千里救命救急センター(現 大阪府済生会千里病院千里救命救急センター)、大阪大学医学部附属病院、大阪府済生会千里病院千里救命救急センター、春秋会城山病院を経て、2009年に大阪府済生会千里病院に着任する。2013年に大阪府済生会千里病院千里救命救急センター医長に就任を経て、2016年に大阪府済生会千里病院千里救命救急センター医局長に就任する。
学会等
日本救急医学会専門医、日本内科学会認定内科医、日本循環器学会専門医、CVIT認定医など。日本集中治療医学会、日本臨床救急医学会、日本内分泌学会、日本糖尿病学会、日本外傷学会、日本集団災害医学会にも所属する。

大阪府済生会千里病院の特徴をお聞かせください。

千里ニュータウン内にある、343床の中規模病院です。この付近には市立豊中病院、吹田市民病院、大阪府済生会吹田病院など、同じような規模の病院はいくつかありますが、人口も多いですので、それぞれが一般的な疾患を診ています。その中で当院の特色は手前味噌になりますが、やはり救急医療でしょうか。急に具合が悪くなったり、怪我をした患者さんを当センターで最初に診て、専門の診療科にバトンタッチしたり、当センターで最後まで診たりといった診療を行っています。

大阪府済生会千里病院の千里救命救急センターの特徴もお聞かせください。

日本では救急の制度を一次から三次までに分けていますが、当院は最も重症度の高い三次救急を扱っています。もちろん、歩いてこられる一次救急、中等症の二次救急も全て診ています。三次救急の施設自体は珍しくないのですが、当センターの特徴としては病院前救急と災害医療が挙げられます。病院前救急は患者さんの具合が悪くなった場所にドクターカーなどで出向き、その現場から治療を開始し、病院で引き続いて治療を行うというものです。
災害医療は災害が起きたときに被災者を助けるための医療として、阪神大震災を契機にあり方が見直されてきました。災害直後に建物に挟まれて、助け出された人などを治療するのはもちろんですが、災害で直接、怪我をしたわけではないけれど、災害の3日後、1週間後、2週間後などに避難生活を送る中で体調を崩した人に対して、病気にならないように予防したり、病気になった人には早くからの治療を開始するものも含みます。阪神大震災以降、国が災害医療に取り組む中で、私たちの先輩である甲斐達朗顧問が中心となって、日本DMATを作ってきました。それ以降、中越地震、奥尻島の地震、東日本大震災を経験しましたが、課題もあったんですね。しかし、熊本地震ではかなりシステマティックになり、助けられる人を助けられました。また、局地災害時の医療も災害医療の一つです。大阪教育大学附属池田小学校の事件やJR福知山線の事故でも千里救命救急センターのスタッフが現場の指揮にあたり、当センターでも引き続き治療しました。普段、普通の生活をしている人が青天の霹靂のように事件や事故に巻き込まれたとき、私たちはその現場で命を助けるための医療を始めます。一般の外来で患者さんを診療するのとは状況が異なります。たった10分でも息が詰まって辛い患者さんを前に、普段と違う環境でいつも通りの医療を行うためのトレーニングが必要ですし、普段から緊急なことへの優先順位づけをするようにしています。

大阪府済生会千里病院の後期研修プログラムで学べる特徴について、ご紹介くださいますか。

診療に関しては、ほぼ全ての救急症例を学べます。ER型ですと、専門の診療科にバトンタッチして終わりとなってしまいますが、当センターは自己完結型ですので、最後まで診ることができるのが特徴ですね。もちろん、腕の骨折のような軽症は整形外科にお渡ししますが、開放骨折や骨盤は当センターで診ます。心臓疾患ならカテーテル、穿孔や腸が腐っているときは手術もします。脳出血の手術も当センターで可能です。そして、落ち着くまで当センターで診ています。
また、病院前救急や災害医療も学べます。現場に行くときは指導医と後期研修医がともに行きますから、良いOJTになります。当センターは災害医療のプランニングから関わっていますから、学ぶチャンスは豊富にあります。多彩な後期研修が行えるはずですよ。

千里救命救急センターでの後期研修で、どのようなキャリアアップが望めますか。

最低限のキャリアアップとしては日本救急医学会の専門医取得です。当センターでは最短の3年間で取ることができます。この専門医だけでも資格としては十分なのですが、当センターは自己完結型ですので、外傷や心臓といったサブスペシャリティを持つ指導医が多く、後期研修医も様々な希望があります。そういったサブスペシャリティは応用編ですから、ほかの施設で国内留学という形で学んでもらうことがありますが、基礎編は当センターで行います。数年後に災害医療の専門医制度が始まりますが、当センターも研修施設として準備しておりますので、災害医療でキャリアアップするトレーニングも可能です。

カンファレンスについて、お聞かせください。

毎朝8時30分から1時間程度、行っています。最初の40分間はこの24時間に外来にいらしたり、入院された患者さんについて、担当医や後期研修医が1人5分ずつプレゼンします。症例を共有し、CTなどの画像や検査結果を一緒に見て、判断に見落としがないかをチェックする場でもあります。その後の40分間は曜日によって異なります。火曜日と金曜日は後期研修医が勉強してきたテーマでのプレゼンを行います。これはプレゼンの練習の場でもありますね。水曜日は重症の患者さんや亡くなった患者さんについてのカンファレンスです。木曜日は最新の論文を読む勉強会となっています。

女性医師の働きやすさに関してはいかがでしょうか。

当センターはシフト制ですので、ほかの診療科のように勤務時間外に呼ばれることはありません。その点は働きやすいと言えるでしょうね。私も当直明けや休日はぼけーっとしながら、米作りをしています(笑)。育児休暇、介護休暇など、女性のみならず、男性医師も仕事とプライベートを両立できるような環境にしていきたいですね。現在は時短勤務になると、給料がとても下がってしまうシステムなので、これも改善していかなくてはと思っています。

先生の研修医時代はいかがでしたか。

今の臨床研修制度が始まる前でしたから、昭和な感じでしたね(笑)。当時は病院の敷地内に寮があり、呼び出しも普通に行われていました。私は27歳で医師になったので、ほかの仕事に就いている同級生がしっかり働いているように見えたんです。彼らから取り残されたように感じていて、早く一人前になりたいという思いで一杯でした。指導医の先生から「救急車5,000台を一人で診たら、一つレベルがあがるね」と言われたら、「10時まで救急車をします」と言ったり、「この手技を100例したら」と言われたら、それを必死にやっていました。タフだったこともありますが、早く経験を積みたくて、「救急車5,000台スタンプラリー」に参加している気分でしたね(笑)。月に27回の当直アルバイトをしたこともありました。

研修後はどう過ごされたのですか。

私たちの頃は後期研修がなかったので、今で言う初期研修後は当センターに救急を勉強に来ました。そして、自分の「必殺技」を心臓にしようと考え、当院の循環器科でカテーテルを学んだんです。その症例を積むために羽曳野市の城山病院に行き、専門医を取得したあと、当センターに帰ってきました。

救急科を専攻されたのはどうしてですか。

全ての病気と怪我を治療したい、最も重症な人も治療したいというハングリー精神があったからです。当センターは私の気持ちにぴったりのところだと思って、ここに来ましたが、2、3カ月でお腹一杯だと悟りましたね(笑)。でも、自分で来たいと言った以上は辞めるわけにはいきませんから頑張りました。ただ、それで幸せになったのかどうかは分からないですね(笑)。

研修医に指導する際、心がけていらっしゃることはどんなことでしょうか。

私自身は上の先生からあれこれ言われたくないタイプでした。治療方針も自分で決めたかったですし、早く任せてほしいと思っていたんです。ですから、指導医としても研修医がどう考えたのか、どうしたいのかを尊重しています。研修医が考えた通りにやってもらっていますよ。研修医を怒ることもないですね。しかし、患者さんの具合が悪くならないようにサポートをしていますし、明らかに間違っているときは違うと言っています。

研修医に対し、「これだけは言いたい」ということはどんなことでしょうか。

自分の人生なのですから、どんなふうに幸せになりたいのか、将来のビジョンを作ってほしいです。思春期やモラトリアム期間ならまだしも、ビジョンがないまま、ふわふわ過ごしているのはもったいないです。全方向に努力しているのであれば可能性も広がりますが、そうでないなら、ふわふわしている間に選択肢が狭くなってしまいます。その先に何があるのかをよく考えてほしいです。

現在の臨床研修制度について、感想をお聞かせください。

良い点と良くない点がありますね。良い点は専門にする診療科以外の科を勉強できることです。私たちの頃は専門の科以外の科を経験できなかったので、私も救急に関係のない眼科、泌尿器科、産婦人科のことを知らないですね。小児科も限られています。その科に入ってみると、その科の医師の苦悩などを知ることができますし、専攻を決めないでいいモラトリアム期間が期限付きで用意されているのはいいことだと思います。また、制度が始まって以来、これまで医局に委ねられていたものが少なくなり、医師の自己裁量権が大きくなったこともメリットでしょう。
良くない点は世の中の研修全般にも言えることですが、過保護になったことです。自主性が育まれていない人が増えましたね。2年間の初期研修を学生気分で過ごす人もいますし、自己責任ということを促していないのは制度に問題があります。制度がもう少し成熟するためには初期研修医に一人前の医師だという気持ちを持たせることが大切だと思います。

これから後期研修の病院を選ぶ初期研修医にメッセージをお願いします。

臨床をするのか、研究をするのかで迷っている人もいるでしょう。臨床をしていきたいのなら、ある程度の数の患者さんがいらっしゃる病院で、ある程度の数を診ないと、自分が専攻したい診療科で目指すことを達成できません。研究なら大学病院ですが、医師としてのトレーニングを2、3年の間、積んでから、研究生活を始めてもいいと思います。そして、救急医療を学びたいなら、日本で一番お勧めできるのが千里救命救急センターです(笑)。