指導医インタビュー

東京都立駒込病院

東京都文京区本駒込三丁目18番22号

名前
岩崎善毅(よしあき)先生
がん・感染症センター 都立駒込病院外科部長 指導医
職歴経歴
1959年に大阪市で生まれる。1986年に大阪医科大学を卒業後、東京都立駒込病院で研修を行う。2003年から2004年までアメリカのニューヨークメモリアルスローンケタリングがんセンターに留学する。2007年に東京都立駒込病院外科部長に着任する。
学会等
日本消化器外科学会専門医、日本外科学会専門医・指導医、日本胃癌学会評議員など。日本癌学会、日本癌治療学会にも所属する。

都立駒込病院の特徴をお聞かせください。

がんと感染症に力を入れている東京都立の病院です。しかし、がんと感染症に特化しているわけではなく、総合基盤を有しています。合併症のある患者さんを手術するにあたっては総合的に診ながら専門治療を行う必要があります。がんの専門治療に関しては国立がん研究センター中央病院やがん研有明病院と並ぶ存在だと自負していますが、あくまでも総合診療がベースです。ただ、当院には産婦人科と小児科がありません。

都立駒込病院の外科の特徴もお聞かせください。

臓器別になっています。消化器、乳腺、呼吸器があり、消化器はさらに食道、胃、大腸、肝胆膵に分かれていますので、全部で6チームですね。それぞれのチームが悪性腫瘍の治療を行っており、私は胃の責任者を務めています。胃がんは日本人がかかりやすく、ポピュラーな疾患の一つです。胃がんに対する手術としては腹腔鏡を積極的に使っています。化学療法や術後のQOLを高める取り組みにも力を入れていますね。東京都内は検診が発達していますが、それでも高度に進行したがんの患者さんがいらっしゃいます。そのような患者さんには食道がんや乳がんなどのように、胃がんでも抗がん剤を経ての手術を行っています。

都立駒込病院の後期研修プログラムで学べる特徴について、ご紹介くださいますか。

総合診療の基盤がありますので、総合診療の上に立ちながら、がんに特化した治療の研修を受けることができます。症例が豊富なので、経験を積めますよ。もちろん、手術にも参加してもらっています。診断から治療までの流れ、手術、術後のケアも含めて、臓器別に詳しく学べます。

都立駒込病院外科での後期研修で、どのようなキャリアアップが望めますか。

外科コースでの3年間で外科専門医が取得できますので、それをまず目指してもらっています。そのあとで、消化器、乳腺、呼吸器に分かれますから、その専門知識を広げる準備段階ですね。後期研修終了後は私のように臨床の第一線に立つか、がんの専門施設や大学病院に行って専門性を高めるか、大学院に進学するか、留学するかといった選択肢があります。指導医として、皆さんからのご相談に応じています。

カンファレンスについて、お聞かせください。

当院はカンファレンスの回数が多く、毎日どこかしらで開催されています。後期研修医の義務として、カンファレンスへの積極的な参加があります。胃グループは私のほか、常勤医師が2人と後期研修医、初期研修医がいます。手術が週に3回ありますので、かなり忙しいですが、ほかの外科チーム同様に術前カンファレンスで治療方針を決め、術後のカンファレンスで結果報告を行います。毎朝、チーム全員でカンファレンス後に回診します。その後は手術や諸検査をして、夕方の回診も皆で行っています。また、放射線診断部、内視鏡科、消化器内科、化学療法科、病理科などの専門医とのキャンサーボードもあります。さらに抄読会で海外のジャーナルを読んで、プレゼンをしますので、力がつきますね。学会に行って、若い医師の発表を見ていると、当院の若手は能力が高いと思います。切磋琢磨する環境なのでしょうね。

女性医師の働きやすさに関してはいかがでしょうか。

最近は女性医師が増えてきて、初期研修医も各学年2、3人はいますね。胃グループには女性の後期研修医が1人います。特に乳腺外科は女性が多くなりましたし、外科医として働きたい研修医のロールモデルになっています。当院には院内保育所もありますので、女性が仕事をしやすい環境だと思いますよ。皆、伸び伸びと働いています。

先生は都立駒込病院で研修されたんですよね。

30年前は医局に入るのが普通で、1学年100人のうち、医局に所属しないで研修する人は10人いるかいないかでした。私は生まれも育ちも大阪ですが、須磨久善先生に「東京に行った方がいい」と勧められたのがきっかけです。須磨先生は私の10歳上なのですが、大学の部活動の先輩であり、学生時代から懇意にさせていただいていました。当時は虎の門病院での研修を終えて、心臓血管外科医として順天堂大学にいらっしゃいましたが、進路についての相談に乗ってくださったんですね。私はがん治療をしたかったので、手術件数が多い病院であることにこだわっていました。一方で、一般的な診療も学びたかったので、がんセンターではないところということで、当院を受験しました。

研修後はどう過ごされたのですか。

3年間の外科コースを終えたら、大学病院に行くか、大阪に帰るかと思っていましたが、外科をやっていると面白かったんです。がんには病理科の知識も大事だと分かりましたし、その後は当院の病理科で研修を行いました。2、3年の研修でいいかなと考えていましたが、気づいたら5年が経っていました(笑)。そこで、胃がんをやろうと決めたんです。ただ、顕微鏡を覗く時間より、実地で経験をした方が長かったですね。様々な臓器の標本を集めて解剖をしたり、がん細胞の動物実験をしたりしました。そういった経験をもとに論文を書き、学位も取得しました。

外科を専攻されたのはどうしてですか。

父は小児科の医師で、大阪で開業していましたが、父からは特に小児科を勧められることはなかったですね。私は大学の頃に外科医になりたいと思うようになりました。患者さんを直接、治すことに憧れたのが理由です。『ブラック・ジャック』世代でもありますしね(笑)。

研修医に指導する際、心がけていらっしゃることはどんなことでしょうか。

私自身が当院で教えていただいたことを伝えていこうと思っています。診断技術や手術技術は日々、進歩するものですが、大事なのは患者さんを診るにあたって、どう接するのかということです。私が当院での師匠から教わったことなんです。医師として、人間として、成長していただきたいですね。研修医は将来に対する漠然とした不安を抱えていますし、研修医という身分自体がいわば非常勤医師ですから、色々な相談に乗って、アドバイスをしています。

研修医に対し、「これだけは言いたい」ということはどんなことでしょうか。

広い視野を持ち、人間として成長してほしいです。知識や技術も大事ですが、患者さんを一人の人間として接して治療しなくてはいけません。治っていくのは患者さん自身であり、医師はそれの手助けをする存在です。素直で一生懸命な研修医ばかりですが、傲らない気持ちを持ち続けてほしいですね。

現在の臨床研修制度について、感想をお聞かせください。

以前に比べますと、形あるものになってきています。当院は1975年からの臨床研修の歴史がありますが、私が医師になった頃は流動的でしたし、システムとして未完成で、色々な意味で不十分でしたね。しかし、現在のようなスーパーローテートは多くの診療科を一通り診ることができる利点があります。しかし、専門医としてのスタートが遅れます。当院は診療科が多いので、1カ月単位という細切れで回らなくてはいけません。皆、よく頑張っていますが、どうしてもお客様になってしまい、時間的な制約もあるため、深いところまで学べません。学生時代の延長のようにも思えますし、初期研修で内科系、外科系とコースを分けたとしても、後期研修でまた一からとなります。ただ、砂漠に水がしみ込むように、様々なものを吸収できる時期に多彩な診療科を回るのはいいことです。専門の診療科に入ってしまうと、新しい科には簡単に移れませんからね。

これから後期研修の病院を選ぶ初期研修医にメッセージをお願いします。

初期研修の後半の時期は自分が将来、どんな医師になりたいのか、どういう方向に進みたいのか、どんな医療を行っていきたいのかを考えるようになります。10年先を見据えた後期研修を行っていただきたいですね。当院は総合基盤に乗って、専門性を高めていける病院です。東京都内では大学病院に引けをとらない位置づけにあります。がんや感染症に限らず、専門性を高めていきたい方に是非、いらしていただきたいです。

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