指導医インタビュー

社会福祉法人 恩賜財団

済生会熊本病院

熊本県熊本市南区近見5丁目3番1号

名前
菊池 忠
済生会熊本病院救急総合診療センター医長、指導医
職歴経歴
1973年に熊本県阿蘇市で生まれる。1998年に鹿児島大学を卒業後、鹿児島大学麻酔科に入局し、鹿児島大学病院で研修を行う。その後、鹿児島大学病院麻酔科、集中治療部などを中心に勤務する。2007年に信州大学医学部附属病院高度救命救急センターへ国内留学を行う。2009年に鹿児島大学病院救急部・集中治療部助教に就任する。2013年に済生会熊本病院救急総合診療センターに勤務する。2014年に済生会熊本病院救急総合診療センター医長に就任する。
学会等
日本麻酔科学会指導医・専門医、日本集中治療学会専門医、日本救急医学会専門医、日本高気圧環境・潜水医学会専門医、日本呼吸療法医学会専門医、厚生労働省・日本DMAT隊員、ICLS・ディレクター/インストラクター、JPTEC協議会・インストラクター、JATEC・インストラクターなど。

済生会熊本病院の特徴をお聞かせください。

済生会熊本病院は熊本市の南部に位置している、400床の急性期病院です。救急医療、高度医療、地域医療と予防医学、医療人の育成の4つを基本方針として掲げています。私たちがやっている救急医療も一つの柱ですから、力を入れています。熊本県には救命救急センターが3つあるのですが、そのうちの1つが当院にあります。3つの救命救急センターは地理的な区分分けがうまくできており、当院は熊本市南部と熊本県南部の救急患者さんを受け入れるという形になっています。救急車は年間9,000台以上ですし、救急患者さんの数も2万人ぐらいですから、かなり多いですね。重症の患者さんも多いため、400床のうち、ICUが20床、HCUが30床、救命救急病棟が20床と重症患者が入院するベッドが多くなっていることが当院の特徴だと思います。

昨年、熊本地震が起きたときはフル稼働でしたよね。

災害時には病棟内にベッドを増やすなどの対応をしています。熊本地震の際もリハビリ室にベッドを置いて病棟にするといった工夫をして、入院患者さんを増やせるような対応をしました。しかし、それでも追いつかず、患者さんを外に出していかないと、当院で助けられる人も助けられないという事態になったのです。そこで、全国のDMATなどの協力をもらいながら、ヘリコプターで県外の病院へ重症患者を搬送したりもしました。

済生会熊本病院の救急総合診療科の特徴もお聞かせください。

私の所属する救急総合診療科は7年前に設立されました。ホームページでは救急総合診療センターとしていますが、救急科と総合診療科という2つの科が統合した形になっています。その2つの科で救急外来の対応ももちろん行いますし、どの診療科にも属さない、でも鑑別が難しい疾患も総合診療的に診ています。救命救急センターですから、救急外来には多くの患者さんがいらっしゃいますが、一次救急から三次救急まで、とにかく断らずに、様々な症例を受け入れています。救急総合診療科の医師が救急外来での初療を行って、診断をつけます。その後、該当する科に引き継ぐこともありますが、重症や多発外傷で複数の科にまたがる症例やどの科にも属さないような鑑別が難しい症例などは私たちがそのまま主治医となって、入院管理も行います。救急外来での診断のみならず、入院となった場合に主治医になったり、重症の患者さんのICUでの管理ができたり、退院まで診ることができる体制は魅力的ですね。熊本県ではそういう病院はなかなかないと思います。

初期研修医もそういう経験を積めるのですか。

初期研修医も自分で主導的に診断をつけることができますよ。必要な検査をオーダーしたり、自分で診断をつけていくための鑑別を挙げる経験をさせています。指導医も救急外来に張り付いていますので、相談しながらの研修が可能です。初期研修医を一人にさせることは決してありませんが、できるだけ初期研修医自身が診断をつけるようにしています。

院内の雰囲気を教えてください。

私が4年前に当院に来たとき、第一印象として挨拶が活発な病院だと感じましたね。救急外来をしていると、他科の医師へのコンサルトの機会が多く、繋がりを持てるのですが、ほかの科の先生方も動きが早いです。軽い感じで救急外来に来てくれたり、私たちの話もよく聞いてくれます。コンサルト自体を嫌がられることがないので、コンサルトしにくい雰囲気が全くありません。他科との垣根が低く、ざっくばらんに話ができますね。コメディカルスタッフも雰囲気が明るくて、元気な人が多いですよ。

後期研修プログラムの特徴を教えてください。

救急外来での診察方法が一番のポイントですので、後期研修ではまずその習得から始めます。色々な患者さんが来られますので、重症な外傷の診療の手順や敗血症のような重症の初期対応や創傷処置を学びます。難しい症例もありますが、丁寧に指導しています。その中で自分が興味を持った症例や、上級医から指名された症例の主治医となり、入院の患者さんを受け持ちます。その患者さんがICUに入れば、ICUでの呼吸管理や循環管理を学べますし、感染症時の抗菌薬の投与などを勉強している後期研修医もいますね。一方で、資格取得もできます。救急外来の経験を積みますので、日本救急医学会に入っておけば最短の3年で救急専門医を取得できます。集中治療の専門医も最短コースで取得できます。内科認定医の資格も早い段階で取得可能です。救急外来のスキルが身についたあとで、特化したい手技があれば国内留学をしてもらうこともあります。今も2人が国内留学中です。部長も後期研修医一人一人の希望を叶えようとしてくれています。

カンファレンスはどのような形で行っていますか。

毎朝7時50分から1時間半程度のカンファレンスを行っています。まず入院患者さんについて、主治医がプレゼンをし、その患者さんのCTの画像や血液検査などの結果を皆で共有します。そして、主治医の治療方針で良いのかどうかを、皆で議論します。一つの科出身の医師だけのカンファレンスですと決まりきった意見が出がちになりますが、様々な科の出身の上級医が来ているので、違った色々な意見が聞けますから、「こういう意見もあるんだ」と、いつも面白く感じています。

先生はどのような研修医時代を過ごされたのでしょうか。

私が医師になった頃は現在のような臨床研修制度はなく、鹿児島大学の麻酔科に入局しました。2年間のスーパーローテートもないので、麻酔科の中で全身麻酔の症例をとにかく多く経験したり、呼吸管理、循環管理、気道管理などを勉強して、数多く習得しようと一生懸命でしたね。今もその頃に得た呼吸管理などの知識を活かせていますし、研修医時代に勉強したことはその後に一番、役に立つのではないかと実感しています。

救急総合診療科を選ばれた理由をお聞かせください。

鹿児島大学の麻酔科で基本的には全身麻酔の症例を研修していたのですが、その中でICUで働く機会があったんです。麻酔科がICUを主導的にやっている病院は珍しくありませんが、鹿児島大学もそうだったんですね。ICUの患者さんは重症ですから、血圧も目まぐるしく変動します。それを見て、適切に対応していかないと、命に関わる状態になります。しかし、見つけなくてはいけない異常を見つけて、しっかり対応できると回復の度合いやスピードもかなり変わってくるので、そこがやり甲斐になりました。ICUが好きになったので、後半はずっと集中治療室勤務だったんです。それで、術後の患者さんのみならず、救急車で来られた重症の患者さんをICUでどう良くしていくかに興味を持つようになり、そのためには救急をしなくてはいけないと思い、救急集中治療の領域に惹かれていきました。私も国内留学をしましたし、今も救急科にいますが、救急をやっていて良かったというのはやはり重症患者さんの回復する姿を見たときです。血圧が低く、瀕死のショック状態の患者さんがICUで回復されたときや、歩いて帰る方もいらっしゃるので、そういうときは嬉しいですね。

済生会熊本病院にいらしたのはどうしてですか。

鹿児島大学を卒業して、そのまま鹿児島大学の麻酔科に入局したのですが、生まれが熊本県阿蘇市ですので、いつか地元に帰りたいと思っていました。私の興味も麻酔科からICUや救急の方に移っていましたので、熊本で救急外来とICUを診られる病院ということで当院を選びました。それから臨床研究や学会発表もしていきたいという気持ちもあったのですが、当院の救急総合診療科では学会発表を積極的にしているんです。そういう雰囲気が周囲にないとデータを取ろうという気にならないですから、その点も良かったですね。

研修医に指導する際、心がけていらっしゃることはどんなことでしょうか。

救急外来の治療やICUの診察においても、まずは研修医が所見を取ったり、必要な検査などの計画を立て、こういう診断になるのではないかと考えてもらっています。その考えをまとめて聞かせてもらうんですね。最初から私が入ると、どうしても考えを押し付けてしまいそうになるので、できる限り、そうしています。緊急事態で間に合わないときは私たち上級医で進めていますが、そうでないときには研修医が主導的に考えた治療法を優先させています。

研修医にどんなアドバイスをしたいですか。

最近はICUのモニターが発達し、色々なデータがグラフで表示されるようになったこともありますが、データばかりを見る研修医が多くなった気がしています。患者さんを直接、診たり、触れたりする機会が減っているのではないでしょうか。そのため、研修医には「患者さんを直接、診てから判断しないと、モニターだけを診ていたら、間違った判断になるよ」とアドバイスをしています。また、治療方針の決定で迷うことがあれば、自分が患者さんだったらどうしてほしいだろう、自分の家族だったらどうしてほしいだろうと考えることも勧めています。自分のことだと思わないと、なかなか本気になって考えない場合もありますからね。

初期研修医の皆さんにメッセージをお願いします。

私と同じように、救急外来を診て、その患者さんの集中治療を主治医としてできるシステムに憧れている初期研修医の方もいらっしゃると思います。そういった先生方には当院は魅力的ですよ。ここで後期研修をすれば、そのシステムで勉強していくことが可能です。また、臨床研究もデータを取るところから上級医が指導しますし、学会発表もできますので、是非、一緒に働きませんか。

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