指導医インタビュー

熊本赤十字病院

熊本県熊本市東区長嶺南2丁目1番1号

名前
大戸 雅史 先生
血液腫瘍内科副部長、指導医
職歴経歴
1978年に大分市で生まれる。2003年に熊本大学を卒業後、熊本大学総合診療部に入局し、熊本大学医学部附属病院で研修を行う。2005年に福岡徳洲会病院総合内科に勤務を経て、2006年に熊本赤十字病院内科に勤務する。2009年にがん研有明病院化学療法科に勤務する。2011年に熊本赤十字病院血液腫瘍内科に勤務する。2014年に熊本赤十字病院血液腫瘍内科副部長に就任する。
学会等
日本内科学会認定内科医・総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医、日本プライマリ・ケア連合学会プライマリ・ケア認定医・認定指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本血液学会血液専門医など。

熊本赤十字病院の特徴をお聞かせください。

熊本市の東部にある高度急性期病院で、熊本市、阿蘇地域、菊池市域、上益城郡と、かなり幅広い領域の人口圏をカバーしている病院です。プライマリケア、小児の集中治療や救急医療を軸とし、がん治療といった高度医療も行っています。興味のあることや希望を何でも言ってくれれば、それに合ったものを提供できる病院です。

ER型の救急ですが、年間でどれぐらいの患者さんがいらっしゃいますか。

年間でおよそ65,000人が受診します。そのうち8,500人が救急を経由して入院しています。

大戸先生がいらっしゃる血液腫瘍内科の特徴をお聞かせください。

がん全般の抗がん剤をメインとして治療をしている診療科です。また、緩和ケアチームや精神科と協力して、QOL全体を上げていくという診療もしています。主な治療は化学療法を主体としています。

大戸先生が途中で血液腫瘍内科へ進まれたきっかけはどういったことでしたか。

私は当院の総合診療にとても興味を持っていて、研修をしていたのですが、がんの患者さんが非常に多かったんですね。総合内科を専門にするにあたってはがんの患者さんを診る人が絶対に必要ですし、がんを診るにあたっては抗がん剤治療ができないといけませんので、総合内科をより深めるために血液内科や腫瘍内科を希望したんです。

血液腫瘍内科の外来での病名や疾病はどういったものですか。

今はリンパ腫がおそらく最多だと思います。リンパ腫の次は血液疾患と固形腫瘍が半分ずつの割合ですね。私たちは消化器がんや、泌尿器がん、婦人科がんなど、ほぼ全部の領域を診るようにしています。

熊本赤十字病院の初期研修の特徴もお願いします。

やはり救命救急センターが軸であり、総合診療をベースに幅広い疾患に対応していくという研修ですね。症例が非常に多いですから、スタッフは常に後期研修医を教えますし、後期研修医が初期研修医を教えるなど、屋根瓦式に教育しています。その教育体制も特徴です。

初期研修医の人数はどのくらいですか。

1年目が14人、2年目も14人です。

指導される立場として心がけていらっしゃることを教えてください。

臨床が主体の病院ですから、臨床の楽しさが分かるように、「臨床というのは楽しいんだよ」と、とにかく情熱を持って教えるようにしています。手技については、最初は見てもらって、次はやってもらって、その次は教える側になってもらいます。屋根瓦式の良さは「自分が一度やったことを今度は自分が教えないといけない」ということを意識づけられることですね。それはオン・ザ・ジョブですが、オフ・ザ・ジョブではシミュレーターを用いた研修にも力を入れています。

屋根瓦式の良い所やメリットをもう少しお話しいただけますか。

自分の足りないところが分かりやすくなります。上級医から習っていると同時に、自分も教える立場になるわけですから、足りないところ、できないところが明確になりますね。

最近の研修医をご覧になって、どう思われますか。

私は2003年卒で、私の1つ下の学年から臨床研修制度になりました。そこから毎年、初期研修医を見ていますが、知識も態度も優秀ですし、優れた人材が年々入ってきていると思います。コミュニケーションの取り方も上手ですね。当院は医師数のみならず、看護師や技師などのコメディカルも多く、その中でさらに多くの患者さんを診ていくので、コミュニケーション能力は最も要求される力です。今の研修医を見ていて、コミュニケーション能力が足りないと思うことは全くなく、むしろ優れているのではないでしょうか。

「こんな研修医がいた」というエピソードがあれば、お聞かせください。

当院は基幹災害拠点病院です。熊本地震では震源地から最も近い災害拠点病院で、1年目の初期研修医は、オリエンテーションが終って研修初日に被災したんです。私たちも1年目の初期研修医に構っていられませんでしたし、当然2年目の初期研修医にも同様でした。しかし、2年目の初期研修医はわずか1年のトレーニングしか積んでいないのに、よく仕事ができるんです。特定の初期研修医ということではなく、2年目の初期研修医全体が災害という非常時に動けていたのが印象的でした。1年目の初期研修医は何もできないのですが、患者さんや物品を運ぶことはできますから、自分たちなりに考えながら動いていました。

震災後は病院も大変だったでしょう。

報道にある通りです。多くのスタッフが徹夜したり、不眠不休の対応で乗り切りましたね。

外で注射をしたり、車の中で寝られている患者さんなどの記事をよく見ましたが、このあたりも多かったんですか。

間違いなく多かったでしょう。足の腫れで救急外来を受診される方が大勢いらっしゃいました。地震から6カ月ほど経ちましたが、例年に比べ、内科の患者さんが増えている印象です。

研修医に「これだけは言いたい」ということがあれば、お聞かせください。

当院の初期研修医は救急外来や救命救急センターで非常に多くの症例に触れることができます。忙しいだけではなく、それをしっかりカバーする教育体制も充実していますので、救命救急や総合診療を学んでほしいですね。医学生にも見学をお勧めしたいです。

先生の研修医時代はどのようにお過ごしでしたか。

今のようなスーパーローテート制度でシステマティックに教育する文化がまだない時代でした。私自身は研修医時代、そういったシステムがないことが辛かったですね。指導医には多くのことを学びましたが、私が誰かに教えるといった屋根瓦式の経験が乏しく、そういう教育の風潮もありませんでした。しかし、その分、自由度が高く、「今、何をしたいのか」、「来年、何をしたいのか」ということを常に考えないと研修を組み立てていけなかったんですね。私は自分に足りないものは何かをずっと考えてきたので、その意味では総合内科から血液に行くといったプランニングができたことは本当に幸せでしたし、良かったと思っています。

新専門医制度についてのご意見をお願いします。

内科に限ってお話をさせていただきますと、内科の新専門医制度は幅広く診られるようになることが軸にあります。しかし、当院は総合内科という形で何十年も前から行ってきています。もちろん、制度が変わるとローテーションを組まないといけないなどの設計を変えることもありますが、これまでの総合内科の歴史がありますから、根本的なところは対応できます。

新専門医制度で変わることなど、お考えのことがあれば、お聞かせください。

後期研修医のキャリアプランは全く変わりますよね。内科ですと、サブスペシャリティに進むのが卒後6年目ぐらいになるでしょう。当院の研修医を見ると、初期研修でジェネラルを2年したら、3年目はサブスペシャリティという人たちが多いです。むしろジェネラルを内科でしたいという人は意外に少ないので、制度化されるからにはその質を上げたいですね。これからの後期研修医が6年目でサブスペシャリティに行ったときに、それまでの研修が役に立ったと言われるような教育をしたいと考えています。私は新専門医制度の内科専門医には賛成です。私は血液がサブスペシャリティですが、そこに行く前に糖尿病や肺気腫などを診るのは役に立ちます。初期研修医のローテーションの続きではなく、優れたサブスペシャリティを持つ医師になるための土台を作る、足腰を鍛えるような時間を内科で作ってあげたいと考えています。

先生の今後のビジョンをお聞かせください。

私は血液疾患を専門にしていますが、専門医として考えるところと総合内科医として考えるところの2つの軸があります。総合内科の血液、膠原病、感染症、腎臓、代謝内分泌は全て一緒になっており、その中で専門医として良い高度医療を提供しようと努めています。総合内科の専門医を多く抱えている以上、総合診療のレベルを上げていきたいですね。血液で言えば、私たちは抗がん剤で標準治療を提供しているのですが、抗がん剤の臨床試験や新薬の開発などに臨床試験の担当者として参加したいです。東部地区は患者さんが多いので、標準治療が効かなくなった人に新薬の提供ができると、患者さんにとってもメリットが大きくなります。

熊本赤十字病院のPRをお願いします。

プライマリケアをベースに、幅広くジェネラルをしたいという人は是非、来てほしいです。絶対に後悔しないはずですよ。