指導医インタビュー

国立研究開発法人

国立国際医療研究センター病院

東京都新宿区戸山1-21-1

名前
村岡 亮 国立国際医療研究センター病院 医療教育部門長 指導医
職歴経歴
1953年に神奈川県鎌倉市で生まれる。1980年に筑波大学を卒業後、国立病院医療センターで内科研修医、レジデントとなる。1988年にミシガン大学消化器内科にリサーチフェローとして留学し、分子生物学部門で講師に就任する。1995年に帰国後は国立国際医療センター国際医療協力局に勤務し、派遣協力専門官になる。2002年に国立国際医療センター運営部政策医療推進調整官を経て、2003年に厚生労働省医政局医事課の医師臨床研修推進室に勤務する。2005年に厚生労働省臨床研修審査専門官に就任を経て、2010年に国立国際医療研究センター病院に医療教育部門副部長として着任する。2016年に国立国際医療研究センター病院医療教育部門長に就任する。
学会等
日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本医学教育学会代議員など。

国立国際医療研究センター病院の特徴をお聞かせください。

国立国際医療研究センターは国の重要な医療政策の課題を担うナショナルセンターと呼ばれる6つの国立高度専門医療研究センターの中で唯一、総合病院を持ち、臨床研修医を受け入れている病院です。当院は明治時代の東京陸軍病院、第二次世界大戦後の国立東京第一病院などを経て、発展を続けてきました。長い伝統を有する国立の総合病院であると同時に、我が国の代表的な卒後研修施設です。全国に先駆けてローテーション研修を導入し、全国から数多くの有能な若手医師を受け入れてきました。総合的基盤を有する高度急性期病院であり、アカデミックな研究にも力を入れています。国際感染症対応、糖尿病診療、エイズ治療、救急医療などに特色がありますが、全ての診療分野間に専門医がおり、連携を取り合って診療を行っています。合併症のある患者さんの外科手術、複雑な内科疾患の診療、原因不明な疾患などに対処する総合診療、身体疾患を合併した精神科患者さんの診療も特徴です。

国立国際医療研究センター病院の初期研修の特徴もお聞かせください。

まず、市中病院と大学病院の両方の特性を持つ「いいとこ取り」が特徴として挙げられます。それから豊富な未診断症例と充実した指導体制ですね。当院には夜間のウォークインも含め、年間12,000人の救急患者さんがいらっしゃいます。これに、初期研修医がファーストタッチを行うのです。診断がついた症例はあまり勉強になりません。診断がついておらず、症状と訴えのある患者さんを問診し、身体診察を行い、基礎的な検査を駆使して、謎解きのように絞り込んで鑑別診断をして、治療方針を立てます。初期研修医が傍観者にならず、ある程度の責任を持って、これらに当たりますので、非常に力のつく研修となります。また、プログラムも豊富で、内科系、外科系、救急科、総合診療科、小児科、産婦人科があります。

現在、初期研修医は何人いらっしゃいますか。

1学年で医科は34人、歯科は2人です。初期研修医はストレスがかかるものですが、同期が多くいますから、愚痴を言い合ったりできるのがいいですね。当院の初期研修医にストレスチェックをしてみますと、仕事に負荷がかかる割にはストレスが出てこないんです。これは横の繋がりがあってこそだと思います。学年ごとにLINEのグループで繋がっていますから、私がポロッと言ったことを5分後には皆が知っていたりしますよ(笑)。初期研修での同期は一生の繋がりになりますね。来年度も募集定員は減らしません。全国から集まった個性豊かな初期研修医同士が楽しく教え合い、助け合っていること、元気な初期研修医により、当院の医療が活性化していることがその理由です。一方で、当院では縦の繋がりも濃いです。1年目の初期研修医にとって一番の先生は2年目の初期研修医なんです。私自身も当院での研修で1学年上の先輩から学ばせていただきましたし、その指導体制は伝統と言えるでしょう。

指導される立場として心がけていらっしゃることを教えてください。

私は大学時代の恩師である堀原一先生の医学教育へのお考えに感化され、この道を進んできました。現在はマネージメントの役割を担っていますので、初期研修医に直接、教えることはほとんどありません。マネージメントにあたっては一人一人の状況を把握し、問題点をなるべく早く解決していくようにしています。それぞれの初期研修医の将来のキャリアに合った、一番いい研修を作っていきたいですね。初期研修医のビジョンやニーズが優先ですので、「後期研修でうちに残れ」とは言いません。

最近の研修医をご覧になって、どう思われますか。

クリニカルクラークシップ、OSCE、CBTなど、大学での卒前トレーニングの質が上がってきましたので、卒業時にパフォーマンスが高い研修医が多いですね。問診や身体診察の方法がシステマティックに教育されているので、大学の先生方には感謝しています。大学ごとのばらつきも全くありません。OSCEやCBTを大学でうまく使って、クオリティコントロールしているのでしょうね。

先生はどのような研修医時代を過ごされましたか。

私は筑波大学の一期生なんです。当時は関連病院がなく、クリニカルクラークシップで当院に来たのはくじ引きの結果でした(笑)。さらにくじを引いたら、消化器内科に当たったんです。そこでアメリカから帰ってこられたばかりの松枝啓先生にお会いし、多大な影響を受けました。私は松枝先生から消化器内科の臨床を幅広く教わったんです。卒業後は当院の内科系研修医となり、内科系の各科のみならず、麻酔科もローテートしました。その後、今で言う後期研修に入る前にJICAでタイに行きました。

タイではどのようなお仕事をなさったのですか。

タイのカオイダン難民キャンプで、カンボジアの難民治療を行いました。10万人規模の大きなキャンプでしたが、いわゆるピース缶地雷で膝の関節から下が吹き飛ばされた方々が大勢いたのです。私は日本病棟の一員として、麻酔科や内科の治療を担当していました。国際医療の現場を見て、人生観が変わりましたね。この経験がその後の国際医療へと繋がっていきました。

先生はなぜ消化器内科を選ばれたのですか。

松枝先生から手技などの教えを受けたことが大きかったです。当院での研修医時代に内視鏡を1,000件、超音波を2,000件ほど行いました。面白かったですね。消化器内科の醍醐味は内科的な勉強と手技がうまくブレンドされていることにあると思います。

研修医に「これだけは言いたい」ということがあれば、お聞かせください。

愚直に頑張ってほしいです。なお、採用にあたっては面接官が一緒に働きたいと思っている人を選んでいます。それは何事にも損得抜きで誠実に愚直に頑張れる人、どんなときでもイライラせず、明るく、前向き思考の人、当院の方針に共感し、当院を愛してくださる人です。出身大学は全く関係ありません。一方で、当院は英語を重視しており、筆記試験では英語を課しています。

新専門医制度についてのご意見をお願いします。

新専門医制度は来年4月にはほぼ確実にスタートする見込みです。医学生の皆さんは自分が将来、何をしていきたいのかを改めて自分に問いかけ、自分をよく知ることから始めていただきたいと思います。初期研修医の皆さんは2年間の初期研修を振り返って、自分がやりたいことは何なのか、これから何をしていけば、自分の力がより活かされるのかを考えてみてください。

国立国際医療研究センター病院はどのような形で新専門医制度を始められるのですか。

新専門医制度は19領域でスタートしますが、当院はそのうち10領域で基幹型となっています。そのほかの連携領域に関しては基幹型病院と厚い連携を行っていく予定です。今は10領域ですが、これから積極的に増やしていくことが病院の方針として決まっています。自己完結的に専攻医システムを充実させますから、初期研修で当院にお越しいただいても、その先も安心して学んでいける環境です。

これから初期臨床研修病院を選ぶ医学生に向けて、メッセージをお願いします。

当院の方針としては広く世界に目を向けてほしいと思っています。広い視野を持ったうえで、自分が活かされていく道を探ってください。日本は恵まれた国ですから、日本の中だけで暮らすこともできます。しかし、狭いところにいてもつまらないですよ。こじんまりとまとまらず、世界に打って出るチャンスを見つけてほしいですね。選択肢を広く持てれば、医師としての楽しい人生が送れるはずです。

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