指導医インタビュー

国立病院機構

熊本医療センター

熊本県熊本市中央区二の丸1-5

名前
富田 正郎(とみた まさお) 先生
腎臓内科部長、教育研修部長、指導医
職歴経歴
1961年に愛媛県で生まれる。1986年に熊本大学を卒業後、熊本大学医学部附属病院、社会保険八代総合病院(現 JCHO熊本総合病院)で研修を行う。1988年に熊本大学大学院に入学し、1992年に熊本大学大学院を修了する。1992年に三井大牟田病院に勤務を経て、1992年に済生会熊本病院に勤務する。1996年に荒尾市民病院に勤務を経て、2001年に国立熊本病院(現 熊本医療センター)に勤務する。2004年に熊本医療センター内科医長に就任する。2010年に熊本医療センター腎臓内科医長に就任を経て、2012年に熊本医療センター腎臓内科部長に就任する。2017年に熊本医療センター教育研修部長を兼任する。
学会等
日本内科学会認定内科専門医・指導医、日本腎臓学会腎臓専門医・指導医、日本透析医学会透析専門医・指導医、日本救急医学会専門医、臨床修練指導医、日本糖尿病学会専門医、熊本大学臨床教授、熊本市CKD対策病診連携会議プロジェクトチーム講師、日本高血圧学会指導医、日本プライマリ・ケア連合学会認定医・指導医など。

熊本医療センターの特徴をお聞かせください。

熊本市の中心部、熊本城の一角にあり都心部のやや高台に位置しています。2009年10月に新築されましたので、比較的新しい建物ですね。ほぼ全診療科を網羅する33診療科から成り立っており、臨床と教育と研究を根幹としています。「365日24時間、断らない医療」をモットーに掲げており、日本屈指の年間10,000台以上の救急車搬送を受けて、重症患者さんの対応を行っています。一方では血液のがんをはじめとするがん診療も十分な実績を挙げています。

富田先生がいらっしゃる腎臓内科の特徴をお聞かせください。

腎臓内科では急病になられた、色々な合併症を持つ透析患者さんを常時受け入れています。緊急を要する症例については夜間や休日もオンコール体制を取っていまして、緊急透析業務は365日24時間体制で対応しています。慢性腎臓病や急性腎炎、慢性腎炎、ネフローゼ症候群、急速進行性腎炎症候群、急性腎不全、保存期慢性腎不全に対しても速やかに対応しています。腎生検検査も年間30例から40例ほど行っており、4日のみの入院で可能です。当院は日本腎臓学会研修病院、日本透析学会の認定施設になっています。熊本市役所やCKDかかりつけ医と連携して、慢性腎臓病(CKD)の対策にも力を入れています。当科では免疫抑制治療などの高度な内科的治療のほか、透析用の内シャント作成術やシャントのPTAといった外科的手技も学ぶことができます。

熊本医療センターの初期研修の特徴もお願いします。

研修医の数が多いということが挙げられます。基幹型のコースの中の総合コースには各学年16名ほどいますが、それぞれの選択度が高い内容となっています。必修の科の期間はありますが、それ以外は33診療科の中から回る期間も含めて、自由に選ぶことができます。もう一つのプライマリケアコースは各学年3人ですが、当院で1年間みっちり研修し、2年目は地域の病院へ出向いて学んだり、地域に貢献してもらっています。そのほか、熊本大学医学部附属病院を基幹型のコースとしたうえで、たすきがけで当院に来る初期研修医も数人います。

初期研修医の人数はどのくらいですか。

今、40人と少しいます。

指導される立場として心がけていらっしゃることを教えてください。

時代とともに医療のあり方や教育のスタイルも変わってきているので、自分の研修の頃と比べて「昔はこうだった」と言い出すと古い人間になってしまいます。時代の変化に遅れないように、適切な教育ができたらいいなと思っています。

最近の研修医をご覧になって、どう思われますか。

私たちの頃より今の研修医の方が優秀で、粒が揃っていると感じています。研修制度も良くなりましたし、患者さんのために貢献できる医師が育っていますから、日本の将来は楽しみになりますね。私が年をとって病院にかかるときには立派な先生に診ていただけるはずだと期待しています。

「こんな研修医がいた」というエピソードがあれば、お聞かせください。

それぞれの研修医の思い出がありますが、非常に優秀だった研修医を特に覚えています。英語も堪能で、その研修医が初めてTOEFLを受けると言うので私も一緒に受けたところ、その研修医の方がはるかに高得点だったことがありました(笑)。英語のみならず、ドイツ語も取得してドイツに留学もしたんです。末は教授かと思っていたら色々なことがあったようで、教授にはならずごく普通の勤務医になっていたことが印象的でした。一方で、研修医のときは目立たなかったのに、非常に優秀で立身出世した医師もいます。それぞれの人生が山あり谷ありで様々だなと思う次第です。初期研修は2年しかないのだから、その期間はベストを尽くして頑張ってほしいです。それがきっと将来の自分のために役立ちますし、患者さんのためにもなるのです。

研修医に「これだけは言いたい」ということがあれば、お聞かせください。

「初心忘るべからず」ということを申し上げたいです。社会人になったばかりの頃はフレッシュな気持ちでいますし、それぞれの思いがあって医師になっているのですが、どうしても時が経つにつれて制度上や政治的なこともあり、日々に流されるように過ごしてしまうこともあるかもしれません。忙しくて辛いときもありますが、何のために医師になったのかという初心を思い出して、苦境のときも頑張ってほしいです。

先生の研修医時代はどのようにお過ごしでしたか。

今と比べると教育体制ができていなかったので、教えてもらうことが少なかったですね。専門の科のことは習いますが、基本的な手技などはアルバイト先の当直で覚えていました。それも誰も教えてくれず、研修医2年目には一人で大きな病院の全体の当直を任されている状態でした。一番気の毒なのは患者さんでしたが、そういう時代だったんです。お給料も2、3万円という少なさで、大学病院はほぼ無給ですから、それを補うためにアルバイトを紹介してもらっていました。法律上は医師がいないといけない施設で寝当直をするアルバイトもありましたが、ときに容態が変わる患者さんがおられて、ばたばたしましたね。右も左も分からない研修医がそれに対応するのというのは酷い時代ですが、逆に言えばそれで度胸がついたり「やるっきゃない」という心境になりました。最近の研修医は守られていますし、患者さんも安心できますが、その分研修医が自分で頑張ることよりも受け身になる傾向があるかもしれません。そこは注意してほしいですね。しかし、どう考えても今の方が患者さんのためにも素晴らしい制度でしょう。

現在の臨床研修制度についてのご意見をお願いします。

この制度は非常にいいと思っています。しかし、それは私がこのような街の中心部にある大きな病院に勤めて、多くの研修医を教育する立場にあるからかもしれません。地方の病院では医師が少なくなり、医療崩壊と言われるような大変なこともありましたので、そういう立場の方々からはどうかなという面もあるでしょう。一方で、専門医制度はこの臨床研修制度が始まったときのようなドタバタを避けるために1年伸びた形になりました。専門医制度のデメリットに対する不平が出たことで、もとの制度に近い形にならざるをえなくなりそうです。しかし、実際に動き出してみないと分からないというのが正直なところですし、動き出してみて悪いところがあれば修正をかけていけばいいでしょう。

これから初期臨床研修病院を選ぶ医学生に向けて、メッセージをお願いします。

当院は救急病院で急性期を診る病院ですので、症例は非常に多いです。ですから救急に興味があって、救急医療をできるようにしたいと思われる方は当院を選んでいただくのが非常にいいと思います。郡部の方の病院で修行するという選択肢もありますし、それはそれで遣り甲斐があることですが、中心部の大きな病院で十分な実力をつけるというのも大事です。救急をしたい方はどうぞいらしてください。しかし、非常に忙しい病院ですので、急に動くのが難しくじっくり考えたりするのに向いている方は、もう少しのんびりした病院を選ぶ方がいいかもしれません。

熊本医療センターのPRをお願いします。

当院は急性期を診る救急病院であり、非常に大きな病院です。医師人生は長いので、年をとってから緩和医療やお看取りをする道もあるなど選択肢は豊富ですが、救急ができるのは身体が丈夫な若いうちです。最初の2年間は救急をしっかり頑張りましょう。飛行機の中で容態が悪い方がいたときに「どなたか医師の方はいらっしゃいませんか」とアナウンスがあっても顔を伏せなくて済むように、初期研修では急変時の対応を学んでほしいです。慢性疾患の勉強なら初期研修が終わってからでもいいですので、まずは救急を身につけるためにも当院を選んでくださったら嬉しいです。