指導医インタビュー

医療法人社団洛和会

洛和会音羽病院

京都府京都市山科区音羽珍事町2

名前
酒見英太(さけみひでた)洛和会音羽病院副院長、洛和会京都医学教育センター所長、洛和会音羽病院臨床研修プログラム責任者、指導医
職歴経歴
1957年に兵庫県姫路市で生まれる。1982年に京都大学を卒業する。1989年に日本内科学会総合内科専門医、1993年に米国家庭医療学専門医、1994年に米国老年医学認定医となる。2003年より京都大学医学部臨床教授を委嘱され、2006年まで京都医療センターで総合内科長および研修部長を務める。2006年に洛和会京都医学教育センターに所長および洛和会音羽病院臨床研修プログラム責任者として着任する。2009年より洛和会音羽病院副院長を兼務する。

洛和会音羽病院の特徴をお聞かせください。

洛和会ヘルスケアシステムという医療、看護、介護、保育をカバーする大きな組織の中の急性期病院という位置づけです。急性期病院は2つあるんですが、その内の大きい方です。大きい方と言っても一般病床429床ですから、中規模病院の中では大きめで、大病院よりは小さめというぐらいの病院ですが、全科あります。小さめだけど、臨床研修指定病院も、救急救命センターの指定も、災害拠点病院も取っているし、地域支援病院の認定を受けているということで、地域に役立つ病院として、地域に貢献していると思います。

洛和会音羽病院の総合内科の特徴もお聞かせください。

私は総合内科の責任者ではないんですが、総合内科の特徴は救急との連携ですね。これは当院の特徴でもあります。当院の入院患者さんの45%が救急室から入ってきた人です。救急指定を受けているだけのことはあって、年間6200台の救急車があり、365日24時間、断りません。総合内科は1400人か1500人ぐらいですが、そのうちの75%ぐらいが救急からなので、総合内科が一番人数も多く、当然入院患者さんも多いです。高齢者は色々な疾患を抱えていますが、普通なら臓器専門で「うちじゃない」となりがちところを、とりあえず総合内科が診るということでスムーズにこの巨大な救急を受け入れています。

新専門医制度は以前とどのような違いがありますか。

私は内科専門研修のプログラム責任者をしているので、内科についてしか言えませんが、この新専門医制度では内科が一番大きな変化をします。今までは初期研修の2年間が終わったら、内科の中のサブスペシャリティと言われているところに直接入れました。しかし、これからは3年間みっちり内科をやってからサブスペシャリティに行きなさいという理念になります。アメリカの基準に合わせた形ですね。そういうことが起こるのは内科だけです。当院だと科を統合しないといけないのですが、私はその理念を正しいと考えており、その理念に沿った「標準型」という、3年間で全部回すプログラムを組みました。

新専門医制度について今後、どのような動きを考えておられますか。

一次募集で埋まればそれでいいのですが、埋まらない場合は二次募集を行います。内科医の土台をしっかり作りたい、裾野の広い専門医になりたいといった、ジェネラルのマインドがある人に来てほしいですね。地方の病院に赴任したら「この臓器しか診ません」では成り立たないですから、何でも診られるような土台をしっかり作るつもりでプログラムを用意しましたので、それを身につけたい方々に来てもらいたいです。

現在、後期研修医をどのように集めておられますか。

ジェネラルのマインドを持っている人を集めたいので、京都GIMカンファレンスに参加している病院や、初期研修でたまたま縁がなかったけれども、過去に当院にコンタクトを取った人にも案内を出したりしています。後期研修に関しては企業がオファーしてくれる臨床研修合同説明会にも積極的に参加しています。プログラムも公開されていますが、実を言うと、プログラム自体はほかの病院とは全く違う書き方をして差別化したつもりです。

後期研修プログラムの特徴を教えてください。

臓器に偏らず、各科をまんべんなく回って、内科学会の要求している症例の経験を必ず積ませるようにしています。全科をみっちり回ってもらうことに加えて、救急やICUも回ります。地域医療についても2カ所はしっかり回ってもらいます。アウトカムとしては臓器に偏らないこと、臨床推論力を高くすること、あとはEBMの実践ですね。将来、どの専門家になろうが、どんな地方に行こうが、内科全般をマネージメントできて、まともな治療のできる医師を作れるプログラムだと思っています。

音羽病院での後期研修を受けることで、どのようなスキルが身につくとお考えでしょうか。

先ほども言いましたが、診断推論力が高くなるということ、EBMを遂行できるということです。バランスの取れた内科医を作るということです。手技的なことは各専門科に上手な人がいるのでどんどん教えてもらったらいいと思います。もう一つの特徴は「考える」ということですね。病歴をきちんと取り、身体診察をきちんとして、病気を想定してから検査をするというのが王道ですが、当院はそれを学ぶ機会が他院より多いと思います。

先生はどのような研修医時代を過ごされたのでしょうか。

昔は標準化された目標も方略もなく、ティーチングも非常に乏しかったので、はっきり言って、何でも我流でした。自分で勉強しなければいけない時代でしたから、努力する人はそれなりに伸びましたが、日本の医療全体の平均の底上げに乏しかったですね。今の人は本当に羨ましいです。今はしっかりと組み立てられた目標がありますし、随分とレベルが上がりました。ただ、当時は患者さんの権利が尊重されていなかったので、侵襲的な手技などの経験を多く積めたんです。今は患者さんを危険に曝してはいけないということで、ステップを踏みながらでないと経験させてもらえないですが、以前はいきなりやっていたという感じがあります。

先生が総合内科を選ばれた理由をお聞かせください。

間口が広いからです。広く深くというのが一番楽しいです。私は内科だけで物足りず、アメリカで家庭医療をやったんですが、とても面白かったです。日本に帰ってきて、内科の一般診療をするときにも大いに役に立っています。

研修医に指導する際、心がけていらっしゃることはどんなことでしょうか。

病歴と身体診察を重視することです。それで診断仮説を早く立てて、無駄な検査をしないこと、確定するか、除外するものを効率よく選ぶこと、厳選して時間的にも医療経済的にも効率の良い診断をするということですね。診断さえつけば、今はガイドラインが充実しているので、どういう治療が標準的か容易に調べられます。標準から外れないですむのです。ただ標準治療がうまくいかない人も確かにいます。そこは多くの症例を見ている専門家の出番です。まだ一般的には古い医師が多いですから、色々な医療機関にかかった患者さんが当院に来たときに、薬がものすごく多いことに気づきます。そのため、ティーチングではポリファーマシーの戒めを重視しています。検査にしろ、治療にしろ、チュージング・ワイズリーが大事ですから、ポリファーマシーを戒めるとなると非薬物療法を重視する必要があります。これはまだ日々の中では強調できていないので、これからの課題です。

研修医にどんなアドバイスをしたいですか。

勉強の仕方です。今はITの時代で情報量も多いですが、知識をパソコンに保存したり、スマホで検索すればいいと考え、頭に入れるということを軽視しているのではないかという懸念があります。自分の頭に定着させるためには、多くのケースにあたり、吟味を繰り返すこと、自分なりにまとめたものを書くこと、人に教えることが必要です。

最後に研修医にメッセージをお願いします。

「あなたは何の専門家ですか」と尋ねられた時に、「あなたの専門家です」というのが家庭医療の人たちがよく言うキャッチフレーズなんですが、それに近いことを私も思っています。内科医は診断学に長けていないといけませんし、数をこなさないと技術も上達しません。救急外来や地方での勤務をする場合はもちろん、都会でも高齢者が増加していますので、間口を常に広く持たないと対応できないのです。したがって、精神も含め、身体のどこであっても興味を持っている人が増えてほしいです。

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