指導医インタビュー

川崎市

川崎市立川崎病院

神奈川県川崎市川崎区新川通12-1

名前
津村 和大 先生
糖尿病・内分泌内科部長 指導医
職歴経歴
1972年に東京都で生まれる。1997年に慶應義塾大学を卒業後、慶應義塾大学病院、静岡市立清水病院などの勤務を経て、慶應義塾大学医学部内科学教室に入局する。1999年に慶應義塾大学内科学助手に就任する。2007年に京都大学大学院医学研究科を修了する(医療経済学)。2009年に川崎市立川崎病院に内科医長として着任し、教育指導部を兼務する。2015年に川崎市立川崎病院糖尿病内科部長に就任し、臨床研究支援室担当部長を兼任する。また、慶應義塾大学医学部客員講師に就任する。
現在、日本糖尿病協会本部幹事、神奈川県糖尿病協会会長・理事長として、糖尿病啓発や療養指導支援に取り組むとともに、日本医療研究開発機構(AMED)プログラムオフィサーとして、循環器疾患・糖尿病などの実用化研究の企画と進捗管理にも従事する。
学会等
日本内科学会認定総合内科専門医・指導医、日本糖尿病学会糖尿病専門医、日本内分泌学会内分泌代謝科(内科)専門医・指導医・教育責任者、日本病態栄養学会認定病態栄養専門医・指導医、日本病態栄養学会認定NSTコーディネーター、日本抗加齢医学会専門医、日本人間ドッグ学会人間ドック健診専門医・指導医、日本プライマリ・ケア連合学会認定医・指導医、日本糖尿病協会療養指導医、日本医師会認定産業医など。
主な受賞歴は2007年に京都大学大学院医学研究科優秀研究賞、2009年に医療の質・安全学会「新しい医療のかたち」賞(共同)、2014年に日本糖尿病協会ウィリアム・カレン賞など。

川崎市立川崎病院の特徴をお聞かせください。

川崎市南部地域の基幹病院ですし、自治体病院としての責務を果たしている病院です。この地域には大学病院がありませんので、地方都市の大学病院と同じように、地域の病医院からの紹介を受ける役目があり、いわば「最後の砦」です。一方で、そうした高度医療や三次救急に応需するだけでなく、プライマリケアも応需しています。救急は一次から三次まで診ていますし、小児科には急病センターがあり、休日も診療しています。新生児科もインテンシブな対応を行っています。医療の現場としての完結性があり、教育の経験値を高めることができます。しかしながら病院を黒字化するには専門性に特化すべきですから、救急を担っていくことは難しい面もありますね。

津村先生がいらっしゃる糖尿病・内分泌内科についてはいかがですか。

病院の規模や立地などの立ち位置からすれば、幅広い臨床像を持った患者さんが集まっている診療科です。自治体病院ですから、糖尿病の初療の依頼が多く、大学病院でも見ないような重篤な患者さんが搬送されてくることもあります。糖代謝異常であっても、糖尿病だけの患者さんは少なく、心不全、腎不全、感染症、足壊疽、閉塞性肺疾患などを併存した患者さんが来院されます。当院の場合は他科のアクティビティが高いので、疾患を併存した患者さんをお受けできるのです。整形外科や心臓血管外科の治療目的の患者さんが糖尿病を併存している場合もありますし、臨床像は豊富です。私も大学病院から当院に来たときに驚きましたが、大学病院での数年かかる経験値を当科では数カ月で積めるでしょう。教育環境としては非常に良いと思います。

川崎市立川崎病院総合内科の後期研修プログラムで学べる特徴について、ご紹介くださいますか。

新専門医制度のプログラムは専門医機構のプログラムに準拠したものを提供しますが、できるだけ後期研修医のニーズに合わせたいと考えています。現在は新専門医制度が始まる直前ですので、専門医機構がオーソライズしたものとは違います。ただ、当院は1967年から研修を始めています。当時の厚生省が研修病院を認定したのが1968年ですから、それよりも長い歴史があるのです。当初は3年制のプログラムで、途中で2年制に変えたものの、大学医局に入局しない人を一人前に育てるノウハウと組織文化があるのですね。その積み重ねの先に設置されたのが総合内科です。昭和からの歴史の中で、どういうプログラムを使って人材育成を行うべきか、考えてきました。結論としては、ある程度は好き嫌いに関係なく、幅広い経験を積めるようにすること、後期研修医のニーズに応えることといったバランスをカスタマイズしています。当院のプログラムは一見、自由度が高そうに見えるかもしれませんが、決して放任ということではありません。後期研修医のニーズに細かく応えるために、彼らが気づかない仕掛けをしているのです。患者さんの割り当てにしても、ローテーションの時期にしても、分野横断的になるようにしています。それでもばらつきが出れば、誰がどのぐらいの患者さんを担当したかを把握し、足りない内容を補えるような調節を行っています。また、早く専攻を決めている人や大学院への進学を希望している人には患者さんを特化して、担当してもらうこともあります。したがって、当院の特徴としては二つあります。一つはある程度の自由度を担保しながら、患者さんの垣根が低くないといけないということです。もう一つは全領域の診療科が揃っていることで可能な研修であることです。色々な科が揃っていないと、アラカルトの食事を食べられません。そのため、専門医を多く採用しています。これには病院自体の組織力や体力が必要なのです。

川崎市立川崎病院総合内科での後期研修で、どのようなキャリアアップが望めますか。

画一的でなく、細やかに提供しているプログラムであることやその仕組みづくりは新専門医制度になってからも変わりません。後期研修医一人一人のニーズと一人一人が願うキャリアパスに応える体制を作っています。具体的に言うと、当院は慶應義塾大学との関係が深いので、アカデミックポストに就きたい、一定期間はアカデミアで働きたいという人には、本人の出身大学いかんに関わらず、一定水準以上の能力と人格が備わっていれば、慶應義塾大学への入局をサポートしています。同時に、フラットな目線で見て、その人が母校に入局したい、あるいはその後、生活していく地域にある大学病院で働いた方がプラスになるという場合にはその大学病院を推薦することもあります。一方で、市中病院で仕事をし続ける方が幸せだと本人が感じていたり、周りもそう見ていたら、当院を含めて、臨床のアクティビティが高くて、教育環境が整った医療機関への就職を勧めます。当院にその人の道筋を描けるところがあれば、当院への就職を勧めていますね。その人にとって、何がベストで、どうあればハッピーなのかを常に考慮しています。USMLEを持っていて、臨床で留学したい人や公衆衛生学の分野で仕事をしたい人をそれぞれにふさわしい場所に推薦したこともあります。その人の明るい入り口に届けてあげたいです。やはり自治体病院で後期研修医を集め続けるには病院のためにという視点ではなく、一人一人の後期研修医のことを真剣に考える体制を持っていないといけないと思います。いくら表面を飾っていても、見抜かれてしまいますね。

カンファレンスについて、お聞かせください。

当院の内科の特徴として、内科のスタッフは全員、内科兼務という形をとっていることが挙げられます。広い内科という傘の中に循環器内科や糖尿病内科、消化器内科、神経内科といった専門の科があり、常勤スタッフはほぼ全員、専門を決めて糖尿病内科などの組織に入っています。一方で、常勤スタッフに入る前の段階である卒後3年目から5年目、もしくは6年目の医師が総合内科と名乗っているのです。その総合内科も内科という広い傘の中に入っています。大きな傘の内科カンファレンスは週に2回あります。1回は総合内科にいる後期研修医が主体となってレクチャーを行う学習会で、1回は初期研修医の学習機会になっています。また、各分野でのカンファレンスは週に2回、糖尿病内科なら水曜の夕方と金曜の午後に行っています。内科には全8分野ありますから、週20回になりますね。それから若い医師のみが救急で入院した患者さんの情報を共有するための軽い形でのカンファレンスが週に3、4回ありますし、若い医師だけの連絡会も週に1回ほどありますので、教育の機会は非常に豊富です。これらに全部出るとなると、学校のようになってしまいますね(笑)。あくまでも自分の受け持っている患者さんの優先度を見て、どこに参加するべきか決めてもらっています。したがって、自主性のある人にはいつでもどこでも相談できる体制ですが、一定水準以上の積極性がないと戸惑ってしまうかもしれません。

女性医師の働きやすさに関してはいかがでしょうか。

女性、男性に関わらず、若い医師はとても守られていますし、初期研修医も後期研修医も労務の体制で守られています。具体的には当直の翌日の午前中はある程度のところまで診たら、受け持ちの患者さんを同じグループの医師に預けて帰れますし、労務管理が優しい状態です。育児中の女性医師が後期研修医ならば非常勤扱いで外来のみとしたり、スタッフの医師もそれに近い形です。その人ができる範囲での診療負担となっています。スタッフの方が早く来て、遅くまで仕事しています。私も5時台に来て、若い医師よりも遅く帰っています。若い医師の働き方に手をつけたとしても、医療は甘い世界ではないので、診療が減るわけではありません。患者さんもいらっしゃいますし、市民も納得しないのです。スタッフにとっては厳しい病院だと言えるでしょう。

先生が糖尿病を専攻されたのはどうしてですか。

糖尿病は診療科の中では幅広く学べる科です。糖尿病は全身性疾患なので、全身性疾患に対応できる医師になりたいう当初の思いと合致する分野であったのが一点です。それから多くの先生方が診療科を選ばれるときと同じですが、私も研修医の駆け出しの頃に、糖尿病を専攻している先輩医師に尊敬の念を抱き、こういう生き方がいいなと思ったことも理由です。

先生の研修医時代はいかがでしたか。

指導医にも恵まれ、充実していた、いい時代でした。仕事を身につけて、どんな分野でも一人前になりたいと願う時期には自分自身の限界を求めて、必死に学んで、汗をかかなくてはいけないと思っていました。そうすると、今の世の中で批判されている昔の臨床研修は全てが悪ではなく、臨床医を育てていくうえでは良い側面もありました。ドロップアウトして、医師の道を諦める人も毎年いましたし、厳しさの中で生き残っていかなくてはいけないというヒリヒリした感覚もありました。それが良いか悪いかは分かりませんし、時代や世の中の空気も違うので、今との比較はできませんが、この時期があったからこそ、今の自分の仕事があると思っています。

研修医に指導する際、心がけていらっしゃることはどんなことでしょうか。

臨床研修ですから、一つ目はとにかく高い臨床能力を身につけてほしいということを最優先にしています。二つ目は今の時代は医療を一人で行うことはできないので、チームの力をよく理解して、チームの一員として活躍できる人になってもらいたいということです。三つ目は患者さんに優しくしてほしいことです。表面的な優しさではなく、患者さんの病気や家族、人生を理解したうえでの優しさですね。表面上は厳しい対応を取らざるをえないことがあっても、それが本当の優しさになることもあります。表層的でない優しさを身につけてほしいです。

研修医に対し、「これだけは言いたい」ということはどんなことでしょうか。

当院は良い研修医ばかりですから、これからも素晴らしい臨床医に育っていってほしいです。患者さんの診療は医師の責務であるとともに、患者さんから多くのことを教わっていることを忘れないでほしいですね。診療が忙しいとストレスがかかり、往々にして忘れがちになりますが、患者さんがおられるから、あなたの仕事があり、学びもあるのだということです。以上は一般的なことですが、当院に興味を持ってくれる研修医に言いたいのは当院は自分から積極的に色々な機会の扉を叩こうとする人には多くの可能性を提供できる病院だということです。

現在の臨床研修制度について、感想をお聞かせください。

基本的にはいい制度だと思います。選択肢が広がったことは良い制度変更だったのではないでしょうか。

新専門医制度についてはいかがでしょう。

実体験がまだありませんので、今のところは答えを出すための材料がなく、全体像が分からないのですが、実際に始まってみれば功罪が出てくるはずです。当院も2018年度から走り始めるので、細かく自己評価し、良いところをさらに育て、良くないところがあればできるだけ早く見直すべきだと考えています。

これから後期研修の病院を選ぶ初期研修医にメッセージをお願いします。

初期研修医は医師としての駆け出しの時期で、多くの可能性を持った人たちです。自分は小児科だ、外科だ、内科だと決めつけず、できるだけ幅広く、自分の目で患者さんを診て、色々な経験を積んでほしいです。そのうえで、早い段階で研究職に就きたい、大学で教職を目指していきたいという人は大学病院で研修したり、大学の医局に入局するのがいいかもしれません。一方で、少しでも臨床の最前線で患者さんに触れて、臨床の経験値を高めたい人には当院は非常に良い環境です。積極性があって、臨床が好きな人に是非、当院に来ていただきたいです。私は糖尿病内科医として仕事をしていますが、研修管理を行う教育指導部にも所属しています。そのほか、クリニカルリサーチの支援の仕事もしてきました。厚生労働省の科学研究費補助金、いわゆる科研費のテーマの設定、この年度はどういうテーマで、いくらの予算を積んで、企画するかということなどを企画事前評価委員会でやってきて、今は日本医療研究開発機構でその仕事を継続しています。その経験を活かし、市中病院でも臨床研究ができる体制を作ろうと提案して、前の病院長のときに当院の中に臨床研究支援室を作ってもらったのです。ここで医師、看護職、栄養職が研究をするときに研究のデザインについての相談や、研究のデータの解析ではどういう解析をすれば妥当なのかといった相談に対応しています。その意味で、臨床が好きで、なおかつ研究もしたい、論文も書いてみたいという人には当院は向いています。初期研修が終わって、後期研修が始まると、少しずつでも研究をしてみたい人が出てくる頃なので、当院はいい病院だと思います。

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