指導医インタビュー

JA広島厚生連

JA尾道総合病院

広島県尾道市平原1丁目10番23号

名前
花田 敬士(はなだ けいじ)先生
診療部長、指導医
職歴経歴
1963年に広島県尾道市に生まれる。1988年に島根医科大学(現 島根大学)を卒業する。2003年にJA尾道総合病院内視鏡センター長に就任する。2011年にJA尾道総合病院診療部長に就任する。
学会等
広島大学医学部臨床教授、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本消化器病学会専門医・指導医・学術評議員、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医・財団評議員、日本胆道学会認定指導医・評議員(広報委員会・認定資格制度審議委員会)、日本膵臓学会評議員(膵癌診療ガイドライン改訂委員会、膵嚢胞性腫瘍委員会、評議員選考委員会、認定資格制度審議委員会、指導施設認定委員会)、日本医師会認定産業医、日本臨床腫瘍学会暫定指導医、日本がん治療認定医機構暫定教育医・がん治療認定医、厚生労働省難治性膵疾患班研究共同研究者など。

JA尾道総合病院の初期研修、後期研修の特徴をお聞かせください。

来ていただいた後期の研修医の先生たちがどうしたいかという意向に沿って、自由度が高いプログラムを組ませていただくようにしています。指導医として、これは絶対に抑えておいてほしいという項目は抑えていますが、それ以外は基本的に本人の希望を尊重して、自由闊達にプログラムを組むようにしています。

花田先生のいらっしゃる消化器内科の特徴もお聞かせください。

肝臓、胆膵、消化管と消化器内科を統括する3つの代表的な専門分野があるんですが、お蔭様で人員が15人おり、それぞれに充分経験を積んだ指導医がいますので、非常にクオリティが高い研修ができています。地域に根差した病院なので、医師会の先生達との距離も近く、共同で何かさせていただく機会も多いので、病診連携が非常に良く取れています。中核病院にいると自分が何でもできそうな錯覚に陥るのですが、研修の中で私が一番に申し上げているのは「そうじゃないんだよ。自分たちの診療は地域の先生方に支えられた中で成長しているものだから、地域の先生方を特に大事にしなさい」ということですね。これは初期も後期も関係ありません。いずれは研修医も地域医療に貢献する立場になって仕事をしなければいけないときが来ますから、その気持ちを忘れないでほしいと思っています。

地域包括ケアを見事に実現されていますが、膵臓がんの0期、1期からの発見などは、花田先生がこちらに来られてからスタートされたんですよね。

2007年に尾道市医師会の正式なプロジェクトとして始まりました。1997年私がここへ赴任して21年経ちますが、色々な準備期間を経て、医師会の先生方に了承いただいたうえで立ち上げたものです。はじめの10年間は大変でしたね(笑)。地域の開業医の先生方のご協力がないと、いくら私どもが現場に下りて、膵臓がんになりやすいと思われる方を拾い上げようとしても、病院の中で集められる数は決まっています。紹介していただく方を診る以外ないわけですし、我々が往診に行くことはできません。我々の考えていることを具現化していただく地域の先生方のお力がないと、この結果は出なかったと思います。

膵臓がんの5年生存率は平均を大きく上回る20%を達成され、テレビ出演などもされて全国的に注目されていますが、通常であれば生存率も非常に低いと思うのですが。

平均が6.5%や7%という世界ですので、5年生存の方が出てこられて本当に良かったですし、外来で「先生に助けていただきました」と言ってくださる方が増えてきていますので、嬉しいですね。でもまだたった2割ですからね。これを3割、4割にしていかなければならないと思っているので、まだまだ努力が足りませんし、やらなければいけないことが多くあります。

そのような細かい診断も、研修医自ら経験できるのでしょうか。

もちろんです。画像を拾い上げるヒントとして、研修医は実際に自分でエコーをしますので、エコーで各臓器を見るときの最低限の注意点は伝えます。エコーの役割は隠れているものをあぶり出すことにありますが、所見でもエコーで全て完結することはまずありませんので、研修医はエコーの次に行う検査の流れを十分理解しなくてはいけません。研修医がエコーで異常がないと書いてしまうと、私たちは精査を出来なくなりますから、少しでも気になることがあればそれを注記し、なるべく「異常なし」とは書かないように指導しています。

それでは初期研修の特徴をお聞かせください。

当院に来てくれた初期研修医の中には将来像のある人もいるし、何も決めていないので、診られるものは全部診させてくださいという希望を持っている人もいます。広島大学からのたすきがけの人もいます。たすきがけだと当院の研修は1年になりますので、研修年限によっても少し変えますが、基本的には本人の将来の方向性の希望を聞いて、経験者がアドバイスをして提案し、本人と話をして決めるという形です。

初期研修医を採用する際にポイントにされていることはどのようなことですか。

私自身は成績の出来不出来よりも人間性を見ています。素直な人がいいですね。最近は「この子は水飲み場に連れて行ってもらっていないだけで、水を飲ませたら結構飲むんじゃないか、食わず嫌いなだけじゃないか」といった学生も多いです。留年して、国試を失敗しても、長所がキラリと見える人には「頑張れ。待っていてやるから来い」と言う場合もあります(笑)。何をしても100点だったり、エリートコースにいるような人は集団を正しい方向に引っ張って、道筋を綺麗に引いてくれる役割を担えますが、成績が少しふるわない学生でも話をしてみると、長所があるのだなと気づかせてくれたりしますから、同じチームの中にどちらのタイプもいると面白いと思います。

現在の臨床研修制度について、どう思われますか。

必須の科目が変わること、また、1診療科の研修期間が短いことですね。初期研修の段階からサブスペシャリティ的な要素があってもいいのではないでしょうか。現在のプログラムは少し中途半端な印象があります。産婦人科や精神科などの必須科目が増えますが、そうなると自由選択の期間が短くなるので、研修医の自由度が低下することを心配しています。

印象に残っている初期研修医はいますか。

1年目の初期研修医に気になる人がいます。彼らを見ていると、柳の枝に届きそうで届かない蛙がトントン飛び上がっているような、枝を掴もうとして一生懸命に飛んでいるんだけど、飛び方が分からなくて、掴めそうで掴めていないというのがありありと見えるんです(笑)。懸命に頑張る姿を見ると、応援してやりたいなと思います。エリートですーっと上がってきた人に比べると、しなくてもいい苦労をしてきた人は長所を伸ばしてあげるとすごく伸びるので楽しみになりますし、教え甲斐もありますね。

JA尾道総合病院での初期研修を終えたら、どのようなレベルまで達成できるのでしょうか。

彼らがどこへ行っても恥ずかしくない全国標準的なレベルになるように、厳しくしつけています。内科系であれば内科の研修の中で、論文の投稿を必ず1本か2本義務づけていますし、内科学会の地方会などに行かせています。症例報告1本でもいいので、自分のストーリーを作り、自分の考えを具現化して、きちんと論文化することは成長の記録として残しておくことにもなります。専攻医コースに入ったときに「論文や英文は読んだことがありません、発表もしたことはありません」というようなことには決してならないですね。

これから初期臨床研修病院を選ぶ医学生に向けて、メッセージをお願いします。

熱意のある指導医がいる病院、それと常勤の病理医がきちんといる病院で研修してください。病理は意外と大事です。全身の疾患を診よう、内科系、外科系などメジャーなところを目指していこう、臨床の王道を歩いていこうとすると、病理の知識は必ず必要です。手術をしたり、組織を採ったりして、患者さんの疾患を病理組織学的に考えながら、次の治療をしていかないといけない場面はいくらでもありますが、顕微鏡の知識が全くなかったり、細胞のメカニズムを深く理解していないと、患者さんに正確に話ができません。初期研修では病理の先生からアドバイスをいただいて、顕微鏡の写真を見ながら画像と病理所見を紐付けて勉強していくことが求められます。がんをはじめとして全身を診る医師を目指したいのであれば、優秀な常勤の病理医がいる病院を選んでください。

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