指導医インタビュー

兵庫県立柏原病院

兵庫県丹波市柏原町柏原5208−1

名前
西崎 朗(にしさき ほがら)先生
副院長、指導医
職歴経歴
愛知県名古屋市に生まれ、高校まで愛媛県松山市で過ごす。1983年に神戸大学を卒業後、神戸大学医学部附属病院で研修医となる。1984年に須磨赤十字病院(現神戸赤十字病院)に勤務する。1986年に神戸大学第二内科医員を経て、1988年に公立御津病院(現 たつの市民病院)に勤務する。1990年に兵庫県立成人病センター(現 兵庫県立がんセンター)に消化器内科医長として着任する。2003年に同部長に就任する。2004年に同内視鏡・超音波部長兼務、2008年に同地域連携部長兼務を経て、2010年に同内視鏡・超音波部長に就任する。2013年に兵庫県立柏原病院に副院長として着任する。
学会等
日本内科学会専門医・指導医・近畿評議員、日本消化器病学会専門医・指導医・本部評議員、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医・財団評議員、日本消化管学会専門医・指導医・本会代議員、日本食道学会本部評議員など。
日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本癌学会、日本胃癌学会、日本肝臓学会、日本超音波医会、日本環境感染学会、日本光線力学学会にも所属する。

兵庫県立柏原病院の特徴をお聞かせください。

まず、地域の特徴としては医療に関心が強く、協力的であることが挙げられます。2004年に今の臨床研修が始まり、ハイボリュームセンターや大学病院に教育指導医が必要になったことで、どこの地域の病院からもスタッフが異動していきました。当院も同様で、医療機能がかなり低下したんです。特に小児科は最終的には2人の医師で24時間の対応をしないといけない状況になり、大変でした。そこで病院を立て直すために、地域に「県立柏原病院の小児科を守る会」ができ、住民運動で立ち直っていったのです。もちろん、それだけで医師が集まってくるのは難しいですから、神戸大学と兵庫県のタイアップによって、常勤医師の供給を始めました。病院全体の特徴としては、院長も「教育マインド」とよく言っているように、教育的であることです。最近は誰もがそういう気持ちを持って対応していますし、自身も勉強しないと人に教えられませんから、良いサイクルになっています。医師だけでなく、メディカルスタッフも皆、研修医に対して教える雰囲気があります。また、各科の風通しがよいのも特徴です。一時期、医師数が減っていたこともあり、病院全体で対応するムードがあり、各科の敷居がないと言っても過言ではないぐらいで、コンサルテーションがしやすいことも特徴です。私は以前、ハイボリュームセンターにいましたが、隣の机の別の科の内科医が何をしているのか詳細には知りませんでしたし、向こうもそうでした。忙しくて医局に戻ってくる時間のズレもあり、一緒に行動することが少なかったこともあります。しかし、この病院でも一緒に行動しているわけではないのに、コンサルテーションしやすいんです。医局に電子カルテの端末がいくつか並んでいて、消化器内科の患者さんのことで外科の医師に相談することもよくあります。そういう意味では研修医が患者さんを診ていくうえでも有用な体制だと思っています。

内科の特徴もお聞かせください。

当院は院長が神戸大学総合内科の初代教授だったこともあり、内科は一つというコンセプトを出しています。ハイボリュームセンターでは循環器、呼吸器、消化器などを縦割りで回ることが多いですが、当院では内科は一つなので、朝は循環器、昼は呼吸器、夜は消化器の患者さんがあたることもありえるので、当院の前期・後期の研修医は内科の水平線の広さを感じながら勉強できるはずです。非常に視野が広がりますね。院長のみならず、神戸大学の特命教授や講師の先生方が外来で当院に来られることもあり、必ずしも広く浅くではなく、専門的に深くやっている病院に比べれば限界はあるかもしれませんが、広く深く勉強できる体制が整っています。循環器は神戸大学から専門医が常勤していますし、消化器は私が県のがんセンターにいたことや当院ががんの拠点病院であることで、その2つについてはサブスペシャリティの研修も可能です。

新専門医制度のプログラムが始まりましたが、内科については以前とどのような違いがありますか。

これまでは後期研修中に他の病院から入ってきたり、現在の後期研修の連携病院以外の病院に出ていくことができる自由度がありました。今年の3月に当院での後期研修を終えた医師は循環器、消化器に1人づついたのですが、現在の現状として、当院に基幹病院として来た後期研修医はいません。基幹病院と連携病院という縛りができてしまったし、決められたプログラムの中でしか動けなくなったので、後期研修医が自由に出入りできず、きつくなりましたね。連携病院として大学病院から研修に来ている人は1人いますが、前のように色々な後期研修医を自由に採ることができなくなったので、そこはどうなのかなと思っています。当院は都市部に多いハイボリュームセンターと比べると地理的に遠いので、住居の確保などの問題も多少はあるでしょう。この制度がどうなるかはもう少し様子を見ないと分かりませんが、中規模の病院は疾患数、教育指導者数、剖検数の縛りで限界があり、内科という点では厳しいですね。

合田先生はどのような後期研修を行っていらっしゃるのですか。

合田先生は新専門医制度の一つ前のパターンで回っていますが、基本的には新専門医制度の総合診療と同等のプログラムを先取りして行っています。総合内科、小児科、救急科、地域医療などを総合的に学んでいます。今年度の当院の後期研修医には、総合診療6人枠のところ、4人の希望者がいます。この中には県の養成医や地域枠の医師もおり、地域での研修は必要ですが、県の養成医でなくても内科だけではなく総合診療を学びたい医師にとっては、院長やプログラム責任者の見坂医師が指導してくれる当院が魅力的なようです。合田医師は、そのロールモデルになると期待しています。見坂医師は当院では内科の指導をしていますが、もともとは自治医科大学の医師であり、県の養成医の担当をしている神戸大学の地域医療教育学部門に属しており、非常に視野が広く、総合診療の指導者にふさわしい人材です。

柏原病院で初期研修の2年間と後期研修の3年間の研修を終えると、どのようなレベルまで達成できますか。

その方がどこまで熱心に取り組むかによりますが、ミニ見坂先生ぐらいにまでにはなれるのではないかと思いますよ(笑)。5年間で指導医として十分にやれるぐらいまでのレベルに到達するはずです。

先生はどのような研修医時代を過ごされたのでしょうか。

1983年に卒業して、1年目は大学でローテーション研修をしました。当時の神戸大学の内科は第一、第二、第三とあり、内科に入局した人はそれを全部ローテートする体制でしたが、大学病院ですからコモンディジーズはあまり来ないんです。非常に難しい病気や重症、併存疾患が多い方などの一般病院では診ることが難しい患者さんがいらっしゃるので、レジデントクラスの医員や助手の先生方には研究も含めて勉強になるし、遣り甲斐もあったのでしょうが、私たちにはなかなか敷居が高く、深く専門知識は習得できますが、コモンディジーズや救急をあまり勉強できないという問題点がありました。しかし、卒後2年目・3年目に研修した須磨赤十字病院(現神戸赤十字病院)では、徹底したon the job trainingを行い、患者さんを教師として多くの経験を積み、臨床能力や技術を習得しました。

研修医に指導する際、心がけていらっしゃることはどんなことでしょうか。

研修医はここ以外に頼るところがないのだという視点を持ち、自分の息子や娘のように親身になって関わりたいと個人的には考えています。指導医にも色々な人がいて、指導が行き過ぎることもあるかもしれません。私たちの頃はうまくできないと、結構蹴られたりしていました(笑)。私は愛のムチとして受け止めましたが、そうとは受け止められない人も中にはいますので、そこまでの行き過ぎた指導は今日ではまずいですね。もし、そういうことがあった場合は指導医にフィードバックするようにしています。また、内科は他の病院から何ヶ月間か研修に来る医師が増えていますが、そういう医師によく言っているのは「既に1年研修を受けた施設の医療の文化を持っているのだから、それを発揮してほしい。お互いが持っている視点を融合させて切磋琢磨してやっていけば、お互い良いことが起こるのではないか」ということです。もう一つは「患者第一」ということです。前職のがんセンターには23年間いましたが、そこでも患者さんを中心にして皆で考えようというスタンスでいました。カンファレンスは自分のためにしているのではなく、患者さんをどうやって治すのか、どういうふうにしてあげたらいいのかを基準にするものなので、私が間違っていたら、間違っていると指摘してほしいです。意見があれば、積極的に言ってもらいたいと思っています。

実際のカンファレンスではどのような雰囲気なのですか。

病棟担当者がプレゼンテーションを行い、指導医・研修医全体で討論しています。アットホームな雰囲気です。1年目の初期研修医はなかなか発言しにくいようですが、2年目になると積極的に自分の考えを言ったりしていますね。研修医の性格にもよりますが、自信満々に間違っていることを言ったときは「間違ってるで!」と言うこともあります(笑)。でも息子や娘のように対応するといっても下に見ているわけではありません。私は自分の子どもも15歳を超えたら大人として扱ってきたので、研修医は当然20歳を過ぎている立派な大人ですから、基本的には研修医の意見を尊重しているつもりです。

海外の医師も来られているのですか。

今、当院にいるのは海外で麻酔科をしていた外国人の医師で、医学日本語を学びに来ている人です。我々はその医師に英語の論文のチェックをしてもらったりしているのですが、金曜の夕方に院内で英会話教室をしてもらっているんです。当院内科には4つ病棟担当のチームがあり、そのチームの後期研修医の下に初期研修医が配属されているのですが、そこにその外国人医師も入って一緒に活動しています。若い医師には大きな刺激になっているようです。

来年度に新病院ができますが、新病院ができてからの研修で新たな取り組みなどはありますか。

今、医師が充足していない診療科も含めて新病院効果で色々な診療科が整備されていくでしょう。しかし、新病院になっても、今の敷居の低さや横の繋がりをそのまま残したいと考えています。初期研修に関して、内科学を全体的に広い視野の中で研修ができる体制を維持しつつ、ジェネラリティとスペシャリティをどういうふうに融合していくかは一つの課題です。大きな病院はもともとスペシャリティの集まりだったわけで、臨床研修制度が始まってからもその体制が残ってしまい、総合的に勉強するのが難しい状況にあるところは少なくありません。しかし、当院はたまたま小さい病院でしたし、総合内科の初代教授が院長として来たこともあってこの体制を維持できていますので、病院が大きくなっても、視野を広く持てる内科研修を残しておいた方が、研修医が短期間に広く一定の深さで学べ、力をつけられると考えています。

最後に、後期研修先を考えている初期研修医にメッセージをお願いします。

ここ数年の当院の実績を見て、選んでくださると嬉しいですけどね。平成29年度JAMEP(臨床能力評価試験)では当院の当時2年目の初期研修医が全国の2年次391病院中6位と好成績をおさめました。当院のプログラムだと臨床能力がつくのだと思います。病院全体が教育熱心ですし、何よりも2年間、内科を広く、かつ一定の深さで学べることが好成績に繋がったのでしょうね。後期もその延長線上にあり、当院は総合内科が中心になっていますので、総合内科の力はもちろんつきます。それは先に述べたJAMEPの成績や学会での優秀演題表彰が物語っています。循環器内科は、24時間の心臓カテーテルができる素晴らしい技術と能力のある病院で、それを教えることができる医師もいます。消化器内科に関しても、急性期疾患をよく理解した非常に視野の広い部長がいます。また、消化器というと半分以上ががんという病院もありますが、がんは私ががんセンターで23年間培ったものがあり、かつ当院はがんの拠点病院ですので、消化器内科でもレベルの高い後期研修ができます。また、当院の総合診療専門医プログラムには今年4人の後期研修医が入りましたが、こちらにも引き続き入ってほしいですね。合田先生はよいモデルです。将来は総合内科、総合診療科、循環器内科、消化器内科以外の柱を増やしていきたいと考えていますから、是非とも兵庫県立柏原病院にいらしてください。絶対に損はさせません(笑)。良い研修ができることをお約束します。

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