指導医インタビュー

熊本赤十字病院

熊本県熊本市東区長嶺南2丁目1番1号

名前
早野 聡史 指導医
医師免許
平成23年 取得
職歴経歴
平成23年3月 熊本大学医学部医学科卒業
平成23年4月 熊本赤十字病院 初期臨床研修医
平成25年4月 熊本赤十字病院 総合内科後期研修医
平成28年4月 亀田総合病院
平成31年4月 熊本赤十字病院 総合内科

熊本赤十字病院の特徴について、お話いただけますでしょうか?

当院は熊本県内で500床規模の中核救急病院で、外来・救急車ともに救急の患者さんが非常に多い所が特徴です。内科の疾患としては、感染症・内分泌疾患・悪性腫瘍をお持ちの方々、膠原病の方々等、多岐にわたって熊本市内外から患者さんが来られています。また1次救急外来から3次の重症の方々まで非常に幅広い層でみておりますので、全ての層が来られるという事が大きな特徴です。同時に総合内科には、生活習慣病などをお持ちの慢性期の方も多く来られています。慢性期~超急性期の全ての方に対応しています。

年間でどのぐらい患者さんが来られて、特にその中で内科的な症例はどのぐらいありますか?

内科で入院となる方は、平成30年は1786名でした。血液・腫瘍内科も一緒になっていますので、2科併せると約2600人の入院の方がいらっしゃいます。救急外来には年間約6万人の外来患者さんと約7500人の救急車で来院される方がいますので、多くの方を内科で診察しています。

特に熊本赤十字病院の内科の中では総合内科に重点を置いておられると思いますが、総合内科についても特徴を聞かせて頂きたいと思います。

当院の総合内科は様々なスペシャリティのある科が複数組み合わさっているという所が最大の特徴です。具体的には一般的な内科疾患に加えまして、糖尿病・内分泌疾患・感染症・腎疾患、膠原病疾患の方、また、血液・腫瘍内科も同じチームとして活動しておりますので、横断的に全て診るという点を重視しています。また臓器だけではなく、ご本人もご家族も社会環境も含めて全人的に診るという所が当院の総合内科の一番の特徴だと思います。

新専門医制度が始まってまだ間もないですが、内科プログラムの特徴的な部分、他の病院さんとの違いがあればお聞かせいただけたらと思います。

当院の新専門医制度につきましては、まず患者さんの症例数という意味で非常に多岐にわたる症例を集める事ができます。例えば、いくつかの疾患群しか診ていない病院であれば、この疾患が足りないという事が起こりえますが、当院の内科専門研修プログラムであれば、非常に短期間に充分な経験を積むことが出来ます。
また、サマリーに関しても各科の医師と事務のスタッフの手厚いサポートで一人一人が最後まで完成できるように頑張っています。

従来の後期研修と新しい専門医制度に変わってからの専門プログラムの違いはいかがでしょうか?

今までであれば卒後研修が終わった場合にそのまま専門科に入るところを、新専門医制度ではあまねく内科疾患を診た後で専門科に入りますので、患者さんの体全体を診る能力が非常に求められています。日本においても高齢化が進んでおりますので、「この臓器だけ診ていれば大丈夫」という状況ではなくなってきています。例えば当院の内科でも腎臓疾患の方を多く診ていますが、腎臓だけ悪い人は少なく、心疾患、他に合併する疾患をお持ちだったりする事が多いです。
今後はあくまでも全身の体調管理ができたうえで、より専門性の高い診察も行う双方の能力が求められています。

今後サブスペシャリティ移行等の熊本赤十字病院のビジョンは?

当院の総合内科の中でもサブスペシャリティがある領域が増えてきており、感染症・腎臓内科・膠原病に加えて、血液・腫瘍内科も一緒に活動しています。内科の中でもそれぞれの専門家がアドバイザーとなって、一緒に診療している状況です。仮にその後専攻医としてのプログラム、また当院で選択期間でのサブスペシャリティを勉強したいという時にも、対応できる領域を増やしていく予定です。専門領域が非常に複雑化していく中で、最新の治療、グローバルスタンダードな治療を常にupdateしています。

専攻医の方が研修を受けられると、どの様なスキルが身に付けられますか?

当院の総合内科では、内科の医師として基本的なスキルを重視しています。
初期研修医・専攻医問わず、患者さんの病歴を聴取し、バイタルサインのチェックや身体診察をして、何が起こっているのか病態を考えた上で、その方に必要な治療を提供するという流れで診療を行っています。これは臓器1つだけを診ている状況ではなかなかできない事です。例えばある臓器の数値が悪くなっていてもそこだけを治せば疾患全てが治るわけではないので、体に何が起こっているのか全体の状況を確認して、患者さんに対して適切な治療ができるようになる事が学べるスキルの1つです。
踏み込んだ治療ができない領域もやはりあるのですが、腎臓内科であれば、腎臓の透析の管理、腎臓が段々悪くなっている方の慢性期腎不全の管理を外来で行い、悪化した場合は透析を導入して、その後の透析を調整するという一連の流れも診る事ができますし、救急で来られた血液悪性腫瘍の方を初診から診断して、治療、緩和医療まで行うところまで全て診ることができます。内科医師として基本的なスキル、応用的なスキルの両方を身につけることができます。

先生は熊本赤十字病院で研修したとお聞きしましたが、研修時代はどのようにお過ごしになられましたか?

初めての病院見学した際に色々なスタッフが忙しくとも楽しそうに働いている姿を見て、とても学びが多く雰囲気が良い病院だなと思い、初期研修からこちらで研修したいと思いました。特に救急外来での経験が心に残っていて、今でも最初に診察した方のことは覚えています。初期研修2年間は、救急外来を診るこということは研修医として大事な仕事であり、救急の先生、専門科の先生からアドバイスを受けながら、決して1人で放置される事無く、多くの経験を積むことができました。
当院では研修医は必ず内科を長期間ローテーションするというのが特徴の1つです。1年目で全員2ヶ月間回りますが、私は2年目でも3~4ヶ月間内科にお世話になりました。研修医が主治医として自分だけで対応する事はできないので、上級医に手厚く診てもらいながらも自分で判断して治療するスキルを学んでいました。
幅広い層の患者さんが来られるので、忙しくはあったのですがとても他の病院では経験できないような2年間を過ごす事ができました。

後期研修先も熊本赤十字病院に決められた理由はなんでしょうか?

私は昔から内科医になろう、その中でも感染症の領域を専門にしたいと思っていたのですが、当時の上司から「感染症を専門にしたいのであれば、内科を全て診られるようにならないと、医師3年目から感染症を勉強しても身に付かないよ」と言われたのがきっかけでした。感染症診療においては、中枢神経、肺、腎臓などの様々な臓器別の要素に加え、手術関連や悪性疾患関連などの多くの知識と経験が必要です。当院ではこれら全ての診察ができるとともに腎移植の方の診察も行う事ができます。初期研修期間だけでは足りない内科全般の領域を学びたいということが後期研修で当院を選んだ一番大きな理由でした。

感染症の勉強に関してはいかがでしょうか?

当時は後期研修医が3ヵ月間院外研修ができるというシステムがあり、当時武蔵野赤十字病院 感染症科の本郷偉元先生が講義に来られた際に「勉強に行かせてくれませんか」とお願いしたら、快く引き受けてくださいました。
4年目に3ヶ月間感染症の勉強に伺いましたが、日頃の内科診察だけでは経験できない「深さ」の一端を知ることができました。医師5年目で行き先を探した頃に当院を卒業された先生から連絡があり、千葉県の亀田総合病院の見学を勧められて、とんとん拍子で千葉行きを決めました。
亀田総合病院では、一般的な肺炎や尿路感染症、結核、非結核性抗酸菌症、HIV感染症、血液・固形臓器移植後の感染症、渡航後の感染症など色々な領域の感染症を専門の医師の指導の下に学ぶことができました。またワクチン接種、院内の感染管理、海外渡航前相談など多く学べるフェローシッププログラムでした。

熊本赤十字病院を選ばれた理由は?

内科の中には多くの医師が在籍していますが、科内の雰囲気が非常に良い事と、ちょうど私にも子供ができたタイミングだったので、忙しい中でその辺りのサポートや理解をちゃんとしてくれるという所が大きかったです。
また、私以外にも先輩方が専門の腎臓や膠原病、血液・腫瘍内科の研修を終えて戻ってこられていて、非常にパワーアップしている状況でしたので、感染症はもちろん、それ以外の領域を更に研鑽できると考えました。

専攻医に指導する際、心がけていらっしゃることはどんなことでしょうか?

どの領域でもそうですが、治療には正確な「診断」が必要です。内科医の治療は主に薬剤によるものですが、しっかりとした診断がないとどんな薬を使ってもなかなか治りません。専攻医にはまずしっかり患者さんの病歴を聞き自分の中で考えてから、頭の上から足の先まで身体の診察を行うように話をしています。
抗体検査をただ理由もなく提出したり、CRPなどの炎症マーカーに一喜一憂することのないような医療を指導できるよう心がけています。
もう1つ大事にしていることは、患者さんやご家族とのコミュニケーションを大事にする事です。体の調子が悪くて入院されたり外来に来られた方々は、不安があったり心配があったり、痛みや辛さがある方がほとんどです。極力しっかりお話を聞いて、患者さんだけでなくご家族にも安心してもらうことを心がけてもらうようにしています。また、他科の医師やすべてのスタッフとコミュニケーションをとることが良質な診療につながると考えており、積極的に会話をしてもらうようにしています。

専攻医の先生にこれだけは言いたい事があればお聞かせください。

当院の学べる事としては、やはり他の病院では総合内科として学べないような疾患をたくさん診られる事です。
教科書や論文10本を読むより1人の患者さんを診る方が、経験量は圧倒的に多いので、まず専攻医の先生は一人一人の患者さんの治療を大切にしてもらいたいです。その上で、国際標準的な治療を学び、目の前の方にテーラーメイドで治療ができるようにガイドをしたいと思っています。
また、今は日本人の3人に1人は癌になると言われているような時代であり、悪性腫瘍で苦しむ方の身体面・精神面を含めた治療を総合内科でできる病院というのは大きな特徴だと思いますので、それは全国の先生に是非伝えていきたいです。

最後に初期研修をされている先生方に向けて、メッセージをお願いします。

患者さんを診るというのが研修医の先生方には一番大事な事ですが、所見があってもそれが大事だと知っている指導医がいないと教えられず、目の前を大事な所見がただ通り過ぎてしまったり、何かサインを発していても、やはり経験がないと気付かずに見過ごしてしまう事があります。
当院の内科研修では必ずチームで動き、研修医の先生が考えた事を指導医とそのチームでブラッシュアップして、カンファレンスをした上で治療に繋げるような形にしています。研修医が任せてもらえる手技や診断が多い一方、指導医や周りのフォローも手厚く、研修医が放置されずに良い意味で「守られる」立場であるのも当院の魅力です。

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