指導医インタビュー

社会福祉法人

三井記念病院

東京都千代田区神田和泉町1番地

名前
三浦 純男 先生
心臓血管外科科長、高度治療室(HCU)部長
職歴経歴
1998年に筑波大学を卒業後、三井記念病院外科に勤務する。2005年に埼玉医科大学心臓血管外科助手に就任し、2007年に同大学講師に就任する。2007年に三井記念病院心臓血管外科に復帰し、2013年に同科科長に就任する。2014年より外科医局長、2018年より高度治療室(HCU)部長を兼任する。
学会等
日本心臓血管外科学会専門医、日本外科学会専門医、胸部ステントグラフト指導医、腹部ステントグラフト指導医、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)実施医など。

三井記念病院の特徴をお聞かせください。

古くから循環器に強みを持っている病院です。循環器内科も心臓血管外科も長い歴史と実績があります。また、立地の良さも特徴です。当院は10年ほど前に建て替えたのですが、やはり千代田区で秋葉原という場所が大きなメリットだということになり、この場所のままになりました。アクセスが良いので、遠方からの患者さんも多いです。つくばエクスプレスはもちろん、新幹線で来院される患者さんもいらっしゃいます。

三浦先生がいらっしゃる心臓血管外科についてはいかがですか。

成人の疾患に関しては冠動脈、弁膜症、末梢血管など大学病院同様の治療ができています。ステントグラフトやTAVIといった低侵襲治療にも力を入れており、ご高齢の方の身体に優しい治療行うために早くから低侵襲治療を始めました。

三井記念病院の初期研修の特徴もお願いします。

歴史が古いということが特徴の一つで、研修医を育てることに病院全体の理解があります。職員の中に皆で若い医師を育てていこうという雰囲気があるんですね。また、今は屋根瓦式の研修が当たり前だとされていますが、当院は少なくとも40年以上前から屋根瓦式の研修を行っています。1年目の初期研修医に卒後4年目、5年目の医師がまずサポートでつき、その医師に7年目、8年目の医師がつき、そのうえに20年以上の経験のある医師がついています。そもそも屋根瓦というものはそういう一つ一つを重ねるシステムのことですから、そのスタイルが定着していることが2つ目の特徴です。3つ目としては初期研修医にできるだけ臨床をさせることが挙げられます。もちろん、安全に気をつけたうえの「できるだけ」ですが、手技や手術をさせている方だと思います。熱心な先生方が集まってくる病院なので、忙しい病院ですね。私は教育研修部にも所属していて、働き方改革をしていかないといけない立場なんです。一方で、当院の若い医師は「忙しくてもいいから、多くの経験を積みたい」と言いますので、そのジレンマに悩んでいます。

初期研修のプログラムの特徴にはどういったことが挙げられますか。

内科と外科、泌尿器科・産婦人科のプログラムを作っていることです。ほぼ全ての診療科を満遍なくスーパーローテートし、少しずつ広く浅く診る研修病院もありますが、当院は将来の希望に合わせてプログラムを分けています。将来希望する診療科の期間を長く取れるプログラムを組んでいます。したがって、どの診療科に行くのか、進路を迷っている人にはあまり向いていませんが、学生のうちから内科だ、外科だと決めている人にはとてもやり甲斐のあるプログラムと言えるでしょう。

外科プログラムについて、お聞かせください。

私は外科なので、外科の話をすると、もともとは4年一貫のプログラムでした。それを初期研修必修化の前から行っていたのですが、この制度が始まったときに初期研修2年、後期研修3年の5年でやっていこうということになりました。そのため、外科志望者には「できるだけ一貫して5年いてください。5年間で外科専門医を育てます」とお伝えしています。もちろん2年で辞める人や3年目に入ってくる人もいますので柔軟に対応していますが、原則は5年間で継続して教えています。1、2年目のうちから執刀医を務めてもらい、そのまま3、4、5年目でより難しい手術をしてもらうプログラムです。また、外科の後期研修では半年ほど心臓血管外科にもローテートします。

心臓血管外科が必修なのは珍しいですね。

循環器が強い病院だという背景もありますが、心臓血管外科を半年回ると、重症の患者さんの管理が上手になるんです。仮にそうした患者さんが心臓血管外科ではなく、消化器外科や呼吸器外科にいたとしても、心臓に病気のある方や体調の悪い方、血圧が不安定な方、術後に具合が悪く、集中治療室にしばらくいる必要のある方は少なくありません。そのため、心臓血管外科を回ることで、重症患者さんの管理をスムーズにできるようになってほしいという狙いです。私が研修医の頃からあるシステムなので、もう20年以上ですね。それもあって、当院には心臓血管外科希望の研修医が多く集まっているのだと思います。

ほかに特徴はありますか。

宮崎県の古賀総合病院での3カ月の研修もあります。いくつかの理由がありますが、新専門医制度では地域医療への配慮が求められていることが一つです。当院のような都会の市中病院は研修医を集めすぎているという批判が強いのですが、我々としては若いうちに多くの手術がある病院で研修して、その力を地方に分散させたいという思いがあります。その中で連携してくださっている古賀総合病院に3カ月ごとの交代で後期研修医が行っています。そこで宮崎を気に入り、後期研修修了後に宮崎に就職した人もいますので、その意味では東京の市中病院が地域医療に貢献できた成功例でしょう。

初期研修医の人数はどのくらいですか。

1学年の全体で11人、そのうち外科プログラムに4人います。この人数の多さは初期研修医にとっても恵まれていますし、私たち指導医にとっても恵まれています。研修医は一人でいると頑張ろうという気にならなくなり、切磋琢磨できる仲間が欲しいものです。熱意のある研修医が4人いると、皆で競争して勉強しますので、とても成長しますから、いい人数ですね。4人が3カ月ごとのローテートをすると、ちょうど1年になるので、病院としてもプログラムを組みやすいです。

指導される立場として心がけていらっしゃることを教えてください。

私自身は電話で済まさず、できるだけ会って話をすることを心がけています。今は患者さんのところに行かなくても、電子カルテの遠隔操作で何でもできます。しかし、やはり患者さんのもとに足を運びたいものです。また、私は研修医が集まっている部屋にできるだけ顔を出すようにしています。私の机は別の場所にあるのですが、時間があるときにふらっと行って、「どう」みたいな声かけをしています。それからoff the job trainingですね。今からすれば恐ろしい話ですが、私が研修医の頃は糸で縫ったりする練習はしていたものの、現場で手術しながら教わっていたんです。今はそういう時代ではないので、5年ほど前から、血管外科であれば手術する2日ぐらい前に練習用の人工血管などを使って、手術と同じことを練習するようにしています。たまにブタの心臓を病院に持ってきて、練習することもあります。腹腔鏡も研修医が空いている時間に練習できるように、トレーニングキットを研修医の部屋に設置しています。

最近の研修医をご覧になって、どう思われますか。

昔と変わらず、熱心な研修医が頑張っている姿もよく見ますが、「もう帰るんだ」と思うこともあり、悩ましいですね(笑)。色々な状況が変わった中で、こちらとしても早く帰さないといけない、時間を決めて研修しなければいけないと理解しているのですが、その兼ね合いが難しいです。ただ、時代の流れもありますので、限られた時間の中で濃い研修をさせたいと考えています。

「こんな研修医がいた」というエピソードがあれば、お聞かせください。

私の数年後輩の研修医がクリーブランドクリニックのスタッフになりました。彼は研修医時代から自分に厳しく、自分の手術や手技を常に振り返り、うまくいったのか、いかなかったのか、時間はどのぐらいかかったのかなどを厳しく検証していました。彼はここで初期、後期の研修後、心臓血管外科の専門レジデントを3年したあとでアメリカに行ったんです。あれよあれよという間にクリーブランドクリニックのスタッフになっているのを見て、こういう人が優秀な医師になるのだと感じましたね。一方で、手術の手際が悪く、決して器用ではなかったけれども、熱心で、真面目な研修医がいたのですが、彼はある大学病院で一生懸命に臨床研究をして、多くの論文を書き、その大学病院で高く評価されて、講師を務めています。「この研修医は外科医に向いていない」という先入観を持たないようにして、頑張れば芽が出ると励まし続けています(笑)。

研修医に「これだけは言いたい」ということがあれば、お聞かせください。

患者さんのそばにできるだけいてくださいと言いたいです。実際に行くのはもちろん、心を寄り添わせるという意味でもそうです。それを忘れなければ、まともな医師になれるでしょう。

先生の研修医時代はどのようにお過ごしでしたか。

私が卒業した頃、大学病院で研修しない人は2割から3割ぐらいしかいませんでした。大学病院の研修医は学生実習の延長といったイメージがあり、私には魅力的に見えませんでした。それで外科医として早く手術したい、優秀な手術を早く見たいと思って、いくつか病院見学をしたんです。当院には夏休み中に1週間の学生実習で来て、当直もしました。そこでお会いした研修医が一生懸命で、その姿に惹かれ、当院に入職しました。今と同じで、外科の同期は4人いました。実際に研修が始まると、睡眠時間が十分にとれずきつかったです。トイレで居眠りしたり、病院の廊下の椅子の上で朝を迎えたり、3日間ほとんど寝られなかったこともありました。勉強にはなりましたが、研修医の健康に配慮したプログラムに変えていく必要がありました。

現在の臨床研修制度についてのご意見をお願いします。

2020年度には改定があり、小児科、産婦人科、精神科、一般外来が必修化されます。進路を迷っている人が小児科や産婦人科をローテートすることで、小児科や産婦人科が面白いと気づき、将来の進路を決めていくということであれば意味があります。また、日本は総合診療科の医師や家庭医が少ないので、そういう医師を育てていくのにも良い改定だと思います。しかし一方で専門医を育てるのが遅くなるという問題もあり、そのバランスが難しいですね。若い医師の多くは専門に走りすぎるきらいがあるので、そこを抑え、広い視野で診療できる医師を育てなくてはいけないという国の政策も理解できます。臨床研修病院の中でどういった医師を育てるのかという棲み分けがあってもいいのかもしれません。総合診療科の強い病院は総合診療医を育て、当院のように循環器が強い病院は最初から循環器内科医や心臓血管外科医を育てることがあってもいいのではないでしょうか。

これから初期臨床研修病院を選ぶ医学生に向けて、メッセージをお願いします。

最近の医学生は4年生や5年生のうちから、どこの病院で研修しようと心配して見学にいらっしゃるのですが、少し可哀想だと思うところもあります。大学時代は勉強もするべきですが、スポーツなども頑張ってほしいです。ただ外科医として言いたいのは解剖の勉強はきちんとしてほしいということです。患者さんの貴重な身体をお借りした解剖は大学時代でしかなかなか勉強できないので、しっかり頑張ってください。

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