指導医インタビュー

社会福祉法人

三井記念病院

東京都千代田区神田和泉町1番地

名前
阿佐美 匡彦(あさみ まさひこ)先生
三井記念病院循環器内科医長、指導医
職歴経歴
1981年に千葉県柏市で生まれる。2008年に帝京大学を卒業後、初期研修医として三井記念病院に入職、後期研修では循環器内科を専攻し、研修修了後も同院循環器内科に勤務する。2015年からスイス、ベルン大学へ留学し、2018年11月から再び三井記念病院循環器内科に勤務する。
学会等
日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医など。

三井記念病院の特徴をお聞かせください。

病院の特徴としては循環器に強みがあるということです。教育的な面では若い医師が主体的に診療に取り組むことが挙げられます。上級医からの指示をこなしていくのではなく、患者さんの治療方針を自分で色々と考え、指導医とディスカッションしながら決めていくというのは当院ならではですし、面白い教育プログラムだと思います。

阿佐美先生がいらっしゃる循環器内科についてはいかがですか。

循環器は診療の幅が広く、私はストラクチャーを専門にしています。大学病院でも「これはできるけど、これはできない」ということがありえますが、当院の循環器はほぼ何でも揃っているので、若い医師が自分の興味に応じて、そこにのめり込むことが可能なことが大きな特徴です。スタッフが皆新しいことに挑戦していこうという意識が強いので、皆がアンテナを張って、新しいデバイスや薬を次々に取り入れたり、治験や臨床研究にも打ち込んでいます。若い医師には魅力的な場所でしょう。また、市中病院ですと研究や論文執筆が難しいと言われていますが、当院は研究の材料が豊富なこともあり、研究にも熱心です。専門研修修了までに誰でも一回は国際学会で発表することを目標にしています。スタッフに論文を書ける上級医が大勢いるので臨床研修を行いながら学べる点も大きく、大学病院以上に意欲的に取り組んでいると言えますね。

ほかに、三井記念病院循環器内科の専門研修プログラムで学べる特徴について、ご紹介くださいますか。

いわゆる手技的なものはPCIにしても、TAVIにしても、アブレーションにしても、当科ではほとんどのことが可能です。オペレーターになるべく研鑽を積み、ある程度の症例を稼ぐことで専門の資格を取って、次のステップに行きます。海外に行く人も多く、今は5人が行っていますし、2020年4月からはさらに2人が行く予定です。海外に留学したくてもできない人が多い中で、当科ではたくさんの留学先があり、皆希望に応じて留学先を決めています。今は大学でもなかなか留学が難しいと聞きますので、当科の間口の広さはいいところだと思います。

三井記念病院循環器内科での専門研修で、留学のほかはどのようなキャリアアップが望めますか。

大学院に進学したり、ほかの市中病院や大学病院に移動するなど様々です。当院の循環器内科には長い歴史があるので、ここで勤務した卒業生で大学教授になっている人が20人近くおりますし、中核病院の部長クラスだと何人いるか分からないぐらいおりますので、様々な施設との繋がりがあります。大学の医局のような太い繋がりではありませんが、面倒をよく見てくださる卒業生の先生方と密に連携しながら、皆のキャリアアップを支援しています。

カンファレンスについて、お聞かせください。

月曜日の朝は外科との合同カンファレンスをしています。手術をすべきかどうかという症例提示やTAVIやMitraClipなどストラクチャーの症例も議論し合っています。そこでは内科側からは「こういう論文があるが、どうなのか」といったエビデンス重視の話、外科側は「いやいや、そうは言っても、この状況では手術できる、できない」といった話をしますね。月曜日の夜は循環器全体の回診があるので、その前に受け持ち患者さんのプレゼンテーションがあります。火曜日と金曜日がシネのカンファレンスで、カテーテルを行うまでの経緯を紹介し、シネ画像を見ながら治療法を検討しています。どのカンファレンスでも、誰かの経験を重視するのではなく、最新の論文を中心に話を進めていくのが特徴です。

専攻医も発言の機会は多いですか。

それぞれの受け持ち患者さんについてのプレゼンテーションのほか、私たちの知らないケースについて、彼らが自分で調べてきた論文に基づいて議論をしたりすることもあり、私自身が勉強になる部分もあり面白いですね。

女性医師の働きやすさに関してはいかがでしょうか。

現在循環器内科には女性医師は2人いて、1人はスタッフ、1人は専攻医です。働きやすさに関しては私自身は外から見ているだけなのでわかりませんが、数年前までいた女性医師の場合は妊娠中は当直免除でしたし、被ばくする可能性のあるカテーテル業務からも本人の希望があり外れていました。循環器には色々な仕事があるので、その先生はイメージングの仕事をメインにしたいと希望され、エコーやCTの解析を中心に仕事をされていました。今のところ、当科では妊娠や出産をして、それでもカテーテルをしたいという女性医師がいなかったのですが、希望があれば体制は整っています。スタッフ数が多いので、女性医師が外れたり、戻ってきたりという調整ができる余裕があります。

先生が循環器内科を専攻されたのはどうしてですか。

ポリクリで色々な科を回ったときに循環器が一番かっこよく見えたという、少し恥ずかしい理由です(笑)。PCIなどの手技にも憧れましたし、循環動態は学問的にも興味があり、学生時代にも楽しかったので、初期研修から循環器が有名な当院に来ました。

初期研修の病院として、三井記念病院を選ばれたのはどうしてですか。

学生時代に有名な研修病院を20カ所ほど見学に行き、自分に合っているのか、自分をスキルアップさせてくれるのかを見ていました。最近は皆で本を読んだり、お昼に集まってレクチャーを受けたりする研修が流行っているようですが、私にはそういうスタイルは合っていない気がしたんです。本やレクチャーで学ぶことと実際の患者さんから学ぶことは雲泥の差があるので、私は多くの患者さんを診て、自分で考えて、必要な検査を自分で組んだりすることをしたくて、当院を選びました。見学の際、当時の当院の研修医がそうやって仕事をしていたんです。それを大変と取るか、魅力的だと取るかは人それぞれでしょうが、私はそういう環境で仕事をしたいと思いました。

研修医時代はいかがでしたか。

当時の当院の研修は本当に忙しかったです(笑)。しかし、2年目になるころに、大学で研修していた友人の話を聞くと学生の延長のようなことしかしていない様子を聞き、当院で研修してだいぶ成長させてもらったと感じました。特に循環器の患者さんを診療中は、不謹慎な表現ですが、とても楽しかったです。生きるか死ぬかという状態で来院された患者さんが元気よく歩いて帰っていかれることもあり、その意味でやりがいも感じました。

後期研修も三井記念病院でなさったのですね。

もともと当院で循環器をしたいと思って入職したのであまり迷いはなかったのですが、私はやはり急性疾患に興味があったのか、胆膵疾患や吐下血のような急を要する症例を見て、消化器内科も考えましたが、結局一番興味のあった循環器を選びました。5年間の研修医生活は忙しかったです(笑)。しかし、その5年間にどれだけの時間を医療に費やしたかで、医師としての質が決まってくると個人的には思っていたので、ある程度忙しいのは望むところでした。もちろん、それは人それぞれなので、強要するつもりはありません。私は後期研修1年目に15-20人ほどの患者さんを受け持ちましたが、循環器は半分ぐらい、神経、腎臓、消化器、血液、糖尿病などの患者さんが2人ずつのような内訳でした。循環器でカテーテルをしたあとに、病棟で消化器の吐下血患者さんの管理をするなど、勉強すべきことが山積みでした。後期研修2年目からは循環器に特化していきました。そして、後期研修後半からインターベンションのトレーニングを始め、PCIやTAVIを勉強して、卒後8年目にベルン大学に留学しました。

留学についても、お聞かせください。

日本でTAVIが始まったばかりの頃、私はストラクチャーを学びたいと思っていました。それで色々な論文を見ていると、ベルン大学からの論文が多く出ていたんです。私としてはストラクチャーで論文を書けるようになりたかったのと、ステファン・ウィンデッカーというボスのもとで勉強したいと考え、リサーチフェローとして留学しました。しかし、留学してみると、折角行ったのだから手技を見学し、あわよくば術者として手技を行いたいと思い、人間関係を構築して、1年少し経ったあとでオペレーターになりました。そして3年半の間に、今の日本にある治療デバイスのほとんどをファーストオペレーターでさせていただきました。

スイスの医師免許を取られたのですか。

スイスは日本の医師免許があれば、研修医としての仕事ができます。つまり、上司の裁量でいろいろな手技を行うことが可能です。もちろん外国人用のドイツ語の医師免許取得試験に受かり、外国人向けの医師免許を取るという方法もありますが、私は取得せずに、帰国しました。

ドイツ語を勉強してから、スイスに行かれたのですか。

いえ、全くしていません(笑)。リサーチフェローとして行っていますので、ボスからも「英語だけ勉強して来い」と言われたこともあり、英語だけ勉強して行きました。でも初日に「緊急のTAVIを手伝え」と言われて、手伝ったんです。当時は人手不足だったこともあり、手術後ボスから「ドイツ語を覚えろ」と言われ、そこから始めました。語学学校に行く時間はあまりなく、週に2時間ほど通いましたが、ドイツ語でドイツ語を学ぶ事になりとても大変でした(笑)。1年以上かかってようやく日常会話ができるようになり、そのころにオペレーターになりました。スイスには公用語が4つありますが、英語はその中に含まれていません。しかし、公用語が多いためか語学が達者な人が多くいます。街なかでも日本人より英語が上手な人が大勢いるので、英語でのコミュニケーションには苦労しませんでした。

研修医に指導する際、心がけていらっしゃることはどんなことでしょうか。

私は仕事は忙しくても楽しくあるべきと考えておりますので、研修医の皆とも常に楽しくやろうと意識しています。辛いことや嫌なことも多いですが、いかに楽しくやるか考えています。

研修医に対し、「これだけは言いたい」ということはどんなことでしょうか。

研修医には社会人として成熟していない人が少なからずいます。そこは医師だろうと関係なくきちんとするべきだと思います。例えば、社会人である以上、時間を守る(遅刻をしない)、適切な言葉遣いをする、決められた期日までに仕事をするといったことをきちんとしてほしいと思います。

現在の専門医制度について、感想をお聞かせください。

新専門医制度のもと、当院でも一定期間、連携施設での研修期間を設けております。他施設で学べることもある反面、当院で学びたいと思って選んだ人たちには少し不満もあるようです。その部分をどういうふうに埋めていくのかが悩ましい課題ですね。ただ、内科をきちんと学んでから専門に行くシステムは個人的には望ましいと考えています。専門医である前に内科医である以上、専門しか診られないというのでは困ります。その点、当院での指導は内科全般を診られたうえでのサブスペシャリティを学ぶのだという指導方針なので、内科のトレーニングをしっかり積めるのが良いですね。

これから専門研修の病院を選ぶ初期研修医にメッセージをお願いします。

私も学生時代には多くの病院に研修に行きましたが、自分の将来を見据えたうえで、どこでどういう研修をするのかは先生方が思っている以上に重要です。一般企業に就職希望の学生さんは色々なところを受験したり、見学に行ったりしますが、医師は忙しいこともあり、そういった活動をあまりしません。しかし、本当は一生懸命に選ぶべきことだと思います。そこで、満足いくまで見学し、働いている人たちが自分の将来のビジョンとマッチしているのかをよく見てから決めていただきたいです。もし循環器を専攻したいのであれば、当院は間違いない病院だと思います(笑)。

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