指導医インタビュー

社会福祉法人 聖隷福祉事業団

総合病院 聖隷浜松病院

静岡県浜松市中区住吉2-12-12

名前
武地 大維(たけち だいすけ)先生
聖隷浜松病院総合診療内科主任医長、指導医
医師免許
2006年取得
職歴経歴
1980年    東京都福生市に生まれる
2007年    徳島大学卒業
2007年 4月  聖隷浜松病院 総合診療内科
2010年 9月  日本内科学会 認定内科医 取得
2012年 4月  浜松医科大学 社会人大学院 入学
2015年 4月  聖隷浜松病院 総合診療内科 医長
2017年12月 日本内科学会 総合内科専門医 取得
2018年 3月  浜松医科大学 社会人大学院 卒業
2020年 4月  聖隷浜松病院 総合診療内科 主任医長
学会等
医学博士、日本内科学会認定内科医・総合内科専門医、ICD制度協議会認定インフェクションコントロールドクターなど。

聖隷浜松病院の特徴をお聞かせください。

病床数が750床と浜松市では大きい規模であり、医師数が280人を超えていますので、病床数の割に医師数が多い病院です。総合診療と救急医療といったプライマリケアにしっかり取り組みながら、内科、外科といった専門科がかなり多く揃っているので、高度先進医療にも強みがあるのが特徴です。ジェネラリストとスペシャリストのどちらも充実し、活躍できる環境ですね。臨床研修医も専門医研修医も多いのですが、一度は外に出た医師がまた戻ってくる病院でもあります。例えば、後期研修を大学病院や他院で行った人が当院に戻ってくることがよくあるので、大学病院に近い感じでの人材のやり取りをしているところがほかの市中病院と違うところだと思っています。

武地先生がいらっしゃる総合診療内科についてはいかがですか。

総合診療内科は臨床研修教育を中心的に担っているとともに、診療に関しては複雑な病態、複数の疾患などの臓器別の専門科で対応が難しい、複合的な問題を抱えた患者さんをお引き受けしているので、患者層や疾患別で見ても、かなりバリエーションに富んだ症例を診ています。総合診療は大きく2つに分かれるのではないかと個人的に思っています。一つは入口として、プライマリケアを中心に対応するもので、ファミリープラクティスに近いものです。もう一つは専門診療科で対応できないものを診るホスピタリストで、病院の総合診療医に近いですね。市中病院はファミリープラクティス寄りで、大学病院はホスピタリスト寄りのところが多いですが、当院の総合診療内科はどちらも対応しています。要するに、入口も出口も総合診療内科なんです。他科の医師から言わせると「とりあえず総診にお願いしよう」というパターンと「困ったら総診にお願いしよう」というパターンが両立しているのが大きな特徴です。

忙しい診療科ですよね。

するべきことは多いですね。外来だけ、病棟だけ、アテンドのみで入院は診ないというのであれば仕事としてはシンプルですが、我々は両方ですから、大変さはあるかもしれません。主治医になる機会も比較的多いです。

聖隷浜松病院の初期研修の特徴もお願いします。

3つあります。1つ目は総合診療内科と救急科を中心としたローテートで、プライマリケアをしっかりとするというものです。これは臨床研修制度が始まった当初からの目標や目的でもあります。2つ目はプライマリケアと並行する形で、充実した専門診療科を選択で回れることです。これにより、プライマリケアだけでなく、専門的な治療も学ぶチャンスに恵まれます。当院は総合周産期母子医療センターや救命救急センターに強みがありますし、臨床検査科や緩和医療科といった珍しいところも回れます。新生児や周産期は地域でも有数の内容ですし、スタッフもプライドを持って取り組んでいますので、このあたりの科に惹かれて来る臨床研修医も少なくありません。選択での研修により、違ったアプローチが可能になるので、横断的な診療の枠組みの中で能力を活かせるようになってほしいと思います。

3つ目の特徴として、どういったことが挙げられますか。

人材育成センターで、講習会やカンファレンスを用意しています。ジェネラリストへの研修も、スペシャリストへの研修も通常の仕事の中でできますが、オン・ザ・ジョブ・トレーニングだけではカバーできない部分もあります。例えば基礎的な知識、ローテートする科に必要な手技の事前確認、若い医師には敷居の高い臨床推論やEBMに関することなどですね。そうしたものを学ぶための講習会がありますし、一部は時間外も使ってのカンファレンスもあります。

教育的ですね。

私自身も当院で初期研修を行いましたが、人材育成センターには事務スタッフが常駐しており、特に初期研修については目がよく行き届き、気を遣ってくれているという印象があります。

臨床研修医の人数はどのくらいですか。

この制度が始まった当初は1学年12人でしたが、6年前に16人に増えました。2学年で32人ですから、多いですね。このほか、三重大学医学部附属病院などからたすきがけの臨床研修医も半年から1年ほどの間で来ます。院内のどこに行っても、常に臨床研修医の顔を目にしますので、私たちもエネルギーをもらえています。

指導される立場として心がけていらっしゃることを教えてください。

2つあります。1つ目はほかの指導医の先生方もそうだと思いますが、当院の研修医は個性的なメンバーが揃っているので、それに合わせて指導方法を変えるということです。例えば自分でばりばりやっていく優等生タイプの研修医には答えをあえて言わず、軽く対応するようにします。逆に、明確で具体的な指示が必要な研修医には「ここはこうしなさい」と言いますね。研修医の個性に合わせた指導をすると、スムーズに進むことが多いです。2つ目は今は当然になってきましたが、EBMの考え方です。正解にたどり着くために、自分で考えて、調べる能力が求められていますが、教科書で勉強しても、現場ではマルかバツかの答えが明確に出ないこともあります。そういうときに曖昧であることを許容してもらったり、「曖昧な状況でもいいんだよ」と伝えたり、私たちが正解を分かっているときは「こっちを選ぼうか」と提示するシチュエーションを作るなど、そのさじ加減を考えることを心がけています。

聖隷浜松病院を巣立っていく研修医をご覧になって、どう思われますか。

ほかの病院の研修医を知っているわけではないのですが、当院の研修医は優秀で、手がかからない人が多いですね。ただ、優秀な人は「これでいいんだ」と自己完結してしまうことがあるので、優秀だからこそ気づけないこと、実は抜けていること、もう少し足りないことがあるときは私たちが気づく必要があると思っています。

「こんな研修医がいた」というエピソードがあれば、お聞かせください。

当院に来る研修医は初期研修でローテートしているうちに、当初の志望とは違う科を選ぶ人が多いんです。初期研修が終わってすぐに留学した人、厚生労働省の医系技官になった人もいますし、出口が多様です。当院を卒業したあとで面白いこと、新しいことにチャレンジし、活躍しているモチベーションの高い人の話をよく聞きます。私は当院の4期生の臨床研修医でしたが、私も小児科志望から総合診療内科に変わっていました(笑)。私は大学生のときに軽い気持ちで、当院に見学に来ました。その頃は当院が総合診療に積極的だということも知らなかったんです。小児科を志望していたのも、中高生が言いがちな「患者さんを断らずに診られる医師になりたい」ぐらいの理由からでしたが、初期研修で総合診療内科に出会い、その枠組みで学ぶ中で、大人にもこういう診療ができるのだということを知って、そのまま総合診療内科にいます。

研修医に「これだけは言いたい」ということがあれば、お聞かせください。

説教しているようで苦手なのですが、メッセージを贈ります(笑)。臨床研修を始めたばかりのときはもちろん、1年後、2年後でも知識や技術が足りないことに悩むことがあります。私自身もそうでしたし、後輩たちも同様です。そういう場でも、患者さんや病気は待ってくれません。私は研修医の頃に「手を動かすか、頭を動かせ。どちらかを続けなくてはいけない」と言われましたが、自分で何かをしようと思っても、どうしていいのか分からず、迷うことがあります。しかし、私が10数年、経験してきて言えることはやはり答えは患者さんのところにあるということです。カルテ、教科書、論文、ガイドラインに書いてあったことだけではなく、患者さんに会いに行って、患者さんのいる現場で感じたことを信じて、それを頼りに頑張ってほしいです。最近はスマートな研修医が増えてきているので、教科書などで満足せず、患者さんがいてこその医師なのだということを忘れずにいてほしいです。

先生の研修医時代はどのようにお過ごしでしたか。

私が当院に見学に来たきっかけは、大学5年生のポリクリでした。大学の麻酔科医師に「浜松に行ったら鰻を食べさせてもらえるよ」と聞き、当時当院の麻酔科部長であった小久保先生を紹介してもらいました。今からすれば初期研修医を確保するための当時の手練手管だったのでしょう。私は麻酔科に興味があったわけではないのですが、3、4日ほどの見学で小久保先生からお話を伺ったり、外来や病棟も見て、雰囲気の良さを感じたんです。フィーリングが合ったぐらいの印象でしたが、受験して合格したあとで、東海地区では有名な病院だったのだと知りました(笑)。私の頃はまだマッチングへの情報が豊富ではなかったんですね。総合診療自体もよく知らず、ローテートの順番の希望も聞かれたのですが、それも出さずにいたら、最初が総合診療内科でした。これも巡り合わせだったのかもしれません。そのときにお会いした当時12年目の先生が私の「お師匠さん」でした。その先生は総合診療内科に来る前は呼吸器内科医でしたが、医師としてのスタートラインに立ったときにその先生の医療へのモチベーションやパッションを見て、こういう仕事の仕方ができるなら、私も内科医になりたいと思い、総合診療を考え始めたきっかけになりました。そういう出会いがあったからこそ、今の私がいるのだと実感しています。

現在の臨床研修制度についてのご意見をお願いします。

厚生労働省の「医師臨床研修指導ガイドライン」によれば、この制度の目的は3つあります。医師としての人格形成、社会的役割の自覚、診療能力の習得ですが、私が初期研修医だった10年前と比べると、今は診療の専門化が進んでおり、内容も高度になっています。しかし、我々の労働時間は決まっていますので、人格形成や社会的役割の自覚といった内面的な問題に向き合う時間を相対的に減らさざるをえません。分かりやすい評価をするためにはどうしても診療能力がポイントになるので、症例、病態、症候に即した形の評価となり、内面的な評価が難しい状況にあります。紙を渡されて評価をつけても、それが研修や教育に繋がっているのでしょうか。個人的には医師としての人格形成がまずあり、そのうえに社会的役割の自覚があり、そのうえに診療能力の習得というピラミッド型の目標であるべきだと思います。診療能力や知識、スキルはツールであり、それ自体が目的ではありません。それには研修医を扱う側の人を育てることが大事です。研修制度があって、「では研修医の皆さん、頑張ってください」ではなく、指導する側もその制度を理解し、解釈して、現場にフィードバックできるよう、私たちも頑張っていかないといけないと感じています。

これから初期臨床研修病院を選ぶ医学生に向けて、メッセージをお願いします。

臨床研修病院を選ぶときには色々な考え方があります。最近は専門医研修で何をしたいのかといった将来のビジョンをある程度、意識したうえで初期研修の病院を選択する人が増えてきました。一方で、当院のようにプライマリケアを全面に押し出している病院には「3年目以降は別として、最初の2年間は将来の選択科にとらわれずに、そこでしか経験できないことを学ぼう」という人が来てくれたりします。どちらも悪くないのですが、2年間の目的や目標をどこに置くのかを意識して考えてみることをお勧めします。私もそうだったのですが、フィーリングも意外と大事です。今は新型コロナウイルスの影響で見学が難しくなっていますが、見学できる時期になれば是非、見学して、フィーリングを軽視せず、自分に合うなと思った病院を選びましょう。

最後に聖隷浜松病院のPRをお願いします。

当院のある浜松市は地方都市ではありますが、人口を多く抱える政令指定都市です。市内には数多くの総合病院がありますが、その中でも当院はいわゆる中核病院の一つとして、プライマリケアと専門診療の両方を経験できる病院です。ジェネラリストとしての部分とスペシャリストとしての部分を両方学べる環境ですので、興味のある方はどうぞ連絡を取っていただき、見学で雰囲気を感じ取っていただければと思います。

お気に入り