指導医インタビュー

社会福祉法人 聖隷福祉事業団

総合病院 聖隷三方原病院

静岡県浜松市北区三方原町3453

名前
眞喜志 剛
職歴経歴
1982年に滋賀県大津市で生まれる。2009年に奈良県立医科大学を卒業後、聖隷浜松病院で初期研修を行う。2011年に聖隷浜松病院で救急科の後期研修を行う。2015年に名古屋大学医学部附属病院に勤務する。2017年に聖隷浜松病院に勤務する。2019年に聖隷三方原病院救急科に医長として着任する。
学会等
日本救急医学会専門医、日本集中治療学会専門医、臨床研修指導医、救急科専門研修指導医など。

聖隷三方原病院の特徴をお聞かせください。

眞喜志:

浜松市は政令指定都市ですが、当院は浜松市の中でも郊外に位置しています。しかし、ほとんどの診療科が揃っている、規模の大きな総合病院です。どんな患者様も受入れているので、あらゆる症例が集まります。スタッフ皆が頑張って、良い医療を提供しています。初期研修医もよく働き、皆と仲良く楽しそうに研修しています。

眞喜志先生がいらっしゃる救急科についてはいかがですか。

眞喜志:

一番の特色はドクターヘリなのでしょうが、外来からICU、災害医療、外傷や蘇生といった救急で触れることは全て行っています。地域の中核で救急に取り組んでいますので、まさに「最後の砦」という言葉があたっています。

ドクターヘリについても、お聞かせください。

眞喜志:

私も含め、救急のスタッフは皆、フライトドクターとしてドクターヘリに乗っています。1カ月の勤務を皆で分担するので、担当日は月に5、6回あります。これはドクターヘリのある病院の中では平均的な数でしょう。ドクターヘリでの診療は数より質ですので、多いのがいいわけではありません。ドクターヘリでないと救命できなかった症例もいくつかあります。けれども、全てがそうではありません。当院のある浜松市郊外のような、山間部が広がり、陸のアクセスが悪いところで活躍するのが現代のドクターヘリです。救急車を使うと1時間を超えてしまうような場所でも、ヘリコプターだと15分です。そうした場所からの救急搬送をドクターヘリが担っています。現場で重症患者の対応をすることもありますが、専門医がOJT(専攻医まで)を指導しながら対応しますので安心して研修していただけます。

聖隷三方原病院の救急科専門研修プログラムで学べる特徴について、ご紹介くださいますか。

眞喜志:

一言で言うと、立派で優秀な救急医を育てるプログラムです。当院の救急科では救急の全てに触れることができます。私を含め、救急や集中治療の専門医を持っている指導医に加え、内科、外科、脳神経外科の専門医を持っている指導医がいるなど、専門医集団になっています。救急外来から始まる救急医療、そこからのICUといった連続して行うべきものを連続体として学べます。一方、プレホスピタルケアについても力を入れています。その代表がドクターヘリですが、病院から医師を救急車に乗せて現場に運ぶドクターカーもあります。全てを指導医のもとで研修できますので、安全な環境で充実した研修となります。エビデンスに基づいて教育することを重視しており、自ら知識を身につけてもらうための抄読会も定期的に開催しています(ホームページhttp://mikatahara99em.com/)。また、当院の救急科の専攻医は専門研修のうちにDMATの隊員資格を取ります。

どのような被災地に行っているのですか。

眞喜志:

当院からは東日本大震災や熊本地震に出動しました。2019年の静岡県の豪雨災害には私も出動しましが、急性期の災害医療に携わったのではなく、地域の医療が機能しているのかの確認といった任務がメインでした。

聖隷三方原病院救急科での専門研修プログラム終了後はどのようなキャリアアップが望めますか。

眞喜志:

救急医として自立し、一人で完結できるようになります。専門研修中に整形外科や循環器科などの院内のほかの診療科に研修に行き、ほかの診療科の立場で救急を学べます。また、当院以外でも静岡県立こども病院で数カ月の研修をすることで、小児救急も勉強できますから、総合力の高い救急医になることができます。

カンファレンスについて、お聞かせください。

眞喜志:

朝は長め、夕方は短めのカンファレンスを行っています。朝は病棟に入院した患者さんの情報共有を行います。まず問題点を皆で共有し、専攻医が現在の治療やこれからの治療プランを発表します。それに対して、指導医が頭ごなしに否定することは絶対にありませんが、修正した方がいいことは修正します。大丈夫そうなことはそれで行こうとなりますし、強い介入はありません。あくまでも主治医の裁量権を重視します。専攻医は診療の主体となれる充実感、裁量権、コントロール感を持てるので、仕事しやすい環境ではないかと思います。

専攻医も発言の機会は多いですか。

眞喜志:

機会は皆が均等にあり、皆で建設的な意見を出し合っています。和やかな雰囲気の中で行っています。

女性医師の働きやすさに関してはいかがでしょうか。

眞喜志:

救急科にも女性の専攻医がいます。私は女性の立場で考えることが苦手ですが、働きやすい環境を整えることは意識しています。結婚や出産といったライフイベントがあれば全体で支援しています。個人の幸福に繋がるといいですね。当院では女性医師を支援できる体制は十分に整っていますので、女性の専攻医を大募集しています。

先生が救急科を専攻されたのはどうしてですか。

眞喜志:

大学を卒業する頃はどちらかと言うと外科志望でしたが、初期研修で救急を外科同様に学び、救急の楽しさが分かりました。救急はスピード感があり、不安定な全身状態でもうまくやれば、非常に早く治ります。そういうメリハリのある治療が良かったです。私は聖隷浜松病院で初期研修をしたのですが、当時は救急科は部長お一人でした。そこで私が後期研修でも聖隷浜松病院に残り、救急医として働けば、病院にとっても戦力になるし、地域の中でも役に立つだろうという思いがあって、選びました。

先生が初期研修で聖隷浜松病院を選んだのはどうしてですか。

眞喜志:

ネームバリューがあったからです(笑)。受験したら、運良く合格しました。それが救急医への扉を開いてくれたのだから、人生何があるか分かりませんね。映画の「フォレスト・ガンプ」で「人生はチョコレートの箱のようなもの。開けてみるまで中身は分からない」とありましたが、本当にそうだと思います。

研修医時代はいかがでしたか。

眞喜志:

周りに優秀な人が多かったので、私は遅れをとっていて、出来の良くない研修医だという自覚がありました。私なりに熱心に勉強したつもりですが、医師としての役割はあまり認識できていなかったのが遅れの原因です。そこで、教科書を読んだり、シミュレーションのセミナーに参加したり、やれる自己研鑽を片っ端からやっていきました。スタートダッシュに遅れたスロースターターが追い上げていったような感じです。その結果、2年間の初期研修が終わる頃には人並みになっていました。

研修医に指導する際、心がけていらっしゃることはどんなことでしょうか。

眞喜志:

研修医が自分で考え、答えを導くところまでうまく誘導することが大事だと思っています。方法を事細かに教えて、実践させるのは自分で考えるプロセスを飛ばしてしまいます。研修医にしても、専門医を取得後の医師でも、あまりにも細かいコントロールをされると裁量権を感じられなくなり、働くことが幸福でなくなります。特に相手が研修医の場合は研修医の心理的な安全面に配慮しています。医師の世界は何かと批判にさらされますが、その中でありがちなのが研修医が上級医からぼろぼろに言われるイメージです(笑)。そうなると、研修医は自分が酷い目に遭わないような行動を取ってしまいます。しかし、医師は臨床することによって価値を作り出す職業です。心理的に安全な状態で臨床し、本人も幸福になるというのが一番ですので、そうなるように心がけています。

救急科の楽しさはどのようなところにありますか。

眞喜志:

救急科の楽しさは色々な疾患を診て、不安定なら蘇生して救命していくことにあります。救急車で来られた患者さんの診療がうまくいくと大きな達成感があり、この達成感は働くうえで大事です。もう一つは全ての診療科にまたがる診療です。臓器特異的な診療という言葉もありますが、たしかに脳神経だけ、呼吸器だけ、循環器だけといった専門診療は必要ですが、全ての診療科にまたがった診療をし続けられることも楽しいです。

研修医に対し、「これだけは言いたい」ということはどんなことでしょうか。

眞喜志:

色々とありますが、あえて一つに絞ります(笑)。医師として、幸福に働いてほしいです。医療者の多くは幸福に働いていません。その中で幸福に働けていることを大事にしてほしいと思っています。

現在の専門医制度について、感想をお聞かせください。

眞喜志:

現在のプログラムを通して育つ救急医はこれまでの救急医と変わりありません。むしろ、この制度には社会的な意義があります。このプログラムを用意できる病院でないと、専攻医研修ができません。医師人生の中で最もよく働いて社会貢献するのは、おそらく専攻医から専門医を取得してすぐの頃です。この時期の救急医が偏在しないようになればいいですね。救急医療は大学病院よりも市中病院の方が発展する分野だと考えています。是非、市中病院で研修してほしいです。しかし、三方原のような地域も含めて、地方の病院ではプログラムを用意できないかもしれないと想像すると、本当に必要なところに若く、働き盛りの救急医が配置できなくなることが心配です。

これから専攻医研修の病院を選ぶ初期研修医にメッセージをお願いします。

眞喜志:

当院の救急科での専攻医研修では専門医を取得するための十分な症例の経験が積めますが、それだけで十分ではありません。救急医人生の中でも数回しか出会わないような症例や手技も経験できます。また病院全体の雰囲気が支持的です。豊富な症例に触れながら、楽しく、充実した研修ができ、十分な実力を得られますので、当院に是非、来てください。

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