初期研修医インタビュー

熊本赤十字病院

熊本県熊本市東区長嶺南2丁目1番1号

名前 田中 康介 先生
出身地 大阪府吹田市
出身大学 京都大学
医師免許取得年度 2015
名前 佐渡(さわたり)円香 先生
出身地 熊本県合志市
出身大学 熊本大学
医師免許取得年度 2016

医師を目指したきっかけをお聞かせください。

田中:

父が消化器内科の開業医をしている環境でしたので、自然にという感じです。高校生のときは電子系に進むことも考えたのですが、結局、医学部を受験しました。今は熊本で楽しく研修させていただいているので、医師になって良かったなと思います。

佐渡:

小さいときに交通事故に遭ったことがあります。私は小さかったので、普通のこととして受け止めていましたが、両親や祖父母は心配して、私が回復して良くなるととても喜んでいました。一人を助けるとその患者を取り囲む多くの人を一度に喜ばせることができる素敵な仕事だと思いました。でも中学生の頃まではしたい仕事が色々とあり、実際に仕事をしている人のところに見学に行き、「これは違うな」と思ったりしました。高校生のときに改めて医師になろうと決めました。

学生生活ではどんなことが思い出に残っていますか。

田中:

私は1年生で登山部に入り、ずっと活動していました。京都府の山岳連盟の人たちと一緒に登っていて、冬山や岩山も経験しました。そのうちに後輩ができ、5、6年生で後輩と山に行ったのが一番、楽しかったですね。

佐渡:

医学部ではなく、本学のダンスサークルに入ったので、ダンスを通して色々な人たちとも仲良くなりました。ダンスの日々でしたね(笑)。6年生のときに交換留学でイギリスに行ったのですが、英語ではなく、ダンスがきっかけで友達ができたりしました。今は頻度は減っていますが、1年に2回ぐらいはイベントに参加しています。

大学卒業後、大学病院ではなく、研修先を熊本赤十字病院に決めた理由をお聞かせください。

田中:

特別な理由はありません。私の大学は、大学や大学の関連病院で初期・後期研修をする人が9割5分ぐらいで、数人が初期研修から東京や沖縄に行くんです。私は学生のときから外科志望でしたが、外に出たいと思って、市中病院を探していました。将来は移植もしたいのですが、当院は若い医師も移植に携わっていますし、国際救援もしているところが魅力的でした。見学に来たときも雰囲気が良くて、働きやすそうだし、5年を過ごすつもりで試験を受けました。症例数に関しては市中病院の方がメリットがありますし、若い世代には大学や地域を出ることに抵抗感がある人は少ないと思います。

佐渡:

大学が熊本大学なので、実習などでお世話になった病院です。明るくて、広くて、先生方も元気で、印象は良かったのですが、研修医が忙しいというのが有名だったので、無理かなと6年生まで迷っていました。6年生のときに1年間の交換留学をして帰ってきたときに、大変なところの方が断然、楽しいと気づいたんです。そういうことを共有できる研修医に会えるのも楽しみでした。それから国際救援に行った先生方と一緒の場所で働いて、お考えを伺いたいと思ったのも当院を選んだ理由です。

熊本赤十字病院に見学に来られたときの印象はいかがでしたか。

田中:

私はそんなに見学に行ってはいないのですが、当院の第一印象はコメディカルの人や事務の人も含め、皆が仲が良くて、明るい感じがしました。

佐渡:

特に救急外来が広くて、閉じ込められた感じで働かなくていいかなと思いましたね(笑)。

熊本赤十字病院での初期研修はイメージ通りですか。

田中:

私はイメージがあまりなかったので、イメージ通りかどうかは分からないです。ただ、1つ上の初期研修医が大変そうでありながら、仲良く頑張っていたので、私も充実した生活が送りたいと考えていました。1年目はかなり忙しかったですね。でも初期研修医同士の仲が良く、初期研修医の存在を全ての先生方が理解してくださっているのが有り難かったです。

佐渡:

忙しいだろうなというイメージでしたが、本当に忙しいです。寝る時間が少ないことも予想していましたが、寝る時間が短いと頭がこんなに痛くなるんだなということは予想外でした(笑)。でも、どんなに忙しくても、楽しい気持ちが勝っていますので、当院に来て良かったと思っています。

プログラムの自由度はいかがですか。

田中:

1年目はほぼ固定ですが、毎年のことなので、指導医の先生方も初期研修医の扱いを分かってくださっているんです。コミュニケーションや全てにおいての指導に長けています。次に回ってくる初期研修医が誰かも把握されています。ほぼ2人セットで回りますが、1人で回るとやはり寂しいですし、ばらばらに回ると情報量が少なくなります。毎年、同じ診療科を同じ順番で2人ずつローテートするのは指導医の質のアップにも繋がっているんだと思います。

佐渡:

1年目は既に決まっていて、2年目に関する説明を先日、受けたところです。自由選択期間は短いのですが、診療科ごとにさせていただける範囲は自分次第ですから、診療科の中での自由度は高いですね。

どういった診療科をローテートされていますか。

田中:

1年目は2カ月ごとに内科、外科、産婦人科、小児科、救急、麻酔科ですね。私は2年目で産婦人科をさらに1ヵ月、回りました。産婦人科に腹腔鏡の先生がいらっしゃるので、腹腔鏡の勉強をさせてもらおうと思って、追加したんですが、1年目の初期研修医2人と私とで3人で回っている状態です。普段、1年目の初期研修医は忙し過ぎてあまり交流ができないのですが、一緒に回ると飲みに行ったりもできるし、そういう意味でも楽しいです(笑)。

佐渡:

今、私は外科を回っているので、ほぼ毎日、手術に入って、支えたり、ちょっと縫ったりなど、できることをさせていただいています。指導医の先生方が術前術後の患者さんをどう診ているのか、見学させていただくこともあります。

院外での研修はありますか。

田中:

1年目はなく、2年目は地域医療で天草や小国に行きます。天草は海が目の前にあり、地域医療とは言え、200床ぐらいの大きな病院でした。療養病床もあり、療養病床の患者さんも診ますが、救急車の患者さんも診ました。1週間に2回ほど、近くの老健施設に訪問診療に行くのですが、その帰りに指導医の先生と登山に行ったこともありますし、釣りをしていた研修医もいました(笑)。小国は黒川温泉から車で10分ぐらいですので、週に3回は指導医の先生と仕事帰りに温泉に行く生活らしいです。先月が天草で、今月は産婦人科なので、ギャップを感じています(笑)。

どのような姿勢で初期研修に取り組んでいらっしゃいますか。

田中:

学生から初期研修医になるときは何らかの理想像があるのでしょうが、2年目になって思うこととしては、1年目は、とりあえず毎日生きて家に帰れればいいということですね(笑)。当院は日々の研修だけで十分に力がつきますので、その中で疑問が生まれたら、余裕のあるときに聞けばいいです。そういうことも大事ですが、まずは体調管理を大事にすべきだと考えています。

佐渡:

初期研修医になった途端にさせていただけることが増え、その一つ一つに戸惑いました。「これはどうすればいいんだろう」と、採血さえも怖かったんです。今は一つ一つの手技を普通にできるようにということと、指導医の先生方が患者さんにどう接し、どう話していらっしゃるのを見て学ぶことを頑張っています。

指導医の先生のご指導はいかがでしょうか。

田中:

1年経って思うことは、指導医の先生方が初期研修医の存在を把握し、理解していることですね。救急外来でたまに会うだけの先生が初期研修医のことを知っておられたり、噂で聞いていらっしゃったりします(笑)。「○○くん、誰だっけ」ということがありません。こちらとしても接しやすいです。特に1年目にローテートする診療科の先生方は初期研修医に色々な興味をお持ちで、「指導してあげよう」という感じですね。そして指導自体もですが、その先生の人間性に近づいて仲良くなれる下地があります。困ったときも相談しやすい環境にありますし、顔を合わせることも多いので、そのタイミングで質問したりしています。先生方も指導しやすいでしょうし、私たちも指導されやすいです。

佐渡:

救急のローテーションでは必ず振り返りがあります。1日の業務が終わったあとで、上級医の先生方が集まり、初期研修医からの疑問に答えてくださったり、フィードバックをくださったり、できた手技の評価をいただけたりします。忙しいだけで、振り返りの時間がなかったら、やりっ放しになってしまうかもしれません。でも、上級医の先生方からの意見をいただけることやその日のうちに疑問を解決できるのは良いことですね。先生によって、指導の仕方は全く違いますね。私の意見をひたすら待って、「どうしたい」と質問される先生もいらっしゃれば、「こうした方がいいんじゃない」とすぐに意見をおっしゃる先生もいます。時間のマネージメントの仕方を教えてくださる方もいます。色々な先生方からのご指導はそれぞれ勉強になります。

熊本赤十字病院での初期研修で勉強になっていることはどんなことでしょう。

田中:

挨拶でしょうか。4月1日の研修では「医師よりもまず社会人になれ」と言われました。私の大学はとても自由な感じなんです(笑)。礼儀立って「ありがとうございます」などという挨拶をすることも少なかったので、最初は「社会はこんなに厳しいんだ」と思いましたね。変な厳しさではなく、患者さんに対する言葉遣いに気になるところがあれば指導されますし、社会性や最低限の礼儀を学びました。事務のスタッフやコメディカルスタッフと一緒に仕事をしないと、初期研修を終えることはできないので、コミュニケーションは勉強になっています。先輩後輩だけの「なあなあな関係」ではなく、仕事としてのコミュニケーションですね。

佐渡:

手技や知識などは初期研修のうちに自然に身につくのでしょうが、社会的入院の方を帰すとか、帰さないということまでを考えるというのは初期研修で初めて知ったことです。疾患としては帰せても、帰せない患者さんだということは救急外来でも考えないといけませんし、ほかの診療科に長く入院している患者さんも同様です。主治医として、どこに連絡を取って、帰すためにどう体制を整えるのかについては勉強になります。

何か失敗談はありますか。

田中:

大阪出身なので地理が分かっていないんです。大阪の感覚だったら、大阪市内の病院に来る患者さんは近くにお住まいです。でも、熊本の病院に特有のことなのかもしれませんが、当院には大分県や宮崎県から来る患者さんもいらっしゃいますし、人吉からヘリコプターで来たり、阿蘇からなら毎日のように来院されます。退院時に今後はどこでフォローするのかとなったときに、「え、阿蘇ですか、宮崎ですか」となってしまいますね。最初は阿蘇の高齢の女性が話す方言自体が分からなくて、苦労しました(笑)。

佐渡:

救急外来のウォークインなどで、私が最初に診察し、患者さんからの質問にも答えるんですが、上の先生に確認したら、違っていたりもします。患者さんは「いつからお風呂に入っていいですか」のような細かいことも気になりますから、そこで「やっぱり違っていました」みたいなことを患者さんに言いに行くような失敗は多くありますね(笑)。

当直の体制について、お聞かせください。

田中:

1年目は科によって忙しさが全然違うので、夜に比較的、時間が取れる科だと、月に5、6回、多い科で7回でしょうか。研修医の話し合いで決めますので、回数はばらばらになりますね。当院は研修医の当直はなく、基本的には23時から24時までに終わり、次の日も普通に勤務します。夜間ずっと診る当直は研修医はないんです。メンバーは内科系、外科系、小児科の指導医と初期研修医です。そのメンバーでウォークインの外来を診ますが、研修医は途中で引き継ぎをして、コンサルトする入院患者さんを入院させたら終わりです。当直がないと次の日に眠くならないので、スタートが切りやすいです。

カンファレンスの雰囲気はいかがですか。

田中:

内科は前日に入院した患者さんが10人ぐらいいらっしゃるので、そのプレゼンを朝8時から行います。特に夕方5時以降に入院した患者さんは研修医に電話がかかることが多いので、基本的には研修医が主治医となって診ています。夜は平均3、4人が入院しますから、翌日朝に合計5分ぐらいのショートプレゼンを内科の医師20人ぐらいの前で行います。各科の先生方からのフォローもありますね。身体所見や現病歴の選択の仕方などやプレゼンのやり方の指導も受けます。2カ月で60人ぐらいのプレゼンをしますね。

佐渡:

外科は週に2、3回カンファレンスがあります。がんの手術予定の患者さんの説明があり、外科、消化器内科、放射線科の先生方が共有して、術式などを話し合ったりします。そのほか、抄読会をしたり、相談したい症例などを出して話し合うカンファレンスも朝、行っています。短く話すのが大事ですね。プレゼンを任せられることが多くて、質問されることはあまりなかったです。

コメディカルの方たちとのコミュニケーションはいかがですか。

田中:

2年目になって、看護師さんともっと仲良くなりました(笑)。1年目だと、私の仕事が遅かったり、病棟のことが分かっていなかったりするんですね。2年目になると相談もしやすいですし、リハビリの技師さんたちも朝7時ぐらいから待っていてくれて、9時からの回診に同行してくださったりします。当院には病棟薬剤師さんがいるので、薬のことで困ったときに教えていただいています。

佐渡:

内科を回っているときは薬剤師さんとよくお話ししていました。薬の量や種類など、「間違っていますよ」と電話で教えてもらったりしたこともあります。病棟で患者さんがどこにいるのか分からなかったときは看護師さんに教えてもらって、助けていただきました。救急外来の看護師さんには教えてもらうばかりですし、アドバイスなどもいただいています。

研修医同士のコミュニケーションは活発ですか。

田中:

飲みに誘ったりとか、愚痴を聞いたり、和気あいあいとさせてもらっています。

佐渡:

こういうことを新しく始めようなどと言い合っていますね。そのあとは上の先生たちもそれが実現できるように働きかけてくださいます。先日も「今はこれをやってみたい」というのを皆で話し合いました。

2年目だと手技もさせてもらえるんですか。

田中:

手技の機会は1年目の方が多かったですよ。救急はもちろん、内科のCVを取るなどですね。2年目で手術室を回ったりすると、麻酔科の先生が「忘れているだろ」と言って、挿管を私たちにさせてくださるぐらいです。1年目で麻酔科ローテーションのときは毎日3人ぐらいは経験していました。

佐渡:

麻酔科を回った半年後が外科なので、外科の手術が始まる前に挿管などをさせていただいています。

今後のご予定をお聞かせください。

田中:

新専門医制度で色々と困りましたが、最終的には当院の外科の後期研修の内定をもらっているはずです(笑)。私は5年過ごすつもりで来たのですが、1年半を当院で過ごしてみて、働きやすさ、雰囲気の良さ、一般的な症例の多さを感じています。外科は若い医師が皆、元気ですし、仲良くさせていただいています。スタッフの半分が若い医師で、上の先生方が適宜指導するという下地があるので、力を伸ばせそうです。それに地震もあったことで、熊本県に愛着が湧いたという理由もあります。

指導医の大戸先生が熊本地震の際、初期研修医が非常に良くやってくれたと褒めておられましたが、実際に大変だったことをお聞かせください。

田中:

私は前震のときも、本震のときも医局にいました。震度7ぐらいですので、埃が舞っているんです。とりあえず救急外来に行ってみたら、ほかの先生方も集まってきました。夜の1時に20人ぐらいの先生方が病院にいらっしゃったことにも驚きましたが、そこから5分後には救急車の受け入れが始まりました。電気も切れて、真っ暗な中でペンライトで診療したんです。そのうち電気などの復旧があり、それなりの診療が再開されましたが、仮設の場所や人混みの中で診療したのも大変でしたね。私が言うことではないかもしれませんが、この経験で病院としての一体感がさらに生まれたように思います。1年目の初期研修医はオリエンテーション後、初仕事の前の日の深夜に地震が来たので、カルテを開いたこともない状態でした。病棟も経験ないので、2年目の私たちについてもらって、教えられることは全て教えました。大変でしたが、よく頑張ってくれたと思います。

ご趣味など、プライベートの過ごし方について教えてください。

田中:

1年目のときは余裕がなかったんですが、2年目は山登りに行ったりしています。自転車を漕ぐのが好きなのですが、当院の8階にランニングマシーンの自転車が置いてあるので、そこで夜な夜な自転車を漕いだりしています。

佐渡:

趣味はダンスですね。休みになったら、食事を作り溜めしたりしています。

現在の臨床研修制度に関して、ご意見をお願いします。

田中:

昔と比較はできないですけど、何科の医師になるにしても、他科にコンサルトするにあたって、どこまで自分でするのか、どこからは専門科の先生にお願いするのかという境目を学べるのは今の制度のいいところですね。専門科の医師同士のコミュニケーションが取りやすくなると思います。私は外科と決めていたので、外科に必要な科を中心に回ってきましたが、決めている科があっても全く関係のない科を1週間だけ回るのもいいですね。初期研修医は治療方針についての知識がないので、各科の先生方の考え方を知ったり、各科での医療をどのような位置づけで考えているのかを伺えるのはいい機会なのではないでしょうか。

佐渡:

私は学生時代に希望の科を決めていませんでした。5、6年生の実習で色々な科を回りましたが、働くとなると、させていただける量が違いますので、初期研修医としての経験を積みながら、将来の科を決められるのはいいですね。

最後に、これから初期臨床研修病院を選ぶ医学生に向けて、メッセージをお願いします。

田中:

当院のアピールポイントとしては、初期研修医が主体でさせていただけること、それに対して、指導医からのフィードバックもあること、症例数が多いことです。ガッツのある方には来ていただきたいです。一般論として、研修病院を選ぶにあたっては自分の性格をはじめ、色々なことを考慮に入れると思うんです。当院に来る初期研修医はガッツのある人が多いですしね。有名病院やブランド病院でしのぎを削るのもいいですが、個人的な意見としては自分の求めている研修にマッチしていれば、熊本にもこんなに良い病院があるということです。前評判にあまりとらわれずに、色々な病院を見学に行き、自分に合ったところを選びましょう。私は京都を離れましたが、全く後悔はしていません。

佐渡:

1年目では道端で倒れた人に対応できるような力が欲しいです。当院は救急外来の最初の診療を1年目にさせてくれますが、何歩か離れたところで指導医の先生方が見守ってくださっており、初期研修医がどれだけできるのかも理解されています。「ここまではさせておこう」という幅がじわじわと広がっていきますので、怖い思いをすることもありませんし、任せられている量が増えていくことを実感しています。診断のついていない患者さんの対応を勉強できるのはいいですよ。