初期研修インタビュー

2024-11-01

飯塚病院(福岡県) 初期研修医 伊藤駿 先生 (2024年)

飯塚病院 (福岡)の初期研修医、伊藤駿先生に、病院の特徴や研修プログラムについてなど、様々なエピソードをお伺いしました。この内容は2024年に収録したものです。

飯塚病院

〒820-8505
福岡県飯塚市芳雄町3-83
TEL:0948-22-3800(代表)
0948-29-8904(直通)
病院URL:https://aih-net.com/resident/

伊藤先生の近影
名前
伊藤 駿(いとう しゅん)先生
出身
愛知県名古屋市
出身大学
琉球大学
医師免許取得年度
2024年

医師を目指したきっかけをお聞かせください

父が薬剤師なので医療関係の仕事は身近でした。小さい頃から医療に対して親近感があり漠然と医師を目指していたのですが、高校生のときに曾祖母が在宅医療を受けて、自宅で亡くなったことが大きなきっかけになりました。そのときの訪問診療の先生が患者である曾祖母だけでなく、私たち家族も含めてケアをしてくださり、その姿を見て私も医師になりたいと考えました。

学生生活ではどんなことが思い出に残っていますか

父が沖縄に単身赴任していた時期があり、私も何回か沖縄を訪れたことがあったので、暖かいところで勉強したいと思って琉球大学に進学しました。沖縄に行ってみると青い海や暖かい風や空気感といった環境が私に合っていて、勉強よりもそういった雰囲気のほうが思い出に残っています(笑)。ただ、琉球大学を含め、沖縄県全体が医学教育に熱心なので、実習などに積極的に参加したり、学生時代から患者さんと触れ合える機会が多くあり、印象に残る患者さんともお会いできたことは良かったです。

大学卒業後、研修先を飯塚病院に決めた理由をお聞かせください

私は総合診療科や救急科などで患者さんをジェネラルに診ることに憧れていて、総合診療科が強い病院ということで、飯塚病院を知りました。福岡には縁もゆかりもなかったのですが、総合診療科に強みがある病院で研修したかったので、飯塚病院を選びました。

見学に来たときの印象はいかがでしたか

初めて見学に来たのは5年生の夏でしたが、初期研修医の先生方は、穏やかで優秀な方たちばかりだなというのが第一印象でした。研修医の先生が親身になって丁寧に接してくださったので、雰囲気の良さを感じました。総合診療科だけでなく、救急科でも毎日症例の振り返りをしていると知り、教育体制や指導体制が充実している病院なのだと思いました。

飯塚病院での初期研修はイメージ通りですか

伊藤先生の近影

教育体制や指導体制の充実ぶりはイメージ以上です。見学に来たときは限られた場面の当直しか見られなかったのですが、実際に土曜日、日曜日の病棟当直をしてみると、初期研修医が主体となって進め、指導医の先生からしっかり指導を受けられます。

プログラムの特徴はどんな点でしょうか

一つは総合診療科をローテートできることです。もう一つはスーパーローテートなので、脳神経外科や整形外科などの、私が将来関わらないであろう診療科も回れることです。一方で、2年目になると自由に選択できる枠も十分に確保されているので、そこで志望科や興味のある診療科を学べますし、非常にバランスの取れたプログラムだと思います。

プログラムの自由度が高いですか

私は今でも十分高いと感じていますが、2025年度からはプログラムが変わり、自由に選択できる枠がさらに広がるそうです。

院外での研修先をお聞かせください

地域医療研修は飯塚病院から車で15分~20分程度の場所にある頴田(かいた)病院と松口循環器科・内科医院で行います。それ以外はすべて飯塚病院内で研修することができ、環境が変わらずに研修ができる点もポイントだと思います。

初期研修にあたって、どのような姿勢を心がけていますか

一つはアセスメントプランを自分でしっかり立てることです。1年目のときは何も分からず、指導医から言われたことをそのまましていたのですが、やはりアセスメントプランを立てて、それに対してのフィードバックをいただくことが力になるのだと気づきました。もう一つは患者さんにしっかり向き合うことです。

ある指導医の先生から「以前は本や論文を読んで知識を身につけようと思っていたが、やはり一人一人の患者さんから知識を広げていくほうが明らかに学びになる」というお話を伺ったことがきっかけです。この二つをいつも心がけています。

飯塚病院での初期研修で勉強になっていることはどんなことでしょう

コモンディジーズから重症疾患までを診られることです。当院は当直の回数が多く、色々なグループに分かれているので、国試の勉強で学んだような疾患もあれば、色々な合併症のある患者さんが救急車で来られることもあります。幅広い疾患を診ながら、それに対するフィードバックもあるので、とても勉強になっています。

失敗談はありますか

伊藤先生の近影

結構あります(笑)。当直のときに血液検査の結果をあまり解釈せずに、患者さんをお帰ししたことがありました。それを上級医の先生に指摘され、患者さんに後日また来ていただいたことが大きな失敗ですが、小さな失敗は何度もあります。そのたびに指導医の先生にカバーしていただき、ご指導を受けています。

当直の体制をお聞かせください

当直は内科病棟、内科ウォークイン、外科ウォークイン、救急車対応の4種類に分かれています。内科病棟と内科ウォークインはそれぞれ指導医1人、2年目1人、1年目1人の3人1チームです。外科ウォークインは最初の半年間は同様の3人1チームですが、半年を過ぎると2年目1人、1年目1人になります。

救急車対応は救急科のリーダー医師1人、スタッフ医師が複数人、専攻医1人、2年目1人、1年目1人という体制です。ウォークインが内科、外科に分かれているので、「骨折を診たことがない」ということがありません。外科は外傷などに特化して、メリハリをつけて診られるので、様々な主要な疾患を経験することができます。

当直回数は、1年目は平均6回程度、2年目は平均8回程度になります。

当直で勉強になっていることはどのようなことですか

内科病棟当直では2年目研修医の裁量が大きく、1年目の研修医と一緒に考えながらアセスメントプランを自分で組み立てて、指導医の先生に確認しながら進めていくということが勉強になっています。外科ウォークインは、秋以降2年目と1年目がセットで動くので、2年目が患者さんを帰宅させるか、帰宅させないのかの判断を行います。その際1年目から質問が来たりもします。責任のある立場として当直できることが勉強になります。

指導医の先生のご指導はいかがでしょうか

皆さん、とても優しく教育熱心です。当院の臨床研修の歴史は古く、研修医がいることが当たり前の病院です。研修医も色々な経験を積めますし、各科でのフィードバックや指導体制が充実しています。

カンファレンスの雰囲気はいかがですか

一番印象に残っているのは総合診療科でのカンファレンスです。月曜日以外の毎朝、カンファレンスがあります。臨床推論がメインですが、論文の読み方などのEBMに関する内容もあり、とてもハイレベルなので、勉強になりました。

それから集中治療科のカンファレンスも印象的でした。集中治療科は必須科目ではないのですが、興味があってローテートしました。集中治療科では研修医がその日に診た症例を先生方全員の前で突っ込みを受けながらプレゼンします。自分で考えてプレゼンしたことをフィードバックされる機会は勉強になりますね。突っ込みも内容は鋭いのですが、雰囲気はどの科も穏やかで柔らかく、和気あいあいとしています。

コメディカルスタッフの方々とのコミュニケーションはいかがですか

研修医と特に関わるのは救急外来での看護師さんで、当直に入るたびにそれなりに顔を覚えて、見知った関係になります。こちらも教えていただくことが多く、コミュニケーションを取りやすいです。当院のコメディカルスタッフの方々は優秀な方ばかりで、教えていただきながらやっていく機会が多く、とても有り難いです。

病院に改善を望みたいことはありますか

伊藤先生の近影

特に不満は思い浮かばないです。博多から離れているので、近くなってくれればいいなと思いますが、どうしようもないですしね(笑)。都会から離れていると言っても、博多駅まで電車で一本ですし、40分から50分で着きます。私はいわゆる日本の田舎みたいなところに住むのは初めてですが、生活に必要なものは病院の周囲に揃っているので、不便は感じません。

研修医同士のコミュニケーションはいかがですか

同期は男性12人、女性6人の18人です。1学年下は男女が半数ずつとなっています。1、2年目一緒の研修医室があり、そこで話したりして笑いが絶えませんが、症例の相談などもしていて、勉強にもなるし、学びもあります。毎回の仕事が終わり研修医室に帰ると、楽しい雰囲気の中でリラックスできます。皆の仲が良いので、居心地もいいですね。

研修医室には電子カルテも10台ほどあり、エコーや手技のトレーニングができる設備もあります。院内にも365日24時間開いているシミュレーションセンターがあるのですが、研修医室でもある程度のトレーニングができるようになっています。

お住まいは寮ですか

一般の方々がお住まいのマンションを男女別に病院が借り上げていて、そこに住んでいます。オートロック付きの1DKで、一人暮らしには十分な広さがあります。病院までは歩いて7、8分なので、過ごしやすいですね。ただ、私の1学年下からは自分で自由に選び、病院から住居手当をいただくシステムに変わりました。

今後のご予定をお聞かせください

来年度からは当院の総合診療科で専門研修を始める予定です。総合診療科には重症チームがあり、これはほかの病院にはなかなかないもので、当院の強みとなっています。教育体制が充実していることもあり、専門研修先に選びました。

また、当院の連携医療・緩和ケア科は全国から医師がトレーニングに来るような科なのでぜひ回りたいですし、集中治療科も再度回りたいと思っています。

専門研修終了後は具体的に考えてはいないのですが、総合内科をベースとしながら、サブスペシャリティとして膠原病内科や感染症科などができればいいなと思っています。

ご趣味など、プライベートの過ごし方について教えてください

休日は家でごろごろしていることが多いですが、博多に一人で行って、美味しいものを食べたりもしています。もちろん同期と出かけることもあり、大分県や長崎県、山口県にも行ったりしました。車がなくても病院の周りで買い物はできるのですが、車があると行動範囲が広がりますし、羽も伸ばせます。私は九州で暮らすのは初めてですが、いい街や美味しい食べ物が多くて、楽しいところだと思います。

現在の臨床研修制度についてのご意見をお願いします

私は大学生のときから総合診療科や救急科に進みたいと決めていたので、色々な症例を診られるスーパーローテートの制度はいいですね。今後、専攻医やスタッフになったとしても、ここまで幅広い診療科を回れる機会はないでしょうし、各科の意見やアセスメントの方法を知ることができるのは総合診療科を目指すうえでは貴重です。

同期の中にもこの初期研修中に志望科が大きく変わった人が何人もいますので、様々な診療科を回れる制度はメリットが大きいと思っています。

最後に、これから初期臨床研修病院を選ぶ医学生に向けて、メッセージをお願いします

Related

関連コンテンツ