正しいマッチングの考え方
はじめに
梅雨も深まり、蒸し暑い日々が続いております。
学生の皆様は如何様にお過ごしでしょうか。
さて、今回はマッチングのお話です。
恋人作りの話ではありませんよ。勿論、初期研修をする病院への就職に関するお話です。
昨年は5年生向けの記事でお話をさせていただきましたが、今回はどの段階からマッチングを意識して、どこからどんな風に行動し、
どんな道を選択するのか、という話をもう少し具体的に掘り下げていこうかと思います。
皆様の役に立つ記事になればと思います。
マッチングはいつから意識するのか
これは盲点なのですが、志望する病院がいわゆる初期研修の人気病院であれば、まずCBTの段階から意識しなければなりません。
何故かというと、それはCBTの点数で足切りされるからです。因みにおよそ80%が足切りのラインと思ってもらって差し支えありません。
皆さんの学校がどのラインをCBTの合格ラインとするかは様々でしょうが、少なくとも合格点ぎりぎりで受かるような状況であると、こう言った人気病院への就職は不可能です。
なので、ある意味CBTの勉強もまたマッチングの対策になる訳ですね。という事で、これからCBTの方々は一生懸命勉強しておきましょう。
そして本格的にマッチングに向けて動き始めるのは、できれば4年生の長期休暇中が良いでしょう。その時期から集団病院説明会や一番気になっている病院への見学に行くように
しておくと良いかもしれません。6年だと本番も近くて色々と焦ってしまうでしょうから、最低でも5年生から動く方が吉だと思います。
病院選びの基準
昨年も述べましたが、初期研修先にどんな病院を選ぶのがベストなのか、その基準というのは自分のキャリアアップにどう影響するか? を考えるという点です。
例えばですが、事情があって初期研修を終えたら早々に実家の病院を経営する必要性のある方もいるかもしれません。或いは美容外科に進んで手術をガンガンやっていこうという人もいるかもしれません。
臨床医として研究に診療にと手広くやっていこうという人もいるかもしれません。
いずれにせよ、僕はどんな場合であっても必要以上に楽をしようとしない事を勧めておきます。何故ならば、どの医療の世界に進もうと、それ相応の苦労は背負う事になるからです。
甲子園に行きたければ野球の練習をするのは当たり前ですよね。こういう関係の事をトレードオフの関係と言いますが、どの医療の世界でも必要となるスキルというものがあります。美容外科であれば縫合のスキルは必要ですし、
経営をするのであればいくつか病院を見て回って組織運営の在り方を自分なりに分析する能力が必要ですし、臨床医としてやっていくのであれば救急のスキルは最も基本となります。
なので、それらの能力研鑽の場としてよいと思える初期研修先の病院を選びましょう。できれば――相応に当直はキツいと思いますが――ある程度外科・救急に強い病院を選んでおくと、幅広く色々な経験が出来ます。
とは言え、最後はあなたの価値観になります。よく先を考え、初期研修先は選びましょう。
病院就職説明会の使い方
そんなことを言われても、先なんてわからないし、何を基準に病院を選んでいいのかも分からないなぁ……そんな人は、病院就職説明会に一先ず行かれると良いと思います。
病院就職説明会では、就職に関する悩みをコンサルタントに相談する事もできますし、色んな病院の先生に色んなお話を聞くことができるので、自分の道を考えていくのに色々と参考になる情報が沢山あります。
例えばある程度給料が良い病院もそれで分かると思いますし、院内のスタッフの雰囲気や、どれくらいの仕事内容かも話を聞くと少し分かると思います。
さすがにぶっちゃけた話や実情は見学に行かないと中々分からないのかと思いますので、もし説明会で気になるところがあれば、是非一度見学にいくのが良いでしょう。
色んな都道府県の、色んな病院の話を聞くとそれだけでも視野が広がります。
面接の本番ってどんな感じ? 対策は?
面接の本番に関する事ですが、病院の就職面接も企業の就職面接も、ほとんど差はありません。なので、必ず病院の志望動機と医師としてどんな道を進みたいのか、は言えるようにしておいた方が良いでしょう。
何も見栄を張ったり格好つけたりする必要性はありません。あるがまま、自分が挑戦したい事を表現して、その為に勉強させてください、という姿勢を見せればよいだけです。
もし普通の企業の面接と大きな違いがあるとするならば、中には医師として最低限の人格を備えているか、ある程度医療に対して興味を持っているのか、判断能力はどれくらいか、という事を問う病院があるということくらいでしょうか。
そういうものは中々対策がしにくいものです。なので、基本的にあるがままの自分でトライしてみると良いでしょう。
最後に面接でのふるまいや感情表現法に関しては、事前に何らかのスキルトレーニングをしても良いかもしれません。意外と話し方一つで人の印象は変わるものです。そういう意味では、面接対策としてそういったトレーニングをやる事はけっして無駄ではないでしょう。
二次募集を待つじゃダメなの?
最後に、マッチングなんてかったるいし、二次募集を待つというやり方でいいんじゃない? という見解に対してコメントを述べておくことにします。
第一に、二次募集は一定数どの県でも発生するでしょうが、選べる病院が限られてしまいます。しかもその病院が十分な研修の体制が整っているかどうかロクに分からない状況で二次募集に飛び込んでいくことになります。
第二に、マッチングで内定をもらっている状況の方が、国試に当たっては受かって次のステップに進みたいというモチベーションにつながるはずです。何故、敢えてモチベーションを高めようとしないのでしょう。
第三に、二次募集で全て不採用という結果になるリスクもあります。そうなった場合、一体どうするのでしょう。それならば、マッチング登録してしっかり内定をもらいに頑張る方がまだ良いのではないかと思います。
このように、色んな観点から最初から二次募集を狙いに行くのはお勧めできません。一度それで本当に良いのか、自分自身にも問いかけてみて、人にも相談してみる事をお勧めします。
最後に
ここまでマッチングに関して様々な視点からお話をさせてもらいました。
今は働き方改革や長期に渡ったコロナ禍で非常に研修の在り方さえ色々と混乱がある時代になります。
そんな時代の中で、この病院の人々に教えてもらいたいと、あなたが心の底から思うような病院に出会えることが一番です。
ですから、この記事の他にも様々な人の情報を参照にして、将来を決めていくとよいのではないかと我々は考えています。
皆様の医師人生が良い方向に向かいますよう、心から応援しています!
著者プロフィール
ペンネーム:なつ
プロフィール:市中病院勤務の脳神経内科医。趣味は釣りと小説と東洋医学。臨床をこなしながら、
CES医師国家試験予備校で講師として「アウトプットする授業」をモットーとして学生の指導に
当たっている。僕のコラムが何らかの形で皆様の力になれば幸いです。一緒に頑張りましょう!