インタビュー

2022-04-01

沖縄県立南部医療センター・こども医療センター 利根川 尚也 医師 | 指導医インタビュー(後期)

沖縄県立南部医療センター・こども医療センター 利根川 尚也 先生の指導医インタビュー。全国病院からメッセージ・求める研修医、プログラム・募集要項、ジュニア・シニア・指導医・院長のインタビューを掲載。進路選択の判断材料としてお役立てください!

沖縄県立南部医療センター・こども医療センター

〒901-1193
沖縄県島尻郡南風原町字新川118-1
TEL:098-888-0123
FAX:098-888-6400
病院URL:https://nanbuweb.hosp.pref.okinawa.jp/

利根川先生の近影

名前 利根川 尚也
沖縄県立南部医療センター・こども医療センター 小児総合診療科 臨床研修センター長 指導医

職歴経歴 1983年に埼玉県比企郡川島町に生まれる。2009年に昭和大学を卒業後、太田綜合病院附属太田西ノ内病院で初期研修を行う。2011年に国立成育医療研究センター病院で小児科の後期研修を行う。2014年に国立成育医療研究センター病院感染症科臨床研究員となる。2015年に沖縄米国海軍病院に勤務する。2016年に沖縄県立南部医療センター・こども医療センターに勤務する。
日本小児科学会専門医など。

沖縄県立南部医療センター・こども医療センターの特徴をお聞かせください。

子ども病院と成人の総合病院が一緒になり、連携しているところが最大の特徴です。成人と小児の医療を偏りなく提供しているという意味では当院は日本で唯一の存在でしょう。臨床研修病院としても、初期研修プログラムをはじめ、複数の専門研修プログラムを備えている病院です。

利根川先生がいらっしゃる小児総合診療科についてはいかがですか。

当院の小児科領域には小児総合診療科以外にも小児循環器内科、小児腎臓科、小児内分泌・代謝内科、小児神経内科・こころ科、小児血液・腫瘍内科、小児集中治療科といった専科と言われる診療科があります。当院の小児総合診療科の特徴としては、ほぼ全ての患者さんを小児総合診療科で一旦受けて、診断がついていないものには診断をつけたり、臓器別の問題を特定したり、社会的な問題も含めて、患者さんの全ての問題を抽出して、専科や他職種と連携を組んでいくところにあります。基本的に、小児総合診療科の医師が主治医となる確率が高く、専科の医師や他職種と連携しながら、患者さんにとっての最適な医療を提供しています。日本には小児総合診療科医が非常に少ないです。なぜなら、ほとんどの小児科医が小児科の専門医資格を取ったあとで、臓器特異的な専門に細分化していく流れが強いからです。しかし、それらの専科が機能するためにも、とりまとめ役とも言える小児総合診療科が必要なのです。

沖縄県立南部医療センター・こども医療センターの初期研修プログラムで学べる特徴について、ご紹介くださいますか。

何と言っても、生まれる前から亡くなるまでの患者さん、そして、その患者さんをサポートするご家族の方たち全てに偏りなく、継続して関わることができるプログラムであることが最大の特徴です。全国的に見ると、成人医療を中心にして初期臨床研修を積む病院がほとんどのようですが、当院は救急の当直をメインとして、救急に来られた全ての年代、全ての重症度の患者さんを初期研修医がファーストタッチし、指導医がバックアップする体制で経験することができます。当直は週に約1回あり、もちろん小児の患者さんも来られます。ほかの臨床研修病院では小児科のローテートは1〜2カ月がほとんどです。そこで小児医療を経験する以外に、継続的に関わる機会は少ないようなので、全ての患者さんの診療を2年間を通して研修できることは大きな特徴でしょう。

自由度の高さについてはいかがですか。

基本的な技能や知識をつけるために必須であると指定している科目がありますが、それらの必修科目を1年目でほぼ終えます。2年目になると、地域医療などの必修科目が一部残されていますが、それ以外は選択期間となっています。必修科目のローテートでもそれぞれの初期研修医の3年目以降のキャリアを考えたうえで、柔軟な組み替えが可能です。

初期研修医の人数はどのくらいですか。

1学年14人です。これに加えて、琉球大学病院からのたすきがけの初期研修医が1年ごとに数人ずつ来ています。

指導される立場として心がけていらっしゃることを教えてください。

最も意識していることは研修医の主体性です。研修医自身が学ぶ必要があると認識していること、学びたいと願っていることから教えていくようにしていますが、その際も研修医が受け身にならないように気をつけています。研修医によって、今必要としている知識や学ぶべきことが異なり、最近接性領域と言います。研修医が「これが必要だ」と思っていることを学ぼうとするときに、指導医が横についていると主体的で質の高い学習ができるのです。もう一つは楽しく学ぶということです。アミューズメントやエンターテインメントといって、「なんだか楽しい」といった雰囲気を作ることも重要だと考えています。

最近の研修医をご覧になって、どう思われますか。

当院は日本全国から初期研修医が集まり、マッチングでの倍率も嬉しいことに2倍ほどになっています。したがって、彼ら、彼女らは「こういう初期研修をしたい」と思い浮かべた病院を日本全国から探して、当院にたどり着いたわけですから、学ぶモチベーション、主体性は非常に高いです。

利根川先生の写真

「こんな研修医がいた」というエピソードがあれば、お聞かせください。

ある研修医が1年目のときに「医師としてこうしなくてはいけない」「一生懸命学ばなくてはいけない」という思いから、労力を惜しまず、毎日頑張っていました。そうすると、半年後ぐらいに疲れが出てきて、モチベーションを失ってしまったのです。そこで、彼と話をし、彼の性格を含めた特徴や医療を目指した理由などを話し合う中で、真面目になりすぎ、力を抜けないことや無理難題を自分自身に求めてしまうといった性格を彼自身が徐々に気づき始めました。そんな中、当初から志望していた科ではなく、楽しいと感じていた科を専門にしようと切り替えることができ、そこからの1年間の研修をとても充実したものにし、大きく飛躍しました。今日が彼の卒業の日なんですよ。

研修医に「これだけは言いたい」ということがあれば、お聞かせください。

漠然とでもいいので、なぜ医療に関わりたいと思ったのかを考えてほしいです。それが原点となりますので、その考えを大事にしてほしいですね。また、初期研修は非常に過酷な研修であるので、公私ともに充実するような2年間にしましょう。自分の人間としての強みを活かすということは弱みにもきちんと着目し、それを克服していくという意識に繋がります。その自分らしさを活かしながら、社会に貢献できる分野を初期研修で見つけ、とらわれることなく、自分がより没頭できる道に進んでほしいと願っています。

先生はなぜ小児総合診療科を選ばれたのですか。

初期研修のときに、総合診療は、臓器別に偏ることなく、人全体を診る印象を受けました。患者さんの心や社会的な背景に寄り添うことは、私のなりたい医師像に一致していました。それを決定づけたのが東日本大震災のときです。私は、福島県で研修していたのですが、災害医療で活躍されていた総合診療科の先生方の姿を見て、私も総合診療をやりたいと思いました。そもそも小児科は総合診療であり、患者さんによっては非常に複雑な問題を抱えていますので、小児科の中にも総合診療を専門とする医師が必要だということを強く認識しました。国立成育医療研究センターで小児科研修をしたのですが、そこで出会ったある患者さんが痙攣、てんかん、心臓や腎臓の病気、発達の遅れといった多岐に渡る問題を抱えていました。そのお母さんから「この子の主治医はどなたなんですか」と相談されたことがあります。患者さんの色々な問題を取りまとめ、患者さんや親御さんの一番近い存在となる主治医がいないといけないのだと痛感しました。この経験から、全体を俯瞰して、まとめていく存在になりたいと思ったことが小児総合診療科医になると決めたきっかけです。

先生の初期研修医時代はいかがでしたか。

福島県郡山市の太田綜合病院附属太田西ノ内病院で初期研修をしました。太田西ノ内病院は病床数も1000床以上あり、三次救急の病院として、救命救急センターには年間5000件以上の救急搬送があります。当時は外科志望でしたし、外傷治療が有名な病院でしたので、私の初期研修での目標はシンプルに「医師としての肝っ玉をつける」ということでした(笑)。そこで救急にいらした外傷の患者さんや、もう少しで亡くなってしまうかもしれない患者さんに関わることで、緊急事態に対峙する肝のようなものは身についたと思います。そして、それが急速に満たされていく中で、人間により密着して、人間についてより深く知りたいという思いも鮮明になった2年間でした。

現在の臨床研修制度についてのご意見をお願いします。

現在の臨床研修制度は総合診療の意味合いが強くなっています。診断がついた患者さんにいかに治療を提供するのかということよりも、診断をつけていく過程や、臓器特異的ではなく、人全体を診るような知識や能力をつけることが注目されるようになってきましたので、変革が非常にいい方向へなされているという印象を持っています。

新専門医制度についてのご意見もお願いします。

専科別ではなく、中央化して管理するルールができたことがとても良いことだと思います。プログラム制として整備することによって、どういう専門医になってほしいかという学会側が掲げる目標を、多くの専攻医が達成できる研修環境になりました。しかし、一方で、シーリングを設けて専攻医の人数制限をしても、各地域のニーズを満たす医師の分配がなされていないとか適切な教育ができる施設に人を集めるべきなどの意見もあるようです。日本全体の医療に対するニーズに対して痒いところに手が届くまで汲めて、医療者がきちんと分配されていく制度、そして専攻医がどこの病院に行っても質の高い研修を受けられる制度が、チェック機構も含めて充実していくといいと思っています。

これから初期臨床研修病院を選ぶ医学生に向けて、メッセージをお願いします。

まずはこれまで色々なことを経験してきた中で培ってきた人間性、自分らしさを大事にしてください。医師になったあとで、自分という人間は何ができるのか、何ができないのかということを掘り下げ、その思いを大切にしながら、行きたいところに飛び出していってほしいです。社会経験はこれからで、成長していく過程にある20代半ばの人たちが医師国家試験に合格した瞬間に「お医者さん」という立場になってしまいます。社会からの期待も当然高く、研修医はそれに応えようとして、主語を「私は」から「医師としての私は」に置き換えてしまいます。医師として何をするべきか、どういう行動をするべきかと悩み、一生懸命に医師になろうとする中で、学生のときに抱いていた綺麗な思いを諦めたり、割り切ったりして、自分本来の良さに霧がかかってしまう人も少なからずいます。「医師の前に人でしょ」とよく言いますが、医学生の皆さんには研修医になっても人間としての自分らしさを大事にし続けてほしいですし、そのためのサポートをしていきたいと考えています。

利根川先生の写真