専門研修インタビュー

2023-07-01

和歌山県立医科大学附属病院(和歌山県) 指導医(専門研修) 岩橋尚幸先生 (2023年)

和歌山県立医科大学附属病院(和歌山県) の指導医、岩橋尚幸先生に、病院の特徴や研修プログラムについてなど、様々なエピソードをお伺いしました。この内容は2023年に収録したものです。

和歌山県立医科大学附属病院

〒641-8510
和歌山県和歌山市紀三井寺811-1
TEL:073-447-2300
FAX:073-441-0713
病院URL:https://www.wakayama-med.ac.jp/hospital/

岩橋先生の写真

名前 岩橋 尚幸(なおゆき)
和歌山県立医科大学附属病院 産婦人科 助教 指導医

職歴経歴 1987年に和歌山県和歌山市に生まれる。2012年に和歌山県立医科大学を卒業後、和歌山県立医科大学附属病院で初期研修を行う。
2014年に和歌山県立医科大学附属病院で産婦人科の後期研修を行う。
2019年に和歌山県立医科大学大学院を修了する。2020年に和歌山県立医科大学産婦人科助教に就任する。
日本産科婦人科学会専門医・指導医、日本がん治療認定機構がん治療認定医など。

和歌山県立医科大学附属病院の特徴をお聞かせください。

 和歌山県全体をカバーしている病院です。和歌山県は大きな病院の数が少ないので、当院が最終到着点になりやすく、どの疾患も症例数が多いです。診療科間の関係性も良好で、相談もしやすいので、そうした症例を他科と協力しながら総合的に診ることができる病院です。

岩橋先生がいらっしゃる産婦人科の特徴もお聞かせください。

 都会にある大学病院ですと、婦人科のがんしか診ないなどの特化した特徴があったりしますが、当院は和歌山県全体の全疾患をカバーしていますので、産科も婦人科も分娩も診ますし、がんの手術でもロボット手術や腹腔鏡手術もあり、専門的になりすぎず、全ての領域を診ることができることが特徴です。専門医資格を取得後は専門の分野での修練を積むという形になりますが、専攻医研修では色々な領域を診ることができます。

和歌山県立医科大学附属病院の産婦人科専門研修プログラムの特徴をお聞かせください。

 基幹施設としての当院のプログラムに入っていただいた場合、和歌山県という特性上、橋本市民病院、公立那賀病院、国保日高総合病院、社会保険紀南病院、新宮市立医療センターなど、各地域に中核病院がありますので、そちらでの地域医療も経験していただきます。ただ、それらの病院の中には手術が得意な病院もあれば、分娩件数が多い病院もありますので、専攻医の希望を聞きながら、どの病院に行くかを決めていきます。どの病院に行っても、もちろん専門医や指導医がいますので、それぞれの特性に合わせた修練が積め、しっかりした研修を受けていただけます。また、産婦人科の専門医を取るには不妊治療の症例も必要ですので、不妊治療専門のクリニックに出向し、症例を積んでいただくこともできます。

産婦人科専門医大学院進学コースや女性医師支援コースといったコースもありますね。

 当院でも一般的な産婦人科専門医養成コースですと、専門医を取得することが重視されていますので、大学院に入りやすいシステムが必要だということで作られたコースが大学院進学コースです。学生時代から研究に興味があった人などは早めに大学院に入って、研究を進めていくことが可能なプログラムです。また女性医師支援コースは、産前産後休暇や育児休暇を取る先生方が現状でも多くいらっしゃいますので、そうした先生方を支援するために、柔軟性のあるプログラムになっています。

和歌山県立医科大学附属病院の産婦人科で専門研修をされた先生方はどのようなキャリアアップをされていますか。

 専門研修プログラムを終えて、晴れて専門医を取ったあとはサブスペシャリティの修練を積んでいきます。当院ですと、日本周産期・新生児医学会母体・胎児専門医、日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、日本女性医学学会女性のヘルスケア専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医など、多数の専門医資格を取得できます。特に周産期や腫瘍に関しては多数の専門医がいるので、丁寧な指導のもとで研修ができます。都会の大学病院などですと、入局した時点でどこかのチームに入って研究したり、専門医を取ったあとの診療内容が決められていたりするようですが、当院はある意味、皆で協力しながら全ての疾患を診ていくので、並行して複数のサブスペシャリティを取ることができるのが利点だと考えています。

カンファレンスについて、お聞かせください。

 産科全体のカンファレンスが週に1回、チーム制なのでチームごとのカンファレンスが最低でも週に2回あり、情報共有をしています。婦人科は週に1回のカンファレンスのほか、手術前、手術後の全例の症例検討会や教授回診があります。ほかには放射線科との放射線治療に関する合同カンファレンスもありますし、病理科、放射線科との3科合同で、臨床経過を画像と病理の3方向から検討するカンファレンスも定期的に行っています。

専攻医も発言の機会が多いですか。

 専攻医が症例をそれぞれ発表します。その発表に対し、上級医が注意点などを指摘しています。

女性医師の働きやすさに関してはいかがでしょうか。

 産婦人科では女性医師が半数を超えています。お子さんがいる人も多いので、その状況に合わせて、育休明けの当直は希望者のみなど、勤務内容を考慮しています。ただ、普段から診療を頑張っている女性医師ばかりなので、産休や育休後に割と早期に復帰する人が多い傾向です。お子さんを産んでも戻ってきやすい環境ですし、周囲もお子さんがいる人に合わせて働いてきていますので、働きやすさは確保されていると思います。

岩橋先生の写真

先生の研修医時代はいかがでしたか。

 私は当院で初期研修を行いました。この大学出身ですし、システムや科の雰囲気が分かっているということもあって、安直に選びましたね(笑)。でも当院の初期研修は1年ごとではなく、2カ月おきぐらいに回る診療科を決めていけるので、そのときそのときで回りたい科に行けるのはとても良かったです。2年目になると、自分の進みたい科が決まってきて、回っておきたくなる科も増えてくるので、入局先を選ぶための融通が利くという意味ではいいシステムでした。

先生はいつから産婦人科医を目指していたのですか。

 最終的に決めたのは初期研修2年目の8月です。最後まで悩んでいましたが、決め手になったのは産婦人科のプラスの要素に惹かれたからです。色々な科を回っていく中で、治療が難しい方や亡くなってしまう方を見てきたのですが、産婦人科はそういうマイナスなことだけではなく、赤ちゃんが生まれてくるというプラスの要素もあることが良かったです。がんの患者さんも助けてあげられるし、マイナスとプラスの両方に関われること、違った種類の経験を積めるということで選びました。

後期研修も和歌山県立医科大学附属病院でなさったのですね。

 あえて遠くの病院や都会の病院に行きたいという希望もなかったですし、和歌山で十分な研修ができることが分かっていたので、そのまま当院で後期研修医になりました。

サブスペシャリティはどのように決められたのですか。

 婦人科がんの診療に興味があったので、修練を積んでいるところです。ただ、当院には周産期センターがあり、重症な産科症例も多いので、同時並行で周産期の研修もしています。当院の産婦人科はサブスペシャリティと言いながら、複数の専門医を持っている先生方が多いですね。

手術に興味がおありなんですね。

 昔から細かいことが好きでしたし、動くことも好きで、医師になるなら手術がしたいと思っていたので、手術の経験を積んでいます。患者さんや病態次第で開腹手術も腹腔鏡手術も行っています。

専攻医に指導する際、心がけていらっしゃることはどんなことでしょうか。

 興味を持って産婦人科に入ってくれたわけだから、産科でも婦人科でも興味を持ってもらえるようにできるだけ詳しく、「こう考えたら」といったことを提示しながら、自分で考える力をつけてもらえるような指導を心がけています。私も研究をしているので、臨床だけではなく、大学病院にいるという環境を活かして、学会参加も勧めています。臨床研究や基礎研究を行えるように提案したり、「こういう論文があるよ。調べてみたら面白いよ」という話をしています。

先生はなぜ大学院に進学しようと思われたのですか。

 後期研修1年目で色々な学会に行かせていただき、私も研究をしたいと思ったんです。普段の臨床を何も考えずに済ませるのではなく、研究をすることで視野が広がるのではないかと考えました。それで専攻医にも研究は大事だと伝えています。

先生はどのような研究をなさっているのですか。

 臨床では婦人科がんの研修をしていますが、研究テーマは自由なので、大学院では周産期の胎盤の研究をしていました。今はそれに加えて、婦人科がんの研究の方を重視しています。和歌山県立医科大学産婦人科は大学院の4年間のうちの2年間は日中の臨床業務がフリーとなり、研究だけに集中できます。基礎医学の研究室とも連携を取っており、手取り足取り教えてくださる研究医の先生もいらっしゃるので、大学院に進学した人は皆、一通りの経験をして、何かしらの成果を上げることができています。

今の専攻医を見て、いかがですか。

 若いですよね(笑)。私もそういう時期があったなと思いますが、産婦人科は入局したての年から帝王切開や開腹手術をしていかないといけないので、実際に執刀して怖くなったり、嫌な経験をすると、嫌なまま手術をしないといけない人生になってしまいます。それは可哀想なので、できるだけ道筋を立てられるようにできたらなと考えながら接しています。

現在の臨床研修制度について、感想をお聞かせください。

 回っている側はあまり感じないことでしょうが、回ってこられる側としてはあまりにも必修科が多いと感じています。産婦人科と小児科はどちらかを選択にするなど、もう少し選択肢があるといいですね。

現在の専門医制度について、感想をお聞かせください。

 症例数が細かく求められますので、専門医を目指すにあたっては良いことです。ただ行く病院によって症例に偏りがあるので、それを是正する必要があります。症例数や必要な研修が決まったので、隔たりなく平等に経験できるようになったのが良かったです。

これから専攻医研修の病院を選ぶ初期研修医にメッセージをお願いします。

 研修医の間はこれから何をしていきたいのかを決められないことも多いので、幅広く疾患を診られるという意味で、当院をお勧めします。当院は専攻医研修の間にサブスペシャリティを決める必要もなく、色々な疾患を診られるし、症例数も多いので、是非、来ていただけたらと思います。

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